暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、発破の作成へ

安定した環境の倉庫に、今回得られた素材の数々を移すと。ロロナは、休む暇も無く、資料の読み直しに入った。最後までつきあってくれたステルクが、アストリッドと顔を合わせたとき。

 

微妙な表情をしていたけれど。

 

理由は、よく分からない。師匠も何も言わなかったので、追求はしない。というよりも、その余裕が無かった。

 

クーデリアにも、一度帰ってもらう。

 

幾つか、思いついた事があるのだ。是非に試してみたい。

 

三つの条件を全て満たす発破を、合計で五本作る。自分で、今回の課題について、敢えて言い直す。

 

そして、最初から順番に見直していく。

 

幸い、火薬は充分に出来た。五本どころか、その十倍だって作れる。ただし今後は失敗に失敗を重ねることが確実なので、どれだけあっても足りると言うことはないだろう。

 

鉱山で使っている発破も、念のために見せてもらったけれど。

 

破壊力だけなら、正直今のフラムでも充分、上回っている。

 

ただし、其処で満足していてはいけない。

 

労働者の人にも聞いたのだけれど、威力は三倍は欲しいと言う話なのだ。

 

労働者階級が持ち運べる重さを考えると、今のフラム二本分程度の火薬を詰めるのが限界だろう。

 

そして安全性だ。

 

此処で、どうやらヒントが掴めそうなのだけれど。

 

いろいろな資料を見たが、導火線については、詳しく載せられている。昔から、錬金術師達は、発破の安全性を、色々と工夫していたのだ。

 

ただ、今考えている発破を完成させるには、それだけでは足りない。

 

樹氷石を用いる発破の図面を見る。

 

これを作った人は、火薬の制御技術は上手く行ったのだけれど、威力が落ちてしまったと手記で嘆いていた。

 

どうにか改良できないだろうか。

 

後期の資料ほど、作った発破の火力は上がってきているけれど。どれも一長一短。何か良い案はないものか。

 

とりあえず、まずは樹氷石を用いた発破を作って見る。

 

作って見れば、何かしらの改良が、思いつくかも知れない。

 

 

 

黙々と作業を始めたロロナを、アトリエの外からアストリッドは見つめていた。

 

ヒントはいくらでも与えられるが、それでは意味がない。また、足を引っ張るのも、今は適切では無い。

 

八年掛けて仕込んだのだ。

 

これくらい、自力で突破してもらわなければ困る。

 

脅かしておいたおかげで、クーデリアも実力を随分と引き上げた。ロロナを守る直近の盾としては、充分な性能になっていると言える。

 

だが、まだまだだ。

 

今日は会議には出ない。

 

危険性が高い実験をロロナがする場合は、近場で見守る事にしている。あれもアーランド人だし、発破の誤爆くらいでは死なないけれど、万一のこともある。

 

しばらく見ていると、樹氷石を用いた発破を作り始めた。

 

まずゼッテルを加工して、魔法陣を書く。其処の間に、細かく砕いた樹氷石を挟み込む。そして成形した火薬を包み込んで、導火線を通す。

 

こうすることで、衝撃を樹氷石が防ぎ、なおかつ火器もシャットアウトする。

 

問題は、その後だ。

 

この障壁が、かえって爆破を弱めてしまう。

 

解決法は、アストリッドの頭の中にはある。

 

だが、ロロナには教えてやらない。あれなら、自力で思いつくはずだ。

 

ロロナは幾つか試作品を作った後、頭を抱える。

 

まだまだ、思いつくには時間が掛かりそうだが。その苦悩している様子を見ると、とても可愛らしくてときめく。

 

もっと苦しんで欲しい。

 

アストリッドにとって、ロロナはほぼ唯一、心を許せる人間だ。そんな大事な相手に、こんな歪んだ愛情しかぶつけられないアストリッドは。

 

自分が病んでいることも。

 

歪んでいることも。自覚はしていた。

 

ロロナが手を休めた。そして寝台に移動して、眠りはじめる。そろそろ仕事に向かうべき時だろう。ステルクが近づいてきたので、アストリッドは小さくあくびをした。相も変わらずの強面のまま、ステルクは気配を消しているアストリッドの側に来る。

 

「見張りか」

 

「ああ。 会議の様子は?」

 

「坑道にいた悪魔達の処分が決まった。 結論から言うと、外には出さないが、これ以上殲滅もしない」

 

「なるほど、モンスター扱いか」

 

それが適切だろう。

 

アストリッドはあの悪魔と呼ばれる存在の正体を知っている。王をはじめとする要人数名にも話してはある。

 

ただ、それを加味しても。危険である事に違いはないのだ。

 

「私はこれから、坑道に出向いてこの結論を、連中の長老に伝えるつもりだ」

 

「後はスカーレッドをどのタイミングで用いるか、だな」

 

「悪趣味な奴だな。 あの巨大ドナーンは、お前の仕業ではあるまいな」

 

「流石にそれは違う。 私もモンスターを操作する術程度は持っているが、あのドナーンは、五十年ほどかけて育っていった個体だろう。 流石にあんなものを、簡単に用意はできないさ」

 

これは事実だ。

 

ただ、アストリッドも戦闘は影から見ていたが。あのドナーン、どうも精神に異常をきたしていた様子がある。

 

何者かが、まだこの計画に関与しているか、或いは。

 

もっとマクロ的なものが、動いているのかも知れない。

 

スカーレッドと呼ばれたグレーター級については、近いうちに出向いて、捕獲はしておく。研究の後、計画の一端で用いるつもりだが。

 

それはまた別の話。

 

それに、悪魔の長老には、話を幾らか聞いておきたい。有用な発見があるかも知れないからだ。

 

「他には、何か決まったことはあるか」

 

「今回の課題をロロナ君が突破できたら、追加人員を投入する」

 

「ほう……」

 

「ただし、次の課題からの参戦は難しいかも知れないな。 現在調整中だ」

 

確かに、ロロナはもう少し人脈を広げた方が良いだろう。

 

あの子は誰とでも仲良くなれる才能があるが、しかしながらそれを積極的に使おうとしない。

 

これはアストリッドにはどうしても出来ない事なので、もったいないとしか思えない。

 

コミュニケーション能力は、努力でも伸ばせるかも知れないが、才能がどうしても関係してくる。

 

アストリッドは何事にも才能に恵まれていたが、これだけはどうしても駄目だった。

 

新しい人員を追加して、人脈を伸ばせば。

 

ロロナはもう少し、知識の幅を増やせるだろう。

 

「で、ステルク。 お前から見て、ロロナはどうだ」

 

「戦士としては悪くない素質を持っている。 今はまだ半人前だが、魔力はとても強いし、何より危地での判断力が高い。 普段は私の顔にさえ怯えるほどの臆病な所があるが、一線を越えると、判断も決断も自分で出来るようだな」

 

「ずいぶんな褒めようじゃないか」

 

「私は事実を述べているだけだが」

 

アストリッドも実際は同意見なので、それで構わないと思う。

 

後は、幾つかの話をして、情報を交換した後、分かれた。ステルクはこれから鉱山に出向いて、悪魔達の長老に話をしに行く。

 

アストリッドはアトリエに戻らず、街の外れでフリクセル夫妻と合流。精鋭数名と一緒に、オルトガラクセンに潜るのだ。

 

既に探索範囲はかなり広がっている。

 

幾つかの層は既に探索し尽くして、有用な情報も手に入れていた。今日はあまり深くまでは潜らず、既に調査済みの階層に入る。

 

敵の掃討作戦が、主な任務だ。

 

勿論、罠なども調べておく。

 

ただ、オルトガラクセンは極めて複雑な構造で、どうも地下深部から直接地上につながるルートも複数あるようなのだ。

 

モンスターがそれを使って地上に出てきている形跡もあるので、しっかり調べておかなければならない。

 

もう一度、アトリエの方を見る。

 

愛しい弟子は、今頃夢の中だ。

 

アストリッドは、その眠っている様子を思い浮かべるだけで、満足だった。

 

街の外れでは、既に調査チームが待機していた。

 

「娘の様子は?」

 

ロロナの父であるライアンが、開口一番に言う。アストリッドは鼻を鳴らすと、口の端をつりあげた。

 

「問題ない。 さあ、探索に出向こうか」

 

訓練された精鋭部隊が動き出す。

 

闇夜に紛れ、その姿は、見る間に街から離れていった。

 

 

 

(続)







今までの関係が関係なので、すぐに悪魔族と仲良くとはいきません。

殺し合いもした間柄ですからね。

ただし、これ以上関係を悪化させない。まずは其処からです。

このプロジェクトには色々な人が噛んでいます。

それだけ大きな意味をもつものだからです。







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