ISは人を傷つける為の道具じゃねぇ!俺とISバトルで勝負だ! 作:ホビアニ系主人公VS鈍感系主人公
ISバトルしようぜ!!!!お前ISな!!!!
とある市民間……そこで行われているのは、ISと呼ばれるパワードスーツの起動テストだ。本来女性のみにしか行われなきはずのそのテスト会場は……先日の
IS、インフィニット・ストラトス。本来女性のみにしか使用できないはずのそのパワードスーツを、歴史上初めて身に纏った男性……名は織斑一夏。
彼の存在を皮切りに、各地で男性でもISを起動できるかのテストが政府主導のもと行われた……この十年でのISの台頭から世界の女尊男卑は、過去稀に見ないほど酷い状態となっていた。その不条理から脱するチャンスだと言わんばかりに……まぁ、今の所適合者は全く出てこないのだが。
まぁ、そんな話はさておいて……事が動くのはとある少年の手番が回ってきた時。担当員はもはや分かりきった結果の連続で、見境なく大きな欠伸を伸ばして、テキトーに指示を出す。
「はい、ISに触れて起動を念じてください〜」
うん、クッッッソ雑である。……まぁ、こんな意味のない仕事をやらされていれば誰だってこうもなるか。
赤髪の少年はそっと量産型IS打鉄にぽんぽんと触れて撫でるようにしてから、起動を念じる…………
(纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように纏えますように)
そんな事を思いながら……すると、次の瞬間ピカッとした光りが辺りを包み……赤髪の少年は打鉄を纏っていた。
言葉にすれば簡単だが、事はそう単純ではない。本来、男性には装着不可能だと言われていたものを纏う者が、男性の中から二人も現れたのだ。
会場は一気に唖然に包まれた……担当員が口をぽかんと開きながら、何とか言葉を捻り出す。
「え……えっと……適正ア「イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」」リィッ!?!?!?」
「マジで!?マジか!?マジだァァァァァ!!まさかISを纏えるなんてなぁ!!っぱ想像してたよりも重量は感じねぇな!!なんか今なら空も飛べそうだ!あっ!飛べるんだよな!?飛ぶぜ!飛ぶぞ!?飛ぶから!!!」
「えっ!!!???ちょまッッッ」
この後、女の人が呼ばれてとっ捕まれた。
・ ・ ・
インフィニット・ストラトス……またの名をIS。十年ほど前に公表され、軍事の、世界の常識そのものを変革した超高性能パワードスーツである。
元は宇宙開発用に作られたパワードスーツだが、篠ノ之束が設計開発した本機は「白騎士事件」と言う2000発以上の成層圏ミサイルからIS1機が対処した事件を境に、その既存の兵器を逸脱する戦闘能力から各国も目をつけて研究開発が続けられた……が、肝心のコアの政策が製作者篠ノ之束のみにしか製作できない為、量産化の目処は立っていない。
一見すると高性能な兵器に思えるかもしれないが、この兵器にはとある欠陥が用意されている……それは、女性以外の使用が不可能な点である。
その為に世界の女尊男卑は悪化の一途を辿る……と、ここから先は蛇足だ。それよりもまずは、先程騒ぎを起こした赤髪の少年ーーー『
彼は、打金を起動してから数週間後の現在……保護観察の名目で政府のしかるべき施設に軟禁中だ。世界に現在2人しかいない男性のIS装着者なのだから、政府としてもこうするのがベターだろう。油断するとさらわれかねないのだから……冗談抜きで。
肝心の彼は備え付けられたベッドの上に体育座りを決め込んで、背を壁に当てながらぼけーっと上を向いていた。そして、心底不思議そうに呟いた。
「う〜ん、何がいけなかったんだろうか?」
何もかもである。
具体的にあのテストの後何が起こったのか解説しよう……あの後、打鉄を纏えた興奮で阿良田はその勢いのままISを使い浮上……そのまま会場内を飛ぶという控えめに言っても頭のおかしい馬鹿みたいな真似をしたのだ。
普通ならテスト用のISならば多少のロックをかけておくのだろうが……ほぼ破れかぶれのようなテスト会場だ。どうせ他に装着できる人もいないと高を括って適当な打鉄をそのまま使用したのだろう。雑な仕事だ。
……それが、阿良田がISに乗って狭い会場ないで飛び回っても良い理由にはならないが。
結局は呼ばれてきた女の人にISの力量の差で捕まった……飛んでから約1時間後に。その後は派手に怒られた後に黒服に捕まっていろいろ尋問受けたりサンプル取られたりして、各地を転々としてから今に至るというわけだ。
「しかし、俺にISの適正があったとはなぁ……!!」
阿良田は嬉しそうに手をぐーぱーする。IS……その存在には昔から阿良田は憧れていた物だ。それは、ISが強さの象徴だからとか、そんな話ではない。
元来、ISとは元々宇宙での活動をよりスムーズにするための宇宙服の様な役割を想定して作られていたのだ。その存在に、阿良田は心揺さぶられていた。
それは、元々阿良田がメカニックに……強いては宇宙に興味と探究心を持っていたからであろう。そうなった理由には宇宙飛行士であった彼の両親の存在は切っても切り離せない…………宇宙の藻屑と化した夫婦とその息子の話は追々だ。
……兎に角、そんな彼にとってISを纏えるというのは夢のような事だ。ISの世界大会……モンド・グロッソにだって何度か足を運び、運べなくてもテレビ越しで見た記憶がある…………本当に素晴らしいパワードスーツだ。
だのに、世間で言われるのは女尊男卑の象徴だの有望な兵器だのとそんな話ばかり……珍しい話ではない。どんな素晴らしい発明でも、結局は戦争の道具でしかない。虚しい話だが……それが、現実なのだ。
「なら、そんな現実ぶっ壊せば良い。」
不意にそんな言葉が漏れる……阿良田の口癖のような物だ。……すると、不意に一声かけられる。
「何を、壊すって?」
その言葉に不意に阿良田が顔を向けると、そこにいたのは黒髪に鋭い目つきをした凛々しい女性が、まるで養豚場の豚を見る目で見下ろしてきたた……
その眼光に、阿良田は口をパクパクさせるだけだ。だが、彼女は見据えてくるのをやめない……不意に阿良田が声にもならない声を上げる。
「お、お、お、」
「お?」
「織斑千冬さん……っすよね……!?第一回世界大会優勝者!?ブリュンヒルデの!?」
阿良田にとっては見間違えるはずもない、ビデオを擦り切れるほど見たし、その勇姿は今も彼の中に深く突き刺さっている。ISに詳しかろうと何であろうと、彼女を知らぬ者が居ないだろう。
織斑千冬、文字通り人類最強とも言えるお人だ。
「うおおおおおお!!!!クソメチャ感激です!!!!すっげぇ、すげぇ!まさかこんな所で会えるなんて……良い事もあるモンっすね!」
「……そうか。」
(……ふむっ、他人の男から此処まで尊敬の目で見られるのは久し振りだな。)
織斑千冬……彼女も世界に名を轟かせているIS乗りだ。そりゃあ人並みよりも遥かに感嘆の声を受け取った事はある……だが、その多くは女性からの物だ。
男からについては……消して少なくはないが、ここまで実直に尊敬の眼差しを向けてくるのは久々だ。大体の男は今の女尊男卑の原因であるISとその代名詞と呼べる存在について、よく思わない者目線で見てくる……口では、多少は言い繕うが。
「いやっふぉう!!捕まってよかったぁ!」
「言い方。」
まぁ、不幸の中の幸いと言うニュアンスなのだろう……しかし、ほぼ軟禁状態でこれだけの元気を有り余らせているとは……能天気なのかはたまた……
「まぁ良い……私が態々貴様に会いに来たのはとある吉報を持ってきたからだ。喜べ、もうすぐここから出られるぞ。」
「おぉっ!!」
「だが、お前は今政府……いや、世界にとっても貴重な存在だ。」
「モテる男は辛いなぁ〜!」
「故に、お前を保護観察の名目の元IS学園に入学させる事になった。」
「そこに痺れる憧れるぅ!」
「お前そのちょくちょく入れる合いの手は何なんだ……」
(こいつ何処まで本気で何処まで冗談なんだ……)
発言一つ一つが妙に浮足立ったハイテンション……と言うか、全体的になんか暑苦しい。この部屋だけ外と比べても何度か暑く思えてしまう。
「はぁ……まぁ、大まかに説明するそれだけなのだが、IS学園の入学にもテストはある。実技、筆記双方……お前にも当然それは受けてもらう訳だが……」
勿論、本元のテストではないがな。と付け加える……まぁ、要するに一般常識から少し踏み込んだ範囲とISを再度動かせるかのテストだろう。
「その為の参考資料を持ってきた。精々勉学に励め。」
「この部屋でですか?」
「悪いがまだ家に返す訳にはいかんのでな。そうなる……せめて親族に会える様な手配はしておく……」
「あ、要らねぇっす。」
「……む?」
要らない……とはどういうことか?千冬は目の前の阿良田と言う男の家庭環境は
「父さんと母さんは10年前事故で死んだらしいですし、俺を育てた叔父も実子の方に夢中だったんで……その証拠に、会いに来なかったでしょう?」
……確かに、千冬の確認できる範囲ではあるが今まで阿良田に対して面会を希望した者は……居るには居るが、親族ではなかったようだった。しかし、それは……
(……ん?
千冬の感覚は、阿良田のその言葉の違和感に感づく。「らしい」……随分他人事のように感じる。それも
一般的にはどうであれ、少しかじっていれば嫌でも耳にする話題だ。その宇宙船に乗っていた内の2人が、宇宙飛行士が大神夫婦であり、阿良田の実親だ……それは千冬も調べて知っている。
だが、これを踏み込む事には……流石に抵抗を覚える。だって、その痛ましい事故を語るには、目の前の少年の顔は余りに普通だった。思い出して不安になり悲しむでもなく……ただ、なんてこと無いように、そんな顔をしていた。
「あ、別に叔父も俺も嫌いあってる訳じゃないですよ?ただ単にお互い無関心が一番心地よいだけです。」
それは、保護者と子供との関係としてどうなんだ……千冬はそんな疑念を抱くが、それに首を突っ込むような人間でもない。
「そうか……まぁ、ノートや筆記用具の類が欲しければ言えば直ぐに用意してもらえる。」
「感激っすねぇー!」
「ほれ。参考資料だ。」
「おぉ!」
阿良田は千冬の出した電話帳みたいな参考資料に喜んでかぶりつく。パラパラと軽くめくると、ウンウンと、頷きながらパタンと閉じる。
「結構勉強してた部分もあるけど、役立たせてみせます!」
「勉強?前々からISの勉強をしていたのか?」
「ISは俺にとって憧れですからねぇー!参考書書店で買うのには勇気が必要だったけど。」
男の癖にって目で見られたっけな〜!なんて懐かしそうに阿良田は呟く。憧れ……か。千冬は無邪気な子供のように参考資料を見る阿良田を見てそんな感想を抱く。
「何故、ISに興味を持つ?偶々こうなっているが……お前にとっては扱えるかも分からない代物だったのだぞ?」
「わかってますよ〜!でも、使えないからって好きな物を勉強しない理由にはならないでしょう?」
「確かにな……だが、何故ISに拘る?」
「それに、コレ……元々宇宙開発用でしょ?それに、空も飛べるしスポーツとしても使える……まさに人類の新たなパートナー!これを兵器運用としてしか見ない世界は本当に狂ってますよ。」
……狂っているのはどちらなのだろう。あの代物が兵器運用されるのは開発者すら想定内だったはずだ。それをコイツは……その兵器運用自体を狂ってると断言してみせる、とんだ能天気な楽観主義者だ。心にムカムカしたものが出てくる。
「綺麗事だな。」
不意にしまったと顔に出てしまう。だが、言葉にしてしまったものはしょうがない……阿良田も啞然と千冬を見る。聞かれてしまったのだろう。……教鞭をとるものとしては失格だが……その感情を押し殺し阿良田に冷たく言い放つ。
「ISの兵器運用は必然だった……それは避けられない事実だ。ミサイルで狙い合い、戦車で撃ち合い、戦闘機でドッグファイトする時代に終わりを告げさせるのに十分な代物だ。それは開発者も理解していた。それでもなおISの兵器運用を狂ってると言い放つか。」
「狂ってますよ。狂ってると思わなきゃいけない。これを正常だと思ったら……この世は闇だ。」
これほどまでに人類の未来となる代物を、人類で食いつぶし合うために使うなんて……そんな現実、狂ってなきゃいけないのだ。それが、阿良田の考えである。女尊男卑とかそんなの関係なく……人として思えることである。
千冬は、はぁ……と一息ついて改めて阿良田を見る。
「お前がさっきぶち壊そうとした現実はそれか?」
「えぇ、勿論。」
「……険しい道だぞ、お前一人では成し遂げられない、お前が生きている時代に見られないかもしれない。」
「なら、後に託してずぅっと繋げます。」
随分先を見ている……千冬はそこで初めて軽く笑ってみせる。本当にわずかに口角が上がる程度だが。
「なら、精々IS学園で学べるように精進しろ。」
「ッッッ!!すっ!!!!」
千冬は要件はそれだけだと言って、阿良田に背を向けて歩き出す……すると不意に立ち止まり、一つの疑問を投げかけた。そう、難しい話ではない。
「……お前、篠ノ之束と言う女を知っているか?」
「当然ですよ!ISの基礎を開発した科学者で……」
「済まない、言い方が悪かったな……彼女と
「えっ?」
思わず素っ頓狂な声が出てくる……ISの開発者と?自分が?……阿良田は少し吹き出してから、ケラケラと爆笑しながら答えてみせる。
「そんなわきゃ無いでしょう!出会ってたら一生忘れませんよ!」
だろうな。そんな感覚が千冬に芽生える…………これほどまでにISを想える人間が居たのなら、きっと、彼女も喜んでくれたのだろうか?……それは、分からないが。すこしは、マシな未来もあったのかも知らない。……そんな風に思ってしまうのだ。
阿良田と千冬がそんなやり取りをする最中……彼女の元にあるメールが送られてきていた。
『やっほ〜!ちーちゃん元気〜?新しい男性のIS装着者が見つかったって〜?良いでしょうならばご用意しましょう専用機!!!天災の恵みをありがたく受け取れ!!!と言う訳でその大神阿良田君の専用機今度送りま〜す!!プレゼント、気に入ってくれると良いケド!それじゃ、諸々はよろしくぅ〜♪』
巫山戯たメールでとんでもない内容を送ってきた……しかも捨てメアドで……それに対して、事を終えた千冬がどう反応してもメールの奥にいる彼女の返答は変わらない。
『約束だから。』
その一言だけだ。