暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

25 / 121









4、まがつの先触れ

グラビ石をコンテナに移す。思ったよりもずっと劣化していない。これなら、今後も持ち帰ることが出来るだろう。

 

放っておいても、空中に浮くという不思議な石だ。

 

研究すれば、色々と不思議な道具類を作り出す事も出来るはず。今から、レシピを見当するのが、楽しみで仕方が無かった。

 

ただ問題も多い。

 

浮力は長く保てない、という事だ。実際、革袋を開けて外の空気を入れると、すぐに痛んでしまう。

 

何かしらの工夫が必要になってくるだろう。

 

クーデリアは黙々と作業を手伝ってくれるが、言いたいことは分かる。

 

リオネラの様子は、ずっとおかしかった。今後も友達として仲良くして行きたい子なのだけれど。

 

無理をして、ロロナにあわせているのでは無いか。

 

そう思うと、何だか不安だ。

 

戦場でも、リオネラは場慣れしていない様子がとにかく目だった。怖いと思うのは当然だろうけれど。その恐怖を制御できないと、生き残れない。ロロナだってどちらかといえば恐がりだけれど、一旦戦いが始まってしまえば、スイッチを切り替えることは出来る。自主的にはなかなか出来ないけれど。

 

多分これは、アーランドに暮らしている戦士達が、何代も掛けて積み上げてきた力なのだろうと、思っている。お父さんとお母さんの血が、ロロナにも流れているのだ。

 

リオネラは違う。

 

辺境と言っても、平和な場所の出だったのだろう。

 

それに、気付いていた。

 

「りおちゃん、生まれ故郷の話、全然しないね」

 

「何か、話したくない理由があるのよ、きっと」

 

「そうだね」

 

分かっている。

 

きっと、何か大きな理由がある事は。だから、いずれもっともっと友達になった時、向こうから話してくれれば、それで良かった。

 

クーデリアにお茶を出す。

 

そして自身は、悪魔の長老と話したメモを取り出すと、レシピに反映していった。

 

どうにか癒やしのアロマはこれで完成する。

 

魔女の秘薬とでも言うべき、猛毒ももう少しで作る事が出来るだろう。今作っているのは超強力な眠り薬だけれど、少し成分を変えれば、他の薬にもする事が出来るはず。

 

問題は最後の一つ。

 

獣の彫像とでもいうべき道具。

 

相手に幻を見せるものだけれど。これだけは、レシピを書き下ろすのに、だいぶ苦戦している。

 

また、ぎりぎりになるかもしれない。

 

だが、ロロナは、やりがいを感じ始めていた。

 

「ロロナ、少しずつ、楽しそうになってる?」

 

「うん。 出来る事が、少しずつ増えてきたから」

 

まだまだ難しくて、手も足も出ない作業はいくらでもあるけれど。最初に比べれば、全然状況は違う。

 

これからも、こうして腕を上げていきたい。

 

複雑な顔をクーデリアがする。きっと、ロロナには考えつかないような所で、何かを悩んでいるのだろう。

 

その悩みを、これから、少しでも取り除いていきたかった。

 

 

 

アトリエを外から見ていたアストリッドは、鼻を鳴らした。

 

少しばかり順調すぎる。

 

そろそろ、大きく足を引っ張ってやる必要があるだろう。

 

上手く行きすぎると、躓いたときにダメージが酷く大きくなる可能性がある。これから、足を引っ張るプロフェッショナルが此方に来るが、それは来期の話。もう少し、ロロナには挫折を味合わせておきたい。

 

そのまま、リオネラが泊まっている宿に向かう。

 

勿論、どの宿にいるかは、監視の者を通じて聞いている。一度顔合わせして以来だが、アストリッドは相手が抱えているものを、だいたい見抜いていた。

 

リオネラが出てくる。

 

随分とやつれているようだった。

 

ロロナにつきあって坑道に行ったと言う話だが。アーランド人でも危険な場所だ。此奴が特殊能力持ちといえど、さぞや怖かった事だろう。

 

その恐怖を想像するだけで、何杯も食事をお替わりできそうだった。

 

青ざめているリオネラに、告げておく。

 

次にするべき事を。

 

無言のまま、リオネラは聞いていた。ぬいぐるみどもが抗議の声を上げるが、最初から気にしない。

 

「抵抗は無駄だ。 というよりも、私はいたいけな娘が大好きでな」

 

「……っ!」

 

泣きそうになるリオネラ。

 

意味は、理解してくれたようだった。

 

勿論、言葉通りの意味ではない。

 

「それでは、さっそく行動に取りかかってくれ。 レポートも早めに提出するようにな」

 

「鬼!」

 

後ろから、ぬいぐるみの一匹が言うが、勿論気にしない。

 

というよりも、アストリッドにとっては、最高の褒め言葉だった。アストリッドの歪みは、ロロナやクーデリア、リオネラよりも更に上。

 

人間などに褒めてもらっても、何も嬉しくなど無い。

 

むしろ、怖れられた方が嬉しい。

 

ロロナに対する屈折した態度も、それが故だった。

 

アトリエに戻ると、ロロナは作業の詰めに入っていた。今回も、課題をぎりぎりに達成させるために。

 

アストリッドは、いかなる努力も惜しまない。

 

ロロナを強くたくましく育て上げるためには。

 

あらゆる手段を、選ばないつもりだった。

 

 

 

(続)







本作のアストリッドさんは、原作以上に歪んでいます。

特大の爆弾を心に抱えているためです。

その歪んだ心は時々溶岩となって、周囲を傷つけます。

それはもはや誰にも……この時点ではとめられない事なのです。








感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。