推しがルーラーで俺がマスターとか、聖杯ふざけてんのか   作:ジャンヌ可愛いよジャンヌ

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評価10なんてされたら書くしかないじゃないか…まあ構想はあったんで早くも2話です。3話以降は遅れると思います。1発ネタのつもりだったので。
アクセス数多すぎだろ…やっぱfateって偉大だわ。



第2話 ──裁定者と一般人

 

「それで……どうして、ルーラーの私がマスターと繋がっているんでしょうか?」

ジャンヌ・ダルクは公園のベンチに腰掛け、困惑というよりは“裁定者としての理性”を保った表情で、俺の顔を覗き込んでいた。
対する俺――黒田華正は、自販機の明かりに照らされた缶コーヒーを両手で握りしめたまま、現実逃避の真っ最中である。

「……俺が聞きたい」

「ですよね」

深夜の公園に響くのは、途切れた会話と虫の声だけ。
時折風が吹き、旗が小さくはためくたびに、現実感が増して胃が痛くなる。

 

「ルーラーである私が現世に顕現するには、聖杯が“戦争の監督者”を必要とする場合のみです。
つまり、第五次聖杯戦争の聖杯に、何らかの“異常”が生じている可能性が高いのです」

ジャンヌは淡々と告げる。
俺はうんうんと頷くしかなかった。
異常。うん。まちがいなく異常だ。
だって“裁定者”が俺なんかに従属してる時点で、もう聖杯は壊れてる。何やってんだお前。

「……マスター。確認なのですが、貴方は魔術師ではないのですよね?」

「違う。魔術の“ま”の字も知らない、ただの一般人だ」

「それにしては――」


ジャンヌが俺の左腕を見る。
そこには淡く光る令呪が三画、燃えるように輝いていた。
見ているだけで息苦しくなるような、異常な魔力の密度。

「魔力量が……人の域を遥かに超えています。聖杯との回線を確立した瞬間、ルーラーの聖杯権限の一部が……遮断されました。まるで、貴方の魔力が“上書き”したように」

「…………ご都合主義転生ってやつか」

「ご都合……?」

「あーいや、その……なんでもない」

どうやら、俺の“チート魔力”が原因で、聖杯の監督機能がバグったらしい。
理不尽極まりない。
俺のせいじゃない。多分。いや、きっと。

「つまり……貴方が存在していること自体が、第五次聖杯戦争の“歪み”なのですね」

「そんな大層なもんじゃない。ただ、静かに暮らしたかっただけなんだが……」

ジャンヌはふっと微笑んだ。
それは聖女のような、けれどどこか人間味のある笑みだった。

「では、せめて静かに暮らせるよう、私が護りましょう」

――やめてくれ。そんな真っ直ぐな目で言うな。罪悪感が死ぬほど痛い。

 

とりあえず人目に付くのを恐れ、ジャンヌを連れてマンションの自室へと戻った。ちなみに何故かジャンヌは霊体化できないらしい。なんでだろうね。

「……仕方がない。本当に仕方がないが、マスターになったことは受け入れる。仕方がないが」

「あの、そこまで仕方がないを連呼されると流石に傷付くのですが」

「なんか知らんが魔力多いらしいし、ジャンヌのステータスめっっっちゃ上がってるし、手っ取り早くあの呪われし大聖杯ぶっ壊して戦争終わらせるか」

「大聖杯を壊す⁉というか呪われ…⁉」

「……いやダメじゃん。そうするとジャンヌ消えるじゃん。残った厄ネタどうすんねん」

「ちょっと待ってください!先ほど聞き捨てならないことが!」

「ああでも魔力多いなら維持はできるか?でも壊すにはピュセらないといけないし……ジャンヌの令呪使ってセイバーにぶっぱさせるのが無難か…?」

「どうして当然のように私の第2宝具を把握してるんですか⁉それに、いくらマスターとはいえルーラー特権の令呪を勝手に使うのは_」

「駄目だ、そうするとギルガメッシュが出張ってきやがる。あいつなんなんだよ受肉とか面倒くさいことしやがって召喚した奴誰だよふざけんなよ時臣マジで」

「英雄王が受肉⁉それは本当なんですか⁉それと本当にあなたは魔術師じゃないんですか⁉」

 

 

a few moments later

 

 

「落ち着きましたかマスター?」

「はい、すんません」

両者床に正座して膝を突き合わせる。すぐそこに机と椅子があるのに何故かって?気分だ。

「…まあ色々遅くなったが自己紹介から。黒田華正だ。歳は16で、数年前からこの頭のおかしい街に幽閉されてる」

「幽閉…?いえ、改めまして私の真名はジャンヌ・ダルク。この度ルーラーのサーヴァントとして現界しました。今はあなたのサーヴァントです。……何故か」

「何故なのか」

「…これについては後ほど考えましょう。それより、あなたが先ほど口にしていたことについて、いくつか確認したいのですが」

「ああ…それなぁ…」

どうしたものか。動転して色々と口走った記憶はあるが、あの膨大なシナリオといいルートといい、俺の語彙力でどこまで正確に伝えられるか。何かしら伝え忘れてのミス一つでBad End直行するような世界だ。そもそも俺も細かいところまで覚えてるか怪しいし。つーかBad End多すぎだろ。あー面倒くせぇ」

「あの、漏れてます色々と」

「よし、手っ取り早く令呪使おう。告げる…」

「シームレスに令呪使われた⁉︎待ってください!」

「俺の記憶を見ろジャンヌ。fate関係で」

俺の手の甲の赤い紋様が淡く輝き、世界が裏返るような感覚に包まれた。

* * *

無数の光景が脳裏に流れ込む。ああ、これ俺も見る感じ?まあおさらいしたかったからありがたいけど。
記憶の奔流――現世での十二年、そして前世での二十数年。

「っ……これは……!」

ジャンヌが小さく息を呑む。
彼女の瞳が、俺の“前世”を覗いている。


スマホの画面。
青いアプリのアイコン。
召喚陣。
そして――一人の金髪の少女が微笑む、ゲームの画面。

『ジャンヌ・ダルク 絆Lv.10』
『聖杯を捧げますか?』
『はい』

……やめてくれ、見ないで。そこは地雷だ。

「こ、これは……!? 聖杯を……幾つも……!」

「いや違う違う違う! あれはゲームだから! 本物じゃないから!」

「……“Fate/Grand Order”……なるほど、貴方の前世はこの世界の“物語”を知っていた……
そして……私に、幾度も聖杯を捧げていたのですね……」

ジャンヌの頬が、ほんのり赤く染まる。
なぜだ。なぜ赤くなる。やめてくれ。俺が恥ずかしい。

「え、えっと、その……尊敬の意味で、だな? 信仰とかそういうのじゃなくて……」

「ふふ。――ありがとうございます、マスター」

心臓が跳ねた。
笑顔が、眩しい。
俺の前世の“推し”が、今目の前で微笑んでいる。
これを現実逃避せずに受け止めろという方が無理だ。

 

記憶共有が終わり、光が静まる。
令呪は一画、穏やかに消えていた。

「理解しました。貴方の置かれた状況、そしてこの世界の“原典”。
……これは、極めて異常です。
第五次聖杯戦争は、もはや“戦争”ではありません。召喚の基準すら崩壊し、もはや聖杯は正常に機能しないでしょう。そして、それを望む者たちがいる。破壊だけで済むかもわかりません」

「……つまり、思ってたよりめちゃくちゃってことか」

「簡潔に言えば、はい」

元からめちゃくちゃなのに、更にめちゃくちゃになっちゃった。もう帰りたい。ここ家だったわ。

「…それにしても、令呪まで使って良かったのですか?いえ、あれほどの内容ですから、口頭で済ませるのは難しいとは思いますが…」

令呪。
本来は命令、転移、魔力ブーストのために使う“命の保険”みたいなもんだ。
だが――俺の場合、魔力量がバグってる。らしい。
戦闘ブーストは必要ないし、離れて戦うなんてことするわけないから転移もいらない。
何より、ジャンヌに命令なんてそんな恐れ多いことできるわけがないんだよなあ。

……正直えっちなことしか浮かばない。魔力量が貧弱なら合法的に説き伏せてことに及んだ可能性もあったかもしれないが。まあ聖女だしないだろうな。

というか魔力量が多いせいで巻き込まれたわけだし。誰だよ俺を転生させたやつ。型月だと本当に転生なのかすら怪しいし。神か?根源か?聖杯か?宝石ジジイか?くそ、どいつもやりかねねぇ…

「マスター?」

「なんでもない。令呪は必要経費だ。問題ない」

割り切るしかない、か。記憶を見せた以上、ジャンヌはこの街の厄ネタの解決に尽力するだろう。そして俺を護ることも同時にするため、必ず同行を要求する。

 

ジャンヌはしばし黙り込んだ後、旗の先を軽く床に突き、俺をまっすぐ見つめた。
その視線は、先ほどまでの柔らかなものではなく、聖女が“裁定者”として人を見据える時のそれだった。

「……貴方の記憶を確認したことで、今の第五次聖杯戦争がどれほど危険か理解できました。そして貴方が、ただ“巻き込まれただけ”であることも」

その声は静かで、けれど力があった。
俺は無意識に背筋を伸ばす。

「私はルーラーとしての本来の役目を果たせません。聖杯の監督権限は貴方の魔力に上書きされ、私はこの街で“ただのサーヴァント”として現界しているに過ぎません」

「……いや、悪い、ほんと。俺だってこんなの望んでない」

「ですが、護ると決めた以上、私は貴方の盾となり、同時にこの戦争の異常を正します」

ジャンヌは穏やかに微笑む。その笑みは、聖女というよりは、同じ“渦中に放り込まれた”仲間のものだった。
俺は深く息を吐く。

「……わかった。俺も出来る限りのことはする。ただ俺は戦えないし、ジャンヌに命令もしない。俺を護ってくれ、ジャンヌ」

「……ええ、マスター。必ず」

ジャンヌが静かに頷く。
前世で画面越しに見ていた“推し”が、今は現実で俺を護ると言っている。
この理不尽を、笑って受け入れるしかないのかもしれない。

「……それにしても、前世の貴方に聖杯を何度も捧げられていたと知った時は、さすがに驚きました」

ジャンヌがふっと口元を押さえて笑う。
俺は顔から火が出そうになる。

「いや、あれはゲームだから! あくまで応援だから!」

「ふふ……応援、ですか。そういうことにしておきます」

からかわれている。完全にからかわれている。
だが、どこか肩の荷が下りた気もした。

ジャンヌは立ち上がり、カーテンの隙間から夜の街を見下ろした。
その表情には、聖女の微笑みと同時に“戦場を見据える者”の鋭さが宿っている。

「まずは、情報を集めましょう。この“歪んだ聖杯戦争”がどこまで進んでいるのか、どのサーヴァントが現界しているのか。ギルガメッシュの件も、確かめなければ」

「……だな」

俺は冷めたコーヒーを一口飲む。
現実感のない味が口に広がる。
だが、その味が「夢ではない」ということを思い知らせる。

――推しの聖女が、今ここにいる。
――そしてこの戦争は、最悪の“無法地帯”だ。

頭の中で、選択肢がいくつも浮かんでは消えていく。
けれどその中心には、ただひとつの決意だけが残っていた。

「……よし。やるか」

小さく呟いた俺に、ジャンヌが振り返って頷いた。

……やっぱ可愛いんだよなあ…。

 

ちなみに、旗を突いた床はおもくそ凹んだ。穴が開かなくて良かった。ジャンヌが土下座までしかけたのは言うまでもない。

 





ルーラー  ジャンヌ・ダルク
筋力 A+
耐久 A+
敏捷 EX
魔力 EX
幸運 A
宝具 A+++
『対魔力(EX+)』 元々EXだったのが更に強化された。もはや魔術は何も効かない。無論マスターは普通に喰らうので死ぬ。
『神明裁決』 ちゃんとある。普通にズル。
『真名看破』は失われたが、原作知識を入手したジャンヌにとっては無意味。むしろプラスまである。


マスター 黒田華正(くろだ かしょう)
よくある転生者が色々言いながらも原作キャラに関わっていくのに対して、本当に何もせず引きこもってたのに巻き込まれた可哀想なやつ。
魔力量が桁違いに多いがために、聖杯の正常だった僅かな部分にルーラーの管理を押し付けられた。
魔術は全く使えない。常時魔力を垂れ流してるので、魔術師やサーヴァントに会ったら即バレる。これまで運が良かったね!(ふざけんな)


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