暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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何しろロロナさんが関わっているのは国家規模のプロジェクトであり、周りは全員グルなので、定期的に会議が行われます。

別にみんなでロロナさんを虐めているわけでもなんでもなく、生き残るために必要な事なのです。

破滅の時代を乗り越えた現在でも。

人間の本性は変わっていないのですから。馬鹿馬鹿しい話ですが。






1、苦悩の日々

死人のような顔色をしたリオネラが来たことで、プロジェクトの参加メンバーは一応揃った。エスティはリオネラの状況を知っている。予想通り、彼女はロロナに依存しはじめていて、なおかつそれを自覚している。

 

自分の秘密がばれたら、嫌われるのではないかという恐怖。そして、ロロナに依存しはじめているのに、まだ怖いと思っている自分への嫌悪。

 

心が弱いこの娘にとっては、致命的な板挟みだ。

 

今はあまり外に出ずに、病院で精神の不安定を緩和する術式を受けて、静養している。後半月ほどは、静かにしているようにと、医療魔術師から言明されているという。ただ、今日は大事な会議の日だ。気の毒だが、出てもらわなければならない。

 

最上座にいる王が、周囲を見回す。

 

既に、配付資料は、皆の所に行き渡っていた。

 

「それでは、プロジェクトの進捗会議を行う。 アストリッド」

 

「はい」

 

起立したアストリッドが、説明をはじめた。

 

現在、プロジェクトは予定通り、いやそれ以上に進捗が早い。ロロナは実力を想像以上に早く開花させている。

 

今までの課題で納品されたものは、想定された質をかなり上回るものばかり。

 

特に獣の像は、予想以上の品質で、様々な事に応用が可能。レシピは既に入手しており、量産もできる。

 

そう、アストリッドが締めくくった。

 

良くやると、エスティは思う。

 

不機嫌そうなステルクが隣で鼻を鳴らす。彼は少しずつ、ロロナの事を好ましく思い始めている様子だ。

 

エスティもそれは同じ。

 

ただし、国に優先はしない。アーランドは戦士の国。多くの犠牲を出しながら、国を守ってきた。

 

戦士は相応の覚悟が出来ていてようやく一人前。ましてや、国にとって後ろ暗い仕事もする騎士となれば、なおさらだ。騎士になってまで、まだ純真なステルクのような男の方が、珍しいのである。

 

「前倒しは可能か」

 

「前倒しをしすぎると、精神に異常をきたす可能性もありますが。 ロロナは大変単純で、それが故に壊れると回復まで苦労することになるかと思います。 いつも負荷を掛けているのは、強くなるようにという配慮からです」

 

「さすがはアストリッドさんですな」

 

皮肉混じりに言うのはライアンだ。

 

ライアンは、ロロナの父である。この国でも上位に入る戦士であり、発言力も強い。アストリッドを信頼している反面、そのやり方には内心穏やかではない様子である。

 

この間、大量のドナーンが発生した事件があったのだが。

 

あれはどうも、アストリッドの仕業らしいと、エスティも最近知った。ライアンも当然知っていると見て良いだろう。

 

危うくロロナは死にかけたのだ。そう考えると、ライアンとしては、複雑極まりない気分だろう。

 

「ふむ、様子を見た方が良い、という事だな」

 

「現時点では、予定通りで良いでしょう。 私の方で進めている別プロジェクトは、来年には軌道にのり、おそらく二月までには完成品一号ができる事でしょう。 試作品に関しては、間もなく二体を提供できます。 完成品が出来るその頃には、最後の追加人員も来る事かと」

 

最後の追加人員、か。

 

彼は通称追い出し屋。この国でも、もっとも後ろ暗い仕事をしている戦士の一人だ。エスティとは仕事柄関係が深いが、あまり関わり合いになりたくない相手である。

 

この間連絡が入ったのだが、少し前にアーランド西部にあるエンティオルの街で大きなトラブルがあり、処置に時間が掛かっているという。これに関してはエスティの部下も何名か解決のために派遣しているため、他人事ではない。

 

まあ、今の時点で、ロロナには充分な負荷が掛かっている。

 

アストリッドも足を引っ張っているし、その気になればリオネラとまともに接するだけで、ロロナの精神力はごりごり削り取られていくだろう。精神を病みかけているリオネラは、ロロナには極めて接する場合の負担が大きい。

 

それでいい。

 

順調すぎるプロジェクトの進展なんて、最後のおおごけにつながるだけだ。

 

アストリッドが着席すると、メリオダスが代わりに起立。皆を見回しながら、説明をはじめる。

 

「今回の課題は、耐久糧食に関してです」

 

「ようやく来たか。 あの糞まずい缶詰、さっさとどうにかして欲しいと思ってたんだよ」

 

粗野な声を上げたのは、ハゲルだ。

 

他の者達も、それに賛同する。

 

ハゲルは元々歴戦の戦士で、いろいろな事情で一線を退いた後も、コネが広い。戦士達の相談に乗ることも多いと聞いている。

 

ならば、缶詰が如何に駄目かという話も知っているだろう。歴戦の戦士と言うことは、傭兵として他の国にも出ているという事だ。糧食として配給されるのは、缶詰なのである。勿論、だいたいの戦士はレンジャー訓練を受けているから、野草や野獣の食べ方くらいは知っている。

 

だが、この大陸には、荒野が広がっているだけの地域も、かなり多い。

 

そういった場所では、サバイバルの知識など、役には立たない。缶詰を食べるしかない状況も多いのだ。

 

転ばぬ先の杖として、缶詰は存在している。

 

その杖が折れやすいのが、問題なのである。

 

エスティが知る限り、アーランドでは六十年ほど前から缶詰を作っている。補給物資としては、缶詰は画期的な発明だったと言える。

 

しかし、画期的すぎたのがまずかった。

 

中に入れるものの改良は行われているが、缶詰自体の質は、あまり向上していないのが現実だ。

 

味も、最初の頃の、砂を噛むようなものにくらべれば随分マシだとは聞いているが。はっきり言って、粗食に耐えられるエスティでも。好きこのんで缶詰を食べようとは思わないのが現実だ。

 

「私も食べたことがありますが、あまり美味しいものではありませんね。 何より重いですし、かさばる」

 

「瓶詰めに比べるとローコストなんですが、その分味が落ちるんですよねえ」

 

多少穏やかに言ったのはティファナである。

 

彼女はロロナの隣に住んでいるからか、よく観察してレポートを上げてきている。女性らしい辛辣な視点からのレポートは、エスティも見ていて時々冷や冷やする。おじさま達のアイドルとなっているエスティの親友は。だが、花でたとえるなら薔薇だ。棘がたくさんついている。

 

「とにかく、耐久糧食の開発は急務であったのだ。 それに、予定通りの課題でもある」

 

王が発言すると、流石に皆が黙り込む。

 

それに、あのまずい缶詰を改良できるなら。誰も文句はないのが現実だ。

 

後は、問題点を幾つか、レポート化したものを配布する。

 

ロロナは長い間掛けて仕込まれただけあって潜在能力が凄まじい。しかしながら、成長が早い分いびつだ。

 

特に作って持ってくるものは、時々子供の工作と思うようなガワになっている。

 

品質については折り紙付きなのだが。

 

「あまり前倒しするのではなくて、やはり当初の予定通り、こつこつ進める方が良いのではないのか。 そう私は思います」

 

エスティが言うと、皆はおおむね賛成してくれたようだった。

 

会議は此処で終わる。

 

アストリッドは、別プロジェクトの進展がどうとかで、さっさとアトリエに引き上げていく。

 

此奴でさえ苦労するほどのものだ。技術を確立できたら、さぞや凄いことになるだろう。どうしても人口が足りていないこの世界を、一気に改革できる可能性さえある。エスティの旦那も、作ってくれるとか言っていたが。

 

まあ、その時はおとなしくて草食系でイケメンでエスティの言うことを何でも聞いてくれる優しい男の子にして欲しいものだ。

 

めいめい散っていく皆。

 

それぞれに忙しいのだ。唯一所在なさげにしていたリオネラを、クーデリアが引っ張っていく。

 

リオネラは発言することも出来ず、椅子に座っているだけでつらそうだった。あれだけの使い手なのに、もったいないことだ。

 

ただ、リオネラの生まれ育った環境については調べがついている。その後、どうやって生きてきたかも。

 

だから、エスティはあまり強く責める気にはならなかった。

 

仕事の場合、どれだけ非情にでもなれるが。

 

それはあくまで、スイッチを切り替えているから。普段から、戦闘マシーンであろうとは思わない。

 

最後に残っていたティファナが、声を掛けてくる。

 

「エスティ」

 

「あら、ティファナ。 どうしたの」

 

「ちょっとこれを食べてみてくれる?」

 

差し出されたのは、クッキーのようなものだ。

 

ティファナが出してくるなら、へんなものではないだろう。口に入れてみると、ちょっとぱさつくが、充分に食べる事が出来る。

 

味は、パイか。

 

ただ、あまり美味しいものではない。

 

「なあにこれ。 貴方が作った割には美味しくないわね」

 

「私が作ったものではないもの。 ロロナちゃんが、この間味見を頼んできたものよ」

 

「へえ?」

 

「圧縮パイというそうよ。 それ一つで、ホールパイをまるまる食べたのと、同じくらいの栄養が取れるとか」

 

なるほど、それは便利だ。

 

ただし、美味しくない。口がぱさつくし、今でも喉が渇いてきたほどだ。

 

持ち運びが便利な缶詰には、それまでの保存食に比べて、一つだけ利点がある。食べるのに、水分がいらないことだ。

 

当然の話だが、水も何時でも何処でも得られるとは限らない。

 

特に内陸にある国での戦場の場合、劣悪な乾燥環境の中、敵の訓練された軍隊や、強大なモンスターと戦う事さえある。

 

これは、耐久糧食としては失格だ。

 

ただし、持ち運びは出来るし、水さえあれば機能する。問題は、水がないと言うことだ。

 

現時点では、美味しいという事と、そもそも水がないと駄目という、二つの点をクリアできていない。

 

今回もロロナは苦労しそうだなと、エスティは思った。

 

地下から出て、宮殿の地上部分に。

 

何度も味わったのだが。地下から出て光を浴びると、立ちくらみを起こしそうになる。そんなヤワな鍛え方はしていないが。老人にはつらいかも知れない。

 

外に出ると、早速メリオダスが自分の見かけを変える。

 

気むずかしそうな老人の顔を作り、ぶつぶつ王の文句を言いながら歩き始めた。それで良いのだ。

 

エスティはと言うと、底抜けに明るくて優しいお姉さんを装おうとしているのだけれど。それは、中々上手く行かない。

 

何処か怖いと、後輩に言われてしまう事が多かった。

 

今日は作業もない。

 

国からの仕事も来ていないから、家に引き上げてしまって問題ない。あくびをしながら、ティファナと歩く。

 

サンライズ食堂に行きたそうな顔をティファナがしたので、慌てて分かれることにした。彼女の酒癖の悪さは尋常では無い。一緒に飲みに行くとだいたい酷い目に遭うので、それだけは避けるようにしている。

 

騎士団の寮に戻ると、コートをクロゼットにしまい、ベットに転がる。

 

小さくあくび。

 

剣を磨いておこうかと思ったが、そんな気分にも慣れない。

 

とりあえず、井戸から水を汲んできて、口を潤した。

 

その後は、寝ることにする。

 

たまの休みだ。

 

しっかり眠って、体力を回復させておかなければならない。どうも近年、アーランドの周辺が急速にきな臭くなってきている。

 

今後も当分、エスティは引退する事が出来ないだろう。

 

 

 

朝になって、目を覚ます。

 

半日以上眠ってしまったことになる。ベッドで異性と眠ったのは随分と前。しばらくは、男と無縁の生活を続けている。どうにか早く結婚したいものだが、中々条件が合わないのが現実だった。

 

周囲は、エスティとは状況が違う。くやしい。

 

アストリッドは性欲処理に苦労していないと聞いている。変人だが美人だし、その気になれば男を引っかけるくらい難しくないのだろう。ただ、だいたいは一夜の関係に限定して、後は見向きもしない様子だが。

 

ティファナは今の時点では結婚するつもりが無いようだが、その気になれば男などいくらでも漁り放題だろう。

 

エスティの周囲だけ、条件が合う男がいない。

 

口惜しいけれど。こればかりは、どうしようもなかった。

 

エスティは大きくあくびすると、井戸水で顔を洗う。

 

あくびしていると言っても、その間も周囲に気を配ってはいる。強めの気配の動きは全て察知しているし、何かあった場合も対応できる。この辺りは、戦士としての本能だ。職業病以前の、生物としての力である。

 

すっきりした所で、顔をタオルで拭く。

 

着替えて出勤。ロロナの様子でも見に行こうかと思ったが、それより先に、重要な用事がある。

 

アトリエの様子を、気配を消して見に行く。

 

ロロナは参考書を開いて、勉強に夢中だ。それにしても、戦士としての適性には恵まれない子である。気配を消しているエスティなら、それこそ瞬きする間の十分の一で、十六分割くらいに出来る。しないけれど。

 

ロロナの様子を確認したあと、アストリッドの部屋をノック。

 

内側から、ノックが帰ってきた。

 

窓を開けて、入る。

 

その間、一秒以下。勿論、音を立てることもない。

 

中に入ると、異臭が酷い。アストリッドはかちかちと音を立てながら、肉の塊をいじくっていた。

 

アストリッドは戦士としても超一流で、その身体能力をフルに生かして錬金術を行う。何度か見た事があるのだが、凄まじい早さで、さすがは天才と唸らされる。今回も、エスティが見ても驚かされるほどの動きで、手を振るっていた。

 

この異臭は、血と、肉が混じり合ったものだ。

 

ただ、人間のものとは、微妙に違う。

 

「どう、状況は」

 

「なかなか上手く行かないが、会議で話した試作品は出来ている。 連れていけ」

 

「どれどれ」

 

硝子瓶の中には、大量の液が満たされて、その中に眠っている人間の姿。ただし、五体満足なものは、あまり数が多くないようだ。

 

この光景、エスティも実は見た事がある。

 

見た事があるのは。オルトガラクセンの最深部。人工的な光が満ちていて、世にも恐ろしいモンスター共が跳梁跋扈する魔境。

 

その一角で、こんな瓶が、ずらりと並んでいた。

 

中には、裸の男女が入れられていて。そしてモンスターは、命に代えてもそれを守ろうとしていた。

 

異様な光景だった。

 

アストリッドは、既にそれを再現した、という事だ。

 

ただ、全く同じものなのかどうかは、エスティには分からない。

 

「こんなの見たの、二年前だったっけ?」

 

「そうだ。 あれから私なりに研究を重ねてな。 ようやく試作品を作り出す事が出来るようになってきた」

 

「で、完成品は?」

 

「四番と七番だ」

 

面倒くさそうに、アストリッドが硝子瓶の側に歩くと、ノックする。

 

中に浮かんでいた女の子が、目を開けるのが見えた。まだ七才か八才くらいの、幼い子供だ。

 

「これらは正確には人では無く、ホムンクルス、という」

 

「ほむんくるす?」

 

「錬金術の究極の一つ、人口の生命だ」

 

「ああ、これが」

 

以前聞いていた、人間を作れるようになるかも知れない、という言葉。ただ、アストリッドの口ぶりからすると。

 

実際には、これをずっと前から、知っているような気がする。

 

そういえば、此奴の師匠は。

 

いや、まさか。そのような事を考えるよりも、まずは納品されるものを、受け取るだけだ。

 

「まずはスペックを確認したいのだけれど」

 

「四番と七番は、スペック的にはアーランド人と大差ない。 成長についても問題ないし、数年すれば他の人間と子供を作ることも出来る。 ホムンクルスと言っても、ほとんど人間と変わらないからだ。 ただし魔術に対する素養は低いだろうから、それは覚えておいてほしい」

 

「今作っているのは違うの?」

 

「私が今作っている試作品は、ロロナの助手をさせるためのものだ。 スペックはアーランド戦士以上で、寿命についてもそれを凌ぐ。 そして、私に絶対服従する所が、四番や七番とは違う。 完成品はこれら試作品のデータを集めて、調整をする予定だ」

 

説明しながら、林立する硝子瓶の中から、アストリッドが幼い娘達を引っ張り出す。

 

どうやって作ったのかは、どうせ理解できないし、聞かないことにする。二人とも感情らしいものが目に宿っていない。

 

いそいそと娘達の体を拭き、やたらフリフリな服を着せはじめるアストリッド。

 

完璧にサイズがあっているようだが。まさか、見るだけで採寸したのか。この辺りは変態的な天才ぶりに呆れてしまう。

 

それにしても可愛い子供達だ。

 

エスティも女だから、子供は嫌いじゃない。顔立ちは整いすぎていて人形みたいだけれど。

 

「立って歩ける?」

 

「問題ありません。 貴方がマスターですか?」

 

「そうね。 いや、これからマスターになる人の所に行くのよ」

 

「了解しました」

 

流ちょうに喋ることが出来るようなので安心した。

 

それにしても、どうして女の子ばかりなのだろう。聞いてみると、アストリッドは少し考え込んでから、言う。

 

「調べて見たのだが、生物としては男より女の方が安定しているようなのだ。 実際に、男の子の方が少し多く生まれるだろう。 その分病気で死ぬ事が多い」

 

「確かに、そうかも知れないわね」

 

「人口の生命を造り出してみて、それが事実だと確信できた。 今後もホムンクルスを造る場合、完成度が高い個体は女性型の方が多くなるだろうな」

 

マニュアルを、受け取る。

 

食事の与え方などが載っているが、殆ど人間と同じだ。

 

アストリッドはいい加減な性格をしているけれど、こういったマニュアルは極めて几帳面に書かれている。

 

分厚い書類をめくって、ざっと目を通していく。

 

だいたい中身は理解できた。

 

幼い人間の子供の世話をするのと、ほぼ何も変わりがない。後は王宮にいるメイド達にでも任せればいいだろう。戦闘訓練は王が直接つけてやればいい。量産計画について聞いてみるが、まだまだだと返答。

 

「見ての通り、十に二か三程度しか上手くいかん。 今解剖しているのも、途中までは上手く行っていた個体でな。 完成型については予定通りに提供できるだろうが、完成型の量産となると、おそらく再来年までは待たないと無理だろう」

 

「そう……」

 

「残念な事をしたが、無駄にはしない。 いずれ、量産できるようにしてみせるさ」

 

血だらけの手のまま、アストリッドは以降口を閉ざした。

 

さっさと行けというのである。

 

こうなると、アストリッドは貝のように喋らなくなる。研究に没頭してしまうと、無理に話しかけても不機嫌になるだけだ。

 

まあいい。用事は済んだ。

 

ロロナが丁度出かけていったので、入り口から二人を連れて、堂々と出て行く。子供達は目を細めて、周囲の光景を物珍しそうに見つめていた。アストリッドの話によると、基本的な事は教えてあるという。言葉を喋ることが出来る事からも、それは明らかだが。

 

歩くことも最初は不安になるほどふらふらだったけれど。

 

急速にコツを掴んできたようで、すぐに問題なくなる。

 

多分、頭が良いのだろう。利発な子は、エスティも好きだ。生意気なことをいうようになるけれど、それはそれでいい。エスティだって、年頃の頃は、随分と生意気をしたような気がするからだ。

 

片方は金髪。もう片方は赤髪。どちらも顔立ちは似ている。何となく、アストリッドの幼い頃を思わせた。髪の毛は時々切りでもしていたのか、肩くらいで二人とも切りそろえられている。

 

時々はぐれそうになるので、手を引いて歩く。知性があっても、興味がそれを凌いでいるのだろう。

 

この辺りは利発でも子供だ。

 

王宮の裏口から入って、玉座の間に。今日、納品されると聞いていたので、王は玉座で待ってくれていた。

 

「陛下。 こちらが、アストリッドから納品されたプロジェクトHの初作品、人造人間となります」

 

「ふむ。 まだ幼い様子だが、人間と見分けがつかぬな」

 

「人間と交配も可能と言う事です」

 

そうかと言うと、王は子供達を手招きした。

 

あの人がマスターだと言うと、子供達は納得したらしい。まずは、礼儀作法から教えなければならないが。王は子供好きだ。さほど苦労はしないだろう。

 

用件が済んだので、一礼して玉座の間を出る。

 

多分、今日辺り。また新しい仕事が入るような予感がある。

 

早めに休憩を取っておいた方が良いだろう。エスティは、自己管理をする事が出来る大人だ。

 

血の臭いも落としておきたい。

 

途中で銭湯に寄ろう。そう、エスティは、王宮を出ながら思った。









※ホムンクルスについて


アトリエシリーズでは頻繁に登場するホムンクルス。まあ当然ですね。錬金術の秘技の一つですし。

アーランドシリーズでは複数パターンが出ていて、アストリッドさんの作る高性能型や、そのデチューンモデル「ちむ」(後にトトリさんがたくさん生産しますが)などがいます。ちなみに今回出て来たのは最初期型。後にデザインは統一されることになります。

ホムンクルスは容姿なども様々で、黄昏シリーズのはとても個性的でしたね色々な意味で……

本シリーズでのホムンクルスは、天才アストリッドさんが手がけただけの事はあります。魔族とも言われるようなアーランド人、それもベテラン戦士に匹敵する実力を持ち、人手が足りないアーランドの戦力を補強していく事になるのです。






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