ゾンビ世界のスローライフ物が好きだから、書いた。シリアスはなし   作:☆☆☆宮☆☆☆太郎

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光弾のでるトランペット

東京に憧れて上京して、社会人になって満員電車に揺られて、上司に怒られて、帰りにビールを買って明日も頑張ろうと眠りにつく日々。

 一週間前まではそうだった。

 現在は違う。

 会社は無くなり、電車はゾンビだらけ、町中もゾンビだらけ、ショッピングモールもゾンビだらけ、これが夢ならなぁって思いながら眠りについて、目が覚めたらゾンビだらけ。部屋の外にたむろしていただけだけど。

 

 このアパート周りも安全じゃなくなり、食料を持って、急いで逃げた。

 走って走って逃げて逃げて、でも、社会人になってからまともに運動してなかった俺がずっと逃げられる筈もなく、息が荒くなって、足が縺れ、もう駄目だ。そう思った時、見えない壁にぶつかった。

 後ろにはゾンビ。前には見えない壁。

 俺はペタペタと壁を触り、先に進める場所を探していると、浮遊感を俺の体が襲った。

 何事かと周りを見回すと、やたらSFチックな建物の中に俺はいた。後ろを振り向くと、ゾンビたちはキョロキョロと周りを見渡し、首を傾げて帰っていった。

 

 どうやら、助かったらしい。というよりも、俺の姿があいつらに見えていなかったのだろうか?

 俺は後ろに下がり、建物の外に出る。

 逃げていた時の風景が視界に映った。

 

 もう一度、足を前に進める。

 SFチックな建物が視界に広がる。

 

 ステルス迷彩。ゲームなどで出てくるその言葉が俺の脳裏を過る。

 

 誰が何のために?

 政府の秘密組織、他国からの見えざる侵略。

 色々と陰謀論めいた仮説が閃く。

 

 しかし、建物内を進んでいくとそれらがどうやら的外れであることが分かった。

 人間とは思えない生物の死体。

 トランペットのようなものを手に持っている。

 なんだ?これ?

 試しに息を吹きこんでみる。

 冷静に考えればパンデミック時にこんな軽率な行動を取るなど、自殺行為だが、結果だけ見ればこの行為が俺の命を救った。

 

 ドンッ!

 

 ベルの部分から光線が飛んで壁に着弾した。

 

「うわっ!」

 

 思わず尻餅をつく。楽器からSFチックな光線が出たのだ。

 銃とかでもなく、トランペットっぽいやつからだ。

 

「でも、これが武器だとわかったな」

 

 俺はトランペットっぽいやつ。

 面倒なので、トランペット銃と名づけよう。を持ってSFチックな建物を探索していく。

 食糧庫は見当たらない。

 変な薬品の入った瓶が保管されている場所はあるのだが、あれがあの生物たちの食料なのだろうか?

 どんどんと、進んでいく。

 大きいカプセルや、楽器が乱雑に置かれている場所。そして広い大部屋へと辿り着く。

 広い大部屋にはレバーやボタンがたくさん置いている。

 

「操縦桿だったりして」

 

 冗談交じりにそう呟くと、ペタペタと後ろから何かが近づく音がした。人間の足音ではない。きっと、入り口で死んでいた生物の仲間だ。

 俺は両手を上げて敵意がないことを示す。

 

「あ、あの。俺たまたま逃げてたらここにたどり着いただけで、やましいことは!」

「グォォォオ」

 

 日本語が分からない。というより、正気ではないように見えた。

 ゾンビと一緒だ。ゾンビウイルスに感染してしまったのだ。

 俺はトランペット銃を手に持ち、思い切り吹く、が、ゾンビはそれを弾いてしまう。人間のゾンビとの交戦経験も一応あったが、あいつらよりもずっと頑丈だ。

 人間のゾンビはスコップで倒せたのに、スコップよりもずっと強そうなトランペット銃でも倒せない。

 このままでは殺されてしまう。

 そこまで考えたところで、俺はトランペット銃をジッと見た。

 さっきも言ったが、この銃はトランペットによく似ている。ピストンバルブもついている。

 このピストンバルブを押してみたらどうなるのだろう?

 普段なら怖くて試せないが、極限状況、中でも特に絶体絶命な今、迷っている暇はなかった。

 俺は第一ピストンバルブを押す。

 

 ヒュンという音共にベルから光弾が飛び、ゾンビの胸に風穴を開けた。

 

「凄い。ピストンバルブには光線に指向性を持たせる役割があるのか?」

 

 俺が手に持つトランペット銃に目を奪われていると、ゾンビの胸から何かが落ちた。

 タブレット、のように見える。

 俺は恐る恐る近づき、タブレットを手に取った。

 電源ボタン、のようなものを押す。

 

「なんて書いてるか、読めないな。日本語翻訳とかは、流石に無理か」

 

 この施設について、この生物について何かわかるかと思ったのだが、残念ながら分からず仕舞いだ。

 そう思ったのも束の間。

 タブレットから音声が響く。

 

「日本語に翻訳します」

 

 文字がどんどん日本語に変換されていく。これで何かわかる!

 

 俺はタブレットの文字を目で追う。

 

『我々の故郷が人の住める星で亡くなってから一体どれだけの時間が過ぎたか分からない。

 しかし、我々は新天地を見つけた。なんとかここに住むことは出来ないだろうか?』

 

 なるほど、彼らは住処を探している最中の異星人だったのか。しかし、運の悪い。

 今の時期でさえなければゾンビになることもなかったろうに

 

『この星に住まう先住民を調べていくと、オンプニウムがないにも関わらず高度な文明を気づいていた。

 危険だ。私達は先住民。ホモサピエンスのみに効くウイルスを作り、この星に散布した。これでまともな思考が出来ない筈だ』

 

 いや、ゾンビウイルスお前らの仕業かよ!

 

『想定外だ。ゾンビウイルスが他の生物にも感染し始めている。

 特に一部の生き物は血液媒介感染以外の方法で感染が拡大している。

 我々も危険かもしれない。念のために防護服を着用しよう』

 

 防護服とは用意が良い侵略者だな。

 

『不味い。既に感染していた個体がいる。

 クソっ!人間であれば発症から数時間で変化が出るというのに、我々の場合はひと月も体内に潜伏するのか!

 

 想定外だ。想定、だ。何故我々ばかり…」

 

 ここで、記録は途絶えている。

 

 うん、要約すると異星人がこの地にきてウイルスまき散らして、勝手に自滅したと。

 

 とんでもないクソ野郎どもじゃないか!

 

 よし、この宇宙船は人間が勝手に使っても問題ないな。

 俺の家にしてやる。

 

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