ゾンビ世界のスローライフ物が好きだから、書いた。シリアスはなし   作:☆☆☆宮☆☆☆太郎

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植物を成長させるフルート

人の手で耕され、ふかふかの土が広がるようになった宇宙船前。現在はフルートの美しい音色が辺りに響いている。土と植物のための演奏会だ。

 奏者は涼音さん。音羽君のお姉さんが奏でてくれている。

 その音も、俺が近くを通るとぴたりと止まった。邪魔してしまっただろうか?

 

「この辺りは暫く植物の成長が促進されるだろう」

「ありがとうございます。」

「うむ。キャベツの種も植えた。我の想定では三日後には収穫できる」

「そんなに!」

「この異星人が残したフルートの力だな」

「いえ、涼音さんの演奏があったからこそですよ。

 …でも実際、演奏しないと効果を発揮しないものと、音を鳴らすだけで効果を発揮するものの差ってなんなんでしょうか?」

「ふむ」

 

 俺の何気ない質問に涼音さんは顎に手を当て考え込む。出会った当初は少し苦手意識を持っていたが、数日間共に生活をしていくとハッキリと自分の考えを口にするだけで、こちらを見下したりもしないし、話にもしっかりと耳を傾けてくれるしで根は真面目でいい人だということが分かった。

 今もそうだ。ふと浮かんだだけの考えなのに真剣に考えてくれている。

 

「オンプニウム、と言ったか?異星人のテクノロジーの中核を担う物質。

 その物質がエネルギーを生み出すには音が必要なのではないか?

 そして、より強い力を生み出すには複雑で精緻な音色を奏でる必要がある。と考えることが出来ないか?」

「なるほど。言われてみれば演奏しなければ効果が発揮されないバイオリンやフルートの方が規模や効果時間が長い。」

「そうだ。そしてその理屈から考えるにこの宇宙船を動かすのにも演奏が必要な筈だ。」

「演奏。では倉庫に仕舞ってある楽器の中にこの船を動かすための物が?」

「その可能性もある。だが…」

「?」

「取り合えず、操縦室に向かうぞ」

 

 涼音さんは俺に背を向け、宇宙船の中へと歩を進める。その後ろをついていく。一体何があるのか、涼音さんは何かに気づいたのか、涼音さんの背中を見ていると現在の状況を大きく動かす方法があるのではないかと期待せずにはいられない。

 途中、音羽くんも起きてきたため、音羽くんもつれ三人で操縦室に向かった。

 

「いいか、よく見ておけ。ふん!」

 

 操縦室に集まった俺たちの前で涼音さんは思い切り足を上げると、そのまま足を振り下ろした。宇宙船が大きく揺れる。

 

「え?なに四股踏み!?」

「違う!違和感を覚えなかったか?」

「四股踏みに対してですか?」

「盆多一度四股踏みから離れろ」

 

 俺は涼音さんの突然の行動に意識が向き、涼音さんの言う違和感というものには一切目がいかなかったが、音羽くんそうでは無かったようだ。

 涼音さんが思い切り足を振り下ろしてから、ずっと下を向いている。

 初めは宇宙船の床に穴が空いていないか確認しているのだと思っていたのだが、それにしては視線の先が真下すぎた。

 

「この下、もしかして空洞」

「音羽よ。気づいたか」

「うん。」

「恐らくこの下に宇宙船を動かすための楽器がある。正確には宇宙船を動かすためのエネルギーを生み出すための楽器がな」

「なるほど!もしそうなら、なんとかこの下への通路を見つけられれば!」

「うむ、楽器に対応した演奏者、それに操縦桿の操作法を知る必要はあるだろうが、この巨大な宇宙船を動かすことも夢ではなかろう。」

「なら、両親にも」

「会うことが出来るであろうな」

 

 宇宙船を見つけ、ある程度安全に生活を遅れるようになってから頭の片隅に親の顔が浮かぶようになった。

 希望的観測で自身を納得させる日々。俺だって死にたいわけではない。親のために一か八かの賭けに出ることは出来なかった。親不孝者と後ろ指を指されることになっても俺だって生きたいのだ。

 けれど、漸く、親のために行動を起こせる。

 比較的安全な方法で俺に出来ることが見つかった瞬間だった。

 

「待っててくれ。父さん母さん。」

 

 

 

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