下心刃牙刃牙トレーニーが闘会帝王に壊身させられる話 作:qp
幼い頃から、俺には夢があった。
男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「地上最強の男」
この俺もご多分に漏れず最強の二文字に憧れた口だ。
強くなりたいというシンプルな願いを叶えるべく、トレーニーとして身体を鍛え続けている。
しかし、それを嘲笑うかのように、生まれながらの強者達が存在した。
ウマ娘だ。
走ればアスファルトを踏み砕き、蹴りを放てば街路樹を圧し折る圧倒的脚力。特に鍛えていたわけでもない同級生の少女がバキ世界の住人めいた身体能力を保有していたことは、当時小学生の俺にはあまりにも衝撃的だった。
同じ人の形をしておきながら、理不尽と言いたくなる程の生来の性能差を見せつけられて、最初に湧いた感情は、相手に対する嫉妬や羨望でなく、闘りたいという欲望だった。
最強の男とは男の中で一番強いのではない。地上全ての者で一番強いのだ。クソデカアフリカゾウや人間大カマキリも含まれるし、当然ウマ娘だって倒さなければならない。目の前に存在する強敵はとても魅力的に映った。
「オレとしょうぶしろぉおお!!」
無鉄砲な小学生の俺は喧嘩を吹っ掛け――
「ざぁこ♡ざぁこ♡ウマ娘にふつーのヒトがかてるわけないじゃん♡あたまもよわよわ~♡♡」
「ちくしょおおおお!!!」
――あっさりと負けた。
マウントポジションを取ったメスガキは、俺の両腕を押さえて身動きを封じ煽り続ける。スカートから曝け出した太腿は、薄い脂肪の柔らかさの下に隠された極上の筋組織が柔軟性と弾力を主張している。その脚でガッチリと腰を挟むようにホールドされてしまえば、必死に藻掻いても脱出は叶わない。
「むだだってわかんないの~? ひっしにてーこーしちゃってかわいいね♡ばーか♡♡」
メスガキは男を屈服させることに興奮し、顔を紅潮させ恍惚のヤンデレポーズで喜悦の声を漏らす。暴れる俺の上でバランスを取るためグラインドさせる腰遣いは、艶めかしく蠢きながらも、決して崩れない体幹の強さを物語る。それでいて、相手に屈辱を与え、上位者である自分には抗うだけ無駄だと分からせようとする意志を、薄絹一枚を隔てた少女の重さを通して伝えて来た。
ここで屈しては何か大事な物を失ってしまうと直感した俺は、体力の続く限り抵抗したものの、結局は力尽きてしまう。
一方、俺に跨るメスガキは、普段使わない内転筋を使ったからか、俺を屈服させたことに昂ぶりを覚えたからかは定かではないが、わずかながら呼吸が乱れているようだった。
メスガキは息も絶え絶えになった俺に覆い被さるように顔を近づける。二人の熱が籠った吐息がぶつかる。耳元に口を寄せる。
「すこしはたのしめたよ、クソザコナメクジくん♡」
蠱惑的でありながら何処までも人を小バ鹿にした声色で囁くと、己の体温と湿り気を浴びせるように耳へ吐息を吹きかけ立ち去って行った。
公園に一人残された俺は、身体から生命力が抜けたような虚脱感に包まれながら、涙で歪む青い空を見上げることしかできなかった。
この時俺は何かに目覚めていた。それが殺意の波動や何か新しい扉を開いてしまったのかは今になっても分からない。
敗北の味を噛み締める俺はこの時誓ったのだ。
分からせねばなるまいと。
しかしながら、このままでは公園最強になることすら難しい。そう悟った俺は、形振り構わず武器使用に踏み切り、真剣ゼミに入会することにした。
入会して一ヵ月、剣の振り方を教えられることもなく、ただ走らされるだけの日々が続いていた。不満を持った俺は、左頬に十字の傷がある道場主へ、何故このようなことを続けるのか問うた。
「アーマードコアをやったことはあるでゴザルか? 飛び道具を持たないブレオンのレイヴンが機動力で負けていたら一方的に引き撃ちで狩られて終わりでゴザル。ウマ娘に勝ちたくばまず足腰を鍛えるでゴザルよ」
なるほど、確かに一理ある。
しかし、それはそれとして、何も教えてくれなかったのには変わりは無かったので、本日付けで真剣ゼミは退会することにした。去り際に道場主が家族と思わしき人に、唯一の会員に逃げられたことをブチ切れられて「働きたくないでゴザル! 絶対に働きたくないでゴザル!!」と叫んでいたから、この判断は間違ってないと思う。
身体を鍛えるならやはりジムである。気を取り直してシルバーマンジムへと入会した。
高負荷のマシンで筋肉を苛め抜き、空いた時間は年齢を詐称しウーマーイーツの配送で同僚のウマ娘達を相手に鎬を削り、ジムの年会費とプロテイン代を稼ぐ毎日。
鍛え続け、極限まで削ぎ落とした体に、鬼が宿る。
背中に鬼神が宿った時、俺だけ作画が板垣恵介になっていたッッ!!!!!!!
肉体がひとまずの完成に至った俺は次なるステップへ歩みを進める。
向かう先は山である。
β-エンドルフィン、脳内麻薬をコントロールするために崖から飛び降りるのだ。
何を言ってるのか分からない? 俺も分からない。でもバキはこれで習得したんだよな。なんでだよ。
いい感じの崖に辿り着いた俺は崖下を覗き込むと予想以上の高さに足が竦む。
いい感じの出っ張りやいい感じの横木があり、更に崖下はいい感じの川になっていて、とてもいい感じの崖なのは間違いない。ここからのダイブに成功すれば、脳内麻薬のコントロールを習得できる謎の確信すら覚えるが、流石にこれは死ぬって。
崖の上で唸っていると不意に声を掛けられる。
「お主、面白いことをしているのう」
「何奴!?」
振り返ればそこには白い顎鬚を付けた如何にもな仙人スタイルの葦毛の不審者が居た。そいつはゴルゴル仙人と名乗った。
「ウマ娘に勝ちたくばこれを読むと良い。『彼を知り己を知れば百戦殆からず』。孫子の兵法よ」
胡散臭いにも程があるが、言っていることは間違っていない。俺はウマ娘撃破を標榜しているがウマ娘の事を知らなさすぎるかもしれない。渡された書物を捲るとどうやらウマ娘のトレーナー用の文献のようだ。ウマ娘に一番詳しい職業がトレーナーだとすれば、教材として使えるのは確かだな。……ところでこれ桐生院家秘伝書って書いてあるけど盗品じゃないよな? ……まあいいか。
「ありがとう、ゴルゴルせn――」
礼を言おうと顔を上げた。その時だ。
ドッっという衝撃と不意の浮遊感。一瞬の間に目の前に移動していた奴によって俺は崖から突き落とされた。
「君も死ぬ、ワシも死ぬ、皆死ぬ……だが今日じゃない」
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
強……速……掴ま……無理!!
五点着地 無事で!? 出来る!? 否、死
「成ったな」
見える……ッ
見える!!
まるでスローモーションの中にいるようだ!!!
飛び出た岩を蹴り、崖に生えた蔦を掴み、樹木の枝に飛び込み圧し折りながら減速する。
派手な水飛沫を上げて川へ落下した俺は、しかし五体満足で生還した。
「
「それで、復讐は果たせたのかい?」
「あのメスガキ、公園でマウントされた後、何故か急に転校して行方が分からないんだ……」
「えぇ……」
メスガキ:モブ。名前は無い。
ゴルゴル仙人:戦艦が簡単に沈むか!!