「灰間星徒君だったね? 俺は鵺野鳴介。この童守小学校で教師をやっていて、生徒達からはぬ~べ~と呼ばれている。さっきは俺の生徒を守ってくれてありがとう」
地蔵虐を退治した後、他に危険な妖怪がいないことを確認したぬ~べ~が星徒に自己紹介をすると、それに続いて他の生徒達も星徒に自己紹介をする。
「俺は立野広。さっきはありがとうな、兄ちゃん」
「僕は栗田まことなのだ」
「木村克也、です。よろしくお願いします」
「稲葉郷子です。初めまして」
「山口晶です。助けてくれてありがとうございました」
半袖と短パンの子供と小柄な子供、帽子を被った子供にこの中で唯一の女の子が名乗り、最後に地蔵虐に襲われそうになった眼鏡をかけた子供が自己紹介と礼を言うと、それに対して星徒は首を横に振った。
「気にしないで。それよりこちらこそ、霊界探偵の任務とはいえ、勝手に学校に忍び込んですみませんでした」
「……! ちょっと待ってくれ、星徒君? さっきも言っていたが、霊界探偵と言うのは『あの』霊界探偵なのか?」
「どの『あの』かは分かりませんけど、多分鵺野先生の考えているものだと思いますよ」
星徒の言葉にぬ~べ~が質問をすると、二人の会話に興味を覚えた半袖と短パンの子供、広がぬ~べ~に話しかける。
「ぬ~べ~? その霊界探偵って何なんだよ?」
「俺も噂でしか聞いたことがないのだが……何でも霊界からの指示を受けて、霊界とこの人間界の両方に悪影響を与える問題を秘密裏に解決する霊能力者がいるらしい。それが霊界探偵だ」
「うわぁ……! まるでヒーローみたいなのだ」
広の質問にぬ~べ~が答えると、それを聞いていた小柄な子供、まことが瞳を輝かせて星徒の方を見るが、星徒は肩をすくめる。
「そんな格好いいものじゃないよ、霊界探偵なんて。……とにかく、俺がここに来たのは霊界探偵の任務のためです。任務の内容は数年前から行方不明だった二体の地獄の鬼の捕獲、あるいは退治することで、その鬼の一体はさっき倒した地蔵虐、そして……」
そこで星徒は一度言葉を切ると、ぬ~べ~の左手に視線を向けた。
「鵺野先生、貴方の左手に封印されている鬼です。……それで聞きたいのですが、どうして鵺野先生は地獄の鬼を自分の身体に封印した上に、鬼の力の一部を使うなんてことをしているのですか?」
星徒は地蔵虐との戦いの時にぬ~べ~が見せた鬼の左手を一目見て、ぬ~べ~が封印している鬼が地蔵虐とは比べ物にならない程に高位な鬼だと見抜いていた。正直な話、いくらぬ~べ~が高い霊能力を持っていも、あれ程の鬼を自分の身体の一部にするなんて芸当はとてもではないができるはずもなく、実際に見た今でも信じられずにいた。
「そうだな……。これは霊界探偵の君には説明をしないといけないな……」
星徒がポケットの中にある機械を操作しながらぬ~べ~に聞くと、ぬ~べ~は自分が鬼を封印した時の話を語り出し、その場にいる全員がぬ~べ~の話を聞くことにした。
ぬ〜べ〜の話によると彼は子供の頃から高い霊力を持っていて、それが原因で低級霊に取り憑かれるなどといった様々な霊障に悩まされていたらしい。そんなぬ〜べ〜を救ってくれたのが彼と同じく高い霊力を持った恩師、美奈子先生だったのだが、彼女は除霊に失敗して命を落としてしまい、ぬ〜べ〜は美奈子先生の遺志を継いで教師になったのだという。
そしてぬ〜べ〜が教師になった後、彼はとある生徒に取り憑いた霊の除霊を頼まれたが、その生徒に取り憑いていた霊こそが星徒が探していた地獄の鬼の一体だったのだ。
当然、ぬ〜べ〜がいくら優秀な霊能力者だとしても、たった一人の人間の力では地獄の鬼に敵うはずもなく、地獄の鬼との戦いでぬ〜べ〜は左手を失ってその場で殺されそうになる。しかしそこで地獄の鬼に異変が起こった。
なんと地獄の鬼の体内からずっと前に死んだはずの美奈子先生が現れて地獄の鬼を封じたのだ。
驚くぬ〜べ〜が美奈子先生から聞いた話によると、美奈子先生の霊は死後、それまで除霊してきた悪霊達の復讐によって地獄に送られ、そこで彼女は地獄の鬼に喰われて同化してしまったらしい。
その後、ぬ〜べ〜は美奈子先生と力を合わせて地獄の鬼を自分の体内に封印して、それからは地獄の鬼の力の一部を鬼の左手として使っているのだと言う。
「そんなことがあったなんて……」
「それがぬ〜べ〜の左手の秘密……」
「つまりその左手の鬼はぬ〜べ〜と美奈子先生の二人で、外と内から何とか封じているってことなんだね」
ぬ〜べ〜の話を聞いてこの場で唯一の女の子の響子、帽子を被った子供の克也、眼鏡をかけた子供の晶がそれぞれ驚いた風に言う。そして星徒は……。
「これは……地獄側の大失態じゃないですか? コエンマ様」
そう言うと星徒はポケットから取り出した機械を近くの机に置くとそう言うのだった。