機械仕掛けの忍者はホロウを彷徨う   作:飽き性なSS作家

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これからほんの僅かな時間、あなたが知る世界から意識が離れ、この世界を体験します。

これは彼らの再創の物語。


猫の落とし物/プロキシの日常
1.1


「お兄ちゃん見て、また殺人事件だって」

 

「また殺人か。ずいぶん前にも研究施設の職員が全員殺害されていたとニュースにあったな」

 

ソファーに座らず、僕達は立ってテレビを見ていた。妹のリンはホロウで起きたニュースに思うことがあるようで話を続ける。

 

「最近は物騒だよね。あまり喜んじゃいけないけど、そのおかげで多くの依頼が来るのは複雑だよね」

 

「そうだね。こんな事件が原因でプロキシの力を借りざるを得ない状況を僕もあまり嬉しいとは思っていないよ」

 

プロキシはホロウ内で活動をする人達を案内する非合法の案内人。

 

僕達はプロキシの中でパエトーンという異名を持っていた。でも、ある依頼の最中、敵の策略から仲間を守るためパエトーンの(アカウント)を手放した。

 

今は見習いのプロキシとして再スタートしたのだけれど、ホロウ関連の殺人事件が相次いで起こり、そんな事件に巻き込まれたくない人達は僕達のようなプロキシでも依頼を出すようになっていた。

 

「そうだよね。早く犯人が捕まってくれるといいけど」

 

テレビの場面は変わり、大規模な地下鉄工事のニュースが流れた。

 

この地下鉄工事の水面下で陰謀が動いていたとは、当時の僕達は思ってもいなかった。

 

邪兎屋のニコから紹介を受けた猫又。『猫宮又奈』からの依頼で、僕達は地下鉄工事の爆破エリアにいまだに残されている人達がいて、その人達を施工主である『ヴィジョン・コーポレーション』がエリア共々吹き飛ばす計画を知った。

 

僕達と邪兎屋は猫又の命がけの時間稼ぎに報いるために、残されている人達の避難を成功させなければならなかった。

 

そして避難経路の間にあるデッドエンドホロウを縮小させる計画を思いつき、特殊個体『デッドエンドブッチャー』を邪兎屋のニコ、アンビー、ビリーの協力で倒すことに成功したんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーデッドエンドホロウー

 

「やったぜ!店長。あの怪物を本当に倒しちまった!」

 

「さすがプロキシ先生」

 

アンビーが静かに賞賛し、ビリーは喜びのあまり僕と感覚同期したイアスを上げ下げしているおかげで僕の目はぐらんぐらんに回っている。

 

「あんた達、浮かれるのはもっと後よ!早く残された人達を避難させるわよ」

 

ニコの一声で浮かれていた空気は無くなり、2人の顔は真剣な表情になった。

 

猫又が囮となり時間を稼いでいる以上、解決するまで気は抜くことは許されない。

 

邪兎屋は僕を抱えながらカンバス通りへ向かっ

 

 

 

試験は合格・・・と言ったところか

 

 

 

 

どこからか聞こえた声にみんなは止まる。そして僕達の目の前に忍者のような格好をしたサイボーグが現れた。

 

「あんたなに「ニコ、プロキシ先生と一緒に下がって」ちょ、アンビー?」

 

「おいあんた、何者だ」

 

アンビーとビリーはどんな時でも、余力を残している雰囲気があった。でも、目の前にいるサイボーグに対して、2人からの殺気は僕もヒリヒリとイアス越しに感じる程、強かった。

 

「名前などない。お前と同じだ」

 

サイボーグらしい機械で合成された声は、僕の背中を冷たく感じさせた。2人の殺気とこの異様な状況に僕は緊張するしかない。

 

「同じ?あいにく俺にはビリーっていうカッコいい名前がある」

 

「違うな。お前達は俺と同じ、戦うためだけに生まれ、戦いで死んでいく存在。そこに他者から与えられた名前などに意味はない」

 

サイボーグがそう言い終えるのと同時にビリーのマグナムから銃弾が放たれた。銃弾はサイボーグの足元にあった消火栓に着弾し、周囲は煙で包まれる。

 

「フッ!・・・()いたか」

 

サイボーグがその場を一閃すると既に4人の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げ切れた・・・よな」

 

「多分」

 

ビリーは僕を、アンビーはニコを抱えながら全速力であの場から逃げ出した。2人は僕達を離して、荒くしていた息を整えようとしていた。

 

「あんた達、戦う雰囲気出しておいて逃げるなら、最初から殺気出さずに話を」

 

「ニコの親分。そういう次元じゃねぇんだ」

 

「はぁ?」

 

「あの場であいつは俺を4回も斬った。あのままやっていたら俺達は確実に全滅してた」

 

「斬ったって、あんたはピンピンしてるじゃない」

 

「ニコ、私もビリーと同じ。私は8回も斬られてる。これは戦闘のプロにしかわからない感覚かもしれない」

 

邪兎屋の中で戦闘のプロである2人が互いにサイボーグの危険性を強調している。僕もデッドエンドブッチャーと対峙した時に感じていた恐れより、数段上の恐怖を感じた。

 

「みんな、思うところはあるかもしれないけれど、今はカンバス通りの皆を急いで避難させよう。それにあのサイボーグの出現・・・。なんだか嫌な予感がする」

 

僕の提案を聞いて3人は頷いて肯定し、カンバス通りに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー爆破解体本部ー

 

「それはなんだ!」

 

「この小さなおもちゃ?もちろん、爆薬の起爆スイッチに決まってるじゃない」

 

私はヴィジョンの社長のパールマンを人質とれば相手は譲渡すると思っていた。

 

だけど、私に突きつけられたのはパールマンは操り人形、目の前にいるパールマンの秘書がカンバス通りにいる人達ごと爆破しようとした本当の黒幕だったなんて誰が思うだろうか

 

「そんな、待っ───!だめだ!」

 

私の目の前で、ためらいもなくスイッチを押そうとする秘書に対して、私は声を出すしかできない。

 

「───?クッ!?」

 

秘書がスイッチの先端に触れる前、上から何かが降りてくると同時に、持っていた手の甲を斬りつけた。

 

斬りつけられた手から溢れたスイッチは地面に落ち、そのまま踏み潰された。

 

「あなたは───」

 

斬りつけたのは1つ目の忍者だった。忍者は静かに刀を構え、それと同時に偽物の警備隊が銃を向けながら忍者を包囲する。

 

「サラ長官、大丈夫ですか!?」

 

「あなたは死んだはず・・・。撃ちなさい」

 

秘書の一声で警備隊は忍者に発砲する。複数の自動小銃から放たれた弾丸は忍者を蜂の巣にする。

 

しかし、弾丸は忍者を貫く事はなかった。それどころか放たれた弾丸を刀の残像が見えるほどの速さで斬り続けた。そして

 

 

 

カチッ

 

 

 

「あっ・・・」

 

警備隊の弾倉が空になるまで、忍者は一発も当たることなく斬った、斬ってしまったのだ。

 

「だ、第2部隊、構」

 

先程まで銃を撃っていた警備隊長に稲妻のような速さで近づき、そのまま忍者は刀を真っ直ぐ、雷のような速さで振り下ろす。

 

振り下ろされた警備隊長は声を発することなく、紐状の何かと小さな塊を地面に落としながら、体は左右に分かれ、落ちた。

 

「「「あ、ワァアアアッ!!??」」」

 

警備隊達は斬殺された隊長を見て錯乱し、忍者に向けて銃を撃つ者、銃を捨ててまで逃げ出す者、気を失いながら失禁する者。様々な反応を忍者に示したが、それに対して忍者はシンプルに対応した。

 

忍者は警備隊の中で、戦闘の続行を選んだ者達だけを斬った。飛んでくる弾を斬りつつ、警備隊を唐竹、横一文字、袈裟切りで斬り続け、あるときは突き刺した兵を肉盾にし弾を防いだ。

 

 

 

 

 

そして銃声と悲鳴が聞こえなくなった時には、体を2つに分けられた亡骸と同僚だった者の臓器と返り血で染まった兵士が地面に倒れ、忍者は血に濡れた刀を振った後、静かに鞘に戻していた。

 

私はぺたんと座り込んだ直後、嘔吐感を感じすぐに口を押さえる。交渉をする前から胃の中は空っぽだった筈なのに、吐き出さずにはいられなかった。

 

私だって死んだ人は何人も見てきた。でも、目の前で体の中身を散らした死人を見たのは初めてだったからだ。

 

私も短刀を使って脅威から身を守ってきたけど、人を殺めた事はない。その一線を越えてしまえば、普通には戻れないと知っているからだ。

 

しかし、あの忍者はどうだ?あの剣筋でわかる、あいつはその一線を越えすぎている。

 

あれに関わってはいけない。急いでパールマンを連れて逃げなくては

 

「大丈夫か?」

 

機械声が私の名前を呼んだ。ゆっくりと顔を上げると1つ目が私の目の前にいた。

 

「ヒッ!く、来るな!」

 

「どうした?安心しろ、もうお前を傷つける者はいない」

 

ゆっくりと私に近づきながら、手を伸ばしてくる忍者。もう私は忍者が恐ろしくてたまらなかった。

 

あと少しで私に触れられる。その時、忍者が急に体勢を崩し、私から離れた。

 

忍者が向いている先には

 

 

 

 

「それ以上、私の依頼人に近づくんじゃないわよ。このイカれ野郎!!!」

 

 

 

 

邪兎屋の皆が来てくれていた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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