ドリフターズに迷い込むもの リメイク   作:四国の探索人

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第4話 豊久との出会い

それから一ヶ月。

 廃城での生活にも、三人はすっかり慣れつつあった。

 狩りをし、羽をむしり、弓で鳥を落とし、火を起こし、寝床を温める。

 戦国の二人に混じる形で、ユウスケも“異世界の日常”をなんとか身につけていた。

 

 そんな、いつもと変わらぬ昼下がり——

 突然、信長の声が低く響く。

 

「……誰か、来るな」

 

 その声音に、空気がぴりりと張り詰める。

 

「ええ……足音からして二人。急いでいます」

 与一が目を細め、耳を澄ませた。

 

「誰かって誰が来るんですか。二人に友達なんて——」

 ユウスケが言いかけた瞬間、

 

ゴツンッ!

 

「いっっっでぇ!!」

 

「余計な口を開くな。ほら、あれじゃ」

 信長が顎をしゃくる。

 

 その指先の先——

 森の奥から、少年らしき二人が、大人一人を担いでこちらへ向かっていた。

 少年たちの耳は妙に長く、髪は金色。まるで絵本の登場人物のようだ。

 

「行ってきます」

 与一は無駄のない動きで窓を飛び降り、地を蹴って駆けだした。

 

「耳が異様に長い……信長が言ってたエルフ?」

「そうだ。確認だが、そなたの時代に、あのような人種は存在するのか」

 

「いや……情報化社会になって、世界中の民族くらいは調べられますけど……

エルフなんて、物語の産物ですよ。現実には存在しません」

 

「ふむ……やはり、ここは地球ですらないのかもしれんな」

 

 そう話している間に、与一は彼らと接触し、短い問答を交わしていた。

 やがて少年らは抱えてきた大人を地面に横たえると、一礼し、同じ道を静かに戻っていった。

 

「呼ばれてますね。行きましょう」

 ユウスケと信長は与一の手招きに従う。

 

 そこには、血塗れの若い武者が倒れていた。

 胸には槍傷、肩には矢傷。鎧は破れ、血は乾き、呼吸は細い。

 

「日本の武者のようだが……死にかけだな。治療できるか?」

 信長が問う。

 

「縫うだけなら」

 与一は冷静に傷口を見る。

 

「ユウスケ、お前は?」

 

「医者じゃないですけど……消毒液はあります。あと、布用の針と糸なら……

信長にやらせるよりはマシでしょう」

 

「何故じゃ貴様ァ!」

「図星ですよね?」

 

 信長が舌打ちするのを横目に、一昼夜になる長い治療が始まった。

 

 

「……終わった。内臓は……知らん。やられてたらアウトです」

 ユウスケは床にへたり込む。

 

「死人のような傷ですが、心臓は動いています」

 与一が脈を確かめる。

 

二人が疲れ果て眠り落ちた後も、信長だけは横たわる武者をじっと見つめていた。

 

「この家紋……島津。しかも若い……

持ち物からして、儂の時代とほぼ同じ頃の人間か」

 

 彼は呟き、静かに横になる。

 

 

それから二三日、まだ武者の起きる気配はなかった。

 

「生きてはいるが……まだ寝ておるな」

「余程疲れていたのでしょうね」

 ユウスケが湯気の立つ雑穀粥をかき混ぜながら言う。

 

「ユウスケどの。その武者を見ていて下され。

我らは外の罠の様子を見て参ります」

 与一が弓を持ち、信長とともに部屋を出た。

 

「はい、行ってらっしゃい」

 

 廃城にはユウスケ一人。

 鳥の羽根をむしり、鍋の火を見守りながら作業をしていると——

 

ガッ!

 

「っ……!? かはっ……!」

 

 太い腕が後ろから首を絞め上げた。

 

(何だ!? あの怪我人か!?)

 

「ここはどこで、お主らは誰ぞ」

 背後から低く、荒い呼吸混じりの声。

 

「あっ……っ、あ……(絞められてるのに喋れるかよバカが……!)」

 

「答えぬか。なら他の二人に聞くまでよ」

 

 武者はさらに力を込める。

 視界が白く霞む——

 

(やばい……死ぬ……!)

 

その瞬間、部屋の入口から声が響いた。

 

「おい、狸寝入りは終わりか、島津。

言っとくが、俺達は命の恩人だぞ、この野郎」

 

 信長が立っていた。煙のように現れた与一はすでに弓を構えている。

 

「放さなければ撃ちます」

 

 与一の声は静かだが、殺気が冷たい刃のように走る。

 武者は一瞬だけ逡巡し——ユウスケを放した。

 

信長が一歩踏み出す。

「よし、いい子だ。名を聞こう。島津某なのは家紋で分かる。何者だ?」

 

武者は息を整え、睨み返す。

 

「……島津家久が子、島津豊久じゃ」

 

 その名が落ちた瞬間、

空気が、変わった。

 

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