暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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作業用の発破に関する四苦八苦。

火薬は相手を殺戮するためだけのものではなく、本来はインフラの開発用にも大きな成果を出せるものなのです。






1、仕掛け発破

ロロナはどうにかくみ上げることが出来た発破を見て、額の汗を拭った。

 

フラム三本分の火薬を用いた、大型の発破だ。

 

今回は戦闘用のものではない。岩盤を砕くためのものなので、戦闘で用いることは、最初から想定していない。

 

何度か調整した。

 

後は、性能実験をするだけだ。

 

いずれにしても、此処まででロロナが独自に考えた知識は一つも無い。いずれもが、先人の知恵を拝借して、組み合わせたものばかりだ。

 

荷車に積み込むと、近くの森に。

 

クーデリアは、既に城門で待ってくれていた。そしてもう一人。

 

ステルクである。

 

今回、完成品の実験をするので、見に来てもらったのだ。もしこれが成功したら、アトリエで量産するだけ。多分、一週間ほど、時間が余るだろう。もちろん、もし成功したら、だが。

 

ステルクに、ぺこりと一礼。

 

前回、廃坑道で巨大ドナーンと戦ってから、ステルクの事が前ほど怖くなくなってきた。勿論親しみが覚えると言うほどでは無いけれど。以前のように、顔を見るだけですくみ上がると言うことはなくなった。

 

「今日はお願いします」

 

「実験は上手く行きそうなのか」

 

「はい。 どうにかなると思います」

 

クーデリアが、本当でしょうねと、小さな声で呟く。

 

ロロナは苦笑いした。

 

実際、クーデリアは前回の失敗を見ているのだ。あれからしばらくは悪戦苦闘を続けた。何度かの実験にも立ち会ってもらった。

 

理論は出来たが、すぐに上手くは行かなかった。

 

何度かは当然失敗もした。

 

どうにか、必要量の火薬を爆発させることが出来るようになったあとも、苦労は連続した。

 

組み合わせてみると、上手く行かない。

 

順番を変えると、どうにもならない。

 

しかし、今は何とか、その全てがクリアできたはずだ。

 

本当にギリギリになってしまったけれど。これが駄目なら、もう万策は尽きているかも知れない。

 

荷車に乗せてあるのは、とにかく不格好な箱。

 

箱には導火線が接続され、きけんと下手な字で書いてある。加工したこともあってゼッテルがごわごわで、下手な字でしか書けなかったのだ。元々ロロナの字は非常に癖があるのだけれど。これはないように自分でも思う。ステルクはロロナの字を見て眉をひそめたが、クーデリアがフォローしてくれる。

 

「一応、あたしも立ち会ったけれど、大丈夫なはずよ」

 

「使い方についてのマニュアルは」

 

「そ、それは」

 

「あたしが書く」

 

クーデリアが言ってくれたので、良かったとため息。

 

実際、他の人に説明するのは、著しく苦手なのだ。導火線に火を付ければ爆発します、だけではマニュアルにはならないだろうし。

 

荷車を引いて、近くの森に向かう。

 

ステルクは、道すがら坑道の悪魔達について話してくれた。

 

「彼らは今の時点ではおとなしくしている。 このまま静かにしていてくれれば、苦労がなくて済む」

 

「別の場所へは、行かせてあげないんですか?」

 

「あの坑道以外でも悪魔の出現は確認されている。 これ以上生息地が広がってしまうと、面倒だ」

 

確かに、そうかも知れない。

 

大人の悪魔の戦闘力が分からないからロロナには何とも言えないけれど。労働者を襲って死なせたことは確かなのだ。

 

それに、おじいさんも言っていた。

 

悪魔の中には、日の中に出られる人間を、憎んでいる者も多いと。

 

それならば、管理できるだけ管理しなければ、危ないだろう。

 

近くの森に着く。

 

巡回の戦士達に挨拶しながら、空き地に向かう。昨日使った空き地は、魔術師が術の練習で占有していた。

 

見ると、何かを操作するような術を使っている。

 

後ろ姿しか見えなかったが、女の子のようだ。光の弾が二つ、ふわりゆらりと飛んでいた。

 

かなり高度な魔術とみた。

 

ロロナの母であるロアライナは、攻撃魔術の大家だ。とはいっても、ああいう操作系の魔術が出来ないわけではない。炎の弾を周囲に飛ばして、敵の奇襲に自動反撃するようにもしていた。

 

ただし、相当に集中力がいる作業だとも言っていた。

 

邪魔をしてはいけない。そのまま、森の奥へ行く。

 

会話が後ろから聞こえたような気がするが。それはいい。独り言をいいながら、修行をする人もいる。

 

開いている空き地を見つける。

 

荷物を下ろした。丁度良い岩がないかと思ったのだけれど。ステルクが、すぐに見つけてきてくれた。

 

二抱えくらいある岩を、担いで持ってくる。

 

あれくらいなら、筋肉質のアーランド戦士なら誰でも運べるけれど。ステルクは長身だが、若干細身だ。

 

或いは、筋肉の使い方が、上手なのかも知れない。

 

「このくらいの岩で構わないかな」

 

「はい、充分です」

 

地面に半分埋めて、固定する。

 

その後は、作ってきた発破を、岩の側に。そして魔術で、岩に穴を開けた。

 

使い方は、他の発破と同じ。

 

岩盤の側に固定して、破壊力を最大限に伝える状態を作る。導火線を伸ばして、木陰に隠れる。そして、念のために、防爆用の術式を、何重かに展開した。

 

ステルクが周囲を見て廻り、誰かが入り込まないかを確認。

 

今の時点で、見習いの戦士や、邪魔になるような動物はいない。遠くで、ステルクが指を使って丸を作った。

 

「気をつけて。 何も問題は無いわね」

 

「うん、大丈夫!」

 

笑顔でクーデリアに応えるが、本当はちょっぴり自信は無い。

 

問題は順番に片付けていったとは思う。

 

だが、全てを連結させた今。それをクリアできているかは、よく分からない。文字通り、やってみるしかない。

 

導火線に着火。

 

心臓が跳ね上がるかと思った。それくらい、緊張したのだ。

 

呼吸を整えながら、木陰に隠れて、耳を塞ぐ。クーデリアは遮光グラスを掛けると、同じように耳を塞いだ。

 

今度の発破は、幾つかの工夫を凝らしている。

 

まず成形だが。

 

成形する際に、複数の草を差し込んで、穴が開くようにしている。これは、やはり火薬には、発火の際に空気が必要だと知ったからだ。

 

火薬を穴だらけにすることで、一気に爆発を進行させる。

 

実のところ、火薬と気化させたガスを合わせる方が威力は大きいようなのだけれど。今回は、岩盤を砕くための発破なので、それは必要ない。

 

続いて、パージだが。

 

導火線とパージは、別にした。以前はパージの火力で、火薬に着火していたのだが。それが間違いだと感じたからだ。

 

まず、導火線の火が、発破の本体に到達。

 

ばんと凄い音がして、ゼッテルの外装が吹っ飛ぶ。そして姿を見せるのは、むき出しになった火薬ではない。

 

フラムと同じように、爆発に指向性を持たせるために、ゼッテルで包んだ火薬だ。ただし、ぴったり包むのではなくて、わざと隙間を空けて包んである。隙間の間には、支えになる棒を入れている。

 

この火薬は、使う際の向きも重要なのだ。

 

さあ、上手く行くか。

 

見ていると、導火線の火が、順調に進んでいく。

 

上手く行って欲しい。耳を塞ぎながら、ロロナは冷や汗をだらだら流していた。そして、発破本体に届いた瞬間。

 

思わず、首をすくめていた。

 

耳を塞いでいても、鼓膜が粉砕されるかと思ったほどだ。

 

一瞬、意識が飛んだ。

 

何度か瞬きするが、目がちかちかしてよく見えない。轟音もとんでもなくて、音が良く聞こえなかった。

 

岩は、綺麗に消し飛んでいた。

 

そればかりか、地面に大きな穴が出来ている。指向性を持たせることは出来たらしく、岩のあった方に、大きな焼け焦げが出来ていた。

 

辺りの草が、ちりちりと燃えている。

 

準備してきた水を掛けて廻る。もっとも、乾燥期ではないから、野火になる畏れはないだろう。

 

ステルクが来る。

 

「うむ、破壊力は申し分ない」

 

何を言われたか分からなかったので、小首をかしげてしまった。クーデリアが、手を掴むと、掌に指で書いてくれる。

 

有り難うございます。

 

そう答えたのだが、自分の声も、聞こえなかった。

 

それで、やっと心臓が跳ね上がった。胸郭の中で、飛び回っている。ロロナは、どれだけの破壊力を自分が成し遂げたのか、ようやく悟っていた。

 

これは、危険だ。

 

流石にこれでは、かなり強いアーランド戦士でさえ、無事では済まないだろう。勿論、非常に用途が限られる兵器だけれども。敵を誘い込んで爆破するという戦術であれば、人間に対しても活用は可能だ。

 

怖い。

 

腰が抜けそうになっている事に、ロロナは気付く。この発破は、本当に悪用されずに、使われるのだろうか。

 

クーデリアが、手を握ってきた。

 

ロロナが震えているとき、こうしてくれると、少しは気分が和らぐ。深呼吸しなさい。そう言っているのが分かった。少しずつ、耳が聞こえてきたからだ。強烈な耳鳴りがして、まだ半分くらいしか聞き取れなかったけれど。

 

ロロナが真っ青になって震えている事に、ステルクは流石に不安に感じたらしい。

 

クーデリアとステルクが、何か会話している。

 

自分にかけられた言葉ではないからか、恐怖で意識が散漫になっているからか。殆ど、何も聞き取れなかった。

 

漏らしてしまうことだけはなかったけれど。

 

ロロナはこの日。自分が手に掛けたものが如何に恐ろしいのか、ようやく思い知ったのだった。

 

 

 

どうやってアトリエに戻ったのかも、よく分からない。

 

ロロナは気がつくと、ベッドに寝かされていた。隣の部屋から物音がする。クーデリアがいるのか。

 

頭ががんがん響いて、よく考えられない。

 

いつの間にかパジャマを着ていたけれど。いつ着替えたのか。それとも着替えさせられたのかも、分からなかった。

 

部屋に入ると、黙々とクーデリアがホットミルクを作っていた。

 

令嬢だけれど、クーデリアは料理が出来る。ただ、腕はあまり良くない。ホットミルクは美味しく作ってくれるけれど、それくらいだ。

 

「もう起きて大丈夫なの?」

 

「……」

 

クーデリアが手を止めて、此方の顔を覗き込んでくる。

 

ため息をつかれた。

 

「重症ね。 まだ寝ていなさい」

 

「くーちゃん……?」

 

「あれで完成なんでしょう? 今日は休んで、明日中に設計図通り完成させればいいでしょ。 ほら、ベッドに行った行った」

 

突っ立っているところを、ひょいと抱え上げられて、無理矢理ベッドに。

 

何をされているかも、よく分からなかった。

 

何となく分かるのは、発破を完成させたこと。それが、あまりにも予想外の、桁外れの破壊力だったこと。

 

それがあまりにも怖くて、魂が抜け掛けた事、くらいだろうか。

 

歴代の錬金術師達は、どう思って、あんな恐ろしいものを作ったのだろう。最初に火薬を作り上げた人は、どう感じたのだろう。

 

ロロナだって、大威力の術を使う。

 

この間は、それで数十年を経たドナーンの命を奪った。だがそれは、自分の手で何かを葬ることを、覚悟して末の行動だった。殺さなければ殺される状況だったのだし、相手とは互角の立場での勝負だった。

 

これは、下手をすれば。

 

子供が笑いながら、相手を殺戮する道具にもなり得るのではないのか。

 

いや、それは魔術も同じだ。

 

アーランド人は、幼い頃から死とその結果について、徹底的に教え込まれる。だからこそ、魔術も武術も、使う意味が出てくる。

 

思考がぐるぐると廻っていた。

 

寝室に来たクーデリアが、ホットミルクを勧めてくれる。蜂蜜入りの、とても甘い奴。ロロナが疲れているとき、いつも作ってくれるものだ。

 

「それ飲んで、落ち着きなさい」

 

「うん……」

 

クーデリアは、一人にしないで欲しいと言う意図を汲み取ってか、ベッドの隣に座った。この親友は、いつもロロナを大事にしてくれる。それが、嬉しい。

 

しばらく、無心にホットミルクを飲む。

 

おなかに温かいものが入ると、気分が少し落ち着いてきた。情けないことだけれど、こんな時は、親友に甘えるほかない。

 

「あんたのことだから、あの発破の危険性を怖がってるんでしょ」

 

「うん……」

 

「あいつに聞いたけれど、あの程度の威力の発破は、その内大陸中枢の大国家でも量産が始まるそうよ。 それに、歴代の錬金術師が開発した幾つかの大型爆弾は、あんな程度の破壊力じゃないそうだし、国庫にも納められているらしいわ」

 

彼奴というのは、師匠のことだろう。

 

言われていることは良く分かる。

 

「あんたが地獄の蓋を開いたわけじゃあないから、安心しなさい」

 

「何だか怖いね。 昔の人は、あんな恐ろしい兵器を、たくさん使っていたのかな」

 

「分からないけれど、その可能性は高そうね」

 

そう言われてしまうと、とても悲しい。

 

それに、火薬は世界中で研究されている。他の国に錬金術師がいるかどうかはロロナも知らないけれど。

 

おそらくいる筈だ。

 

彼ら彼女らも、こんな恐ろしいものを、作っているという訳なのだろうか。

 

魔術についても、日時研究が重ねられている。

 

いずれアーランド戦士でも、戦場では無敵ではいられなくなると、多くの者が断言している。

 

だが、何だろう。

 

ロロナは、其処にとても危ういものを感じてしまった。

 

「今、心配なのは、あんたの方よ。 続けられる?」

 

「うん。 だって、このままだと、師匠とよその国を回りながら、厄介事に首を突っ込み続ける事になるんだよ。 そんなの、嫌だよ」

 

「そう、ね」

 

クーデリアは、どうしてかほろ苦い表情をした。

 

こんな顔を、時々無二の親友はする。でも、その理由を、聞かせてはくれない。ロロナにとって、とても悲しい事だ。

 

なぜなら、

 

ロロナも、気付いているからだ。

 

クーデリアが、ロロナの知らない事を知っていると。

 

その事が原因で、ロロナを哀れんでいるのだと。

 

しばらく心を落ち着かせて、ベッドから出る。着替えて、アトリエに出ると、クーデリアはもう調合を準備してくれていた。

 

後は、作るだけだ。

 

材料は揃っている。

 

マニュアルについては、作業をしながら、口頭でクーデリアに説明する。何度か、擬音は止めなさいと怒られた。苦労しながら、具体的に何をすれば何が出来るかだけを抽出する。

 

そして、文面だけは、クーデリアに考えてもらった。

 

勿論マニュアルそのものは、ロロナが書くのだ。クーデリアに書いてもらっては、意味がない。

 

徹夜は、するまでもない。

 

加工したゼッテルは充分な量を準備していたし、火薬もしかり。樹氷石についても、問題は無い。

 

全部がとても不格好だけれど。

 

それでも、確実に、三つの要件を満たした発破が出来ていく。二つ目が仕上がったくらいに、聞いてみる。

 

「ステルクさんは、なんて言っていたの?」

 

「申し分ない威力だって、喜んでいたわよ」

 

「そう……」

 

あの人は、やはり戦闘の本職なのだ。それが自然な反応だろう。それで正しいことを、ロロナは理性では理解できていた。

 

 

 

夕方、五つ目の発破が完成した。

 

性能試験が成功するまでに、散々試行錯誤を繰り返したのだ。細部までチェックはしてあるし、必ず動く。

 

保存に関しても、マニュアルを整備してある。何より、国の保管庫は、アトリエのコンテナ以上に環境整備がしっかりしているという事だから、問題ないはずだ。

 

懸念事項があるとすれば、この仕掛け発破がとても不格好なことだが。

 

それについては、性能を見てもらう他ない。

 

「くーちゃん、ありがとう。 後は、わたしが持っていくよ」

 

「何か手伝うことはない?」

 

「ううん、大丈夫」

 

耳ももう問題なく聞こえるし、心も落ち着いた。

 

クーデリアが側にいてくれたおかげだ。

 

少しだけ時間も余ったし、余力を回復用の道具の研究に当てたい。それに、坑道で見たグラビ石を、回収しておきたかった。

 

あれは何かしらの道具類に応用できるはず。ただ、今は回収する手段がないから、実際には研究だけになる可能性も高そうだ。

 

参考書の理解も進めておきたい。

 

今までは、必要な箇所しか読んでいなかったのだ。他の場所も読んで、応用力を上げておかないと、対応できないことは山ほどある筈だ。

 

「じゃあ、あたしは帰るけど。 無理はしないのよ」

 

「うん、有り難う」

 

アトリエの前で、クーデリアと分かれる。

 

荷車を引こうとして、一瞬の躊躇。やはり、この発破のことを、ロロナは怖がっているのかも知れない。

 

何よりこれが、恐ろしい用途で使われるのではないかという懸念が、足を地面に縫い付けたのか。

 

だが、クーデリアが言ったように。これはロロナが開いた地獄の扉ではない。まだ駆け出しのロロナは、先人の通った路を、後から楽に進んでいるだけ。

 

思い上がりだ、そんなものは。

 

荷車を引いて、歩き出す。

 

王宮へ、黙々と進んだ。

 

受付で、要件を告げる。エスティさんは、いつも通りいて、笑顔で応対してくれる。ただ、荷車は入れるわけには行かない。ロロナが荷物を運び込むと、くすくすと笑った。

 

「随分と見栄えが悪い箱ね、それ」

 

「すみません、どうしても見栄えだけは改良できなくて。 性能の方は、どうにかなったんですけれど」

 

「実戦で試したの?」

 

「ステルクさんに立ち会ってもらいました」

 

そのステルクは、今日は不在だという。

 

忙しそうな人だし、不思議な事ではない。現役の騎士というと、彼方此方で仕事がたくさんあるはずだ。

 

王宮の倉庫に入る。

 

空気がとてもひんやりしていた。というよりも、寒すぎるくらいだ。彼方此方に、霜さえ降りている。

 

これはどうやっているのだろう。

 

見ると、何カ所かに、錬金術師が作ったらしい冷気を発する道具類がおいてある。壁にも床にも、強い魔力が籠もったゼッテルが張られていた。魔法陣は淡く光っていて、丁寧に整備されているのが分かった。

 

発破類と書かれた棚がずらりと並んでいる。

 

かなり広い倉庫だ。しかも、地下に三階建てくらいになっている。ロロナが案内されたのは、一番下の階。

 

壁も床も厳重に防爆が施されている。最悪の事態が起きたとき、被害を最小限にとどめるための工夫と言うことか。

 

何度か往復して、箱を全て棚に並べる。

 

最後に、エスティにマニュアルを渡した。エスティはマニュアルにざっと目を通したが、何も言わなかった。

 

「ちなみにこの発破、量産は可能?」

 

「はい。 大丈夫です」

 

「それは良かった。 場合によっては今後、量産を頼むかも知れないから。 今回だけしか作れなかった偶然の産物だと、此方も困ったのだけれど」

 

苦笑いするロロナに、エスティはウィンクした。

 

次に作る時は、もっとしっかりした見た目にしたいけれど。今回は正直、そこまで気が回らなかった。

 

結果については、明日知らせてくれるという事で、ロロナはアトリエに戻る。

 

空の荷車を引いて、引き上げていく途中。ようやく肩の荷が下りたというのに、やはり気は重かった。

 

本当にこれで良かったのだろうか。

 

良かったのだ。

 

言うまでも無いこと。

 

今でも、師匠と一緒にこの町を離れるのは、怖いと言う思いは強い。だが、そのために、多くの人を不幸にするのは、もっと嫌だ。

 

ロロナが作った発破程度で、世の中なんて変わらない。

 

それは分かっていても。悩みは、ぐるぐると頭の中を、堂々巡りした。

 

いつの間にか、アトリエに戻っていた。考え事をしながら歩くと、すぐに時間など過ぎてしまう。

 

荷車をしまうと、マニュアルを読んで、勉強する。

 

次の課題が来るまで、時間は少しだけある。クーデリアが怪我をしたとき、すぐに助けられるように。

 

いろいろな事が、錬金術で出来るように。

 

今は、勉強をしなければならなかった。







原作でもメルルのアトリエの頃にはいきおくれを気にしていたエスティさんも、ロロナのアトリエの最初の頃はとても若々しくてそんな気配はなかったんですよねえ。

本作でも、この頃はプロジェクトに関わりながらも、バリバリに仕事をするもっとも油が乗った時期だといえます。

アーランドが誇る最強の戦士の一角ですし、頭もきれる。

そして何よりも、ダーティーワークにおいて右に出る者がいないのです。








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