ドリフターズに迷い込むもの リメイク   作:四国の探索人

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第6話 エルフの村 襲撃

その日、エルフの村は薄曇りの空の下、いつもと変わらぬ静けさに包まれていた。

 

 畑では女たちが土を耕し、子どもたちは木陰で遊び、老人たちは家々の前で穏やかに語らっていた。

 

 ——異変に、最初に気付いたのは村長だった。

 

 金属が擦れる音。

 重く、揃った足音。

 

 村長は顔色を変え、すぐさま近くの子どもたちに向き直った。

 

「シャラ。皆を連れて森へ行け」

 

「急ぎなさい。今すぐだ」

 

「父さん?」

 

 子どもたちが戸惑う。

 

「理由はいい。走れ」

 

 村長は低く、しかし強く言い切った。

 

 その声音に、子どもたちはただ事ではないと悟る。

 

 シャラは一瞬だけ村を振り返り、歯を食いしばって頷いた。

 

「……行くぞ!」

 

 子どもたちは散るように森へ駆けていく。

 

 その背を見届けてから、村長は深く息を吸い、振り返った。

 

 ——すでに、オルテ帝国の兵士たちが村へ踏み込んでいた。

 

 先頭に立つのは、指揮官アラム。

 

 無機質な鎧と、感情の読めぬ目。

 

 村の空気が、一瞬で凍りついた。

 

 村長は前へ進み出る。

 

 胸の奥に不安を抱えながらも、必死に穏やかな表情を作った。

 

「……これはアラム様。何用で来られたのでしょうか」

 

 村長の頭に浮かんだのは、税のことくらいだった。

 

 だが、まだ納期ではない。

 

 アラムは薄く笑った。

 

 その笑みには、温度がない。

 

「村長。なぜ来たと思う?」

 

「……はて。思い当たる節は……税の納期は、まだ先のはずですが」

 

 アラムの表情は変わらない。

 

「思い出せぬなら、思い出させてやろう」

 

 彼は背後を振り返り、短く命じた。

 

「おい」

 

 一人の兵士が前へ出る。

 

 次の瞬間——老人の胸に、槍が突き立てられた。

 

「——っ!」

 

 老人は声を上げることもできず、血を吐いて崩れ落ちた。

 

 その瞳には、何が起きたのか理解できないままの光が残っていた

「……まだ、思い出さぬか?」

 

 アラムは冷ややかに村長を見下ろす。

 

「な、何をするのですか!!」

 

「何を、だ?」

 

「税の支払いですね……! 今すぐ、今すぐ納めます!」

 

「遅い」

 

 アラムは振り返りもせず命じた。

 

「おい。もう二人、殺れ」

 

 兵士たちは躊躇なく動き、村民が次々と地に伏した。

 

 悲鳴と血の匂いが、村を満たしていく。

 

 アラムは周囲を見回し、ふと問いかけた。

 

「……子どもは?」

 

「思い出しました……! 思い出しました、アラム様!」

 

 村長は涙を流しながら叫ぶ。

 

「遅い」

 

 アラムの声は冷たい。

 

「後、五人ほど始末せよ」

 

 村長は膝をつき、地面に額を擦りつけた。

 

「どうか……村の子どもが、森に入り……ドリフターズを助けたのです」

 

「子どものしたことです。どうか、慈悲を……!」

 

「エルフが森に入ること」

 

 アラムは淡々と数える。

 

「弓を作ること。ドリフターズに関わること」

 

「——その全てが、大罪だ」

 

「子どもがしたことです……どうか……!」

 

「子どもだから許せ、と?」

 

 アラムは嘲るように笑った。

 

「本当に、厚かましいな。エルフは」

 

 兵士たちは命令通り、村民を殺し続ける。

 

 その時——

 

「ふざけるな!!」

 怒号が響いた。

 

 森へ逃げたはずの村長の息子、シャラが前へ飛び出す。

 

 「森に入らなければ薪も手に入らない!

 木の実も採れない!

 農業を強制され、女たちは連れて行かれる!

 それで生きろと言うのか!

 俺たちエルフに、死ねと言うのか!!」

 

「そうだ」

 

 アラムは即答した。

 

「恨むなら、戦に負けた親や兄を恨め」

 

「貴様ら亜人種は、生きていてはならん」

 

 次の瞬間、彼の手がわずかに動いた。

 村長は、その場で命を奪われた。

 アラムは、まるで獲物を選ぶように視線を巡らせる。

 

「さて……半分までは殺していいと言われている」

 

「どこまでやろうか」

 

 村は、完全な恐怖に包まれた。

 

「やめろ!! やるなら俺をやれ!!」

 

 シャラが叫ぶ。

 

 アラムは薄く笑う。

 

「お前はまだだ」

 

「若い身体だ。これから帝国のために、農奴として働け」

 

 そして、残酷な言葉を続けた。

 

「だが、弟たちは駄目だ」

 

「張本人だからな。今頃、我が部下に追われ……殺されているだろう」

 

 村は絶望に沈んだ。

 

 救いはない。逃げ場もない。

 

 ——だが、それでも。

 エルフたちは、胸の奥に、かすかな希望を抱いていた。

 この地獄を断ち切る“何者か”が、現れるのではないかという——

 そんな、祈りにも似た期待を。

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