ドリフターズに迷い込むもの リメイク   作:四国の探索人

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第9話 オッパイーヌ捕獲

 

村を離れて数時間後――

 

 村を離れてから数時間。夜が明け始める頃、信長たち四人は再びエルフの村へ向かっていた。

 

 朝靄の残る森は静かで、昨夜の騒ぎが嘘のようだった。

 

 そんな中、一番疲れを隠せていないのはユウスケだった。慣れない異世界生活に加え、ほとんど休まず歩き続けているのだから無理もない。

 

「一度村を離れる必要があったんですか……眠い。」

 

 欠伸を噛み殺しながらぼやくユウスケに、信長は振り返ることなく答えた。

 

「必要だ。」

 

 短く言い切ると、そのまま続ける。

 

「昨日のうちに村人を従わせることも出来た。」

 

「だが、それじゃ奴らは"俺達に従った"ことになる。」

 

 人差し指を立て、信長はゆっくりと言葉を重ねた。

 

「奴ら自身に考えさせ、自分達で決めさせる。」

 

「そうすりゃ俺達は支配者じゃねぇ。」

 

「自分達で立ち上がった奴らを助ける英雄になる。」

 

 ユウスケは思わず感心した。

 

「そこまで考えてたんですか……。」

 

 信長は肩を竦め、小さく笑う。

 

「戦なんざ、人の心をどう動かすかよ。」

 

 その言葉に、豊久も腕を組みながら頷いた。

 

「なるほどの。」

 

 四人が歩き続ける中、不意に与一が足を止めた。

 

 普段と変わらぬ穏やかな表情だったが、その目だけは森の一点を見据えている。

 

「……見られてませんか。」

 

 静かな一言に、一同の空気が変わる。

 

「村人ですか?」

 

「いえ。」

 

 与一は視線だけを草むらへ向けた。

 

「あそこの草むらです。」

 

「向こうは、まだこちらに気付かれているとは思っていません。あまりジロジロ見ないように。」

 

 言われるまま、一行は何気ない様子を装いながら視線だけを動かす。

 

 草木の隙間で、一瞬だけ何かが光った。

 

 だが、人影までは見えない。

 

「……光ったの。」

 

 豊久が呟く。

 

「何の光だ?」

 

 信長も目を細める。

 

 ユウスケは考え込むように口を開いた。

 

「スナイパー……いや、ないか。」

 

 信長が首を傾げる。

 

「なんじゃ、それ。」

 

「遠くから一人だけを狙って撃ち殺す専門の兵士です。望遠鏡を銃に付けて、何百メートルも先から狙撃するんですよ。」

 

 信長は感心したように頷く。

 

「俺の足撃ち抜いた糞坊主の進化系か。」

 

 ユウスケは苦笑した。

 

「でも、この世界はまだ剣と槍が主流の中世みたいな世界ですし……考えすぎですね。」

 

 与一は静かに弓へ手を添える。

 

「何であれ、こちらを見ているのは確かです。」

 

 その瞬間だった。

 

「撃たれる前に斬る!」

 

 豊久だけが一直線に草むらへ飛び込んでいく。

 

「お、おい!」

 

「豊久!」

 

 止める間もなく、草を掻き分ける音だけが森へ響いた。

 

 ガサガサッ――。

 

 数秒後。

 

「離せぇぇ!」

 

 甲高い悲鳴と共に豊久が戻ってくる。

 

 その片手には、一人の少女がぶら下げられていた。

 

「なんか……此奴がおった。」

 

 少女は豊久の腕の中でもがきながら抗議する。

 

「放してくださいよ! 何もしてないじゃないですか!」

 

 ユウスケは思わず目を丸くした。

 

「女の人?」

 

 与一は少女を観察し、小さく首を振る。

 

「エルフ……ではありませんね。耳の形が違います。」

 

 信長は少女には目もくれず、手に持っていた双眼鏡を取り上げた。

 

「あっ!」

 

 少女が慌てて手を伸ばす。

 

「壊すなよ! お師匠様から預かってる大事な物なんだから!」

 

「捕虜がギャーギャー五月蝿いの。」

 

 豊久は呆れたように少女を軽く揺する。

 

「少し黙っとれ。」

 

 信長は双眼鏡を覗き込み、興味深そうに頷いた。

 

「儂の時代の南蛮製より、ずっと進んどるな。」

 

 そう言ってユウスケへ放る。

 

 ユウスケは受け取ると、刻印を確認した。

 

「双眼鏡には詳しくないですけど……一九〇〇年代前半くらいでしょうか。私の時代から百年くらい前のヨーロッパ製だと思います。」

 

 信長は改めて少女を見る。

 

 制服も帽子も、この世界の人間には見えない。

 

「珍妙な格好もしとる。」

 

「お前も元の世界の人間か?」

 

 少女は胸を張って言い返した。

 

「お前じゃない! オルミーヌだ!」

 

「それに元の世界じゃなくて、こっちの世界出身!」

 

「あと、この珍妙な格好は十月機関の制服だ!」

 

 その様子を見ていた与一が静かに呟く。

 

「元の世界の人間ではない。」

 

「それなのに未来の双眼鏡を持ち歩き、私達を監視していた……怪しいですね。」

 

 信長は不敵な笑みを浮かべ、一歩前へ出た。

 

「さて――。」

 

 オルミーヌを見据え、ゆっくりと口を開く。

 

「お前、何者だ?」

 

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