暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

12 / 121



アトリエシリーズと言えば爆弾。爆弾と言うか火薬は錬金術でつくられたものなので(史実)、爆弾を主武器にするのは間違っていないと思いますね。

ちなみにフラムはドイツ語で火って意味であるためか、英語版のアトリエではフラムはまんまボム()にされたりしています。

アトリエの翻訳には色々と問題があるらしいんですが、こういう問題は翻訳がもっと進歩しない限りずっとついて回るでしょうね。






1、発破

アトリエに帰り着いたロロナは、荷物類をコンテナに格納すると、さっそく火薬について復習をはじめた。

 

火薬の歴史は古い。

 

錬金術の歴史とも、密接に結びついている。

 

そもそも、火薬とは何か。

 

それは今までの燃料とは比較にならないほどの爆発的破壊力を持つ、燃焼材の事だ。文字通りものを吹き飛ばすほどの破壊力がある。

 

優秀な戦士になると、この火薬よりも遙かに強力な破壊を、生身で実現することが出来るのだが。

 

火薬の味噌は、誰でも使えるという点にあるのだ。

 

現在、世界各地で普及している銃は、火薬による成果の一つ。もっとも、今の強靱な人類の前では、火薬はさほど決定的な力を見せることが出来ない。

 

ただし、人間の限りある力を使うのでは無くて。

 

火薬を事前に用意しておけば、破壊力を代用することが可能なのだ。鉱山などでは、まさにこの理屈が採用されている。

 

更に言えば、固い岩盤などを抜く場合、技や術を使うと、術者にも危険が及ぶ。

 

火薬は、遠隔操作で爆破が出来るので、その点極めて安全だ。

 

兵器としては、正直現時点では、優秀な戦士が持つ剣や槍には及ばない火薬だけれども。勿論、魔術師達も、火薬以上の破壊力を持つ術を展開できるけれど。

 

それでも、多くの使い道がある。

 

故に、火薬は、彼方此方で重宝されているのだ。

 

今回ロロナが求められている火薬は、以下の要件を満たす必要があった。

 

一つは、安全である事。

 

火薬が安全というのはおかしな話だが、これは、必要なときに、確実に爆発させられる、という意味である。

 

かっての時代、火薬はとにかく安定性に欠けていて、ちょっと叩くだけで爆発する事もあったという。

 

今回要求されているのは、たとえば。

 

特定の薬品を注ぐなどのトリガーを引かなければ、決して爆発しない。そんな、発破なのだ。

 

勿論、今までにも、そういったものは作られている。

 

資料を見る限り、何種類かある。たとえば強力な魔術を使って、火から保護していたり。或いは、爆発の性質そのものが、火に起因していなかったり。ただ、どれもがかなり難しい。試してみる価値はあるのだけれども。時間がいる。

 

次の一つは、破壊力。

 

今、工場で大量生産されている火薬は、とにかく火力が足りないという。

 

一応、鉱山では使われているらしいのだが。働いている労働者達は、かって錬金術のアトリエで生産されていたもののほうが、ずっとましだと、口を揃えているのだとか。

 

それは嬉しいけれど。

 

かっての人達の苦労を、ロロナが潰してしまっては、意味がない。

 

最後の一つは、利便性。

 

持ち運びしやすく、なおかつすぐに使えること。それが求められていた。

 

素材は揃えたロロナだけれど。

 

この三つをクリアした発破を作るという難作業に、頭を抱えていた。必要納品量は、前回の課題に比べれば、著しく少ない。

 

わずか五本。

 

だが、その五本を作り上げるのが、とても難しい。

 

錬金術の参考書を、何度も読み返す。

 

時間だけが容赦なく過ぎていく。まずは、一つずつ、はじめよう。そう思ったのは、課題開始から一週間。

 

鉱山から帰還して、翌日のことだった。

 

散々参考書を読み返して、幾つか候補になるものは見つけたのだ。ただ、それらの全てに、坑道では見つからなかった貴重な材料が必要になってくる。

 

場合によっては、坑道のもっと奥に行くか。

 

或いは、資金の全てが蒸発するのを覚悟で、鉱山街で買い求めるか。いずれの二つを選ぶしかない。

 

まずは最初に、簡単な爆弾から作ってみる。

 

錬金術の参考書で、初歩として載せられているものに、フラムと呼ばれる爆弾がある。いわゆる火のこと。

 

火をまき散らす、初歩の爆弾。

 

ようするに、火薬を成形して、扱いやすくしただけのものだ。

 

材料そのものは、揃っている。

 

まずフロジストンを砕く。その後は、中和剤を満たした釜に、フロジストンを入れる。後は、破壊力を高めるために、幾つかの薬剤を、順番に釜に入れていく。

 

片手に参考書を持ったまま、ロロナはゆっくりと、火薬の元を混ぜていった。冷や汗が流れる。

 

よく師匠は、昔の人間だったら、という言葉を口にする。

 

師匠は、昔の人間は、今のよりずっと脆弱だったという学説を唱えている。ロロナも、何度も何度も聞かされた。

 

たとえば、火薬の場合は。

 

今の人間なら、平気で耐えられる量でも、命をなくしてしまうとか。

 

銃は現在、魔術を乗せなければ、決定打にならない。ロロナだって、ライフルくらいだったら撃たれても耐えられる。

 

だが、昔の人間は当たり所によっては即死したとか。

 

にわかには信じられないけれど。ロロナをからかって言っているとは思えない。

 

特に怖いのが、作業中に下手をしたら指が吹っ飛ぶという脅しだった。

 

魔術で再生は出来るけれど、痛いし怖い。

 

腕が丸ごと吹っ飛びでもしない限り、魔術での再生は難しくないのだ。実際転ぶことが多かったロロナは、本物と全く変わらない差し歯を、二本も入れている。

 

汗が釜に落ちないようにして、ゆっくり混ぜる。

 

行程を進めていくと、徐々に釜の中の液体が、黒ずんでくるのが分かった。此処で、中和剤の魔力が、火薬に馴染むのを待つ。

 

ほぼ半日は待つ必要があるけれど。

 

その間、参考書を読めば良い。

 

それに、昼食の準備も、しなければならなかった。

 

以前の炭の失敗で懲りたから、それでも完全に目を離すことはしない。時々状態を見に行く。

 

何かしらの要素で、参考書に書かれている時間通りに出来るとは限らない。

 

それは、身をもって思い知っている。

 

ただ、これ以上中和剤を足してはいけないという説明については、良く理解した。魔力が必要以上に充填されると、それだけで起爆の要因になるのだとか。

 

怖い話だ。

 

昼食は、簡単に済ませた。

 

ロロナはどちらかといえば小食な方なので、狼一頭を一回に平らげるような事はない。兎だったら、二匹くらいで充分だ。

 

今日はパンに野菜を挟んだものを片手に、参考書を読み進めた。

 

もぐもぐとやっている内に、興味深い記述を見つけた。火薬の制御技術の一つだ。かなり難しいのだけれど、一つ特筆すべき点がある。

 

火薬は火薬のまま。

 

トリガーはトリガーとして。

 

それぞれ、作る事が出来るのだ。これは、かなり美味しいかも知れない。

 

無言のまま、参考書を読み進める。

 

勿論、時々顔を上げて、火薬の状態を見ることも忘れなかった。ロロナはあまり頭が良くないことは自覚しているから、そうやって執拗に確認作業を行う。確かに、師匠がいうように、しばらく並行での作業は出来ないだろう。

 

技術については、だいたい以下のような感じになる。

 

まず火薬については、火を付けることで爆発する、オーソドックスなものを用いる。ただし成形する必要があるが。

 

その成形した爆薬を、ある素材で覆う。

 

これは樹氷石と呼ばれるもので、普段から氷のように冷たく、冷気を発しているものだ。これによって、火薬の特性を、中和してしまうのである。

 

その素材を、トリガーによって、一気に消失させる。

 

魔力によって元々強引に安定させているものだ。逆に、崩壊のトリガーを入れれば、どうなるか。

 

むき出しになった火薬に、この崩壊そのものを利用して着火。

 

爆発させるのだ。

 

勿論、樹氷石なんて、手元にはない。それどころか、どうやって持ち込むかさえも、見当がつかなかった。

 

調べて見ると、国有鉱山で採れる。

 

多分鉱山街に行けば手に入るだろうけれど。隣の親父さんに聞いてみて、愕然とさせられた。

 

予想通りの値段どころでは無い。

 

親父さんはいう。

 

「樹氷石は取り扱いが難しくてな。 実験に用いる分も必要とするんだろ? はっきり言うけど、重さで言うと、フロジストンの何倍もするぜ」

 

「そんなに!」

 

「だって、考えて見ろよ。 運んでいるうちに、どんどん溶けて来やがるんだ。 鉱山の深部の、冷たくて環境が安定した場所でしか採れないようなものだしな」

 

それは、確かに難しい。

 

ただ、在庫はあると言う。保存方法については、氷室のように安定した場所で、隠すようにして守らなければならないけれど。

 

しかも、親父さんが見せてくれたのは、ほんの小さな欠片だった。

 

「そうだな、もし持ち帰るつもりだったら、腕が良い魔術師か、或いは錬金術師が、安定させる魔術を使わなければならんだろうよ」

 

「ふええ。 どうにかなるかなあ」

 

「まあ、頑張れや」

 

親父さんに肩を叩かれた。

 

ロロナは隣のアトリエに戻ったときには、憂鬱極まりなかった。

 

どうにか火薬の生成は出来た。

 

釜で混ぜていくうちに、徐々に形になっていく。黒い砂のような塊である。後は、魔力を失った中和剤の成れの果てのみ。

 

この塊をすくい上げて、乾かす。

 

中和剤は油のようになっていて、乾かすときもかなり早かった。後は、あまり力を入れすぎないようにして、何度か叩いて、粉状にする。

 

瓶詰めして、終わりだ。

 

勿論、こんなに簡単に作れるのは、マニュアルがしっかりしているからである。昔の錬金術師達が、実験に実験を重ねて、材料も吟味して。ようやく、此処まで簡単に作れるようにしてくれたのだ。

 

ロロナは、その路を、ただ後から通っただけ。

 

庭で実験してみたが、火力は参考書の通りか、それ以上。これならば、成形さえすれば、工場で作っているものよりは、ましな威力になる筈。もの凄い火花が上がる様子はちょっと怖かったけれど、多分成形しておけば、戦闘でも用いることが出来るだろう。

 

だが、条件の一つしか、満たせていない。

 

条件が一つ満たせれば、それで良いと言う考え方も出来るけれど。あと二つを満たさなければ、課題は達成できないのだ。

 

他に、何かいい手はないか。

 

参考書に目を通すが、妙案はない。

 

むしろ、思わず頭を抱えたくなるような記述が、たくさん見つかる有様だった。火薬が如何に有毒で恐ろしいか、ひたすら書かれているページもあって、夜寝られなくなりそうだった。

 

他にも幾つか、爆弾として使えそうなものはあるけれど。

 

どれも、とても難しい。

 

師匠はうんうん唸っているロロナを面白そうに見ているだけで、手は絶対に貸してくれない。

 

だが、良くしたもので。

 

ロロナも、アストリッドには、一切期待していなかった。たまに助けてくれるくらいで、邪魔さえしなければいい。

 

参考書を捨てずにいてくれただけで御の字なくらいだ。

 

もう一度、国有鉱山に行く必要がある。

 

今度は、前回よりも、もっと奥へと足を運ばなければならないだろう。それに、クリアしなければいけない問題もあった。

 

この間、予備で作っておいたゼッテルを取り出す。

 

参考書を見ながら、これに加工を施す。

 

樹氷石を幾つ用いることになるかは分からないけれど。少なくとも、環境が安定しているコンテナまでもたなければ、話にならない。

 

魔術は母に聞くのが良いだろうけれど。

 

今回は、参考書に、よいデータがあったので、それを用いる。幸いにも、魔力だけなら有り余っている。

 

詠唱しながら、ゼッテルに小さな魔法陣を書いていく。

 

今使っているのは、小規模な結界を作る魔術だ。つまり樹氷石を、小さな結界に閉じ込めてしまう。

 

温度も空気も変わらなければ、溶けない。

 

そう言う理屈だけれども、納得は行く。

 

となりの親父さんから買い取った、小さな樹氷石を、ゼッテルに包んで、様子を確認。しばらく様子を見ている限り、確かに機能はする様子だ。ただし、あまり過信は出来ないだろう。

 

ロロナの魔術は、攻撃に特化している。

 

これは、両親に教わったのが、そればかりだからだ。魔力だけなら、この国有数の魔術師である母の血を引いているのだから、相応に強い自信はあるけれど。今必要なのは、むしろ制御能力だ。

 

とりあえず、樹氷石はコンテナに戻す。

 

そして、小規模結界を作るためのゼッテルを、増やすことにした。

 

場合によっては、荷車もそれで改装してしまった方が良いかもしれない。軽く計算してみるけれど。

 

今の時点では、どうにか間に合う。

 

問題は、護衛の人員だ。

 

ロロナ一人で、あの廃坑道に行く自信は無い。クーデリアと二人でも無理。クーデリアはこの間から、もの凄く鍛えてくれているようだけれど。それでも、まだまだ無理だろう。やはりステルクに護衛を頼むほかないか。

 

しかし彼は現役の騎士。

 

そうほいほいと、何度も護衛をしてくれるとは思えない。

 

すぐにアトリエを出たけれど、足を止めたのは。もう夕方になっていたからだ。流石に今から城に行っても、門前払いされるだけだろう。

 

どうも時間の感覚がおかしくなっている。

 

今日はもう休むべきだ。そう結論したロロナは、小さくあくびをして、夕食の準備に取りかかった。

 

頭を切り換えてしまうと、どっと疲れが沸いてくる。

 

夕食の後は、ゼッテルに魔法陣を書き、小規模結界を作る作業に終始。幸い、ゼッテルはある程度余っている。

 

いずれも少し破れていたり、ちょっと染みてしまっていたり、納品には適さないと判断して、よけたものだけれど。

 

自分で使う分には、なんの問題もないのだから。

 

 

 

翌朝。

 

顔を洗って、気分を切り替えると。

 

鉱山に出かけるまでの作業について、もう一度おさらいをしておいた。

 

ゼッテルの準備は出来た。

 

コンテナに入って確認したが、樹氷石は痛んでいる様子も無い。結界は、それなりに効果を発揮するとみて良い。

 

それより今更ながらに気付いたのだけれど。

 

コンテナの四隅には、同じようなゼッテルが張られていた。

 

つまりこのコンテナは、ずっと以前から、環境安定の術式が掛かっていたのだ。今更気付くなんて、自分の注意力の低さに、ロロナはげんなりしてしまう。

 

一旦コンテナから出ると、荷車を改めて調べる。

 

車軸は問題ない。

 

ちょっとがたは来ているけれど、無茶な重みをかけなければ、大丈夫だ。

 

ゼッテルを荷台の内側に貼っていく。

 

そして、やっておきたい事がある。

 

ふたを作りたいのだ。

 

その蓋の内側にもゼッテルを貼って、魔法陣を書いておけば。擬似的な密閉空間が出来る。

 

しかし、それには、お金がいる。

 

ロロナが大工作業など、出来るはずもない。

 

もしもやるなら、隣の親父さんに頼むほかないのだけれど。見積もりを出してもらったけれど、まだ無理だ。

 

つまり、今やるのは、大きめのゼッテルをつなぎ合わせて、カバーにするしかないと言うことだ。

 

黙々と、作ったゼッテルを縫う。

 

非常に不格好だけれど、自分で作ったゼッテルだ。別に気にする必要もない。

 

クーデリアが来てくれた。

 

今やっていることを説明すると、彼女は頷く。

 

「目処が立ったのは良い事だわ」

 

「くーちゃんだったら、どうすると良いと思う?」

 

「どうするも何も、それが一番現実的なんでしょう? ただ、今回のは実験して確かめていかなければ行けないみたいだし、相当な量の樹氷石、だっけ、が必要なんじゃないのかしら」

 

「そうだね。 だったら、もう二回は国有鉱山にいかないと駄目かな」

 

やはりそうなると、ステルクに護衛を頼むほかない。

 

鉱山の深部に行くとなると、丸一日以上、潜らなければならないだろう。この間は何だか分からない存在に狙われてもいたようだし、一瞬でも気は抜けない。

 

イクセルにも声は掛けてみたのだけれど、しばらくは忙しいと言われてしまった。そうなると、やはり選択肢は残っていない。

 

適当なところで作業を切り上げて、ステルクの様子を見に行く。

 

王宮では、騎士達が忙しそうに走り回っていた。何かあったのかも知れない。以前、受付で会話した、エスティという女性騎士が話しかけてくる。

 

「あら、こんな時にどうしたの?」

 

「ええと、ステルクさんに会いに来たんですけれど。 何かあったんですか?」

 

「鉱山で死亡事故が起きたのよ」

 

背筋に寒気が走った。

 

話によると、廃坑道と坑道がつながってしまって、其処からモンスターが出てきたのだという。

 

戦士達が駆けつけて、モンスターは殲滅したが。その時には、労働者が数人食い殺されてしまっていたのだとか。

 

労働者達はいずれもアーランド人ではなく、周辺からの出稼ぎ達。いずれも戦士の訓練は積んでいなかったから、モンスターの攻撃にはひとたまりもなかった。襲ってきたのはいずれも下級の悪魔達だったそうだ。ただ、肉を食い散らかしたのは、後から来たドナーンの群れだったそうだが。

 

対処が遅れたのには、幾つか理由がある。

 

丁度その時、労働者達が抗議行動をしていたのが一つ。

 

何でも、最近導入された弁当が著しくまずいとかで、不満の声が上がっていたのだとか。暴動と言っても、労働者の代表達が、監督をしている戦士達の代表と話すというものであったそうだ。

 

だが、その状況で、監視が厳しくなっていたことが、逆に徒になった。

 

今回穴が開いた箇所は、作業をしていた辺りとは別で、それで対応が遅れる事になったのだそうだ。

 

ただでさえ強面のステルクが、更に怖い顔で奥から出てきた。

 

ロロナは全身がすくみ上がるかと思った。

 

「先輩、状況は」

 

「まだ混乱しているわ。 とりあえず穴は塞いだようだけれど、戦士達の話によると、噂のグレーター級が出たって言うことなの。 ひょっとすると、そいつが意図的に穴を開けたのかも」

 

「それは著しくまずいですね。 やはり私が現地に」

 

ちらりと、ロロナを見ると、ステルクは足早に戻っていった。

 

これでは、話どころでは無い。

 

しかも、今話を聞いている限り、かなり物騒な単語が飛び交っていた。グレーター級というと、この間聞かされた、とても強い悪魔だろう。

 

「で、ステルク君に何の用事?」

 

「それは、実はこれから、鉱山に行こうと思っていて」

 

「間が悪かったわねえ」

 

エスティが苦笑いする。

 

これでは、護衛を頼むどころではないと思ったのだけれど。意外にも、エスティが思わぬ助け船を出してくれた。

 

「どうせ今回の件で調査が入るから、同行できるように交渉してみましょうか?」

 

「本当ですか?」

 

「ただし、分かっていると思うけれど。 命の保証は出来ないわよ」

 

「わたしもアーランド人です。 危険は覚悟の上です」

 

事実、ロロナは採取地に行くときは、命を落とす覚悟くらいはしている。アーランド人は、常にしている事。

 

幼児の頃から、叩き込まれるのだ。

 

伝統的に、戦士の子供達は、ある教育を受ける。四歳になると、親に連れられて、モンスターなり野生の動物なりがいる所に出向く。

 

アーランド人の子供は、動物を殺す事を、親に学ぶ。

 

そうすることで、死の概念を理解する。

 

ロロナの場合は、アナグマの子供だった。お父さんが、捕まえてきたアナグマの子供を、目の前でくびり殺した。

 

悲鳴は、かなり長く残った。

 

そして、その後。縄に死体を吊して、放置する。

 

やってくるスカベンジャー達が、死体を貪り喰う様子を見るまでが、最初の教えだ。

 

これが力を使うと起きる事。

 

そして、その末の死。

 

美しいものでもなんでもない。

 

死んだら、全てが餌になる。

 

動物たちは、その理屈で生きている。アーランド戦士達も、戦いに身を置く間は、同じ理屈で生きなければならない。

 

怖くて、悲しくて。

 

でも、理解は出来た。

 

クーデリアもイクセルも、アーランド人であれば、同じ教育を必ず受ける。

 

そのあと、動物の捌き方を教わる。野外での寝泊まりの方法も。

 

ロロナは戦士にはならなかった。錬金術師としては半人前以下。だが、魔術師としては、いっぱしとはいかなくても。

 

アーランド人である自信はあった。

 

「よろしい。 なら、ステルク君に話は通しておくわ。 時間はそれなりに掛かるから、アトリエに戻っていなさい」

 

「分かりました。 お願いします」

 

ぺこりと一礼すると、ロロナはアトリエに戻る。

 

準備は、いくらでもしなければならない。







戦士の文化で生きている民は、戦士の理屈で生きているものなのです。

ロロナさんもそれは同じ。

原作でもどうやってこんなもんを入手したのか不安になる両親でしたが。

本作でも普通に強い戦士である両親から、動物の食べ方捌き方などは教わっているのです。








感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。