推しがルーラーで俺がマスターとか、聖杯ふざけてんのか   作:ジャンヌ可愛いよジャンヌ

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なんかやっぱり評価高くない…?何故だ?いや、ありがとうございます。
再度忠告。この話は大半がコメディです。作者は勢いで書いてます。




第4話 ──燃えた間桐邸、聖女の祈りと共に

 

翌朝。
またしても舌がピリつく“聖属性モーニング”を完食したところで、俺たちは作戦会議を始めた。

昨夜の痴態?そんなものは知らん。

「問題解決に動くにあたって、優先順位を決めようと思う」

「優先順位、ですか?」

テーブルの上に並ぶ紙には、俺の頭の中の地獄絵図が箇条書きされている。

・大聖杯(汚染済み)

・虫の翁


・黒桜


・ワカメ


・キャスターのお人形遊び


・エセ神父


・慢心王


・ゲイボルカー


・うっか凛


・衛宮=アーチャー


・人の心がわからない王


その他etc

「いや多すぎやろがい」

「こう並べられると、冬木という街の業が深すぎますね……」

ジャンヌが真顔で十字を切った。

そりゃそうだ。主でも匙投げるようなラインナップだぞ。

「で、解決優先度と順位を決めると——」


・大聖杯(汚染済み) 優先:1番目 順位:最後

「……おかしい。一番どうにかしたいのが最後になった」

「まあ……壊せば、サーヴァントは消えますから」

「でも魔術師も慢心王も残るんだろ? どう転んでも地獄じゃねえか」


「主は試練を与えます」

「限度ってもんがあるだろ」

 

* * *

 

昼下がり。
人通りの少ない住宅街を、俺とジャンヌは妙に場違いな緊張感を背負って歩いていた。

目的地は間桐邸。優先順位が高いかつ、早めに手を出しても他所に影響が少ない故に、早々に片をつける。

先日真昼から仕掛ける奴はいないと言ったな。アレは嘘だ。

「……昼間に襲撃とは、ルール的に少々問題では?」


「夜は虫が多い。あと怖い」

「理由が情けないです」

「道徳心の無い奴に倫理は適応されない」

「その発言が道徳心に欠けます」

こうは言っているが、ジャンヌもこの方針には納得している。正直、やることが多すぎて悠長なことは言ってられないのだ。

とは言え、一般人である俺の思考回路は少々過激すぎると苦言を呈されてしまったが。

それでも俺たちは門の前に立った。
間桐邸。見るからに不衛生なオーラを放つ邸宅。
ジャンヌが静かに眉をひそめる。

「ここが……呪詛の巣窟、ですね」

「見ただけで分かるのすげぇな……俺なんて豪華だけどちょっと怖いくらいしか思わねぇのに」

「邪悪の濃度が高すぎます。呼吸するだけで魂が錆びそうです」


「やっぱ帰らね?」


「帰りません!」

仕方なく俺はリュックを下ろし、装備を並べた。

・ライター


・オイルスプレー


・マッチ

・チャッカマン

・灯油


・ラジコン

放火魔かな?

ジャンヌがじと目になる。

「……その荷物、戦場の少年兵でも持ってませんよ」

「男のロマンだ」


「違法のロマンです!」

額を押さえるジャンヌをよそに、俺は笑った。
理屈でどうにかなる相手じゃない。だったら物理でいくしかない。


臓硯が虫を撒こうが呪詛を飛ばそうが、全部まとめて焼却処分だ。通じるか知らんが。

「よし、ラジコン、出撃」

俺はラジコンカーに灯油とチャッカマンを組み合わせた即席火炎車をセットし、門の隙間から走らせた。
柵越しに、屋敷の玄関に滑り込むのを確認。

「……主よ、どうかご容赦を」

「いやホントに」

カチッ。


──次の瞬間、爆音。


ラジコン火炎車は盛大に玄関を破壊し、衝撃で門も吹き飛んだ。

……もうちょい穏やかな火の広がりを想定してたんだが。

後方へ落ちた門の残骸がカラカラと音を立てるのを二人して見つめ、暫しの現実逃避。

「……よし!突撃!」

「了解しました!」

まるで予定通りと言わんばかりに、二人で邸宅へと押し入る。手間をかければ通報されるので、時間との勝負だ。

焼け焦げた玄関周囲。焦げ臭さに混ざる腐臭。

そして奥から騒めくギチギチとした羽音。

「うわぁ…きたあぁ」

壁という壁から虫の群れ。床が蠢いてる。地獄か。

「真っ昼間から手荒な訪問じゃの…」

そして前方に集まる虫から形成されるのは、杖をついた醜悪な老人__間桐臓硯。

「マスターとサーヴァントが揃って何用じゃ?孫に入用なら、生憎昼間故高校じゃが__」

そう言いながら、臓硯の背後から展開される無数の虫たち。完全にR18である。

「お主のような逸材を見逃す道理もなかろうて」

でしょうね。魔術師に会ったらこうなるとは思っていた。というかよく考えたら初めて会う魔術師がこいつかよ。嫌すぎる。

とは言え、見逃す道理が云々はこちらも同じ。何よりもっかい臓硯とことを構えるのは勘弁願いたい。人生で一回もいらんわこんな経験。

「マスター、下がって!」

ジャンヌが前に出て、黄金の光をまといながら手をかざす。いや何それ初めて見た。
臓硯の放った虫と呪詛が彼女の前で弾ける──いや、触れることすらできない。

「……効かぬ、だと?」

「私の対魔力はEX+。あらゆる魔術は私の前には無力です」

流石にチートすぎる。まあ元からEXなのでなんとも言えんが。まともな魔術師ならどうしようもない。味方ならこれ以上頼りになることもない。

流石にこれには臓硯も怯んだようだが、即座に狙いを俺へと変える。虫の展開方法を変え、一極集中ではなく広範囲に分散し始めた。いくらなんでも多すぎる。これ屋敷の中の虫全部投入してんじゃねえか?それだけ俺の魔力に価値があるということだろうか。一ミリも嬉しくない。

「げえぇぇぇ⁉︎キモいキモいキモいぃぃぃ⁉︎」

ジャンヌの防御を抜けてきた虫が殺到する。流石にこれで死ぬことはないとは思いたいが、だとしてもキモいものはキモい。具体的に言うとビジュが最悪すぎる。ジャンヌもちょっと顔を顰めてるし。

反射的に手に持っていたライターを点火し、その火に向かってオイルスプレーを噴射した。即席火炎放射器になるみたいなことを何処かで見た気がしてなんとなく持ってきた。

結果__火炎放射どころではない爆炎が前方一帯を埋め尽くした。虫は燃えた。俺も燃えた。

「あっっっっっっつぁぁぁぁああああ!?」

「マスター⁉︎漏れてる漏れてます魔力が!具体的に言うと火に混ざってます!」

「いや使い方知らねぇよぉ⁉︎ちょ、待っってこれどうやって止めんのおぉぉおお⁉︎」

なんか俺の意思とは反して何かが身体から火に向かって流れていってる気がする。多分。わかんないけど。なんか虫追尾してる気がするし。聖杯の魔力が臓硯の魔力を狙ってるのかもしれない。同族嫌悪かな?

もはや間桐邸は言い訳のしようもないほどに火の海と化した。慎二と桜の私物があったら申し訳ないが、臓硯滅ぼすから許せ。

「おのれ小僧ぉ…もはや餌では済まさぬ!」

「おおおお⁉︎あっぶね!」

激昂した臓硯の直々に仕向けた虫が襲い掛かり、間一髪で転がるように避ける。

そこで、開きっぱなしのリュックからペットボトルの水が零れ落ちた。昨日スーパーで買ったやつだ。突入前に少し飲んだ際、案の定舌が痺れた飲みかけである。

つまるところ、昨日ジャンヌが手に取った際に聖属性の魔力が込められた一品である。

ところで、皆さんは火にかけた油に水をかけたことはあるだろうか?まああったらあなたは無事ではないと思うのだが。

始めに撒いた灯油と先ほど噴射したオイルスプレー。そこになんの悪戯か、ジャンヌの聖属性が込められたペットボトルの水が落ちた。

結果何が起こるか___大爆発である。

“ドカーン‼︎”と形容するのも生優しい衝撃が周囲を襲った。

「「ぎゃあああああああ⁉︎⁉︎」」

「っ!マスター⁉︎」

俺と臓硯の中間地点で起こった大爆発により、当然虫は消滅。火でボロボロの屋敷は粉微塵に吹き飛んだ。

「大丈夫ですか、マスター?」

「な、なんとか。助かったよジャンヌ」

ジャンヌが敏捷EXで咄嗟に連れ出してくれなかったら確実に即死だった。ちょっと火傷したが許容範囲。

崩れた間桐邸から現れた臓硯は、身体を形成するのもやっとな様子だった。

怨霊染みた奴にとって、ジャンヌの聖の力は天敵らしい。そういや言峰の洗礼詠唱も食らってたな。

それに、ジャンヌと炎は逸話上、切っても切れない関係にある。その辺りも、臓硯を苦しめる要因なのかもしれない。

「有り得ぬ……貴様ら、何者じゃ…」

「私は第五次聖杯戦争のルーラー、ジャンヌ・ダルク。今宵、裁定者の名の下にあなたを滅する者です」

「まだ昼間だぞ」

「……間違えました」

ちょっとしたお茶目を挟みつつ、ジャンヌは前へ一歩踏み出した。

半分以上事故だったが、もはや勝敗は決した。

「……聖女よ。儂を裁くか」

「はい。あなたは既に人の枠組みにはない」

ジャンヌは静かに歩み出る。炎に照らされ、白金の髪が揺れる。
その瞳は炎を宿したまま、祈るように臓硯を見据えた。

 

「汝、主の御名を穢し、人の形を捨てし者よ

我は主の御旗のもとに在り

炎は贖罪、光は浄化──

その魂、天に還らず地に留まるなら

我が祈りと共に灰へと還れ

《Dominus, ignis meus.(主よ、我が火を導き給え)》」

 

自身を聖女などではないと卑下する彼女だが、両手を組み、祈りを捧げる彼女は紛れもなく聖女であった。

詠唱後、聖光を帯びた炎が臓硯を包み、灰も残さず消滅する。

 

静寂。

燃え崩れる間桐邸を背に、こちらを見たジャンヌは微笑んだ。

「終わりました、マスター」

「お疲れジャンヌ、それじゃあずらかるぞ!」

「え、ちょ、ちょっと待ってください!」

最低限の労いだけして、俺はその場を脱兎のごとく離れた。なぜならサイレンの音が遠くで聞こえるから。

ジャンヌも慌ててついてくる。燃え盛る炎の向こうで、崩れ落ちた梁が爆ぜる音がした。

赤黒い煙が空へと立ち上り、昼下がりの青空を覆っていく。

「……この光景、なんだか胸がざわつきますね」

「ま、まあ燃やしたの俺らだし……」

「いいえ、そうではなく。……あの日の記憶を思い出しただけです」

彼女の表情は、炎を映してどこか悲しげだった。

火刑台の記憶。燃やされる側から燃やす側へ。

彼女にとって炎とは特別な意味を持つのだ。

けれど、彼女はすぐに顔を上げた。

「……行きましょう、マスター。まだ、終わっていません」

「…そうだな」

そう、まだ終わっていない。桜の身体に潜む最後の虫を殺すまでは。

まあここまで来たら消化試合みたいなものだが。

そんなこんなで、高校帰りで制服姿の間桐桜が通りの向こうから歩いてくるのを目にした俺たちは、熟練の人攫いのごとく彼女を路地裏へと引き摺り込んだ。

ライダーはいないようだ。今は慎二に付いているのだろう。こちらとしては都合がいい。

「な、何ですかあなた達⁉︎」

「ジャンヌ、頼む」

「はい」

ジャンヌの手から淡い光が溢れ、桜の身体を包んだ。説明も何もないが、今は時間が惜しい。

桜が苦しそうな顔をしたと思うと、胸奥から黒い影が這い出す。

それは臓硯の断末魔を上げ、灰となって霧散した。

光が収まる頃には、桜の呼吸も穏やかになっていた。聖女パワー半端ねぇっす。

さて、桜の体内の虫は処理したし、これで確実に臓硯は死んだはず。後は桜の中にある小聖杯の欠片をどうするかだが……

 

その瞬間、光が弾けた。

桜の胸から抜け出した光の粒が、ふわりと宙に舞う。

それは俺の方に向かって真っ直ぐ飛んで来た。

「ん?え、なになになになに⁉︎」

反応する間も無く、光が俺の身体へと吸い込まれていった。

「ちょ、嘘でしょ?やめてマジで何勝手なことしてんだよお前ふざけんなよほんとこれ以上俺に何させる気だお前」

「マスター!大丈夫ですか⁉︎」

最悪だよマジで。どうすんのこれでイリヤじゃなくて俺に敗退したサーヴァント入ってきちゃったら。俺聖杯になんて絶対なりたくないんだけど。

「っ、これは…!小聖杯がマスターの中に取り込まれています。現段階では悪影響はないようですが…」

ジャンヌが焦ったようにペタペタと触診してくる。顔が近い。いい匂いする。可愛いなぁ。

俺ここ数日で現実逃避しすぎだろ。仕方がないだろ現実が苦しいんだから。

「あの、一体なにが…」

「ふぅ…とりあえず間桐桜さん。あなたはこれにて間桐臓硯から解放され、自由の身となった。代償として間桐邸に置いてあった私物は失ったが、当分は衛宮家に匿ってもらうといい」

困惑した様子の桜に最低限の説明だけして、その場を後にする。とりあえず桜にはこのままフェードアウトしてもらえると助かる。衛宮遠坂陣営にこのことがどう伝わるかわからないが、慎二の件もあるから少なくとも2.3日は稼げるだろう。

その間に他の問題を片付けなければならない。

「マスター…申し訳ありません。対処出来なかったのは私の落ち度です」

「今のは流石にどうしようもない。どうせクソ聖杯のせいだろうし、下手に触ったらジャンヌまで取り込まれてた可能性もある」

このまま何事もなくただ俺の魔力で希釈かなんかされてくれればいいんだが。…そうもいかないんだろうなぁどうせ。

「…予定変更だ。次はキャスター陣営と話をつけようと思っていたが……バーサーカー陣営__アインツベルン城に行くことにする」

餅は餅屋に、聖杯のことは聖杯に、だ。

それに、イリヤスフィールは士郎に執着してこそいるものの、それ以外なら存外話の通じる相手だ。初手のバーサーカーとの戦闘さえどうにかなれば。

ジャンヌではヘラクレスの命を削りきれないが、逆に負けることもないだろう。

 

…俺なんでこんなに頑張ってるんだろうか。

もういっそ聖杯の泥ぶち撒けてやろうか。冬木は間違いなく滅ぶだろうが、時計塔か聖堂教会辺りの誰かがなんとかするだろう。多分。実はすごい奴らいっぱいいるし。神秘の漏洩がどうこうで協力でもするだろ。

 

チラリと隣に視線を移すと、首を傾げて「どうしましたか?」なんて聞いてくる推しの子が。

まあ…致命的な何かが無いうちは、推しの望みに応えてもいいのかもしれない。

小聖杯取り込まされたのは結構致命的な気がしないでもないが。

 

 

後日、警察の捜査が進んだ結果、見つかった証拠品たちの購入者が同一であり、その人物にアリバイが一切ないことから、放火犯の容疑者として名前が出ることになるのだが、それはしばらく後、聖杯戦争が片付いた後の話。

 

 





聖堂教会としては、魔術の使用形跡は残っておらず、単純に事故現場に残った道具によるものでしかないため、動く理由はない。爪が甘いやつの自業自得である。愉悦。
そんなのってないよ。あんまりだよ。
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