ISは人を傷つける為の道具じゃねぇ!俺とISバトルで勝負だ!   作:ホビアニ系主人公VS鈍感系主人公

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燃え上がれIS!切り札の愚者を焼く炎(イグニス・ファトゥス)

 

 ……カタパルトの奥に置かれた準備室。白式のフィッティングを進めている一夏は、千冬や同席した相川、本音と共にセシリアと阿良田の試合を見ていた。

 

 壁に付けられた大型モニターに映るのは、ブルーティアーズの4機のビットとスターライトで阿良田を狙い撃つセシリアと、その猛撃を次々と高速で躱していく阿良田と陽炎の姿だ。

 

「……すげぇ……阿良田……!!」

 

 その光景を見た一夏は、思わず感嘆の声を上げる。素人目から見ても、阿良田の陽炎のスピードは異常だと分かる。スピードを出すだけなら兎も角、阿良田はそのスピードを慣性まで含めて完全に御している。

 

「……奴のIS、陽炎は機体本体はスピードに特化させ近接戦に強く調整されている。」

 

 陽炎のスピードがあれば、ビットを振り切るのは容易い。問題は、その加速のあまり機体の制御ができなくなった時だ。空中だ車のように加速に耐えられずスリップしたら的も良い所だ……だが、阿良田はそうはなっていない。それは……初陣の実技入試の時からそうだ。

 

「流石に、あのスピードを初見で乗りこなしたのを見た時はギョッとしたよ。」

「えっ!?」

「千冬姉ぇ、阿良田と戦った事があるのか!?」

「織斑先生だ馬鹿者!!…………奴と陽炎の初陣、実技入試の教官を務めたのは私だ。」

(本当は私がする予定だったんですけど……)

 

 千冬の言葉に、真耶は白式のセッティングを進めながら心のなかで突っ込む……アレには驚いた、土壇場で唐突に「私がやる」と言い出したのだから。

 

 そして、阿良田の初陣で教官が千冬だと知った三人もまた目を丸くして驚く。そんな事、阿良田は一言も言わなかったからだ。

 

 彼のIS好きなら、千冬の事位一般常識よりも常識として知っているはずだ。それなのに言わないのは、自慢になるからなのかどうなのか……しかし、コレで納得も行く。

 

「……そりゃ瞬殺されるのも仕方がない……のか?」

「ま、まさか先生と戦ってたなんて……!!」

「こりゃ〜驚きだね〜」

「なんだ、お前らにも話していなかったのか?随分と大神と付き合っていた様だが……」

 

 千冬がそう言って小首を傾げる。大神は相川と朝のトレーニングとしてランニングしてた事や、夜には整備室で本音と徹底的に陽炎の微調整や整備に励んでいたのは知っている。

 

 一夏は言わずもがな、クラスメイトで同じ男として親睦を深めていた…………その間、幼馴染の箒が悪鬼を見るような目で阿良田を見ていたのもよく知っている。

 

「瞬殺されたって話は聞いてたけど……!!」

「し、知りませんでした……!!」

「ずっと機体の調整についての話をしてましたぁ」

「そうか……まぁ、アイツはそう言う事言うタイプではないのだろうな……………」

 

 千冬は顎に手を当てて、画面越しに阿良田の戦いぶりを見る。流石に攻撃は当てられないが……セシリアの方も阿良田と陽炎のスピードに翻弄され、狙いが定まらないようだ。画面から声が聞こえてくる。

 

『くっ!ちょこまかと!落ちなさいカトンボ!!』

『どっちかっつったらカゲロウかなァッ!!』

 

 阿良田は小型のビームガン2丁を放つが、セシリアはそれを容易く避ける……その間、ビットの動きが少し鈍くなる……ほんの僅かだが。

 

「それで、お前達の目から見て大神はどう映る。」

 

 すると、千冬は藪から棒にそんな事を問いかける。二人とも一瞬理解できずにぽかんと小首を傾げるが、千冬はコホンと一息して改めて問いかける。

 

「…………いや、奴を見ての印象や技術についてな……そう言うのは近くで見ていたお前達がまずは詳しく聞けると思ってな。」

「ちふゆね……織斑先生も結構気にしてるんですか?阿良田の事を。」

「……ある意味そうだな。」

 

 要するにデータが欲しいと言う事だろうか?相川と布仏は一瞬顔を見合わせると、静かに答える。

 

「う〜ん、何も考えてないように見えて人一倍物を考えてる人……ですかね〜?」

「あ、私も同じ事を思った!」

「ほお?」

 

 何も考えてないようで人一倍物を考えている……相手にすると一番厄介なタイプだ。思考が読みにくいから……しかし、阿良田の場合はただ飄々としてるのとも違う。

 

「なんというか……ゼロ度の炎みたいな?燃えてるように見えるのに実際はクールなかんじかな〜?」

「うんうん!……てか、ゼロ度の炎って何?たとえ?」

「友達が見てたヒーローアニメのタイトルだよ〜」

「そう、か。」

(千冬姉ぇ?)

 

 一夏は、珍しく何ともいえぬ表情を見せる姉に物珍しさと違和感を覚えていた……何か、迷っていると言うか、考えているように見える。

 

 弟にそう見られている中、画面に映る阿良田の姿を見て、千冬が思い出すのは……あの災いの元のような幼馴染の顔。

 

 まるで()()()()()()()()()()阿良田へ専用機の陽炎を送りつけ、あまつさえも『約束だから』だなんてのたまったあのウサ耳幼馴染だ。

 

 ……千冬も初めは疑っていた。阿良田が束の手の者ではないかと……しかし、当人は束とは会ったことがないと言う。少なくとも、千冬の長年の勘はそれが嘘だとは告げなかった……過信は禁物だが、少なくとも阿良田が束と知ってて繋がっている線は薄い。

 

(……束、お前は大神の何を知っている?)

 

 ならば何だ?何の約束だ?……阿良田の親族か?阿良田の実親は宇宙開拓の最前線を走っていた宇宙飛行士。……束の夢とも繋がりを見いだせる。だが、それだけの理由で手を貸すわけがない。

 

 現在の義親はISメーカーの開発部の人間、義兄は確か、自衛隊の戦闘機のパイロットだったか?ISが広まっても防衛力は日本には必要……そのすべてをISで賄うことは出来ないのであれば、必要な仕事だが、束が約束所か会話すらしないのは手に取るように分かる。

 

(……改めて徹底的に調べ直す必要があるな、大神阿良田、旧姓、遥崎阿良田(ハルザキアラタ)の事を。)

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ふふっ、逃げてばかりでは勝てなくってよ!」

 

 セシリアはブルーティアーズのビットとスターライトを使い、すばしっこく逃げ回る阿良田を狙い撃ちにしようとしてくる。

 

「くっ……!!」

 

 阿良田も陽炎も上手いこと避けているが、割とすんでの所でビームが掠ったり、不用意に突き進んだら確実に仕留められていたりと……ギリギリで避けることが多い。これは、単に阿良田の経験不足からだろう。

 

 そして同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが分かる……こちらのスピードについてこれるようになってきているのだ。

 

(まだ甘く見てた……!!こんなにもスピードに追いつくのが早いとは……!!)

 

 セシリア・オルコットの事だ、陽炎のスピードにもいずれ対応してくるのは読んでいたが……流石にここまで早いとは思わなかった。まだまだ追いつかれてやるつもりはないが……このまま避け続けての長期戦は不味い。

 

「っ!そっち!」

 

 阿良田の2丁のビームガンが放たれる……狙うは本体、セシリア・オルコット。しかし、流石にひらりと身を翻してかわされてしまう。

 

「惜しい惜しい!」

「何処が……!」

 

 かすりもしてなかったぞ、今の……そんな事を思いながら、ビットを避けつつ戦う。今の所、阿良田のほぼ想定通りの負け筋を進んでいる……このままでは、じわじわと消耗してやられるのがオチだろう。

 

(……仕掛けるかぁッ!)

 

 阿良田はビームガンを量子変換、変わりにサーベルを取り出して……一気に陽炎を加速させてセシリアの元へと向かう。だが、見え見えのサーベルで突貫してくる相手に、マトモに懐に入りこませるわけがない。 

 

「近接戦……?そんな物に持っていかせは!」

 

 セシリアはスターライトを構えて、阿良田を狙い撃とうとする……ビットは常に阿良田を取り囲み、絶えずビームを放ってきていた。

 

 だが、阿良田はこれを待っていた……セシリアがスターライトを構え、自分を狙ってくれる瞬間を。

 

「所がギッチョン!!」

 

 次の瞬間、阿良田はサーベルの1本を勢いよくぶん投げた。投げられたサーベルは、陽炎によってつけられた加速と共にぐるぐると回転しながらセシリアへと向かう……正確にはセシリアの手元のスターライトに向かってだ。

 

「っ!?」

 

 すると、セシリアは咄嗟にスターライトを庇うように腕を動かす……すると右手の装甲をサーベルが切り裂き、ダメージを与える。スターライトも直撃こそ免れたが、少し斬られてしまった。

 

「なんと野蛮な……!?」

「やっと近づけた……そうだもんな、ビットとは言え動かしてるのは人間だ。その人間が油断したなら……ビットの動きも緩むよなァッ!!」

「くっ!インターセプター!」

 

 もう一本のサーベルを振り下ろす阿良田だが、それはセシリアの方の近接用ブレードであるインターセプターに阻まれる。だが、推力や馬力は阿良田の陽炎が若干上……このまま押し切れば勝てる!!……そんな考えが阿良田の脳裏に浮かぶ。

 

「ふふっ……まさか、私にブレードを使わせるとは……しかし、一撃で決められ無かったのが貴方の敗因!!」

「ッ!?」

 

 すると、セシリアの身体にの影から二機のビットが現れる……そして、至近距離からミサイルを放つ。ミサイルの動き自体はすっとろいが、陽炎のスピードや機動性でもここまでの至近距離から撃たれたのだはどうにもならない!!

 

「がァァッッ!!」

 

 阿良田はそのビットを受け入れるしかなく、ミサイルの一撃によってシールドを大きく削られていく。そして、一度体勢を崩せばあとはセシリアのビームビットではどうにでも調理できる。

 

 この機は逃すまいと、セシリアのビットのレーザーが雨のように、青い涙のように阿良田の陽炎を襲う……阿良田は無ずすべもなくシールドが削られていくのを感じるだけだった。

 

「ふ……ふふ、先程の反撃には驚きましたが……この程度でセシリア・オルコットは破られませんわ!」

(くそっ……駄目か……そうだ、ブルー・ティアーズにはミサイル用のビットがある……なんで忘れてんだよ俺ァッ!!)

 

 そうだ、忘れていた……セシリアのビットは六機ある筈。しかし展開されていたのは4機のみではないか。腰部のミサイルが残っていた……こんな簡単なことを忘れるなんて……こうやって実際動かすのと、理論を組み立てるので話がまるで違う。

 

 やがて、阿良田は陽炎と共にビットによって地面に撃ち落とされる……シールドエネルギーはまだある。文字通り、嬲り痛めつけるつもりだろうか?それを裏付けるかのように、セシリアは傷のついたスターライトを向けて話す。

 

「……大神さん、もはや貴方に出来る事は何もありません事よ。あの一撃にはヒヤリとさせられましたが……今降参するのが賢明でしてよ?」

 

 辺りにはビットがある……結局1機も撃ち落とせずだ。下手に動けばその瞬間ビームが飛んでくる。陽炎のスピードで、本当に完全に交わしきれるだろうか?……どうやら、負け筋を引いたようだ。負ける気がしてきた。

 

 嗚呼、しかし何故だろう。全く持って悔しいと言う感情が出てこない……強がりとかではなく、本当に。むしろ、楽しく感じてきた。いや、カタパルトに立っていた時から……ずっと夢見心地の楽しい気分だった。何か、掴めそうな気がする……いや、掴んだ気がする。

 

「あはは……っぱりだ!!!」

「っ!?どうかしまして……勝てないと理解して気でも触れましたの?」

 

 突然高笑いを上げてわけのわからないことを口にする阿良田……その姿はセシリアは勿論、アリーナの観客席も、待機室の一夏や千冬や真耶、本音にも理解しがたいだろう。

 

 ……だが、阿良田の勝負やISへの考えを聞いたことのある相川は、なんとなく分かった――これが、阿良田のから破りのきっかけになると。

 

「本当に……やっぱりよ……!!!!」

 

 次の瞬間、阿良田は楽しそうに弾けた。

 

「思った通りだ!!やっぱり楽しいなァッ!!!!ISバトルって!!!!!」

 

 阿良田の心から出たその言葉は、アリーナ中に響き渡り……一瞬で静寂を作った……そんな静寂の中、阿良田と陽炎は立ち上がる。困惑、驚き、感心、嘲笑う声……色々なものが阿良田には聞こえてくるような気がしたが、そんなのはもうどうだって良い。

 

「降参はしないと言う事で……?愚かな。無様な敗北を晒す事になるのに……」

「無様でも愚かでも何でも良いさ………こんな楽しい事、負ける事程度でやめてたまるかよ!!!!」

 

 阿良田は、本当に心の底から楽しそうに啖呵を切る……まるで、子供がはしゃぐような声だ。……ここで「負け惜しみ」なんて言葉を発したら、そっちのほうが負け惜しみに聞こえそうなほど、本当に楽しそうな声で。阿良田は額を軽く頭で小突き……モノアイを発光させる。

 

「なんか……ちょっと、頭が冴えてきた……こっちも()()を使うか……!!」

 

 

 

 その言葉は、待機室にいる面々にも届いていた。アレの正体をしる面子は面白そうなものが見れると言わんばかりに声を上げる。

 

「ほぉ……ここで()()を切るか、大神。」

「おぉっ!やっと実物の()()が見れる!」

「まだデータでしか()()見たことないから、どんな感じなのか気になるな〜」

()()?なんだよ()()って!」

 

 だが、一夏だけは皆の言う()()を知らない。知る機会が無かったのだ……それに対して、千冬が一夏の隣へ立ち、告げるを

 

「大神のIS……陽炎に備え付けられた特殊兵装だ…………武装名は―――」

 

 

 

 

愚者を焼く炎(イグニス・ファトゥス)、起動!!」

「っ!?ブルー・ティアーズ!!」

 

 次の瞬間、危険を察知したセシリアがブルーティアーズとスターライトのビームを放つ。ここまで待っていた分温情だ……残りのシールドエネルギー的にこれらをマトモに食らえば、速攻シールドがゼロになり……敗北扱いとなる。

 

 ……だが、それはビームが陽炎に届いた場合の話だ。その瞬間、目の前で起こったことにセシリアは唖然の声を上げる。

 

「な、何故……ですの!?ビームは命中しましたのに!?」

「してねぇんだよ。」

 

 そう、命中してないのだ。放たれたビームは……名の通りの陽炎現象を引き起こす陽炎に当たる寸前に……まるでねじれたように変形し、まるで壁に打ち付けられたスーパーボールの用にあらぬ方向へ吹き飛んでいた。中にはねじ切れて拡散するように飛び散るビームもあった。

 

 そして、次の瞬間だ……陽炎の各部のスリットから膨大な余剰エネルギーが噴き出す。不規則に揺らめき、消えては現れる……それはまるで……まるで……………

 

「ISが……炎を噴き出した!?!?!?」

 

 セシリアか観客か、或いは他の誰かの感嘆の声が飛び上がった。

 

 そう、それは正に()……そう呼んでも差し支えない代物だった、全身から炎のようなエネルギー……イグニス・ファトゥスを放つIS、陽炎……それは正に名の通りの人魂や鬼火をまとうようにも見える。

 

 阿良田はセシリアへとゆっくりと顔を上げる……そして、そのモノアイが烈火の如くの紅に染まっていた。そして、阿良田はハッキリと言い放つ。

 

「……セシリア、お前との決着は……あと六十秒で着く。」

 




ようやく発動です阿良田のIS、陽炎の切り札!!!


えっ?ファントム・ライトじゃねーかって?……ワタシナンノコトカワカラナイ
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