推しがルーラーで俺がマスターとか、聖杯ふざけてんのか   作:ジャンヌ可愛いよジャンヌ

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1話とかついてるが1発ネタ。好評なら続くかも。




第1話 ──裁定者は珈琲の香りと共に

 

「サーヴァント、ルーラー。召喚に応じ参上しました。貴方が私の……マス、ター……⁉︎」

時刻は深夜。
場所はとあるマンションの前にある小さな公園。
自販機の灯りが、夜気の中でぼんやりと滲む。

「あ?……ぇ、いや、は⁉︎」

その光の中に立っていたのは、鎧を纏い旗を掲げた金髪の女性。
そして彼女の視線の先には、コンビニ帰りのコーヒーを片手にした、
どこにでもいる――はずの普通の少年。

2004年、冬木市。
第五次聖杯戦争の開幕を前にして、本来呼ばれるはずのない“裁定者”が、
有り得ざる八人目のマスターと出会ってしまった。

 

突然だが、俺――黒田華正(くろだ かしょう)は転生者だ。

特筆すべき才能もなく、平凡な人生を過ごし、運悪く交通事故であっけなく死んだ。
気がついたら知らないマンションの一室で目を覚まし、鏡に映る顔は12歳。
両親は既に他界、遠縁の親戚が後見人、貯金は十分。
つまり、物語にありがちな“設定済み転生”ってやつだ。

ただし、俺の場合はちょっと違った。
神も女神も出てこない。
何の説明もなく、ただこの街に「置かれていた」。

そして――テレビをつけて、世界の名前を知った。

『現在、冬木市では――』

_冬木。
その文字を見た瞬間、背筋が凍った。

手に取った携帯電話の画面に表示された西暦は「2000年」。
つまり、Zeroの戦いが終わった後。
あの災厄が再び始まるまで、あと数年しかない。

 

最初にやったのは“逃亡”だった。
金を鞄に詰め、駅に向かい、市外へ――

結果は惨敗だ。
透明な壁にぶつかったように倒れたり、いつの間にか自宅に戻っていたり。
タクシーに乗れば気づけば同じ交差点。
この街から出ることが、どうしてもできなかった。

何度も試みた末に悟る。
俺は“冬木という舞台”に縫い付けられている。
逃げられない。
この地で起こる災厄に、必ず関わる運命だということを。

……笑えない冗談だ。

 

俺はFateを知っていた。
第五次聖杯戦争で何が起きるのか、誰が勝ち、誰が死ぬのか。
だからこそ動けなかった。
俺はただの一般人だ。魔術も使えない。
下手に首を突っ込めば、即行で死ぬ。

間桐桜のクラスメイトにでもなって助けられないかと一瞬考えたが、即座に却下した。
あの家は地雷の坩堝だ。臓硯に目をつけられたら詰み。
遠坂も衛宮も、もれなく命の危険つき。
そして一番話が通じそうなのが言峰綺礼って時点で、この街は終わっている。

加えて、そこには“王”がいる。
黄金の鎧を纏い、人類最古にして最悪の傍観者――ギルガメッシュ。
もし奴の目に俺の“異物”としての存在が映ったら?
気まぐれで弄ばれる未来しか見えない。

見られないことを祈るしかなかった。
いや、せめて“路傍の石”として見逃してくれ。

そうして俺はマンションの一室に引きこもり、息を潜めて数年を過ごした。
――このまま何も起こらなければ、それで良かった。

 

そして今日。
バイト帰りにそのまま寝落ちし、腹が減って夜の公園に降りた。
自販機で缶コーヒーを買い、口に含む。

苦味が舌に広がった瞬間、世界が白く染まった。

空気が爆ぜ、夜の闇が光に裂かれる。
眩しさに目を細めた俺の前に――鎧と旗を携えた金髪の少女が立っていた。

「サーヴァント、ルーラー。召喚に応じ参上しました。貴方が私の……マス、ター……⁉︎」

「……は?」

理解が追いつかない。
召喚陣なんてない。魔術なんて使えない。
それなのに目の前には聖杯戦争の“裁定者”が立っている。

「……え、ジャンヌ?」

「はい! 真名はジャンヌ・ダルクです……って、どうしてルーラーの私にマスターが⁉︎
それにこの魔力……人の身でこの規模は……!」

彼女の言葉を聞きながら、左手に走る痛みに顔をしかめた。
視線を落とすと、手の甲には赤い紋様――令呪が浮かび上がっていた。

「__っはぁぁぁぁあ"あ"あ"あ"‼︎」

「っ! マスター⁉︎」

脳裏を駆け巡るのは、希望と絶望が入り混じった混線した感情。

・裁定者が召喚された。もしかしてこれ、世界が助かるフラグ?


・いや待て、ルーラーが出た時点で原作崩壊だろ⁉︎


・なんで俺なんだよ⁉︎ なんで普通に過ごしてたのに巻き込まれるんだ⁉︎

ぐちゃぐちゃな思考の中で、ひとつだけ確信できた。

――俺は、終わった。

「どぉ"う"し"て"だよ"ぉ"ぉ"ぉ"‼︎」

「落ち着いてください! お願いですから落ち着いてください、マスター⁉︎」

歓喜・絶望・諦観・困惑。
全てが混ざり合い、俺は夜空に向かって悲鳴を上げた。

それが、俺とジャンヌ・ダルクの最悪な出会いだった。

 

 

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