エロとは人生における必要な要素だ。
そう、力説して語れるには理由がある。
人間には三大欲求がある。
食欲、睡眠欲、そして最後の一つがそれだ。
特に現代社会においてはストレスが多い。
日常生活の中で心身共に疲れている者も多い。
だからこそ俺のような者が生きていくためにはそれが必要なのだ。
自分に正直になればなるほど人は生きやすくなる。
そんな俺にとって最良の趣味と言えば……やはりエロだろうな!
「いやぁ、ここはそういうゲーム、あんまり置いていないんだけど」
そう、俺が力説をしていると、このゲーム販売店『ロックロール』の女店主である岩巻 真奈さん。
彼女がプレイする乙女ゲーではあるが、俺が主にプレイするゲームと似た所もあり彼女の話を聞いてみると……
「やっぱ主人公カッコ良いよなぁ?」
「分かる!凄いよね!」
そう言って盛り上がる俺たちだが……
やはり真奈さんの好みという事もあるだろうけど……
ただ、彼女が好きそうなゲームだと俺は違う意味で燃えないんだ。
勿論それでも楽しんでプレイしていたから良かったんだけどさ。
まぁでもそういう訳でこうして話すことになったんだけどね?
「しかし要君も色々あると思うけど頑張ってね」と励ましてくれる姿勢には好感を持つことができる。
「そう言えば、要君って、エロゲー以外にはやらないの?弟君はクソゲーばっかりやっているけど」
「うぅん、あんまり、まぁ興味はありますけど」
「そんな君にお勧めのゲームが一つ」
そうして、彼女が持ってきたのは一つのVRMMOゲーム。
【シャングリラ・フロンティア】
現実世界ではなく仮想世界の中で人々が生活することになる夢のようなコンテンツだそうだ。
一応このタイトルについては以前から名前だけは聞いたことがある。
特に今年に入り一気に広まったタイトルであったこともあって俺も注目していた作品でもあったからな。
「これをどうぞ」
「へぇ~……なんか面白そうですけど、これってどんな内容なんですか?」
「簡単に言うと剣と魔法の世界でRPGみたいなシステムになっているオンラインゲームです」
なるほど……確かにシンプルながら奥深いものであることは分かった気がしたよ。
「よし、買ってくる」
俺は即決した。
エロ本以外の娯楽には金を出さない主義だったが、このゲームは特別だと思ったのだ。
店を出て家に向かいながら、スマホで「シャングリラ・フロンティア」の情報を調べる。
公式サイトにはこう書かれていた。
「プレイヤーの想像力を刺激するオープンワールド型VRMMORPG。
自由度の高さと驚愕のグラフィック技術により、五感全てで異世界を体験できる」
「ふーむ……これは期待できそうだな」
そうして、俺はすぐにでもプレイする為に家に帰ってきた。
実家暮らしという事もあるが、実際には趣味の為にもあまり他の事に金を使わない為に行っている。
まぁ、一応は金を入れており、家事も行っている。
「さて、さっそくキャラメイクを行うけれど」
VRゴーグルを装着すると視界が一変した。白い空間が広がり、目の前に半透明のインターフェースが浮かぶ。
「おぉ……これが最新のシャングリラ・フロンティアか」
俺は思わず声に出す。画面の美しさに圧倒された。肌の質感から衣服の布地の皺まで、まるで本当に存在するようだ。これはスクリーンショット撮影だけで一日潰せるレベルだな。
まずは体型調整から。「筋肉質」「標準」「華奢」の三択があった。迷わず標準を選ぶ。筋肉モリモリはちょっとキツイし、かといってガリガリすぎるのも……な。
結局平凡な顔立ちに落ち着く。悔しいがリアルを再現するのが一番自然なんだろう。
髪型は悩む。バリエーションが豊富すぎて選びきれない。長い時間かけて「無難な短髪」を選択。色はダークブラウン。
「おいおい、これじゃ完全に中二病じゃねぇか」
思わずセルフツッコミ。まあいいや、こんなもんだろう。
服装選びでも困った。派手なものから地味なものまで様々だが、どれも決め手に欠ける。最終的に「実用的」と評されていた黒いコートを選ぶことにした。銀糸の刺繍入りで何故か「盗賊っぽい雰囲気があります」とオススメされていて……
「盗賊か……悪くない響きだな」
つい乗せられて初期クラスは《盗賊》に決定。武器選択画面でも矢印が勝手に動いているような錯覚に襲われる。気がつけばボウガンを選んでいた。
出身地も微妙だった。「彷徨う者」なんて設定が妙に心に刺さる。
「まあ人生も彷徨ってるしな」
というノリで確定。
「さて、やろうか」
その一言と共に、俺はそのままログインした。
だが、この時、俺は知らなかった。
このシャングリラ・フロンティアでは、とんでもない修羅場に巻き込まれる事を。