機械仕掛けの忍者はホロウを彷徨う   作:飽き性なSS作家

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これからほんの僅かな時間、あなたが知る世界から意識が離れ、この世界を体験します。

これは彼らの再創の物語。



1.3

あれから一週間が経った。あの忍者は治安局が総力を挙げても未だに足取りすら見つからずにいる。

だけど、元々の目的だった避難民の救出と生き残っていた偽の治安官の供述により、ビジョンが行おうとしていた悪行は公になった。

それによりパールマンは治安局に捕まり、近いうちに裁判にかけられるだろう。

 

だけど───それに貢献した邪兎屋の被害は大きかった。

ニコからの経過報告でビリーは四肢の関節を斬られたが予備パーツを交換すれば復帰できるとのこと。

だけど生物である猫又とアンビーは違う。

猫又は胸の部分を斬られてはいたが、忍者の刀が纏っていた炎。あれが皮肉にも彼女達を救った。

医者が言うには深い傷だったのにも関わらず、致命傷にならなかったのは切断面がまるで電磁メスで切られたようになっていたからだと、これなら傷跡も目立つことはないそうだ。

 

アンビーの傷も同じようになっていたが、刀の切っ先が僅かに臓器まで達していて退院するまで時間がかかる。

そのため当分の間はホロウの依頼は断念せざるを得ない状況になっていた。

 

それらを含めてニコは頭を抱えていた。社員の治療費、修理費、そして僕らに支払う報酬等々。

ようは元々尽き欠けていたお金が塵すら残らない状況に陥った。ホロウ関係の依頼は高額であることから、これがなくなるということは債権者に追われ捕まり、地下行にもなるかも、と燃え尽きた表情で僕らに訴えてきた。

これまで依頼料をツケにしてきたというのに何を今更と思っていたとき。

 

「私を邪兎屋に入れてくれ!」

 

病院にいるはずの猫又が店の入口を勢い良く開けて入ってきた。なんでも自主退院してきて、僕達プロキシにお礼を言いに来たところで、ニコの懐事情の会話を盗み聞きしていたとのこと。

これにより猫又の加入、ビリーの復帰により、邪兎屋はホロウの依頼も受注できるようになった後は馬車馬のごとく働いて、やっとアンビーの治療費の額まで達し、自分たちの生活まで手が回るようになったとか。

 

だけど、あの忍者はいったい何者なのだろうか。僕の頭の中はそれでいっぱいだった。

デッドエンドホロウで僕達に遭遇したのは決して偶然ではない。何故なら相手は同業者(プロキシ)だからだ。

ホロウ探索の必需品である『キャロット』はホロウの空間データであり、ホロウ内にいる人物を特定できるほどの代物ではない。仮にホロウで人探しを行うにしても、プロキシによるバックアップが必要になる。

 

それなのに忍者のそばには人がいた形跡も、ナビを行うポンプもいなかったことがなによりの証拠。

だからこそ、心配だ。パエトーンの名を捨てたというのに僕達を追う存在が現れた。いずれ僕達の居場所を特定し、牙をむけるかもしれない。

 

真実を追うことが僕達兄弟の目的だが、それよりもリンのことが大事だ。新エリー都を離れ、郊外に逃げることも視野に入れて置いたほうがいいかもしれない。

 

だが、そうなったら邪兎屋の皆はどうなる。アンビーは倒れ、ビリーも猫又も傷ついた体に鞭を打ちながら依頼をこなしている。正直なところニコも今回の件(忍者)と他にも抱えている問題(まあ、借金なんだけど)で板挟みになり、かなりメンタルにきている。

この状態で頼み綱であるパエトーンが失踪したら、最悪の場合・・・天に召されるかも。

 

さてどうするべきか

 

イアス!

 

「えっ!?」

 

突然の大声で僕の意識が現実に引き戻される。周囲を確認するとこちらを覗き込んでいる猫又の顔が映り込んだ。

 

「?今何か言いましたか?」

 

「あ、いや!何も言ってないぜ」

 

アハハと頭を搔いているビリーと白い服装の女性『ホロウ調査協会』の調査員が呆れた顔をしていた。

そうだった僕は今、猫又とビリーを連れて零号ホロウの調査に来ているのだった。

 

零号ホロウの調査が再開されたことを羊飼いから聞かされ、僕は零号ホロウ派遣調査員として活動するために、ニコに頼んで猫又とビリーを派遣してもらっていた。

 

まあ、僕の役割は表向きはナビポンプを提供し、キャロットを調整する調整屋としてだけど。

猫又とビリーを派遣してもらったのは2人を派遣調査員の一員として認定されれば、僕達は調査協会の監視がない状態で調査ができるようになる。

 

本当はエージェントがいなくても大丈夫なんだけど、1つだけ問題がある。それはナビポンプ(イアス)にある。

僕もリンもポンプを直すことはできるけど、両断されたポ/プや爆発四散したポンプはどうやっても直せない。おまけに零号ホロウはデッドエンドホロウと比べるとエーテリアスの強さも段違い。

なので凄腕のエージェントを雇って護衛してもらうしかないのだ。

 

それにしても、先程から調査員がエーテル測量機器を調整している。なんでもエーテルの水準が高い状態を維持しているらしい。確かにイアスを経由して送られてきた情報には移動する毎に数値が高くなっている。デットエンドホロウの時も、デットエンドブッチャーの住処に近づいていくと数値が高くなった。

 

だからこそ、これは確かに異常だと思う。彼女に忠告するため、通訳してもらおうとビリーの近くに移動するが、突然イアスのポケットからアラーム音が鳴り響いた。まさかイアスに持たせていた測量機器も壊れたのだろうか。僕は計器を確認するとデジタル指針が振れていた。

 

ビリーも猫又も何事かと計器を覗き込むより先に、調査員に計器を取られてしまった。計器は依然として鳴り続け、間隔の短くなっている。

 

「1回鳴ったら『反応アリ』2回だったら『高活性』3回だったら───』

 

「さ、3回以上だったらどうなるんだ?」

 

猫又の疑問を答えるより先に計器はショートし、ホロウ全体に唸り声が響いた。

 

「みんな隠れろ!」

 

ビリーの一声で皆一目散に物陰に隠れる。僕はその場から顔をゆっくりと覗かせると空に浮遊する花が

 

「駄目っ───!!嘘、彼女が・・・!?」

 

僕の体を調査員と猫又が引っ張り、調査員は僕を抱え込む。そしてデットエンドブッチャーより巨大なエーテリアスが蜂を思わせるようなエーテリアスを引き連れて僕達の上を通り過ぎていく。

 

「おいおい・・・!!なんだよ、今のありゃあ!?」

 

「流石、零号ホロウ。規格外すぎるぞ・・」

 

群れがいなくなった事を確認し、僕達は物陰から出る。

猫又の言う通り、あんな怪物がホロウがなくならない限り生産され続けるのだから、零号ホロウが僕の想像をはるかに超えていることを再認識させた。

───認めたくはないけれど、世間が未だに()()()()を敵視し続けるのは間違ってはいないのかもしれない。

 

そんな事を考えている時、突然背筋が冷たくなるのを感じた。僕にはその感覚に覚えがあった。猫又とアンビーが倒れた時、忍者から感じたもの、それは明確な殺意

 

「ビリー、猫又!後ろだ!!」

 

咄嗟に二人に警告し、急いで後ろを振り返ると蜂エーテリアスが1体、鋭利な針を向けながら突進していた。

確実にその針は近くにいる調査員の方に向けられていて、そのときの僕は周りの時間がゆっくり進むような感覚に陥っていた。

猫又は剣の柄に手を伸ばし、ビリーはすでに銃を抜いているがまだ構えている途中で間に合いそうもない。

 

なすすべがない状況の中、上から何かが割って入ってきた。その瞬間、エーテリアスは雲散霧消のごとく、消え去る。そして割って入ってきた狐のシリオンはこちらに一瞥することなく、ものすごい勢いで巨大エーテリアスが飛んで行った方向に駆けていった。

 

 





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