海上保安官の警備員   作:溶けたチョコ

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 前回、沢山のお気に入り登録や評価をしていただきありがとうございました!相変わらず不定期投稿ですが応援して頂けると幸いです。
(間違っていたのでエピローグからプロローグに訂正しました。)


第二話 コーヒーと薬と警棒と

木村「誰もいないな……」

 

 窓の外を見ながら俺は呟く

 

小林「当然ですよ……もうこんな時間なんですから。」

 

 それもそうだ、こんな時間に出歩く生徒は殆ど居ないのだから

 

木村「巡回行ってくる。」

 

小林「またですか。」

 

木村「仕方ないだろ。」

 

 そもそも夜勤は仕事が少ない

 監視カメラの映像を見るだけという仕事と、巡回位しかないのだ

 

 廊下に出て、巡回を始める

 

木村「あっ」

 

 ライトの光が一瞬消えた

 調子が悪いのだろうか

 

木村「ま、なんとかなる。」

 

 最悪そのまま目を慣らせばいいだけだ

 

 それにしても幽霊が出そうな雰囲気だ

 

ガチャ

 

 ドアが独りでに開いた!?

 

木村「だ、誰だ!?

 

 幽霊とかは勘弁してくれよ……マジで!

 

 恐怖心を抑えながら部屋の中を視る…………何も居ない

 

木村「そ、そりゃあ、もちろん居ないよな……

 

 全く……怖がらせやがって、誰がドアを開けっ放しにしたんだ?

 

 タッタッタッ

 

木村「え?」

 

 誰かの足音が背後を通り過ぎる

 慌てて振り向くと──

 ──黒を基調とした服を着たウマ娘が居た

 

木村「……生徒?」

 

 いや、違う制服を着ていないから、生徒じゃない

 勝負服?だが、勝負服はレース以外じゃ着ない筈……

 

木村「じゃあ...…誰だ?」

 

 そのウマ娘は、どんどん離れて行く

 

 まさか……侵入者か!

 

木村「おい!待て!止まれ!」

 

 侵入者は止まらない

 それどころか、階段を駆け上がる

 

木村「クソッ、速すぎる!」

 

 ウマ娘だからなのかもしれないが、動きに躊躇がない

 まるで……怪我に対する恐れがないように見える

 

 運良く、侵入者は廊下を真っ直ぐ走って行く

 これなら姿を捉え易く、例え部屋に入ったとしても誰かいない限り、確保が容易だ

 まあ、そんな事は敵も分かっているから部屋に入らない筈……

 

 バタン(ドアを閉める音)

 

木村「……マジか。」

 

 居場所は分かっているから、後は確保するだけか

 

木村「ん?」

 

 理科準備室の照明が付いている

 

 これは不味い、人がいた場合人質を取られる可能性がある

 

木村「テーザーを使用するか……」

 

 腰のベルト周りを確認する

 やはりそこには、試験的に配備されたテーザー銃が有った

 撃てないが、威嚇には充分だろう

 

 ホルスターからテーザーを取り出し下向きに構える

 安全装置(セーフティ)はON

 これで暴発の危険は無い

 

木村「トレセン警備隊だ!大人しく……は?」

 

 ドアを開けると二人のウマ娘と人間が居た

 片方は青鹿毛の長髪のウマ娘、もう片方は白衣を着た粟毛のウマ娘が居た

 制服を着ているので明らかに生徒だ

 もちろん人間はトレーナーバッチを着用しているのでトレーナーだ

 そしてそこには、侵入者の姿は無い

 

???「なんだね君は!?」

 

 白衣の生徒が騒ぐ

 

木村「あー……その、警備隊です。」

 

???「そうじゃなくてねぇ、名前だよ!名前!」

 

木村「アッハイ」

 

???「落ち着いてくださいタキオンさん。この人も悪気が有った訳ではないんですから。」

 

 長髪の生徒がたしなめてくれたお陰で話しやすくなった

 だが、状況が変わった訳ではない

 

???「だがねぇ、私は……」

 

 白衣の生徒はまだ反論する

 

木村「邪魔をしたならすまない。」

 

 こういう時は早めに謝る方が本題に入りやすい……はずだ

 

???「……ほら、タキオン、警備員さんも謝っているんだから許したらどうだ?」

 

???「はあ……分かったよ……座ってくれ。」

 

 彼女はソファーを指さす

 

木村「失礼。」

 

???「ところで、君は誰だね?」

 

木村「トレセン警備隊、隊長の木村隼人です。」

 

???「警備隊ねぇ……君たちの仕事は、他人の実験を邪魔する事かい?」

 

 白衣の生徒は、皮肉の様に言う

 

木村「ところで、貴女方達の名前を教えてもらえますか?」

 

 スルーだスルーその方が精神的ダメージが少ない

 

???「おや、スルーかい?」

 

 まるで、心を読んでいる様に言うな……

 本当に心を読んでいるのか?

 白衣だし……もしかしたら研究者の可能性はあるかも知れない

 

???「すみませんね……うちの担当がコイツがアグネスタキオン、そしてこっちがマンハッタンカフェ。そして俺はコイツらのトレーナーの山崎です。」

 

木村「ご紹介ありがとうございます。よろしく頼みます。」

 

山崎「それで、何の御用でしょうか?」

 

木村「それは──」

 

 ついさっきこの目で視た事を全て話す

 ドアの件も、侵入者の特徴も

 

カフェ「……もしかしたら、『おともだち』では?」

 

山崎「確かに、そうかもしれないな……」

 

 『おともだち』って何だ?

 友人にしてはなんか呼び方が変だ

 

木村「今、『おともだち』は何処に?」

 

カフェ「……貴方の後ろにいます。」

 

木村「──ッ!」

 

 危険を感じ、テーザーを向けようと試みるが──

 

木村「──そりゃあ無理か。」

 

 腕を掴まれ止められる

 そもそも、気配を消していつの間にか後ろにいる事ができるバケモンを相手に抵抗をするのは不可能に近い

 

木村「クソッ……カフェさん、コイツが『おともだち』か?」

 

カフェ「『おともだち』が見えるのですか!?」

 

木村「ああ、しっかりと見える。」

 

カフェ「驚きました……『おともだち』が見えるのは、トレーナーさんくらいしか居ないので……」

 

木村「そうか……『おともだち』さん。あんたは生徒か?」

 

 逆に生徒じゃなかったら、何なのか分からないがそれはそれで問題になってしまう……始末書は嫌だなぁ

 

おともだち「チガウ」

 

 まるで感情の塊が話しているようだ

 

木村「……カフェさん、良い友達を持った様ですね。大切にしてください。」

 

 もう面倒事になるのは嫌だから、話しを変えよう

 そうする方が精神衛生上、良い

 

カフェ「ありがとうございます。」

 

木村「……あれ?」

 

 いつの間にか、『おともだち』は居なくなっていた……

 

タキオン「ふぅん……興味深いねぇ。」

 

木村「何がだ?」

 

 なんか嫌な予感がするんだが……

 

タキオン「君の反応速度だよ。」

 

 そう言い彼女は、ジリジリと歩み寄る

 なんか、左手に試験管持ってね?

 

木村「何をする気だ?」

 

タキオン「君の事を検査するだけだが?」

 

 ええ……絶対嫌だ

 なんか、ヤバそうなやつじゃん

 

タキオン「安心してくれたまえこの薬は筋力を測定する薬さ。ただ、副作用として数時間全身が黄緑色に発光するけどね。」

 

木村「うわ、嫌だ……」

 

 どうやったら全身が黄緑色に光るんだよ……どうやっても薬は黄緑に光らないだろ……

 

タキオン「なら、無理やり検査するまでだねぇ。」

 

木村「くっ……」

 

 何が起こっても良いよいに俺は身構える

 

山崎「ちょ、ちょっと待った!」

 

タキオン「なんだね?実験の邪魔をする気かい?」

 

山崎「いや、流石にさ……いきなり実験は不味くないか?」

 

カフェ「タキオンさん、トレーナーさんの言う通りですよ。実験は流石に駄目です。」

 

 この一言で実験を辞めてくれたら万々歳だ

 実験を辞めるまで行かなくても、譲歩を引き出せたらそれはそれで収穫だ

 

タキオン「せっかく、良い被験体が手に入ったんだ。実験しないなんて、もったいないじゃないか。」

 

全員「「「……」」」

 

 山崎さんとカフェさんは呆れて声も出ないようだ

 

 ダメだなコレ、どう言っても実験を辞めるような相手じゃない

 そもそも、譲歩するような相手か分からなかったのに期待するのはバカバカしい

 最初から譲歩を引き出せるなんて、考えずに警戒するべきだった

 そんな後悔の言葉の羅列が頭の中で浮かぶ

 

タキオン「さあ、実験を始めようじゃないか。」

 

 彼女がこちらに近く

 後悔する時間はもう無いらしい

 なら、やることはただ一つ……抵抗だ

 だが、どうやって抵抗する?

 テーザー?あれは撃ったら問題になる

 なら、逮捕術?

 投げ技は狭いから出来ない

 なら、籠手返しだ

 

 俺は黙って歩み寄る

 

タキオン「おや、やっと飲む気になったようだねぇ。」

 

 彼女は試験管の中身を飲ませようと、右手(・・)を伸ばす

 だが、その手は届かない

 その代わりに彼女は膝を床につき、顔が痛みで歪む

 

木村「残念だったな。」

 

 ウマ娘と人間の体の造りはほぼ同じだ

 骨格も内臓も弱点も

 ただ、信じられない程身体能力が高い

 だが、籠手返しはその弱点(・・)を突く

 

木村「──いや、捻るか。」

 

タキオン「グッ……だ、騙し討ちとは卑怯じゃないか!」

 

木村「卑怯も何も、薬を飲ませないなら放しますよ。」

 

 籠手返しって、ウマ娘さえも止められるものなんだ……

 

タキオン「そんな条件を飲むと思っているのかい?」

 

 あくまで、研究者として引かない感じか

 

木村「なら、譲歩しよう薬を飲ませない代わりに実験自体は受ける。どうだ?悪くないだろ?」

 

 薬を飲まない代わりに実験を受ける……自分としては随分譲歩したつもりだ

 

タキオン「……確かに、悪くはないねぇ。」

 

木村「よし、交渉成立だ。」

 

 すぐに手を放す

 

 これで最悪の事態は免れた

 

カフェ「凄いですね……タキオンさんを意図も容易く取り押さえるなんて。」

 

 カフェさんが信じられない顔で言う

 

木村「伊達に鍛えて無いですから。」

 

 

 職業柄めちゃくちゃ鍛えまくったからな……

 

木村「じゃ、また後で。」

 

 俺は扉を開けようとする

 

タキオン「え?」

 

 背後から疑問の声が聞こえた

 

木村「え?」

 

 彼女は何か勘違いをしているようだ

 

木村「俺は今すぐ実験を受けるなんて、言ってない。」

 

 自分でも卑怯だとは思うが、仕事が残っているからしょうがない

 

木村「仕事を終わらせたら戻ってくるさ。」

 

タキオン「ハァ……サッサと早く終わらせてきたまえ。」

 

山崎「タキオンが……駄々を捏ねないだと!?」

 

ゑ?

これが普通じゃ無いの?

 

タキオン「モルモット君!?私が毎回駄々を捏ねていると言うのかい!?」

 

山崎「だって、大抵駄々捏ねてるじゃねえか。」

 

タキオン「カ、カフェも何か言ってくれたまえよ~」

 

カフェ「嫌です。」

 

 なんか、可哀想になってきたな……

 いや……まあ、いいや……

 

木村「失礼しました~」

 

 扉を開け、仕事を始める

 

 早く仕事を終わらせないと駄々を捏ねられる

 流石にそんな速く終わるとは思えないが

 

 そういえば、無線機の電源切れてるな

 

 ツマミを回して、電源をいれる

 

小林『こちら、詰所センパイ、異常が発生しました。』

 

 うわっ、タイムリーだなぁ

 多分この声、小林だな

 

木村「詰所、異常とは?」

 

小林『カメラのモニターが砂嵐になってます。』

 

 故障か?

 いや、それより……

 

木村「何処のカメラだ?」

 

小林『カフェテリアあたりですね……』

 

木村「そういえば滝沢は?」

 

 アイツなら機械に詳しいからなんとかなる筈……

 

小林『滝沢さんなら、仮眠室です。』

 

木村「よし、叩き起こせ。」

 

小林『ハァ!?何言われても知りませんよ!』

 

────カフェテリア

 

木村「現場に着いたぞ。」

 

小林『取り敢えず起こしましたけど、滝沢さんキレてますよ。』

 

木村「上出来だ、モニターは?」

 

滝沢『特に異常はない……仮眠位させろ。』

 

木村「そうか……」

 

 モニターじゃないなら、カメラか?

 いや、でも見たところ故障では無さそうだし……

 配線辺りか?

 

木村「とりま、カフェテリア内も見てみる。」

 

小林「了解しました。気を付けて……あ!復旧しました!」

 

 良かった……

 

木村「さてと……」

 

 辺りを見渡す……

 

木村「ん?」

 

 厨房に人影がある

 

木村「誰だ!」

 

 通常、夜間のカフェテリアに人はいない

 ましてや鍵がかかっている部屋に入る事なんて不可能だ

 

???「ハ……ア" イ"?」

 

 対象が振り返る

 その瞬間背筋が凍り、ゾワッとした感覚が背中を撫でる

 「異形」そうとしか形容出来ない、歪んだ顔

 

木村「……」ダッ

 

 ガン

 

木村「……は?」

 

 扉が開かない

 つまり、この異形と閉じ込められた?

 

木村「クソッ、何か武器は……」

 

 偶然側にあったの調味料入れ、そこに入っていたのは──

 

木村「──塩」

 

 トレセン学園の調味料は、おそらく天然塩だ……

 

 中身を手に握る

 

木村「……来いよ。」

 

 これは、ハイリスク・ハイリターンの賭けだ

 大体塩が幽霊に効くなんて分からない

 それでも行動しない理由にはならない

 

異形「ア"ア"ア"」

 

木村「ッ!」

 

 奴が間合いに入り、その瞬間にジャブを放つと

 顔面にクリーンヒット

 

異形「ア"ガ"ッ」

 

 当たり判定あるんだ……

 塩のお陰か?

 

 異形はこちらを凝視している

 

木村「まだやる気か。」

 

異形「モウヤメ"デ……」

 

木村「……サッサと消えな。」

 

 幽霊って意思疎通出来るのか……

 っていうか、今日の夜勤はカオスだな

 異形の幽霊に『おともだち』、挙げ句の果てにはアグネスタキオンとか言うマッドサイエンティストという言葉をウマ娘化させたような奴とか

 

木村「カオスだな……」

 

 そろそろ帰ろう

 

 詰所に連絡し、理科準備室に向かう

 

木村「戻りました。」

 

タキオン「随分と遅かったじゃないか。」

 

木村「トラブルがあってな。」

 

タキオン「さあ、実験を始めようじゃないか!座ってくれたまえ。」

 

木村「ああ。」

 

 ソファーに座り実験開始を待つ

 

 どんな薬を飲まされるのだろうか

 

カフェ「……コーヒー要りますか?」

 

木村「すまないね。一つ貰おう。」

 

 なんか一瞬、手の辺りを見られた気がするが気のせいだろう

 

山崎「実験に巻き込んでしまってすみません……」

 

木村「別にいいですよ。少し興味がありますし。」

 

 変な色に光るとかは勘弁して貰いたいが……

 

カフェ「どうぞ。」

 

 目の前にコーヒーカップが置かれる

 その中身は夜の闇のような色だった

 

 




最後まで読んで下さりありがとうございます。
最後の辺りが若干駆け足気味になった気がしますし、やはり、自分が「にわか」であると実感しました。
そんな「にわか」が書いた物語でも引き続き読んで下さると幸いです。
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