ISは人を傷つける為の道具じゃねぇ!俺とISバトルで勝負だ! 作:ホビアニ系主人公VS鈍感系主人公
「
燃え上がる陽炎と言うISを見て、セシリアは思わず圧巻される。それだけの威圧感がそこにはあった……余剰エネルギーのたぐいだろうか?それともバリアか?
……いや、今は良い……問題は、セシリアのビームが弾かれたと言うことだ。それに、六十秒で決着がつくだと……?随分と派手な勝利宣言をしたものだ。
「六十秒で決着……?本気でして?」
セシリアはそう言って目を細めて高笑いする……だが、そのすぐ後に耳元から声が聞こえた。
「大マジだ……よッ!!」」
「ッ!?なぁぁぁ!!」
ほんのコンマ何秒かだ、セシリアが目を瞑っていたのは……その隙に、なんと阿良田は完全にセシリアの懐に入り込んでいた。大型のスターライトでは取り回し場扱えない。
ブルーティアーズのビットも同様……仮に効果があっても、今撃つのは自分で自分を撃つことに他ならないのだ。なにより、本来AIが行うはずのビットのロックオンがうまくいかないのだ。
それを察したセシリアは咄嗟にインターセプターで一撃を入れに入るが……阿良田はそれよりも早く残った一本のサーベルをぬく。
次の瞬間、サーベルもまた陽炎本体と同じように……炎のようなエネルギーを纏っていく。まるで木片につけられた火のように、そのエネルギーはサーベル全体を包む……その姿は正に火炎の剣だ。
振り下ろされた火炎の剣は、刃身に触れたインターセプターを容赦なく両断……セシリアとブルーティアーズ本体にもダメージを与える。
「きゃぁぁぁ!!」
セシリアはダメージを受けてノックバックしながらも咄嗟に状況確認……どうやら、あの一撃だけでかなりのシールドを削られてしまった。先程までの貧弱な装備とは訳が違うようだ。
セシリアはビットに不意打ちの砲撃を行わせるが……どれもが阿良田の陽炎、その炎の前に歪ませられあらぬ方向で飛ばされてしまう……どうやら、意識的にバリアを張っているというわけではない。あのISに纏う炎そのものがバリアのような存在なのだ。
(……しかし、この出力を長い時間維持できる訳がありませんわ。)
あれほどのバリアを張るのであれば、それ相応のエネルギーが必要になるはず……そうでなくとも、何かしらの負荷がかかるであろうことは想像に難くない。どの道、うまくロックオンが働かない以上、マニュアルで攻撃を当てるのは至難の業だ。
(だからこその、六十秒での決着宣言……ですのね。)
恐らく、その六十秒は制限時間……あの炎が収まるまでの時間なのだ。であれば、六十過ぎればまだチャンスはある……インターセプターは斬られたが、スターライトはまだ無事だ。ビットも全機残ってる……まだチャンスはある。
(インターセプターは斬られました……恐らく使い物にならないでしょう。あのスピード……ミサイルでの迎撃も現実的ではない。)
「来ないのか?ならこっちから行くぜ!」
阿良田はサーベルを構えて、機体の炎を揺らめかせながらセシリアへと飛び込んでくる。それに対してセシリアは、逃げることを選択した……ビットを戻し、推力として使う。先程よりもスピードの上がるセシリアのブルーティアーズ。……それでも、陽炎のスピードには遠く及ばないが。
(先程ビットであれほど撃ちつけたのです、向こうのシールドエネルギーもそうは多くないはず……あの炎が解けた時が勝機。少しみっともないですが、ここは逃げ切って勝つ!!)
……セシリアはそう考えた自分の心に、少しの違和感を覚えた。みっともない?逃げきって勝つ?……男相手に?あの憎たらしげな男相手に?
セシリアが望んで居たのは、目の前の男を完全に屈服させて勝つ完全勝利だったはずだ……少なくとも、逃げ切って勝つなんて考えはセシリアのプライドが許せない、許せなかったはずだ。
この戦いだって、代表候補生になる為……踏み込んで言えば、自身のプライドの為の戦いだった。それが今はどうだ?プライドを守ることよりも、勝利の為に戦おうとしてるではないか……目の前の男に純粋に勝ちたいと思っているではないか。
(私が……何故そんな……!)
「ボサッとしてんなよ!!」
「っ!やはり速い!」
ほんの少し動きが鈍った所に、阿良田が近づきサーベルを振るう……咄嗟に身を翻したが、また掠った……炎のように揺らめく刀身が当たり判定を変えてくるのだ。……やはり速い、手ごわい。
ここまでで25秒…………残り35秒。
イグニス・ファトゥスを起動した阿良田は思わず顔を顰めていた……機体がとんでもない勢いで高熱化しているのがわかるからだ。直に機体を焼かれるような熱さに、阿良田は歯を食いしばる。
(イグニス・ファトゥス……やっぱキツイな……)
実技試験の時の初起動から分かっていたが……やはり、体への負担がデカい。機体そのものにも多大な負荷が掛かる……特に機体温度上昇が致命的だ、冷却が全く持って間に合わない。
故に一分間……六十秒の機動制限がある。それ以上の駆動は、機体の限界温度を遥かに超えてしまい、最悪オーバーヒートしての自爆だってあり得る……まさに『未完成品』だ。これを発動するのはまさに愚者……名の通りの
その分当然メリットは大きい……機体本体の出力の大幅な向上……エネルギー率で言うなら、攻撃、スピード共に165%の向上だ。そして、機体に纏わりつく炎のようなエネルギー体はビームやレーザー兵器、センサー等を
これにより汎ゆるビーム兵器やセンサー類は陽炎の前に効果はなくなる。それだけではなく、ISはセンサー類を歪められた影響で陽炎へのロックオンや攻撃時の誤差修正ができなくなる。
詩的に例えるなら、
因みに千冬にコレを使用した際にはビーム兵器が使えなくなると知ってすぐに近接武器に切り替えられ、完全マニュアルで攻撃を当ててボコボコにされた。化け物である。
(けど、やっぱり逃げるに切り替えてきたな……)
そりゃそうだ。上手くロックオンできない上にビーム兵器は無効。あの宣言を聞いたら逃げるが勝ちと思うのは当たり前だ。
「けど、俺の陽炎に鬼ごっこのスピード勝負は愚策だぜッ!」
次の瞬間、阿良田は燃えるサーベルを持って加速する……もはやこれだけで通常ISのイグニッション・ブーストと並べるスピードだ。ものの数秒で追いつかれるだろう……もうセシリアにはブレードはない、近接戦を防ぐ手立てはないのだ。
「ッ!?ビットのエネルギーを推力に回しても……!!」
(……であれば!)
ならば、セシリアは下手な動きにはでず、スターライトを構えながら逃走を図る。勿論、阿良田と陽炎相手に逃げ切れないのはセシリアも分かっている……だからこそ勝負に出るのだ。
(貴方のIS操縦の技術は先ほどよく分かりました、あのスピードでもスリップを置かなさい技術。感服いたします……しかし!どんなに技術があっても……スピードが上がれば防ぎきれない慣性が働く!!)
その通りだ。今の阿良田のスピードの慣性はどうやっても殺しきれる物ではない……勿論最小限には出来るのかもしれないが、慣性は必ず生まれるのだ。それを突く。
(……まだ、まだ、まだですわ……………)
どんどん縮まっていく差。だが、セシリアはまだ行動に出ない。逃げる逃げる……まだだ。もっとスピードを出させる。
(追い付く!!必ず……)
(攻撃を……!!)
「「当てるッ!!!」」
セシリアに追い付く阿良田はすぐにサーベルを振り下ろす……そして、次の瞬間セシリアは急停止をする。少し慣性が掛かるが……スピードの都合で、阿良田ほどのスリップは起こさない。
「なっ!?」
阿良田も急停止したセシリアとブルーティアーズをみて咄嗟に動きを止めて慣性を防ぎ、サーベルを当てようとするが……それよりも早くセシリアのスターライトMK-Ⅲの銃口が突きつけられる。完全ゼロ距離で……炎によってビームが歪められて当たらないなら、歪められる前に当たるようにすれば良いだけの話だ。
「ッ!?」
「この距離なら、バリアは張れませんわね!!!」
砲身を付けてのスターライトMK-IIIによる砲撃……それは、ビットの連続攻撃で削れていた阿良田の陽炎のシールドエネルギーを削るには十分な代物だった。
「がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
撃たれた阿良田と陽炎は地面へと落下……陽炎を纏っていた炎は、シールドエネルギーがゼロになった影響で、まるで弱火になるように消えていく。
着地の土煙が晴れると、そこにいたのは傷を負った阿良田と、陽炎だけだった。次の瞬間、コールが鳴り響く。
『勝者、セシリア・オルコット!!』
次の瞬間、歓声が聞こえてくる……セシリアは息を上げながら吐息を漏らす。
(勝ちましたわ……けれど……)
セシリアも分かっている。こんなのはラッキーパンチだ。偶々スターライトの砲身が上手く阿良田に接射できたのは、運が良かったからだ。
すこしタイミングが違えば、敗北していたのは確実にセシリアの方だ。それどころか、阿良田がビームガンを持って接近してきていたらそれでもセシリアが負けていた。
しかし、同時に良い気分だ……自分の全力をぶつけられたような……少なくとも、今まで味わった勝利とは一味違う勝利であることは間違いない。気分が良い、何処かすごく気分が爽快だ……男を倒したからではない。この勝負そのものが、楽しかったと思えてしまう……正直、あの一夏やほかの面子とIS戦をやってこんな気分になれるかは怪しい所だ。
「……一声、かけなければなりませんわね。」
セシリアは地面に立ち尽くす阿良田の陽炎を見て、咄嗟に彼らの元へ降り立つ。
「あ、あの……大神、さん?」
「……げ……」
「?げ……?」
次の瞬間、またもや阿良田は弾けた。
「すっげェェェェェェェェェェェェッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
その雄叫びもまた、アリーナ中に響くことだろう。こいついつも叫んでんな。
「すげぇよセシリア・オルコット!まさかあのイグニス・ファトゥスの影響を受けないように接射するなんてなぁ!そりゃそうだよな!ロックオンできなくてもゼロ距離で撃てばいいだけだもんな!オマケに俺の陽炎の慣性を計算に入れてスターライトを確実に突きつけてくるなんて……やっぱ一日の長って奴だな!!っぱすげぇな!イギリスの代表候補生!射撃の腕はピカイチだな!!」
「えっ……えっ……?」
てっきり悔しがるか恥ずかしがるかと思ったら……脇芽もなく褒めてくる。誤魔化しやまやかしは感じない……心からの言葉だ。フルフェイスのアーマーで顔が見えなくてもよくわかる。
セシリアは思い返してみると……そう言えば、この大神阿良田と言う男は……一貫してセシリアの言動は兎も角、その技術やISには敬意を表していた。
こうなるきっかけとなったわあのクラス代表を決める時も……阿良田は文句を申し込む前に「凄ぇ技術持ってる癖に……」と言い放ってみせた。
……そこには、とんでもない大きさの器を見た気がする。セシリアは、意を決して阿良田へ声を掛ける。
「……大神さん。」
「なんだよ?」
「先日貴方を男の癖にと罵った事……貴方だけではありませんわね。クラス全体を侮辱し……貴方達をISで痛めつけるなどと言ってしまった事、ここに謝罪致します。」
「あー、あれか。」
阿良田は軽く肩を窄めるような動作をすると、軽く話す。
「まぁ、謝ってくれたし俺はもう良いよ……言う気があるなら、同じような事一夏にも言っとけよ。」
「そうですわね……!!」
『両者、帰還しろ。次の試合は三十分後だ。』
どうやら、蟠りはほどけてきたようだ……しかしと、阿良田は軽く身体をねじって、ハッチの方に戻る前に呟く。
「あーでも、負けそうになるのは兎も角。実際負けちまうと少し悔しいな、手伝ってくれたのほほんさんや相川さんにも答えられなかったし…………また、リベンジしても良いか!?」
「!!……勿論、何時でも受けて立ちますわ!我がライバル!!」
「ライバ……えっ?何それどう意」
阿良田の言及より先に飛び立ってしまう……まぁ、特段気にすることでもない。
(それよりも一夏戦に備えて機体を回復させるのが先か。)
阿良田もまた、ハッチの方へと飛び立つのだった。
ハッチへ戻る中、セシリアは心のなかで呟く。
(ふふっ、大神阿良田。次こそは私が納得できる勝利を貴方から掴んでみせますわ!!)
セシリアはこの後一夏に落ちます(特大ネタバレ)阿良田は文字通り良いライバルですね……チョロインがチョロインしてない……だと!?
因みに阿良田は女性側からの友情レベルが高すぎて恋愛対象にはならないタイプです。男女間の友情を鈍感や唐変木ではなく純粋な友愛で成立させます、なので仮に告白ても心の底から「ずっと良い友人でいたい」「君とはそう言うのじゃない」って言われて断られます。