推しがルーラーで俺がマスターとか、聖杯ふざけてんのか 作:ジャンヌ可愛いよジャンヌ
なんの気なしにランキング見たら6位にあってクソびびった作者です。
アクセス数とお気に入り2倍になってて草(震)。とか言おうと思ったら気付いたら3倍になってた。
嬉しいと同時にプレッシャーが凄い…
間桐邸大火災事件の後。一度自宅に戻って休息を取り、日が沈んだ頃にアインツベルンが城を構える森へと向かった。
正直臓硯を倒した以上、早々に衛宮遠坂陣営に接触して協力関係を結んでも良かったのだが、そうなると必然的にイリヤスフィールとは敵対関係になってしまう。また、勢力を拡大すればキャスターに、セイバーと関わればギルガメッシュにと、とにかく「主人公補正」とやらが巻き込み事故を連れてくる。やってられない。
よって、次はキャスターあたりと話をつけ、聖杯の呪いを処理してもらう方向に舵を持っていくつもりだったのだが…
「こいつがなければなぁ…」
恨めしげに自分の胸元を見る。
問題がこの桜から受け継いだ(?)小聖杯である。原作でキャスターは小聖杯の存在に自力で気が付き、冬木教会を襲撃したという実績がある。そんな相手にこのまま話をしに行ったら間違いなく拗れる。
ジャンヌには対魔力EX+があるため、たとえキャスターが神代の魔術師だろうと純粋な戦闘ではまず負けはない。ただ問題はキャスター___メディアの持つ宝具、『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』の存在である。
これを突き立てられた場合、俺とジャンヌの契約が切られる恐れがある上、最悪ジャンヌの持つサーヴァント達への令呪まで奪われる可能性もある。そうなってはキャスターを止めることは困難になる。
そもそもの話、ちまちま街の人間から魔力を集めているキャスターにとって、俺という存在ははっきり言って餌でしかない。問答無用で倒すだけなら兎も角、話し合い目的で向かうのにこれらのことを警戒するのはとんでもなく面倒なのである。
ここら辺を踏まえてのアインツベルン城訪問だったわけなのだが…
「やっぱ帰らねえ?」
「またですか⁉︎ここまで来て⁉︎」
夜の森は流石に怖いって。なんでこんなところに衛宮や遠坂は普通に入っていけるんだよ。無理だろ一般人の感性じゃ。
「昼間の時は大丈夫だったじゃないですか」
「あれはアドレナリンが溢れていたというか…」
正直言って完全に舐めていた。ジャンヌがいればどうにかなるとたかを括っていたのもあるが、根本的に魔術師の恐ろしさを理解しきれていなかった。ノリと勢いの犯罪上等でどうにかなったが、二度としたくない。
おまけにこれから行く場所にはバーサーカーがいる。間違いなくサーヴァント戦は避けられない。
ジャンヌも流石にあのヘラクレスを相手にして、こちらにまで気を配れるとは思えない。つまりイリヤスフィールとタイマンを張る必要があるわけだ。あいつギルガメッシュに虐められた印象が強いだけでめっちゃ強いんだよなあ。
「はぁ……やだなあ」
「もう…仕方ありませんね」
ジャンヌがそう言ったかと思うと、俺の両手を包むようにして握る。あ、柔らかい。
「主よ、この魂に安らぎを。恐れを遠ざけ、光を示したまえ」
目を閉じてそう告げると手を離し、そのまま頬へと手を伸ばしてきた。
「あまり得意ではないのですが、簡単な暗示です。…あなたなら大丈夫。それに、何があっても私が必ず護ります」
……その、そう真っ直ぐ見つめられるとしんどい。
それと、身長の関係で向こうが背伸びしているのも良くない。背伸び&上目遣い&頬に両手は、青少年の精神衛生的に非常によろしくない。
こんなの推しとか関係なしに好きになってまう……
あれ、よく考えたら俺がジャンヌのこと推しなのわかってやってんだよな。これってもしかして誘っ………
これ以上はやめよう。集中出来なくなりそうだ。
* * *
「いらっしゃい、初めましてのマスターとサーヴァント。突然森でイチャつき始めたときはどうしようかと思ったけど、正面から堂々と乗り込んできたことは褒めてあげるわ」
「いちゃ…⁉︎そんなことはしてません!」
「いやあそれほどでも」
「マスター⁉︎」
「…コントなら他所でやってもらえる?」
ジャンヌ先導の元、無事に森を踏破した俺たちは、目の前の銀髪ロリっ子が拠点とする城__アインツベルン城の玄関ホールにて対面していた。
早速イラつかせてしまったが。
「はぁ、その無駄に多い魔力と高いステータス……調子に乗ってしまうのも頷けるけど」
早速バレてーら。何?魔術師には俺の魔力ってそんなに簡単にわかっちゃうくらい杜撰なの?
そんなことを考えているうちに、イリヤスフィールの背後に轟音と共にバーサーカーが降り立った。
「その程度で私のバーサーカーを倒せると思ってるのかしら」
自信満々な様子のイリヤスフィールが、階段の上からこちらを見下ろした。
そんなことより…
「なんか上から降ってきたぞ。ずっとスタンバってました的な?」
「霊体化はしてた様子がないですね。感知的にも、単純に上から降りてきただけかと」
「そこぉ!コソコソうるさい!」
暗示のおかげか、いつものノリで話してしまった。
この場合逆効果では?
折角の演出が冷静に分析されたことに、お怒りの様子である。
「コホンっ……私たちは争いに来たのではありません。私はルーラーのサーヴァント。此度の聖杯戦争の裁定者の役割を授かった者です」
「ルーラーのマスターでーす。ぶっ壊れた聖杯に代わってルーラーの魔力供給してます。一般人です」
「100歩譲ってルーラーなのは認めても、あなたが一般人なのは嘘ね」
失礼な。あんまりだろ。
…いや、自分でもよくわからなくなってきた。
「ならこうしましょう。これからそのルーラーと私のバーサーカーで闘いなさい。その間だけ、あなたの話を聞いてあげる」
「…まあ想定してたよりマシか。頼めるか?」
「はい。マスターもお気をつけて」
* * *
激突。
炎と雷が交錯するたび、空気が震えた。
バーサーカーの一撃を、ジャンヌは旗一本で受け止め、押し返す。
聖女の纏う聖光が、獣じみた咆哮を掻き消していく。
バーサーカーこっわ。ジャンヌつっよ。
初めて見たサーヴァント戦は想像より遥かに高次元で恐ろしかった。
…とか言えれば良かったんですけどね。ただの一般人に戦闘の動きが目に追えるわけないでしょ。土埃と火花しか見えねえ。
イリヤスフィールの方は、彼らの戦闘に目を見開いていた。バーサーカーと渡り合っているジャンヌに驚いているらしい。なんでわかんだよやっぱお前も怖えよ。
その隙に俺は彼女の方へと向き直る。
「じゃあ話すけど、何からがいいかな…」
「随分と悠長なのね。自分のサーヴァントが心配じゃないのかしら」
「それはあんたもだろ?何故なら自分のサーヴァントが最強だと信じているから。俺も同じさ」
「…ふーん、そう」
ちょっと見直した、と言わんばかりの表情を見て、初手の感触は良好だと感じる。
では早速本題。
「大聖杯のことなんだけど、実は現在進行形で呪われててさ。最終的にはそれをどうにかしたいんだよね」
「…は?」
あれ、いきなり飛ばしすぎたか。なら一段階下げて、
「それと、間桐が所有してた小聖杯の欠片が俺の中に入っちゃってさ、どうにかして取り出せないかなって」
「はあ⁉」
……これでも衝撃らしい。なんかもう俺の中で厄ネタに対する認識レベルが壊れ始めているのかもしれない。
顔を押さえて思案する様子のイリヤスフィールが、面倒臭そうに手招きする。
「…とりあえず、見てあげるからちょっとこっち来なさい。ああ、遠いから少し屈んで」
「お、あざす」
距離を詰め、至近距離に立つ。要求通りに膝を曲げ、ちょうど目が合う高さまで腰を落とす。
そうして、イリヤスフィールの赤い目が妖しく光って___
反射的に手元の懐中電灯を向けた。暗い森を歩くのに使ってた、海外産の無駄に明るく光る奴だ。
「っ!きゃあ!」
「あっっっっぶね⁉油断したあ!」
直接目に光を向けられ、イリヤスフィールが思わず目を閉じる。同時に解放された身体を動かし、距離を取った。
__こいつっ、魅了(チャーム)使いやがった!
すんなり優しくしてくれたかと思えばこの仕打ち。可愛くてもやっぱり魔術師らしい。好感度が2下がった。
「魔術師っていつもそうですよね!人のことなんだと思ってるんですか⁉」
「ッく__乙女の瞳に強烈な光を当てといて何よ!それにあなた、それをどこで手に入れたの⁉︎それはアインツベルンのものよ⁉︎」
「いやよくあの一瞬で解析出来たな⁉つーか俺もいらねえよ!出来れば早々に返したいんだけど⁉︎」
そっちから手を出してきた癖に怒りやがった。その辺は見た目通り子供らしいというかなんと言うか。
まあ、やってることは一ミリも可愛くないんだけどね。髪を3本ほど抜いたかと思えば、アニメで使ってた小鳥の使い魔、天使の詩(エンゲルリート)を出してきた。凛相手にも2体だったのに3体とか殺意高すぎぃ。
「おい待てい!一般人相手にそれは過剰だろ!」
「うっさい!日本人はみんなロリコンなのよ喰らえ変態!」
「日本人とロリコン今関係ねえ__っうわ!」
身体を横にずらすと、先ほどまでいた場所にデーゲンが突き刺さった。せめて光弾の方にしてくれないかしら。痛そうだ。
「ジャーンヌ!ヘルプ!ロリっ子に襲われるぅ⁉」
「誰がロリっ子よ!こう見えて18歳のレディなんだから!」
「お前さっき俺のことロリコン呼ばわりしといてそれか⁉俺の持論だがなぁ!癇癪起こすような奴はたとえ歳が30超えてようがガキだ!」
「なぁんですってぇ⁉」
* * *
「落ち着きましたかお二人とも」
「■■■■、■■■■■?」
「…私悪くないもん」
「いや全面的にお前が悪いだろ」
「マスター?」
「■■■■」
「「ごめんなさい」」
二人並んで正座する俺たち。目の前にはそれぞれのサーヴァントたち。
イリヤスフィールが落ち着きを取り戻したのは夜が更けたころである。途中からジャンヌとバーサーカーが介入し、各々のマスターを守るはめになった。
イリヤスフィールの使い魔による攻撃と、俺が反撃に投げたその辺の瓦礫の破片(何故か思いっきり魔力が籠った)のせいで玄関ホールはボロボロである。
「……とりあえず、あなたたちがルーラー陣営で、この聖杯戦争の歪みをどうにかしようとしてるのは理解したわ。もうマキリを襲撃してたとは思わなかったけど」
「理解してくれたようで助かるよ。あと間桐については後に回すと余計なことしかねないから仕方なくな」
「……それって、2番目に来た私たちについてもそうなのかしら?」
「いや、それは別。お前さんが小聖杯だからこれについて確認したかった」
そう言って胸元を指さす俺。色々あったが、改めてイリヤスフィールが見てくれることになった。
「…駄目ね、完全に取り込まれてるわ。けど、機能を失ってる様子もない。良かったわね」
「マジかよなんも嬉しくねえ」
ほんのちょっとは期待してたんだがなあ。ご丁寧に呪い以外はそのままにしやがって。
イリヤスフィールは俺の胸から手を離すと、やれやれと首を振った。
「悪いけど、こうなったら取り出す方法は知らないわ。それと、今となってはあなたの方が聖杯と密接な関係にある。サーヴァントの受け皿になるのはそっちでしょうね」
「嘘やん」
「……振り出しに戻りましたね」
解決方法を聞きに来たのに問題が判明しただけだった。さっきまでの弾幕ごっこは何だったんだ。無駄に疲れただけかよ。
いや、それより問題なのは、サーヴァントが敗退したら俺に集まるということ。それはつまり、半直接的に大聖杯に取り込まれるということである。試験管介さずにビーカーに直接試料ぶち込むようなものだ。…例え合ってない気がするがまあいい。
「……おいどうすんだこれ。俺の目標事項にサーヴァント全員生存が追加されたんだが。難易度爆上がりじゃねえか」
「…どうしましょうね」
「まあ…私としても聖杯の器の役目を取られると困るから、解決の目処が立つまでは他のサーヴァントを倒さないでいてあげるわ。感謝してね」
「ありがとうございます!イリヤスフィール様!」
「そ、そんなに感謝されると気持ち悪いんだけど……イリヤでいいわよ、長いし」
深々と頭を下げる姿に引きながらも、イリヤスフィール__イリヤは俺を認めてくれたようだった。
その後、疲れ切った俺たちはそのままアインツベルン城で数時間世話になった。
ジャンヌの膝枕はイリヤに奪われた。ヘラクレス?膝の位置高すぎて首おかしくなるわ。
「そういやお前ら、前回アーチャーのギルガメッシュに狙われてるから気をつけろよ」
「は?」
「エルキドゥされると死ぬから。じゃあな」
「ちょ」
ヘラクレスに首根っこ掴まれて戻された。もげるかと思った。