狭間の地から来た転生者   作:兵庫人

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第1話

 彼、灰間(はいま)星徒(せいと)は転生者である。

 

 前世の星徒は狭間の地と呼ばれる世界にあるサリアの街で生まれ、レアルカリアの学園で魔術を学び魔術師となると探究の旅に出た。

 

 そして探究の旅の途中で狭間の地の安定を司っていた黄金樹が砕けると、祖先の血が目覚めると同時に黄金樹による永遠の世界に疑問を抱き、前世の星徒は知識だけでなく真実を求めて更なる探究の旅に出る。

 

 長い長い探究の旅で前世の星徒は、元々魔術と同時に学んでいた武術とは別の武術を学んだり、とある魔術技師に弟子入りして師と共に魔術師でなくても魔術の砲弾を放てる兵器を開発したりなどして、力を蓄えていった。

 

 そんな長い旅を続けているうちに、前世の星徒はついに自らの主人、星の魔女と出会い、彼女の臣下の一人となったのである。

 

 星の魔女の臣下となった前世の星徒は、自分と同じ星の魔女の臣下である仲間と共に様々な試練に挑み、多くの戦いや別れの末に、狭間の地の王となる権利を得た。しかし前世の星徒は王となる権利を自分の主人である星の魔女へと譲り、彼女の側に永遠にいることを選んだのであった。

 

 そして星の魔女と一緒にいることを誓った星徒は現在、とある事情から転生を果たして狭間の地とは別の世界、地球にいた。

 

 ★

 

 地球の日本のとある街。その路地裏で学生服を着た男子中学生、地球の人間に転生した星徒は一体の妖怪と対峙していた。

 

 星徒の前に立つ妖怪は大人よりも一回り身体が大きく、首からしたは人間に近かったが、頭部まるでワニのような外見をしており、普通の人間だったらその異形の姿に恐れを感じるだろうが、星徒は特に驚いた様子はなく自然体で妖怪を観察している。

 

「……バー・ソウル、……スの大…」

 

「………っ!?)

 

 星徒は自分の学生服の胸ポケットからキャップの先端に輝石が取り付けられた高級そうな万年筆を取り出すと、それを右手で握りしめて何かを呟く。すると星徒の右手がいつの間にか現れた大砲と一体化して、星徒の右手を見て妖怪が驚いたような声を上げる。

 

「悪いけど、お前を退治する」

 

「っ! ……っ!?」

 

 星徒が小さく妖怪に向かって呟くと、彼の右手と一体化した大砲から光の砲弾が放たれて妖怪に激突する。光の砲弾をその身に受けた妖怪は一撃で身体を砕かれて、声にならない悲鳴を上げながら溶けるように消えていった。

 

 妖怪の身体が宙に溶けて、他に妖怪がいないことを確認すると、星徒はポケットから携帯電話みたいな機械を取り出して操作をする。すると十秒もしないうちに携帯電話の画面に、おしゃぶりを口にくわえた昔の中華風の服を着た子供の姿が映し出された。

 

「こちらコエンマ。どうした星徒?」

 

「コエンマ様、言われていた妖怪の退治、終わりました」

 

「おお、御苦労。もう仕事を終えるとは、流石は『霊界探偵』と言ったところか」

 

 星徒が言葉短く報告をすると携帯電話の画面に映っている子供、コエンマが満足そうに頷く。

 

 霊界探偵とは現在星徒がいる物質世界と、死者の魂が行くとされる霊界、その両方に影響を与えると考えられる事件を霊界からの指示で解決する、霊界から認められた霊能力者(シャーマン)のことである。つまり霊界探偵と呼ばれた星徒に指示を出したとされるコエンマは霊界の存在ということであった。

 

「それで星徒。仕事を終えたばかりですまないが、もう一仕事受けてもらえないだろうか?」

 

「もう一仕事? それは構いませんが一体どんな仕事なのですか?」

 

 謝罪をした後に追加の仕事を頼もうとするコエンマに星徒が仕事の内容を尋ねると、コエンマは小さく頷いてから新しい仕事の内容を説明する。

 

「うむ。……実は数年前に地獄に所属していた鬼が二体行方不明になったのだが、その二体の鬼の反応が最近同じ場所で確認されたのだ」

 

「つまり新しい仕事はその二体の鬼の捕獲、もしくは退治ということですか?」

 

 仕事の内容を説明するコエンマの言葉を聞いて星徒が聞くと、コエンマは携帯電話の画面の中で言い辛そうに答える。

 

「……実はそう、単純な話でもないみたいなんだ。どうやら二体の鬼の内の一体は、一人の人間によってすでに封印されているだけでなく、その力の一部を利用されているみたいらしい」

 

「……それは穏やかな話じゃないですね?」

 

 コエンマの話に星徒は思わずそう呟いた。

 

 地獄に所属している鬼は、人間は元より現実世界に根付いた妖怪とも比べ物にならないくらいの霊力を持っている。その鬼を封印して力の一部を利用することに成功したとなると、例え本来の一割以下の力だとしても現実世界に生きる者達にとって十分すぎる脅威と言えた。

 

「分かりました。その仕事、引き受けます。……それで、その鬼を封印したという人間について何か分かったことはありますか?」

 

 仕事を引き受けた星徒の言葉に、コエンマは再び小さく頷くと自分がすでにつかんでいる情報を話す。

 

「うむ。どうやらその人間はお前の地元の近くにある童守小学校という学校で教師をしているらしく、名前は確か……『鵺野鳴介』というらしい」




……続く?
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