三限の授業が終わった後、自分は学校の屋上に向かって歩いていった。薄暗い階段を駆け上がって扉を開けると、日の光とともに、新鮮な空気が入ってきた。
屋上はいつものように、生徒たちがちらほらと、各々が何か話したり、食事をしたりしていた。柵の隙間からは青空と、見慣れた街並み、グラウンドで掛け合う生徒たちの声が聞こえた。
ネオを探してあたりを少し見渡すと、彼女は柵に寄りかかって、携帯電話をいじっていた。自分は彼女に近づいていって声をかけた。彼女もこちらに気がついた様子だった。
「来たよ」と自分は言った。
「うん」とネオは言った。彼女は携帯をしまって、しばらく黙り込んでいた。
「こないだはごめん」と彼女は唐突にそう言った。
「え?」
「ちょっとおかしかった」と彼女は言った。「急に家に誘うとか。私そういうところ、みんなよりちょっと疎いから」
彼女は俯いて、あからさまにこちらに視線を合わせなかった。制服のポケットに手を突っ込んで、適当に足を動かしたりしていた。
「別に気にしてないよ」と自分は言った。「急に誘われて驚いたけどね。教室のみんな、驚いてたよ。」
「そう」と彼女は言った。「気にしてないならよかった」
「それが気がかりで、最近自分とあまり話さなかったの?」
「うん。君に迷惑な気がして」
自分は思わず苦笑してしまった。
「そんなわけないよ」
「そう」と彼女は言った。「今度また、どっか行かない?」
「どこに?」
「カフェとか。駅の近くにあるところ。私の友達が行きたいって言ってる。君はあまりああいうところ、好きじゃないかもだけれど」
「いいよ」と自分は言った。
「じゃあ」と彼女は言った。そうして彼女は、屋上の扉の方に向かっていった。
「・・・やっぱり、ちょっと待って」
自分がぼんやりと柵の外の景色を眺めようとしたところ、彼女は立ち止まって、自分に向かってそう言った。「きみは──いや、なんでもない。やっぱり・・・」
「え?」
彼女が唐突に話しかけてきたので、自分は彼女の方を思わず振り向いた。ネオは少し戸惑った様子で、自分の方を静かに見つめている。青空を背景に見る彼女の姿はどこか絵画のようで、それはなぜか寂しかった。彼女はいつも薄ぼんやりとした雰囲気だった。
「・・・遊びに誘うのって、いつも私からだよね。君はどこにも私を誘ったりしない」
彼女はそう言って、階段の方へと向かっていった。彼女の眼差しにはいつもと違う感情の色合いを感じた。(続く)