暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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アトリエで幽霊と言えばスターシステムのあの人ですね。

ユーディーのアトリエで初登場したときは、戦闘で死ぬと本当に消滅してしまったので、連れていくときは気を遣いました。

ただ上位魔族(無茶苦茶強い)との戦闘時などは、最後まで踏ん張って相手を倒してくれる事もあったりする、尖ったキャラでしたね。

今はすっかり見守る存在となりましたが。








2、幽霊の噂

ロロナは部屋を出てきたアストリッドが、機嫌が悪そうなので、思わず一歩引いた。時々師匠は、非常に機嫌が悪くなる事がある。理由は分からないが、そういうときは、犬か猫のように、徹底的にいじくり廻されるものなのだ。勿論、嫌に決まっている。

 

アストリッドは不機嫌そうに周囲を睥睨していたが。

 

ロロナを見ると、不意に口を三日月形にして笑った。

 

カタコンベという場所について、聞かされる。

 

「カタコンベ、ですか?」

 

「大昔の墓所だ。 此処から北東の方角にある」

 

小首をかしげる。

 

確かに、墓所のような、旧時代の遺跡はあるけれど。オルトガ遺跡のように危険な場所は立ち入り禁止の命令が敷かれているし、それ以外は掘り尽くされているのが普通だ。今更ロロナに教えてどうするのだろう。

 

「話は最後まで聞け。 此処では住み着いている生物から採れる素材も有用なのだが、もう一つ面白いものが採取できてな」

 

「面白いもの、ですか?」

 

「ペンデロークだ。 通称ガイストコア」

 

背筋に寒気が走った。

 

ガイストとは、つまり幽霊のことだ。師匠が笑った理由が、よく分かった。

 

ロロナは大の幽霊嫌いで、とにかく苦手なのだ。

 

この間催眠の関連でアンダルシアという魔術師に話を聞かされたが、幽霊と呼ばれる存在は、実在しているという。

 

殆どは人間の脳が造り出した勝手な幻覚だと言うことだったけれど。

 

それでも、怖い事に違いはない。

 

「カタコンベの中では、大量の骨に混じって、ペンデロークが多数採れる。 これは錬金術の素材として、極めて貴重でな。 使いでもあるし、様々な事に応用できる。 今後の事を考えると、必須だろう」

 

「で、でも」

 

「お前は今回、耐久糧食を造る課題をしているのだろう?」

 

話した覚えはないのに、何故か知っている師匠。

 

まあ、それはいつものことだし、怒っても仕方が無い。ただ、其処から師匠は、ロロナが怖がる方へ、どんどん話を誘導していく。

 

「ペンデロークは、この世の石ではないとさえ言われていてな。 加工次第では、あらゆる方向から、ものに超常的な力を付与できる。 まあ、そういったこの世のものではないとされる石は世にたくさんあるのだが、その中でももっとも手に入れやすい」

 

だが、と師匠は言葉を切る。

 

ロロナは、もう怖くて、部屋に逃げ込みたい。

 

「ペンデロークは名前の通り、周囲に幽霊を呼び寄せるらしくてなあ。 加工しているときに、色々と奇怪な物音を良く聞かされるのだ」

 

「ひいっ!」

 

一目散に逃げ出そうとするロロナの襟首を捕まえると、師匠は更に色々と、耳元に怖い話をしていく。

 

ペンデロークを使った研究をしていた錬金術師が失踪したとか。

 

恐怖で髪が真っ白になって発見されたとか。

 

幽霊に取り憑かれて、発狂して街を走り回ったとか。

 

そんな話をたくさん吹き込まれた。

 

もう怖くて恐ろしくて、おしっこを漏らしそうだったけれど。師匠は満面の笑みで、ロロナに言う。

 

「カタコンベには、当たり前のように幽霊が出るそうだ。 ただしペンデロークもたくさん転がっている。 頑張って探してこい」

 

すごく満足した顔で、師匠が自室に戻っていった。何だか、すっきりして、つやつやさえしていた。

 

ロロナはその場でへたり込むと、どうして良くて分からなくて、とりあえずわんわん泣いた。

 

 

 

翌日。

 

クーデリアが来たので、昨日のことを話す。

 

しらけた様子で話を聞いていたクーデリアだが。話が終わると、カタコンベについて、教えてくれた。

 

「街から少し北に行ったところにある遺跡よね。 特に危険なモンスターが住み着いているという話は聞いていないけれど」

 

「でも、幽霊は」

 

「そりゃあ、その手の話はあるでしょうよ」

 

クーデリアが言う。

 

何でも、カタコンベというのは、あくまで通称。実際過去にその施設がどう呼ばれていたかは、分かっていないらしい。

 

中には大量の骨。それが人骨なのかそうでないのかさえ分からないのだとか。骨の殆どは砕けてしまっていて、形が残っているものも、人間のものかはよく分からないのだという。

 

その近くに村があるそうだが。村の人達は、カタコンベを禁忌の地として、絶対に近寄らないそうである。

 

「ただね、あの遺跡、盗賊団が根城にしてるって噂もあるのよ。 結局怖いのは、幽霊なんかじゃなくて、人間って話よ」

 

「ふええ。 その盗賊の人達、怖くないのかな」

 

「そりゃあ、散々悪事を働いている連中だもの。 世の中には神様なんていないって思ってるんじゃないかしら」

 

そう言われると、何だか悲しいものがある。

 

ただ、カタコンベには足を運んでおきたい。内部はさほど広くないという話だが、それでも念には念だ。一度行ったことがある者に、同行してもらった方が良いだろう。

 

早速、ステルクの様子を見に行く。

 

王宮にはいなかったのだが。なんと、サンライズ食堂にいた。黙々と、貧しい戦士がよく食べるホーホと呼ばれる肉料理を口にしている。工場で加工している牛のあまり高くないお肉を使った料理なのだけれど。安くてそこそこに美味しいし、力もつくと評判なのだ。ただし、脂っこいので、女の子にはあまり人気がない食べ物である。

 

丸皿にたっぷり焼いた肉を敷いて、その上に穀類。ライスや麦を炊いたものを乗せる。更に一番上に肉を重ねて、蒸す。

 

そうすることで、出来る、簡単な料理だ。穀類にお肉の味もしみこむので、食べでもある。

 

元々粗野な料理だが、たれなどを工夫すると、かなり食べられるようになる。更には、お肉の上に野菜を炒めたものなどを載せて、味を工夫するお店もある。サンライズ食堂などは、その典型で、肉が見えないくらい野菜がのっている。しかもサンライズ食堂のは、穀類を工夫していて、ほかほかの炊きたてを使っている上、香辛料も厳選しているので、とても美味しいと評判だ。ホーホがこんなに美味しい店は、サンライズ食堂くらいだそうである。

 

ステルクは既に半分くらいを食べ終えていた。

 

ロロナがにこりとしたのを見ても、反応しない。しばらく黙々と食べ。ホーホを完食してから、口を開いた。

 

「どうした、何かあったのか」

 

「はい。 実は、北にあるカタコンベに行きたくて」

 

「カタコンベ、か」

 

座るように言われたので、前に。

 

ステルクが、騎士団員として、説明をしてくれる。

 

クーデリアも隣に座って、一緒に話を聞いていた。

 

「あの遺跡は、未だに正体が分かっていなくてな。 太古の墓地だという話もあるのだが、その割には落ちている骨はどれも人間のものではないようなのだ」

 

「えっ……」

 

「ただし人の亡骸も多数見つかっている。 どれもミイラ化しているようだな」

 

一瞬で、希望が粉砕される。

 

そ、それならば。幽霊が出てもおかしくはない。がくがくと膝が震えはじめたのが分かったが。

 

クーデリアが、いきなり脇を肘鉄したので、思わず悲鳴を上げてしまう。

 

怪訝そうな顔を、ステルクがした。

 

「どうした」

 

「な、なんでもありまふぇん」

 

「この子、幽霊の類が苦手なのよ」

 

「そうか。 確かにカタコンベにはその手の話が多いな。 だが、今まで調査部隊の人間が、生還しなかったことはない。 失踪したり、妙なものも見たりはしていないから、安心して欲しい」

 

ステルクらしい、無骨な返事だ。

 

ただ、それが故に安心も出来る。この人はまだ若いが、アーランドでも生え抜きの騎士なのである。

 

「ステルクさんは、カタコンベに行ったことはあるんですか?」

 

「任務で三回ほど足を運んだ。 いずれも盗賊団の殲滅と捕縛が任務だった。 今は盗賊団が巣くっているという話はないな」

 

「前は、巣くっていたんですか?」

 

「今も定期的に確認はしている。 何しろ、内部が入り組んでいて、逃げ込むのにうってつけだ」

 

クーデリアが、また脇を肘でつついてくる。

 

そらみろと、言っているのだ。

 

確かに、盗賊が住み着くようなら、恐ろしい幽霊なんていないのだろう。いや、いたとしても、盗賊が死ぬような事はないと言うことか。

 

「今度はカタコンベに行きたいのか?」

 

「はい。 その、護衛をお願いしたくて」

 

「良いだろう。 出立は?」

 

「出来るだけ早くお願いしたいです」

 

それなら四日後だと、ステルクは言った。なにぶん多忙な人なのだ。ステルクの事情に合わせるしかない。

 

サンライズ食堂を出ると、クーデリアと一緒にリオネラの様子を見に行く。

 

まだ、広場で姿を見かけないとクーデリアに聞いて、ちょっとがっかりした。宿から出てきていないのだろうか。

 

宿に着く。

 

相変わらず盛況なようだ。すぐ側にある魔術師の家へは行列が出来ていて、その中に見知った人がいる。アンダルシアさんだ。

 

右手に包帯を巻いていて、指を何本か失っている様子だった。

 

戦士で前線にいるのなら、珍しい事でもない。指の再生は難しくない。アーランド人ならなおさらだ。

 

「アンダルシアさーん!」

 

「これはお久しぶりであります」

 

軍式の敬礼をされる。

 

アーランドの軍式敬礼は、直立しつつ、右掌を相手に見せるようにして、胸の前に。行列の人達がいるので、あまり良い視線は受けなかった。

 

聞いてみると、案の定、遺跡のモンスターと戦ったのだという。

 

「この程度は慣れっこであります。 命があっただけで儲けものなのであります」

 

「おっかないね……」

 

「おかげで、比較的浅い階層の構造は、頭に叩き込んだのであります」

 

相も変わらずのしゃべり方。

 

クーデリアが袖を引く。行列の途中にいる人と、長く話しているのは、マナー違反だ。頷くと、また今度と言い残して、宿の方にはいる。

 

リオネラは、まだ三階にいるらしい。

 

出向いてみると、意外なことに。会ってくれた。

 

少し痩せたようだったけれど。ロロナを見ると、一瞬だけ、顔をほころばせてくれたのが嬉しい。

 

もっとも、視線はまだ殆どあわせてくれなかったけれど。

 

「りおちゃん、また護衛を頼みたいんだけど、いいかな」

 

「いいの、私で……」

 

「もちろんだよ」

 

視線をしばらくさまよわせた後、リオネラは了承してくれる。

 

クーデリアも来てくれるし、これで相応の人員は揃ったか。後は、ロロナが幽霊にパニックにならなければ。

 

いや、幽霊が出ると決まったわけではない。

 

きっと大丈夫だ。

 

アトリエに戻ると、耐久糧食についての調査を詰める。クーデリアにも意見を聞いてみるのだけれど。

 

やはり彼女は、かなり詳しかった。

 

「確かに今の缶詰は、非常に評判が悪いわね」

 

「何か改善の方法はないのかな」

 

「まず重い。 まずい。 ちょっとでも傷むと駄目になるから、扱いが大変」

 

その辺りは、ロロナも聞いている。

 

確か硬い缶に入れているのに。運ぶ時は、馬車の荷台に藁を敷き詰めているのだとか。確かにそれは、本末転倒も甚だしい。

 

更に言うと、缶詰は決して安いものではない。

 

食べ終えた後の缶は、だいたいの場合持ち帰る。というのも、工場に持っていけば、かなりの金になるからだ。

 

空き缶は潰して、そのまままた金属に戻すのである。

 

「指定された条件をそのまま満たせば、良い保存食になるわよ。 ただし、かなり難しいと思うけど」

 

「今まで、誰もやろうとは思わなかったのかな」

 

「アーランドでは、工場が発展とともにあったの」

 

クーデリアが、説明してくれる。

 

遺跡から発掘した文明の技術は、何でもかんでも実現したわけではない。新しい技術が発見されれば、街を潤してきたが。それも、いつまでも都合良く、新しい技術が出てくるわけでは無い。

 

たとえば家畜の育成を行う工場と、缶詰を作る工場では、技術のレベルが明らかに百年かそれ以上は離れているという。

 

同じ缶詰に関する技術でも、内部での乖離は著しいとか。たとえば、金属から缶を作る技術と、空き缶を潰して金属を作る技術では、後者の方がずっとずっと進んでいるのだとか。これはどうしてかは分からない。

 

勿論、労働者階級の中でも、知識が深い人達が、日夜研究をしているけれど。

 

何しろ発掘される文明の技術は、現在の人間達の知恵とは根本的な次元が違っている。

 

とてもではないが、簡単に改良できるものではないのだとか。

 

資産家の娘だけあって、凄いなと思ったけれど。

 

しかし、クーデリアは、目に影を湛えていた。

 

「全部独学よ。 あの親が、あたしに何か教えてくれるわけないじゃない」

 

「……くーちゃん」

 

「大丈夫。 それよりも、何とかなりそうなの?」

 

「今、調べてるよ」

 

ただ、調べてはいるけれど。やはり、そんなに都合が良いものは、見つかりそうにない。幾つかの保存食については、記述があった。

 

だが、どれもこれもが、既存のものばかり。

 

中には、今では普通に生産されて、市販されているものさえもがある。

 

もっと難しい参考書を見るべきなのかも知れない。

 

ただし、上級の錬金術の中には、魔術を内部に組み込んでいるものも多い。中和剤を使っての融和作業も魔術の一種と言えるけれど、それとは比べものにならないほどの複雑な技術だ。

 

ロロナに使えるだろうか。

 

不安に縮こまっているよりも、まずは実戦だと、クーデリアは言う。

 

確かに彼女が言うならば、確かにそうなのだろう。

 

「今まで、手を出してこなかった参考書は?」

 

「うん、これとか、それとかかな」

 

「一つずつ、確認するわよ。 まだカタコンベまで出かけるのに、少しは時間もあるんだから」

 

やっぱり、友達はいいものだ。

 

ロロナは頷くと、クーデリアと一緒に、資料を集め始めたのだった。







カタコンベってのは地下墓所のことです。

これは単にそう呼ばれているだけで、厳密にはちょっと違います。それっぽい遺跡と言うだけです。




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