推しがルーラーで俺がマスターとか、聖杯ふざけてんのか 作:ジャンヌ可愛いよジャンヌ
コメディを書いていたはずが、問題を増やしすぎた弊害でチョケられなくなってきたぜ。おまけにシリアスが増えると筆が遅くなるんだ……
場面は数日前に戻る。
始まりは、遠坂凛がセイバーのサーヴァント__アルトリア・ペンドラゴンを召喚したことから始まる。
原作でアーチャーが召喚された要因は、凛が儀式に臨む時間を誤ったこと。そして、召喚されたアーチャーの方が、凛にまつわる触媒を所持していたことにある。
たまたま、凛が遠坂由来のうっかりを発動させず、たまたまアーチャーが生涯触媒を持ち続けなかった。ただそれだけのことである。
そこで的確にアルトリアを引いてくるあたり、やはりセイバーはこの地の運命に呪われているのかもしれない。
学校を調査し、原作通りランサーとの戦闘になり、そうして衛宮士郎は一度死ぬ___ことはなく、戦いを目撃することなく普通に家に帰った。
では何故、衛宮士郎は聖杯戦争に参加することになったのか。
彼が聖杯戦争に巻き込まれたきっかけは、「死」ではなく、「違和感」だった。
学校に張り巡らされた奇妙な魔力。
それを感じ取ってしまったが最後、好奇心と正義感が彼を動かした。
……もっとも、今の彼は正義の味方なんて曖昧な理想より、“守りたい誰か”のために剣を取るタイプなのだが。
地道な解析を続ける過程で凛と接触。一時的な協力者に。そうしてたどり着いた先にいたのは、彼の親友である間桐慎二であった。その手にはマスターである証、令呪があった。
一方、間桐慎二にもまた、彼なりの“理由”があった。
──義妹の桜を、あの地獄から救うためである。
幼い頃の慎二は、臓硯が連れてきた養子__桜が、自分を差し置いて祖父と魔術の鍛錬をしていると知り、虫蔵へと忍び込んだことがある。当然臓硯ならその程度気が付いていた。孫が恐怖する姿を見たかったのか、あるいは単に捨て置いたのかは、今となってはわからない。けれど、その夜、慎二の中で何かが決定的に変わった。桜を“助ける”という、彼なりの覚悟が芽生えたのだ。
持ち前の才能を活かし、自分なりに間桐の魔術を使える形に落とし込み、自身の肉体に改造を施し、文字通り血のにじむような努力の末、遂に彼の手の甲には令呪が宿った。
そうして呼び出したライダーと戦争を勝ち残り、桜を臓硯から解放しようとしたのである。
そうして親友同士のぶつかり合いになり、覚悟の差から慎二に軍配が上がったとき、士郎の手にも令呪が宿った。
詠唱も召喚陣もないめちゃくちゃな召喚。ただ、触媒となった存在が強力だった。別世界の可能性とはいえ、本人である。これ以上ない触媒をもとに、アーチャーのサーヴァント__エミヤが召喚された。
凛とセイバーも加わり、分が悪いと悟った慎二はライダーと共に撤退することになった。
その後は、セイバー、アーチャー陣営で一時的な同盟を組み、士郎は己の目的の為に戦うことになる。
ややこしいだろうが、この段階ではルーラーは召喚されていない。それが何を表すか。裁定者の彼らは一つ、大きな勘違いをしている。
ジャンヌが召喚される前に揃ったサーヴァントは6騎。5騎目はセイバー、6騎目はアーチャー。
最後に召喚されたサーヴァントこそ、アサシンだ。
* * *
場所は冬木市ビル群の地上。
そこに立つのはルーラーのマスターこと、黒田華正。
現在、ジャンヌとは別行動中。目の前の衛宮士郎、アーチャーと対峙してます。
普通にピンチです。
「だから!俺はルーラーのマスターなんだって!信じられないかもだけど」
「その割には、本人の姿が見えないな」
アーチャーの声は静かだが、刃のように冷たい。
「別行動中なんだ。上のあれを見ただろ?それに、こんな嘘ついてどうすんだ」
「マスターが〝いる”時点で矛盾だと言ってる。ルーラーは中立。マスターを持たない存在のはずだ。……まさか、自分は例外だと、そう言うつもりか?」
「うっ……そうとしか言えないんだが」
アーチャーの視線が鋭く細まる。こわい。
「客観的根拠において、例外という言葉ほど信用できないものはない。君の言葉には整合性が感じられない」
……だって本当にそうなんだもん。文句なら聖杯に言ってくれよ。俺も言いたいんだから。
士郎が眉を寄せ、アーチャーに尋ねる。
「アーチャー、ルーラーってのは?」
「…聖杯戦争における調停者。聖杯によって召喚され、聖杯戦争の正常な運営を行う管理者のようなサーヴァントのことだ。よって、マスターは存在しない」
士郎の疑問にすんなり答えるアーチャー。なんかお前ら思ったよりコミュ良好じゃない?もっと険悪な感じじゃなかったっけ?
「……つまり、あいつが嘘をついているか、本当にマスターで、想定できないような何かが起こってるってことか」
「理解が早いようで結構。私の所感では8割がた前者よりだがね」
残り2割なんだよなあ……
というかアーチャーはそうだけど士郎も厳しくない?原作の感じだったら「まずは話を聞こう」くらいは言ってくれてたじゃん。お人よしな優しいお前はどこにいったんだよ?
「いくつか質問しよう。一つ目。この街で頻発している汚染された魔力の発生に、君らは関与しているか?」
している。というかバリバリ俺が発生源である。全部聖杯のせいだけど。
「…どうにかしたいと思ってる」
そんなこと言えるわけないので論点をずらして答える。一応間違いなく本心だし。
そんな俺を見透かしたように、アーチャーは更に質問してくる。
「次だ。住人の衰弱現象、魂喰いを行っているのは君たちか?」
「違う。それをやってるのはキャスターのはずだ」
これには迷わず即答する。ジャンヌがそのようなことするはずないし、俺もさせる気はない。
まず必要ないが。
「だろうな。君の魔力量でそんなことをする必要はないだろう」
アーチャーの声が、一段低くなる
「ただ、他陣営の情報をすんなり口にするあたり、公平な立場の人間とは言えないな」
それは……確かにそうだ。痛いところを突かれた。今のは完全に俺のミスだ。
「最後だ」
アーチャーの雰囲気が変わったのを感じる。恐らく、次の質問が本命。
「昨日の昼、間桐邸が突如炎上爆発し、頭首である間桐臓硯が行方不明になったそうだ。__これをやったのは君たちだな?」
「……随分と確信したように聞くんだな。間桐桜に聞いたのか?」
「あの時間にあそこまで大胆な行動に出る魔術師は、私の知る限り存在しない。御三家である間桐に喧嘩を売るだけの人間にもな。間桐桜は話したがらなかったが__返答は?」
そうか、桜は黙ったままだったのか。確かに、臓硯の襲撃と小聖杯の件を詳細に話そうと思ったら、彼女の傷についても触れる必要がある。折角開放されたのに、それを想い人に打ち明けるのは酷だろう。俺の立場からするとすごく手痛いが、仕方がない。
こうなることは、間桐邸を襲撃すると決めた時点で想定していた。
あの時間に特定の魔術師を攻撃することは、事情を把握していない他の陣営に対し、ルーラーの中立性と裁定者の正当性を放棄する行為であると。
それでも、あのタイミングでしか間に合わないと考えたからこそ、天秤にかけてそちらを取ったのだ。
「そうだ。間桐臓硯を滅するため、俺とルーラーの二人で襲撃した」
「っ!じゃあやはり、お前が間桐の爺さんを__!」
俺の返答に真っ先に反応したのは、アーチャーではなく士郎の方だった。
あれぇ、そっちが食いつくの?
お前なんか臓硯と関わりあったっけ?精々慎二と桜の祖父くらいの認識じゃないのか?
……待て、何か見落としていることが……?
そうだ、慎二!臓硯が死んで間桐邸があんな風になってるなら、あいつも何か変化があるはず!それに士郎がここにいるなら上にいるセイバー陣営は間違いなく凛!
ジャンヌに念話で確認を……
やべえ使ったことないからわかんねえや。離れる気更々なかったし。
こちらの考えがまとまる前に、アーチャーが静かに構えを取った。
「決まりだな。もはや君がルーラーのマスターかどうかは関係がない。後の憂いはここで始末しておく。異論はないな?」
「ああ…こいつは危険な奴だ。野放しにするわけにはいかない」
空気が更に冷え込んだのを感じた。
あ、これ死んだわ。
余計なこと考えてたせいでタイミング逃した。今から令呪を使っても間に合わない。
距離は近く、剣の間合いだ。いやアーチャー相手に剣の間合いってなんだよ。普通射程だろ。
それと士郎やっぱり厳しくない?こんなんちょっと未熟なだけのアーチャーじゃん。兄弟かなんかなのかお前ら。本人でしたねそういや。
というか本当に不味い。士郎はともかく、こうなったらアーチャーは確実に殺しに来る。
ああ、こんなことならジャンヌにもう少し色んなことしておけばよかった。
どうでもいい後悔と共に切り捨てられる。
そんな予感を、突然の轟音がぶち壊した。
地面が揺れ、暴風が吹き抜ける。
傍に現れた巨大な塊の上から、聞き覚えのある甲高い声が降ってきた。
「まったく、気になって付いてきてみれば……ずいぶんと面白いことになってるじゃない、華正」
「__イリヤ!!マジで助かったあ!!」
「ふふ、ちゃんと感謝の言葉が出るなんて偉いわね」
そう言って笑うのは、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
彼女の白い髪が月光を反射し、吹き抜ける風の中で揺れた。バーサーカーの肩に乗った彼女は、今の華正には女神のようにも見える。
助かった、そう思った瞬間に、涙が出そうになった。
「バーサーカーっ……!」
「イリヤ⁉︎どうしてここに…!」
突然現れた強敵を前に、アーチャーと士郎は驚愕の表情を見せる。
彼らからすれば、何故俺たちが繋がっているのか理解できないだろう。
「ありがとう!ルーラーの次に愛してる!」
「はいはい、そこで大人しくしてなさい?バーサーカー、適当に遊んできて」
「■■■■_■■■‼」
バーサーカーが咆哮し、衝撃波が走る。
吹き荒れる風の中、アーチャーが咄嗟に士郎を庇い、叫ぶ。
「ちぃっ…!小僧下がれ!今のお前には手に余る!」
「くっ…イリヤ!どうして俺たちが戦うんだ⁉︎」
そう叫ぶ士郎とは対照的に、イリヤは余裕そうな表情である。
「簡単なことよ?私は士郎のお姉ちゃんだもの。弟がおいたをしたんなら、お仕置きしなくっちゃ」
「姉だって…?」
「本当は妹でいこうと思ったんだけど、もう間に合ってるみたいだし。こう見えて、あなたより歳上なのよ?私」
士郎が言葉を失う中、俺はイリヤの背後に身を潜めながら、耳打ちするように質問をする。
とんでもなくダサい状況だが、形振り構っていられない。
「なあ、サーヴァントとの念話ってどうやるんだ?」
「あなた…よくわからない知識は持ってるのに、そういうことは本当に何も知らないのね。心の中でルーラーに強く呼びかけたら普通にできるわよ」
強く呼びかける……こうか?
『ジャンヌ、聞こえるか?』
『__っ!マスター!無事ですか⁉︎』
お、繋がった。無事を聞いてくるあたり、向こうはこちらの様子を感知していたらしい。
それでもジャンヌがこちらに来なかったということは、何か切羽詰まった事情があるのか。
『イリヤのおかげでどうにか助かった。そっちはどうなってる?』
『セイバーとライダーに挟まれて戦闘中…!そこに、キャスターが介入してきました…!」
??????
どゆこと?
今の俺みたいに凛や慎二からルーラーか疑われて、セイバーとライダーとの交戦ならまだわかる。
だが何故そこにキャスターが来る?……いやまさか、だからこそなのか?
『狙いは俺たち、か?』
『恐らくっ…!』
くそ、かなり良くない状態だ。いくらジャンヌが強いといっても、英霊相手に3対1は厳しい。しかもキャスターの宝具を警戒する必要があるとなれば、難易度は更に上がる。
高低差こそあるが、距離は近い。地上まで誘導するか?……いや、バーサーカー、アーチャーも交えての混戦となれば、どこかの陣営が敗退しかねない。それは俺としては非常に困る。
令呪で撤退するにしても、残ったサーヴァントたちでもう一度戦い始めてしまえば、どちらにせよサーヴァントが敗退する可能性は拭えない。
『マスター、こちらは私で何とかします!ですから、マスターは自分の安全を__!』
『…いや、駄目だ。予想外のことが起きすぎている。ここで疑いを解消しないと先がない』
既に過半数の陣営から不信感、あるいは敵対行動をとられている。どうにかして俺たちの目的を正確に伝達する必要がある。何か方法はないか………
「___なんだ、面白えことやってんじゃねえか」
「■■■ ■■⁉」
アーチャーに向かって振り下ろされた大剣が、突如飛来した閃光によって逸らされた。
衝撃と共に、紅い槍が地面へと突き刺さる。
「お前は__!」
「っ、ランサー⁉︎」
土埃の中から現れた男が、長槍を肩に担ぎ、余裕たっぷりな獰猛な笑みを浮かべて言い放つ。
「俺も混ぜてくれや」
空気が爆ぜる。次の瞬間には、赤槍の残光だけを残して青い影が飛び込んでいった。
嘘だろお前まで来んのかよ。アサシン以外全員大集合じゃねえか。これギルガメッシュ来ないだろうな。
それにしても、マジで全身青タイツなのか……。
ちなみに冒頭の改変にオリ主は一ミリたりとも関与していない。バタフライエフェクトとかでもない。ただそういう偶然があっただけのことである。
かわいそ、
更新遅くなるかもです。