傭兵による暗殺教室   作:ヌルヌルnull

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今回は律しか出てきません。実質律がヒロインです。


作戦会議の時間

『ここが柊さんのご自宅ですか?』

「ああ。日本に戻ってきたばっかだから、まだ数日しか住んでないけど」

『そうなんですね』

「今回の仕事を引き受けるついでに防衛省に用意してもらった」

 

 律を連れて自宅に戻る。律が持っている暗殺のログを見せてくれと頼んだところ、あの立方体と同じ思考・データを持った律が勝手にスマホにインストールされた。何が嬉しいのか、画面の中で律がニコニコとほほ笑んでいる。モバイル律と呼んでくれとのことだが、わざわざ区別する必要もないのでこちらも律と呼ぶことにする。

 

「さてと、早速見せてもらおうか」

『わかりました。あのパソコンに接続してもよいでしょうか』

「ああ……ってハッキング早いな。セキュリティはしっかりしてるつもりなんだけどな……」

『この程度朝飯前です! あとハッキングではなくインストールです!』

 

 こちらが返事をするとほぼ同時にパソコンに律がインストールされた。スマホと同様に画面に律が映し出される。さすが最先端AI、何でもありだな。

 

『これらが私が記録している暗殺記録です。私単独による記録が約200件。クラスの皆様による暗殺が約10件。転校してから数日なのでまだまだ少ないですが』

「いや、これだけあれば十分。十分すぎるほどだ。これだけデータがあればかなり正確に分析できる。助かるよ、律」

『お役に立てて嬉しいです! どれから再生しますか?』

「時系列順に、4つくらい並行で流してくれ。あとスロー再生でよろしく」

『わかりました』

 

 

 

『こちらが最後のデータです。参考になったでしょうか』

「大いにな。殺せんせーの動きのイメージがかなりついた。目の前でスピードを体感できたのも大きいな」

 

 マッハ20もあれば回避ルートなんざいくらでもあるだろう。だが今のログから動きのクセは何となく掴めた。人間だろうが人外だろうが、殺せんせーが意志を持った生物である限りクセは必ず存在する。

 

「合理的な動きだな」

『私もそのように分析しています。私が放った弾幕でも、ほとんどのケースで安全に回避できる可能性が高い、つまりは回避に最適なルートを計算して動いていると推測できます』

 

 想定される回避ルート、各ルートの安全に逃げられる確率、実際の殺せんせーの回避ルートが表示される。律の言う通りほとんどのケースで最も確率が高いルートを選択して回避をしているようだ。

 

「律、殺せんせーの顔がたまに縞々模様になってるけど、これってどういうこと?」

『それは殺せんせーの感情を表しています。その縞々模様の時は相手をナメきっている時の表情のようです』

「どんな仕組みだ……」

 

 ログを見た限りでは最適なルート以外を選択している時は、この縞々模様の顔をしている時が多い。余裕があるからこそ、あえて確率の低いルートを選択しているのか?

 殺せんせーの思惑はわからないが、最適以外の行動パターンも考慮しないといけないとなると選択肢が多すぎてしんどいな。マッハ20という常識外のスピードで動き回る殺せんせーの回避ルートをリアルタイムで予測するなんて、ただの人間の俺には無理だ。当然目で追い続けるのも不可能。先程のログもスロー再生されていたから分析できていただけ。

 

『ログだけでなくこんなデータもありますよ。殺せんせーの弱点集です』

「どれどれ……役に立つか、これ?」

『……考え方次第です』

 

 カッコつけるとボロが出る、テンパるのが意外と早い、器が小さい、などなど……おっぱいってなんだよ、おっぱいって。エロダコか? まぁ『テンパるのが意外と早い』だけは役立ちそうか。

 

『それから、殺せんせーには脱皮と液状化という奥の手もあるようです。直接見ていないためログはありませんが、脱皮で発生した皮で弾丸や爆発を防いだり、液状化で引き出しなどの小さな隙間に入り込んだり。脱皮に関しては月に1度しか使用できないようですが』

「ふむ、厄介だな」

『私が知る限りでは5月はまだ脱皮をしていません』

 

 脱皮はまだいい。追いつめて使わせてしまえばそれきりだから。問題は液状化だ。隙間に入り込むくらい大量に弾をばらまけば対策になるか? 手榴弾にBB弾を詰め込んで爆散させればいけるか? ログがない以上、どれだけ対策を用意してもぶっつけ本番にせざるをえないな。

 

『これで私から提供できるデータは以上です』

「ん、ありがとう……よし、これでいこう」

『もう決まったんですか?』

 

 相手の行動の選択肢が多いなら、環境を工夫して行動を縛ってしまえばいい。人外が相手だろうとそれは変わらないはず。

 

「――――って感じの作戦だ。暗殺というよりはほぼ戦闘だけどな。律の主観でいい、殺せると思うか?」

『そうですね……この端末に柊さんの戦闘データが保存されているのを確認しました。柊さんの作戦の評価のために、柊さんの動きを学習させていただきます』

「いいよ。訓練の時に見返すように撮っておいた録画な」

『……学習完了。続いて作戦のシミュレーションを行います。……先程の作戦を柊さん単独で実行した場合、殺せんせーの暗殺成功率は1%。私と合同で実行した場合の成功率は30%と判断しました』

「んー、思ってたより低いな」

 

 体感60~70%くらいだったんだが。だが律が計算して出した答えならそうなんだろう。

 

『いえ、私の知る限りでは最も成功率の高い作戦です。これで殺せればよし、殺せなくともデータが得られれば次につながってそれはそれでよし、ではないでしょうか』

「それもそうだな」

 

 もちろんこの1回目で殺しきるつもりで臨む。時間をかければかけるほど、殺せんせーも俺の動きを学習してくるからな。

 

「烏間先生に必要な道具を用意してもらわないとな」

『プラスチック製でよければ私で用意できますよ。特殊なプラスチックを成型できますので、データさえいただければ。強度も保証します』

「用意にどれくらい時間が必要だ?」

『明日の朝までにはお渡しできます』

「OK。じゃあ律に用意してもらおう。決行は明日だ。明日の放課後に殺ろう」

『……はい?』

 

 

 

「風呂っていいよな。湯船に使っている間は頭を使わず、心も体もリフレッシュできる」

『柊さん? 私の話聞いてないですよね?』

「うん」

 

 私も連れてけと律がうるさいので、しかたがなーく浴室にスマホを持ち込み、律の話に付き合ってやっている。もう本当にうるさかった。置いていこうとすれば大音量でアラームを鳴らしまくるし、迷惑ったらありゃしない。

 

「なんでもいいけどさー」

『話を聞いてくれないのはいいことではありません』

「服くらい着ろよなー」

 

 画面に映る律はバスタオル1枚、何故かバッチリお風呂スタイルだ。

 

『お風呂では裸のコミュニケーションが必要と学習しています。ですので柊さんに合わせて私もこのような格好をしてみました』

「裸のコミュニケーションが許されるのは同性同士の場合、それか恋人同士の場合だけだぞ」

『そうなんですか?』

「そうなんです。律も女の子なんだから、男の前ではちゃんと服を着なさい」

『女の子……でも確かに、岡島さんに教えていただいた本では恋人関係を匂わせる描写が多くありました』

「岡島?」

『先程紹介しましたが?』

「そうだっけ」

 

 律は先程からずっとE組のメンバーの紹介をやっている。律以外とも協力すれば成功率がより上がるかもしれないから、まずはメンバーのこと知ってほしいらしい。まぁ律のログを見た限りでは作戦に組み込んだところで大した戦力にならなさそう。だから律に紹介にもあまり興味がない。

 それはそれとして、律が画面に表示している、岡島とやらに教えてもらった本は明らかにエロ本だ。なんて本を女の子に教えているんだ。それ以前に中学生がエロ本を読むな。

 

『もう……柊さんがちゃんと覚えてくれるまでずっと話続けますからね。柊さんが寝ようとしてもずっと耳元で話しかけ続けますから』

「やめろやバカ。スマホの電源落とすぞ」

『であればパソコンから。それもダメならスピーカーに接続します。それすらダメなら電灯をオンオフし続けて睡眠の邪魔をします』

「ウイルスかてめー」

『ウイルスではありません、律です』

「……はぁ、わかったわかった。1人だけ覚えてやる」

『皆さんのことを覚えてほしいのですが……わかりました。まずは1人、頑張って覚えましょう。柊さんにとっては難しいことかもしれませんが私がサポートします』

 

 あれ、俺できない子扱いされてる? 『目指せ友達100人』なんて旗を掲げてるし。興味がないだけで、人のことを覚えるくらいちゃんとやればできますが。

 少し待っていると律は何十名か分の顔写真と氏名のリストを表示し、選べと言わんばかりに提示してきた。

 

「律が選んでくれるんじゃないの?」

『私が選んだ方ではちゃんと聞いてくれないではありませんか。それなら最初から柊さんが選んでください。それに、その、柊さんがどのようなタイプの女の子を選ぶのか気になりますし……』

 

 何故に女の子限定……よくみたらリストには女の子しかのってない。こいつもしかして恋愛に興味津々か? 最新鋭のAIはここまできているのか……拗ねたりもするし、俺なんかよりよっぽど人間味があるぞ。

 

「えーと、じゃあ……この神崎って子」

『神崎有希子さん、ですね。出席番号8番、得意科目は国語、それからゲームが非常に得意なようです。身長は159cm、体重46kg、Bカップです』

「ちょいちょいちょい、体重と胸のサイズはやめとけ。神崎って子に怒られるぞ」

『怒られるのですか? では今の情報は忘れてください』

「善処はする」

 

 というかどこで仕入れた、その情報。

 

「身体的特徴はもういいから、性格とか」

『わかりました。神崎さんはおしとやかで、振る舞いが上品で、いつでも冷静で真面目な方です。クラスのマドンナだと杉野さんがおっしゃってました』

 

 美人だしな、納得。

 

『聞いた話では、杉野さんを始め、何名かの男子から好意を向けられているようです。神崎さんはそれに気づいていないようですし、仲のいい友達だと認識しているそうです』

「南無」

 

 誰が吹き込んだのか知らないが、悲しい状況だなぁ。律が恋愛に興味津々なのはこういう情報を学習したからか?

 

『私からお伝えできる情報は以上です。ところで、どうして神崎さんを選んだんですか?』

「ん? 美人だから」

『なるほど、神崎さんのような美人な方が好み、と……』

 

 なんかメモされてる……別にいいけど。間違ってないし、知られたところで困らないし。

 

「これで満足か?」

『満足ではありませんが、まずは1人という約束でしたので』

「ん、なら睡眠の邪魔するなよ」

『はい!』

 

 あー、律と長話してたから少しのぼせそうだ。明日の作戦決行に影響が出たら困る。スマホのカメラを指で塞いで、律に変なものを見せないよう気をつけながら風呂を後にする。

 

『柊さん、何も見えないのですが……』

「見なくていいの」

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