暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ 作:dwwyakata@2024
アーランド王城地下。
プロジェクトMの進展を確認する会議が行われる。今回は関係者全員が参加していた。無論その中には、イクセルやティファナの姿もある。鍛冶屋の親父であるハゲルも、その巨躯で席の一つを埋めていた。
クーデリアはむっつりと黙り込んでいた。
目の前では、提出品の品質についてのレビューが行われている。
「現時点では、工場での生産品よりはましという程度の品質に過ぎませんが、特筆すべき点が一つございます」
眼鏡を直しながら、報告しているのは大臣であるメリオダス。
表向き、この大臣がアトリエを潰す計画を立ち上げたと言うことになっているのだが。実情はこの通りだ。
文官の地位が低いアーランドで、此処までの地位を築き上げた男だ。王との関係は、実のところ極めて親密。
今回の計画でも、喜んで汚れ役を買って出たと、クーデリアは噂で聞いていた。
「どの品も、込められている魔力が、極めて強力であると、監査を行った魔術師達が、口を揃えています」
「ふむ、アストリッド。 君の意見を聞かせて貰えるかな」
「はい。 この魔力は、ロロナの生体魔力を反映しています。 私は実のところ、生来魔力があまり強くありません。 当人は気付いていませんが、魔力に関してだけなら、既にロロナの方が上です」
これは驚いた。
クーデリアも知らなかったことだ。
アストリッドは天才的な実力者であるが、生体魔力だけはさほど強くなかったのか。魔術に関しても天才的な実力を持つと聞いていたが、それは制御能力でカバーしている、という事なのだろう。
「八年間の仕込みの成果であるな」
「御意」
アストリッドが短く答えている。
これに関しては、事情を知っているクーデリアは、恨むほかない。クーデリアにも、無関係のことではないからだ。
「ならば、今回の課題は突破として良いであろうな。 次に掛かれ」
「分かりました。 予定通りに、課題を進めるとします。 次の課題は、国有鉱山で用いる、発破類の作成となります」
発破。
爆弾のことだ。錬金術とは関係が深い。
確か、爆弾の原料となる火薬そのものが、錬金術によって発明されたとか、クーデリアは聞いている。
この発破類も、現在は工場で大量生産されているそうだが。
しかしやはり品質面で問題があるそうで、労働者達にも不評であるらしい。
「発破に関してはさほど難しくもないのですが、素材そのものが予定通り、現在では廃鉱山でしか採れません。 確保には、廃鉱山に潜る必要があります」
なるほど、そう言うことだったか。
廃鉱山は今、悪魔と呼ばれる謎の生命体に満ちており、大型の肉食モンスターが群れを成して住み着いているとも聞いている。
現時点では、ロロナに手を貸すことが許されている人材はさほど多くない。
確かにこのままでは、アストリッドが言うとおり、次の課題は突破できないだろう。
ハゲルが挙手する。
「多少の素材については、此方で販売しても良いですか?」
「多少であれば、良いだろう。 調合について練習させる必要もある」
「分かりました。 調達については、此方でどうにかします」
「私も手を貸して良いでしょうか」
意外な人物が、手を上げた。
ステルク。
この国でも上位に食い込む使い手の一人。今回は、ロロナに対して、仕事を直接渡したり、受け取ったりする役割を果たしている。
勿論周囲は難色を示していたが。王は、鼻を鳴らした。
「ステルクよ。 情に流されるようでは駄目だ。 そのままでは、プロジェクトMが破綻するが、どうするつもりか」
「それであれば、リミッターを自らに掛けようと思っています。 手段は、既にアストリッドが用意してくれました」
腕輪を、ステルクが取り出す。
淡い魔力の輝きを帯びていて、見るからに禍々しかった。
かなり腕力も速度も落とすものだと、ステルクが説明する。今回は鉱山にいるモンスターの実力を考えて、最大限までリミッターを掛けるのだとも。
「ふむ、生真面目なお前の事だ。 まさか、途中でリミッターを解除する、などと言うことはしないだろう」
「御意」
「よし、プロジェクトMの意義を忘れるな。 目的は、課題を達成させる事ではないのだと、肝に銘じておけ」
王が立ち上がったので、全員がそれにならう。
アーランドの栄光を皆で唱和すると、その場で解散になった。
クーデリアについては、叱責されることもなかった。とるにも足らないことだと、判断されているのだろう。
鉱山にいるモンスターは、近くの森などにいる者とは比較にならない。
今回潜るのがどの辺りまでかは分からないが。それでも、しっかり鍛えておかなければ、生還は難しいだろう。
場合によっては、王は容赦なくロロナを処分する。
あまり長い時間、もたついてはいられないからだ。並行で、サブプロジェクトを進めているという噂もある。
生き延びるためには。
クーデリアが強くなることだ。
城を出ると、まっすぐアトリエに向かう。
ロロナの顔を見ておきたい。
その後は。
自宅に戻って。極限まで、己を鍛え上げる。
明日、生き延びるために。
(続)
本作のくーちゃんはろくでもない家庭環境にいることもあって、あまり状態はよくありません。兄弟仲も良くないし、父親との関係もあまりよくないのです。
そういう状態だから、ロロナは自分にとっての比翼であり、他の誰よりも大事な存在です。
だからこそ、ロロナを守りたいし。
そのためにつよくなる為に貪欲なのです。
いずれ戦士の文化が息づくアーランドでも最強クラスの一角にまで成長する彼女も、今はまだ……非力で必死に研鑽する、半人前以下にすぎません。
だがそれも、いずれはまた変わってくる話なのです。
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