暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

37 / 121




原作でも楽しいイベントですねコレ。

しかもロロナさんに会いに来た両親が勘違いして夫婦げんかまで始めるという。

アストリッドさんは保護者として完全に失格レベルなので、下手すると血を見る話だったりします。

まあ本作の場合は、プロジェクト絡みなので、その辺りは大丈夫ではありますが。






1、子供が出来ました

ロロナがアトリエに戻ると、思わず足が止まった。

 

知らない子供が、ぺたりと床に座り込んで、膝を抱えて此方を見ていたからだ。薄紫色の髪を長く伸ばしている、とても可愛い子供だ。

 

それも、ふりふりの、何だか師匠が大好きそうな服を着込んでいる。

 

恐らくは女の子だろう。

 

じっと見られる。

 

視線が少しの間、ぶつかり合った。

 

ロロナは思わず、謝ってしまう。昔から、何かトラブルがあった場合、自分が間違っていると判断することが多い。

 

「ごめんなさい、間違えました」

 

一度、アトリエを出る。

 

そして、看板を確認。

 

明らかにうちだ。だとすると、あの子は誰だろう。師匠が預かってきた、よその子なのだろうか。

 

その割には、あまりにも堂々としていた。ロロナよりだいぶ年下に見えたし、それにしてはあまりにも態度がおかしい。

 

ドアを開けると、やはりあの子はいた。

 

「お帰りなさいませ、マスター」

 

その声は、まるで氷。

 

感情がまるで感じ取れない。よく見ると、目にも感情が全く宿っていなかった。

 

「え……? う、うん。 貴方は、だあれ?」

 

「ホムンクルスです。 これより、マスターの手伝いをするようにと、命じられています」

 

「ほむん、くるす?」

 

聞いたこともない。それは名前なのだろうか。

 

いきなりおしりを撫でられて、跳び上がりそうになった。後ろで師匠が、ものすごくいやらしい笑みを浮かべている。

 

「ひいっ! し、師匠!」

 

「どうしたロロナ、私からのプレゼントが気に入らないのか? まあ入れ」

 

「プレゼント?」

 

何を言っているのだろう。

 

とにかく、これ以上おしりを撫でられたらたまらない。さっさとアトリエに入ると、買ってきた素材をコンテナに入れる。

 

その様子を、ほむんくるすとかいう小さな子は、じっと見ていた。

 

「その子、何処かから預かったんですか? 人嫌いな師匠には珍しいですね」

 

「私が嫌いなのは愚民であってだなあ。 まあそれはいい。 この子がプレゼントだ」

 

「ふえっ!?」

 

確か、アーランドでは、現在奴隷の売買は禁止されているはず。

 

元々人口の少なさを補うために、外地で奴隷を買って連れ帰ることは推奨されていた。それはロロナも知っている。それが、この国の血塗られた歴史の一端だとも。連れてこられた奴隷階級は、今は労働者階級として、街の中でちゃんとした権利を認められて、力も持っている。

 

今でも、よその国から奴隷を大規模に買い取って、労働者階級として連れてきているという話は、たまに聞くけれど。本当かどうかは知らない。

 

まさかロロナとしても、奴隷をこんな所で見るとは思わなかった。

 

「違う違う。 この子は私が作ったのだ」

 

「師匠が産んだんですか!? そうだったら早くいってください、お祝いとか、いろいろしたのに! お相手は誰ですか?」

 

「違う。 お前は本当に馬鹿だなあ」

 

師匠がそれは本当に嬉しそうに言う。

 

話を何度か聞いたが、師匠はロロナを意図的に馬鹿に育てたのだという。へこむ話である。そして、師匠が一番喜びを感じるのは、ロロナが馬鹿な発言をして、それに気付いていない時なのだとか。

 

つまり、根本的な勘違いをしている、ということだ。

 

そういえば、ここしばらくも師匠のおなかが膨らんでいる様子は無かったし、子供を産んだという事はあり得ないか。

 

まて。

 

師匠は、作ったと言った。

 

意味がようやく理解できてきて。ロロナは、全身の鳥肌が立つのを覚えていた。

 

「ま、まさか、師匠」

 

「そうだ。 私は人間の製造に成功したのだ。 錬金術で言うホムンクルス。 これはお前用に作ったホムンクルスだ」

 

悲鳴を飲み込む。

 

何だかそれは、禁忌の中の禁忌に思えた。

 

そういえば、この子も何だかおかしかったのだ。年の割には、まるで人形みたいな表情。このくらいの年の子は、もっと落ち着きが無くて。世界を見ようとして、瞳をきらきらさせているものなのに。

 

まるで何もかもに興味が無いように、完全に無表情だ。

 

「グランドマスター。 マスターは、私の事が嫌いなのですか?」

 

「いや、此奴は馬鹿だから、混乱しているだけだ。 じきにお前に命令をくれる」

 

「本当ですか。 私は廃棄されずに済むのですね」

 

「そうだ。 良かったなあ。 私の弟子は馬鹿だが、情はそれなりに篤いのだ」

 

物騒な単語が飛び交っている。

 

そういえば、パメラは。天井の辺りにいた。腹ばいの格好で浮かんで、にこにこしながらやりとりを見ていた。

 

なんだか彼女が来てから、アトリエは一気に騒がしくなって。そして、おかしな事ばかり起こるようになった気もする。

 

さすがは、幽霊だ。

 

「お前、妹が欲しいといっていただろう」

 

「そ、それはそうですけど! まさか師匠が、妹を作るだなんて思っていませんでしたよう!」

 

「私は天才だということを忘れたか。 さあ、せっかくだから、名前を付けてやれ。 此奴には、まだ名前もないのだ」

 

じっと見つめられて、何か言い返そうとした言葉を飲み込む。

 

ホムンクルス。そういえば、何処かで聞いたような気もする。いずれにしても、放置していては、この子が可哀想だ。

 

「ええと、そうだね。 ホムちゃんでいい?」

 

「私の名前はホム、ですか。 分かりました。 これより私は、名前をホムとして認識いたします」

 

「ごめんね。 何だかこんな所で、気の毒なことに巻き込んで」

 

「マスターの言うことが、ホムには良く理解できません。 ホムは一通りのことをグランドマスターに教わっていますが。 そのどれにも該当しない事象です」

 

どうやら、アストリッドのことを、グランドマスターと呼んでいるらしい。正直よく分からない世界だ。

 

立ち話も何なので、テーブルとお茶を出す。

 

お茶を淹れていると、師匠はあくびをしながら自室に戻ってしまった。まさか、最近ずっと生ゴミのような臭いがしていたのは。この子を「作っていた」ゆえだったのか。

 

色々と話を聞いてみる。

 

お茶請けも普通に食べているところを見ると、人間とあまり変わりは無い様子だ。それだけは、安心できた。

 

「それでホムちゃんは、わたしの世話をするために、師匠が作った、んだね」

 

「はい」

 

「手伝い、か。 お料理とか作ったり出来る?」

 

「可能です。 ただし、グランドマスターは錬金術の手伝いをさせるために、ホムを作成された様子なのですが」

 

しゃべり方に全く抑揚がないので、喋っていて疲れる。

 

感情が、目どころか、言葉にも全く籠もっていないのだ。これはリオネラと話しているよりも、疲れるかも知れない。

 

いずれにしても、子供にいきなり仕事は任せられない。簡単なことから、やってもらう他ないだろう。

 

「それじゃあ、研磨剤を作ってもらおうかな」

 

「レシピを見せてください」

 

「わ、いきなり難しい言葉が使えるんだね」

 

早速出してくる。

 

研磨剤は、単純に作るのに手間が掛かるのだ。この子にまず任せるには、丁度良いだろう。

 

乳鉢などの場所も教えておく。

 

さっそく、作業に取りかかるホム。見ていると、手際はとても良い。一発でレシピを覚えたのか。

 

その上、動きも速い。

 

ロロナよりも、出来るかも知れない。ただ、まだ子供だ。一応、最初の作業が出来るまでは、見ていた方が良いだろう。

 

ロロナ自身は、合間を縫って、ネクタルの作成に向けて動く。四番目の中間液から、五番目の中間液を作成するまでは、まだ遠いのだ。

 

それにしても、中途半端な温度をずっと保つには、どうしたら良いのだろう。

 

炉を一瞬見たが、それでは温度が高くなりすぎる。

 

かといって、お湯を炊き続ける場合、水を入れ替えるときが大変だ。炭などを使うとして、どうやって同じ温度に保ち続けるか。

 

しばらく考えた後。

 

ロロナは、外から桶を持ってきた。

 

確か、お水はたくさんあるほど、同じ温度を保てるはず。

 

しかしこれをお湯にして、同じ温度に保ち続けるとなると、かなり難しい。温度を測るには、どうするか。

 

「出来ました」

 

「うん……」

 

「マスター?」

 

「あ、ごめん。 見せて」

 

ホムの小さな手の中に、乳鉢と研磨剤がある。

 

手にとって確認すると、品質は問題が全く無かった。これなら、任せてしまって良いだろう。

 

少しずつ、難しい調合も、任せることが出来そうだ。

 

まずは研磨剤から。フェストはたくさんしまってあるので、其処からだして、研磨剤に調合してもらう。

 

腕組みして、しばらく考え込んでいたロロナは。大きく嘆息した。

 

「参ったなあ……」

 

やはり、上手い方法が思いつかないのだ。

 

魔術の類を使うことまで考えたのだが、それでも駄目。第四の中間生成物に、ある液体を混ぜてから、一定温度に保ち続けなければならない。温度が下がってしまうと、すぐに駄目になってしまうのだ。

 

悩んでいると、クーデリアが来た。

 

クーデリアはホムを見て、吃驚したようで固まっていたが。ロロナが見ていることに気付いて、咳払いした。

 

「なに、近所の子でも預かってるの?」

 

「師匠が作ったんだよ、その子」

 

「はあ?」

 

「ホムンクルスっていうらしいよ。 ホムちゃんって名前にしたの」

 

呆れたようなクーデリアの顔。

 

あれ。

 

でも、驚きが随分小さな気が。何も知らなかったのだとすれば、クーデリアなら、もっと吃驚すると思ったのだけれど。

 

「何でもありね。 で、どう? はかどってる?」

 

「ううん、駄目ー。 どうしても、同じ温度に一昼夜保つってのが出来なくて」

 

「あんたの得意な魔術は?」

 

「それでも無理。 炉に入れるには冷たすぎるし、お湯で保つのは大変だし……」

 

参考書を、もう一度見る。

 

研究データは詳細に書かれているのだが。どうやって、お湯の温度を保ったかは、書かれていない。

 

この人の関連で調べて見るべきだろうか。

 

手記や何かはないか。

 

クーデリアに手伝ってもらう。

 

「あの子にも、手伝ってもらったら? あんたの手伝いのためにいるんでしょ」

 

「流石に今日きたばかりだし、いきなりいろんな仕事は任せられないよ。 順番、順番」

 

「そう。 手記は、こっちね」

 

クーデリアが手際よく、手記を見ていく。

 

ロロナはどうしてもこういうのを、手際よくする事が出来ずに、もたもたしてしまう。頭が根本的に悪いからだろう。

 

しばらく、二人で資料を探す。

 

これじゃないのかと、クーデリアが声を上げたのは、夕刻。

 

ただし、其処にあったのは。

 

「ええと、何々。 第四工程は、試行錯誤を重ねた。 カタコンベ遺跡の途中装置を確認したところ、断熱材を巻いていて、それで温度を保っている様子だった」

 

「断熱材……」

 

「どう、作れる?」

 

首を横に振る。

 

カタコンベの機械は、あの触手達が守っていることが、容易に想像できる。其処から取ってくるのは駄目だ。

 

何より、彼処の装置には触ってはいけない。色々と、人類のためになっているのだと、何となく理解できるからだ。

 

断熱材を、まず他の資料から調べて見る。

 

一つあったけれど。非常に燃えやすい。何しろ、鳥の羽毛なのだ。そんなものを使ったら、瞬く間に焼けてしまう。

 

他には。

 

石綿と書いてある。生成が結構難しいし、材料も手に入れられそうにない。

 

クーデリアと、順番に出来そうなものを吟味していく。これも無理、あれも駄目とやっていくうちに。

 

一つ、見つけた。

 

一旦液体化して、それにたくさんの泡を入れることで作る断熱材だという。素材については、準備できる。泡をたくさん入れることについても、どうにかなるだろう。

 

今後、温度を保つ形態の調合では、これは使えるかも知れない。

 

しかも、火に強い。

 

「良さそうじゃない」

 

「うん。 素材は、ちょっと工場に行ってこないと手に入らないのがある。 くーちゃん、ホムちゃんを見ていてあげてくれる?」

 

「分かったわ。 すぐ戻ってきなさい」

 

アトリエをクーデリアに任せて、ロロナは飛び出す。

 

時間は、情け容赦なく過ぎていく。

 

 

 

息を切らせて、アトリエに戻ってくると。

 

クーデリアが、ホムと何か言い争いをしていた。怒っているクーデリアに、ホムが淡々と言い返している感触だ。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「ロロナっ! この子、失礼極まりないわよ!」

 

「ちょっと、まって、落ち着いて!」

 

ついっと視線を背けてしまうクーデリア。それに対して、ホムは悪びれた様子も無く、小首をかしげていた。

 

何があったのだろう。おろおろするロロナに、ホムは言う。

 

「マスターの言うこと以外は聞けない、と返答したら。 怒ってしまったようなのです」

 

「あたしはただ、作業が終わったんなら、次に掛かりなさいっていっただけよ。 さぼってたじゃない」

 

「マスターの言うこと以外はお聞きできません」

 

「この……!」

 

クーデリアが本気で苛立っているのが分かる。

 

何となく、理由はロロナには分かった。

 

クーデリアは家での立場がかなり厳しい。最近も、その立場が改善したという話は聞いていない。

 

時々様子を見に行くのだが、家族とは殆ど口もきかない。エージェントの人達とは、そこそこ上手くやっているようだけれど。

 

上下関係というものが、クーデリアの中ではかなりシビアな問題なのだ。

 

「ホムちゃん、次からは、くーちゃんの言うことも聞いてあげてくれないかな。 指示が不的確だとは思わなかったでしょ?」

 

「マスターがそう言うのなら」

 

「何よ……」

 

「くーちゃんも、ホムちゃんに配慮してあげて。 ほら、お土産も買ってきたし、少し休憩にしよう?」

 

お茶をてきぱきと出す。

 

買ってきたお茶請けは、職人通りの隅っこにあるおばあさんのお菓子屋さんで買ってきた。

 

おばあさんは魔術によるお菓子作りを得意としていて、味は今のところ、誰にも再現できていない。

 

全体的にクッキー系統のお菓子が多いのだけれど。甘さといい歯触りといい、言うことが無い。

 

隣にあるティファナさんのお店でも、此処まで美味しいお菓子は出せていないのが事実だ。

 

流石にクーデリアも女の子だ。

 

甘いものを食べると、多少は機嫌が良くなってくるのが分かった。

 

「ほら、準備はしておいたわよ」

 

「ありがとう。 それじゃあ、調合に取りかかるかな……」

 

ホムには、明日以降、少しずつ難しい調合を頼みたい所だ。

 

手際を見る限り、ロロナよりよっぽど器用かも知れない。

 

クーデリアがまとめてくれた資料に、ざっと目を通す。そういえば、おなかの傷は大丈夫なのだろうか。

 

クーデリアがおなかを気にしている様子は無い。

 

「また、何処かに採集にはいかないの?」

 

「しばらくは大丈夫だよ。 素材はある程度揃ってるし」

 

「採集なら、ホムが行きますが」

 

横から、ホムが口を出してくる。

 

小首をかしげた。

 

「ホムはグランドマスターに、アーランドの平均的な戦士並みの戦闘能力と、ハイドスキルを与えられています。 多少の素材でしたら、回収は容易です」

 

「う、うーん、そうなの?」

 

「お疑いですか?」

 

「今は、とりあえず調合をお願いね。 そのほかのことは、後で考えるから」

 

いきなり初日から、フルでホムを働かせるのも問題だろう。

 

もう休んで良いよと言うと、ホムはしばらく乳鉢を名残惜しそうに見つめた後、頷いて寝室に歩いて行った。

 

クーデリアは、まだホムの事があまり好きでは無いらしい。

 

「やっぱり感じが悪いわ、あの子」

 

「そうかな。 可愛いと思うけど」

 

「それに、何だか此処、まるでダンジョンみたいな環境になってない?」

 

そういえば。

 

少し前に、クーデリアはパメラと顔を合わせた。

 

クーデリアはパメラに怯える様子は無く、あきれ果てていた。また、変なものを拾ってきてと言われて、ロロナは経緯を説明したが。だが、それでも何だか、ぷりぷり怒っていた。

 

パメラは今、天井近くに浮いて、うつらうつらとしている様子だ。

 

「今、このアトリエに住んでる純粋な人間、あんただけじゃないの?」

 

「え? 師匠は?」

 

「ノーコメント」

 

そう言われてしまうと、悲しい。まあ、師匠が人間離れしているのは、ロロナも認めるところだが。

 

お茶を済ませると、クーデリアに手伝ってもらって、断熱材の作成に掛かる。

 

正直な話、もたついている余裕は無い。

 

タイムリミットは、刻一刻と迫っているのだ。








高性能のホムですが、まだまだ最初はそこまで融通が利きません。

まあこの辺りは作られた生命なので、どうしても限界がありますね。

原作だとかまうのを忘れていると寂しがったりする可愛いところもあります。









感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。