暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、見え始める路の先

湧水の杯を納品する。結局、大した改良は出来なかったけれど、それでも二割ほど用いる金属を減らすことには成功した。少し小さくなって、それでいながら出てくる水の量は同じなのだから、充分な改良と言って良いだろう。

 

耐久性については、幾つかの仕組みで補った。改修のためのマニュアルについても整備を終えている。

 

これに加えて今までの課題で納品したものについても、あらかた何かしらの改良が終えてある。

 

残りは四日しか無かったが、これはロロナが途中で、オルトガラクセンでの戦いで、負傷したからである。

 

結局もう歩けるというのに、クーデリアやリオネラに休むように言われて、四日も時間を無駄にした。

 

二人とも、ロロナをちょっと甘やかしすぎだと、自分で思う。

 

納品を受け付けてくれたのは、エスティだ。

 

どうやらモンスターの大量発生が一段落したらしく、王宮も多少は余裕があるようだ。だが、納品を終えて、ステルクの事を聞くと。エスティは、渋い顔をした。

 

「まだステルクくん、治療中なのよ」

 

「え……?」

 

「ちょっと色々事情があってね。 ただ、来月には復帰出来ると思うわよ」

 

そうか、それは良かった。

 

胸をなで下ろすと、お見舞いに行きたいと言う。しかし、それも拒否されてしまった。何でも国の機密にかかわる治療を行っているらしく、今のロロナでも、見せるわけにはいかないそうである。

 

落胆して、ロロナは帰路につく。

 

どうにか間に合った。

 

課題の改良を全て終えたし、これで大丈夫な筈だ。勿論、最近作った道具などに関しては、微細な改良しか施せなかった。しかしそれでも、全体的に改良を大幅に行う事が出来たのは事実なのだ。

 

満足のいく結果の筈。

 

これならば、課題は突破出来ると思う。出来なかったとしても、これ以上の成果はあげられなかったはずだ。

 

アトリエにつくと、クーデリアが来ていた。

 

リオネラと一緒に、ブレイブマスクと神速自在帯について、いろいろな識者にアドバイスをもらいに行っていた帰りだという。

 

幾つかのアイデアを聞く。なるほど、改良について、参考になりそうだ。お茶を出して、お菓子を棚から出していると。

 

後ろから、クーデリアが声を掛けてきた。

 

「少しね、嫌な予感がするのよ」

 

「え? でも、わたしは特に何も感じないよ」

 

「……そう。 体には気をつけて、ね。 くれぐれもよ」

 

向かい合って席について、お茶にする。

 

しばらくゆっくり過ごすが。新しく得た情報で、せっかくの道具を改良したくて、仕方が無かった。

 

だが、休みを入れるようにとクーデリアに言われているし、こればかりは我慢するほか無い。

 

茶を飲み干すと。

 

クーデリアは、不意に話を変えてきた。

 

「そろそろあたしも、あのクソ親父と決着を付けようと思ってる」

 

「えっ?」

 

「勝てるわ、今なら」

 

クーデリアの目に、深い妄執の炎が宿るのを、ロロナは見た。

 

頷くと、頑張ってと、それだけ告げた。

 

 

 

クーデリアがアトリエを出て行くと。入れ替わりに、イクセルが来る。

 

傷はまだ回復しきっていない様子であったけれど。既に料理人としては、復帰しているようだった。

 

持ってきてくれた料理は、肉を豊富に含んだ、スタミナ食だ。

 

「皿は後で持ってきてくれよな」

 

「うん! ありがとう」

 

「いいっていいって」

 

笑い会うと。イクセルは、不意に真面目な顔を作る。

 

これからやりたいことが、決まったのだとか。

 

「この間の戦いを見て、幾つか分かったことがある。 俺はやっぱり、料理人なんだって事だ」

 

「どういうこと?」

 

「戦士達と一緒に、前線で戦うって事は出来ないって事だよ。 何というか、やっぱり限界があるんだろうな。 ああ、精神面の話というか、大事なものの話だ」

 

この間の戦いで。

 

イクセルは、自分の手を痛めることを、躊躇してしまったのだという。

 

指を失ったり、手首から先を失ったホムンクルス達をみて、恐怖がわき上がって。身動きできず、ロロナが仕掛けるまで、死んだフリをしていたのだそうだ。

 

「俺にとって、一番大事なのは料理だって、その時ようやくわかったよ。 今まで何となく適正があるからって料理をしていたけど、今後は全力で料理に取り組んでいくつもりだ」

 

「そう、良かったね」

 

この幼なじみは、若い頃から、ノリと勢いで行動してきた。

 

戦士としての実力も、一応それなりにはあった。料理人としての適正は、それ以上にあった。

 

いい加減な性格だったから、良い意味で楽天的だった。

 

しかし、彼もそろそろ大人として認められる年だ。いつまでも、子供と言う事に甘えていることは、出来ない。

 

「勿論、今後も手伝えることは手伝うぜ。 だが、料理人として、今後は扱ってくれよな」

 

アーランドでは、料理人は戦場で重宝される。

 

だが、戦士としての比重を、料理人より下げる人間は珍しい。だが、それも生き方の一つだろうと、ロロナは思った。

 

イクセルが帰った後、作ってくれた料理を食べる。

 

とても美味しい。

 

味がなにやら、一皮むけたようだった。

 

綺麗に料理を食べ終わると、ロロナは羨ましいと思った。イクセルは、自分の路を、選ぶ事が出来るのだから。

 

嫉妬はしない。

 

ただ、もはや選ぶ路も無く。そして人間では無い事がはっきりしている事が。

 

ロロナには、悲しくも、時に思えるのだった。

 

それでも、どうにかしていきたい。

 

クーデリアの事を助けたいとも思う。

 

それに、誰かのことを救える仕事として、錬金術に誇りも感じ始めている。路を選ぶことは、もう出来ないかも知れないけれど。

 

せめて、ある路を、可能な限り頑張って進んでいこう。

 

路を確固たるものとして見いだした幼なじみの事を見て、ロロナはそう思わされていた。

 

 

 

(続)







人間ではなくなってきていることを自覚しているロロナ。それを悲しむクーデリア。

互いに思い合う比翼の願いは叶うのか。

話は終盤へと突き進みます。



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