暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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世界の破綻が一度起きた世界です。

不毛の地はどこにでもどこまでも拡がっています。

これを少しずつ緑化してきた歴史があります。

緑化する前は、何もかもが残っていなかったのです。







黄昏の荒土
序、不毛


ステルクが睥睨した先は、不毛の大地。

 

文字通り草一本生えない、死の土地だ。

 

降水量が少ないわけではない。実際、近くには河も流れていて、緑化をしようとすれば出来る筈の場所なのだ。

 

だが、此処の土地は、一切の植物を拒否するかのように、乾ききっている。

 

そして土は。

 

長い間、無慈悲な乾燥と飢餓に晒されて。今ではすっかり、荒れ地となってしまっていた。

 

以前から緑化計画は推進されていたのだが。アーランドの西にあるこの土地が、未だに荒野のままであるのには、幾つかの理由がある。

 

一つは勿論、住み着いているモンスターだ。

 

アーランドの周辺の安全は確保されていると言っても、それはあくまで点と線の話。面で見れば、まだまだ人外の土地は多い。此処は新たに確保しようとしている点の一角。住み着いているモンスターは、かなり数が多い。

 

今回ステルクは、歴戦の使い手達三十名と供に此処を訪れたが。

 

ざっと見ただけで、モンスターの数は数百に達している。

 

不可思議な話ではあるのだが。

 

一部のモンスターは、どれだけ過酷な環境でも、平然と耐え抜く。草木が生えぬ世界とはいっても、モンスターだけは適応できるのだ。

 

理由は分からない。

 

オルトガラクセンの内部が、こういう荒野と同じ、過酷な世界だ。水もなければ、食糧もない。

 

それなのにモンスター達は、何かを守るかのように、生きている。

 

いずれにしても、此処のモンスターは、時々群れを成して街道を襲うこともある。残念ながら駆除しなければならない存在だ。

 

ステルクが剣を抜く。

 

此処にいるのは、いずれもアーランドを代表する強者ばかり。恐れる事は、何一つなかった。

 

「皆殺しにする必要はない。 追い払うだけで構わない。 総員、攻撃を開始せよ!」

 

喚声が上がる。

 

モンスター達も、鎌首をもたげて、此方を見た。

 

ステルクがまず先頭を切った。

 

剣の先に稲妻の力を充填すると、モンスターの群れの中に、連続して叩き込む。閃光が爆裂して、吹っ飛んだモンスターが、ばらばらに引きちぎられながら、細切れになって飛ぶ。

 

モンスターも、一斉に反撃を開始する。

 

赤黒いドナーンのような生物は、サラマンダーの変種だろうか。鎌首を並べると、大量の火球を撃ちはなってくる。

 

火力の密度は、かなり高い。

 

魔術師達が壁を作るが、見る間に負荷が上がっていく。

 

巨大な影が見える。

 

いずれもベヒモスだ。中には、街道での襲撃を何度も行い、賞金が掛かっている首も見受けられた。

 

恐怖の軍勢だが。彼らも今回で、この荒野を追われることになる。

 

魔術師が空から、炎の弾の雨を降らせる。メテオと呼ばれる、魔術の奥義。

 

荒野で凄まじい火花が連続して飛び散り、モンスターを薙ぎ払う。火力勝負は、此方が上だ。

 

だが、爆煙を突っ切って、モンスターが突っ込んでくる。敵も、必死なのだ。どうしてこの荒野に拘泥するかは分からないが。ただ、彼らにも故郷がある。此処がそうだ。だから、戦う事を、笑うことはしない。

 

全力で、受けて立つ。

 

人間を襲う相手である以上、容赦は出来ない。だが、戦う以上、立場は対等だ。

 

ステルクだけではない。

 

今此処にいる戦士は、皆そう考えている。そう信じたい。

 

前線が接触。

 

後は、原始的な肉弾戦だ。

 

ひたすらにステルクは、稲妻を纏った剣を振るって、敵を斬り倒した。周りの戦士達も、それぞれが己の得意とする武器を振り回し、敵を薙ぎ払う。容赦なく打ち砕き、斬り伏せ、焼き払う。

 

ベヒモスが、唸り声を上げながら、突進してきた。

 

だが、ステルクは既に、大上段に剣を構えている。

 

全力で振り下ろした剣が、ベヒモスを頭頂から股下まで、両断。更に一瞬で焼き尽くし、消し炭に変える。

 

小さなベヒモスだから、出来る事だ。

 

大物の中には、ドラゴンと渡り合うほどの個体もいる。そういった相手には、こんな簡単にはいかない。

 

かなり頭数を減らしながらも、モンスター達は闘志を捨てない。

 

それが挫けたのは。

 

ステルク達の王が。増援を引き連れて、戦場に到着したときだった。

 

「ふむ、楽しんでいるようだな」

 

王の声は低音だが。その重厚な響きの中に、明らかに戦いを楽しむ色が混じっている。

 

地面を蹴る王。

 

その姿が十にも二十にもぶれて見える。地面に接触するのは、ほんのひととき。その瞬間、モンスターが両断される。つまり、それだけの数が、見る間に屠られていく、という事を意味している。

 

幼子の姿をしたホムンクルス達が、戦場に到着。

 

彼女らは例外なく、自分の身の丈を超える武器を手にしていた。グレートソードだったりバトルハンマーだったり、さまざまだが。

 

共通しているのは、臆している者も。武器に振り回されている者も。ただの一人も、いないという事か。

 

敗走にモンスターの群れが移行するまで、ほんのわずかな時しか掛からなかった。それだけ、王と、連れてきた軍勢の実力は圧倒的、という事だ。

 

ホムンクルスの側で、メモを取っているアストリッド。モンスターの残党が襲いかかったが、五月蠅いといわんばかりに、片手ではねのける。

 

そうするだけで、巨体を誇る変種サラマンダーが、冗談のように上空に巻き上げられ、吹っ飛んだ。

 

地面に落ちたとき。サラマンダーの頸骨はぐしゃぐしゃに潰れ、原形をとどめてはいなかった。

 

王が剣を鞘に収める。

 

「まあまあであったな」

 

返り血など、全く浴びていない王。

 

ステルクでも、まだまだとうてい及ばない実力には、時々戦慄を隠せなくなる。

 

幼い頃から、戦士として最高の英才教育を受け続け。七歳で初陣。十五の頃には、既にこの国のトップクラスの実力となり。

 

即位したときには、問答無用の最強。

 

そして今まで、至高の座を一度も譲ったことがない。

 

それが、アーランドの現王だ。

 

不安要素があるとすれば、妻を未だにもっていないことだが。まだ若々しい王は、その気になればいつでも子を作る事が出来るだろう。かって愛した女性がいるという噂は聞いたことがあるが、真相はステルクも知らない。

 

もし本当だったとしても、ずっと昔の事だろう。

 

「損害を報告せよ」

 

「死者無し。 負傷二十四」

 

「ホムンクルスは」

 

彼女らは、既に戦闘を終えていた。

 

とりあえず、一人も欠けていない。側面攻撃から、崩れかけていた敵にとどめを刺した手腕は見事だった。

 

一人として、武器が血まみれになっていない者はいない。

 

いずれも重量武器を振り回し、一体以上の敵を葬った、という事だ。

 

けが人は、すぐに病院に搬送されていく。

 

此処は幸いにもアーランドからほど近い。回復の術が使える魔術師もいるし、アーランドに辿り着くまでに命を落とす者はいないだろう。

 

掃討戦を行うべく、王が連れてきた部隊を指揮下に入れる。無事だった戦士達と供に、荒野を捜索。

 

モンスターの巣は、どれももぬけの殻。

 

子供の類は見かけなかった。

 

骨が点々としている。周辺でさらわれた人間のものも、あるかも知れない。それは調査チームの仕事だ。

 

いずれにしても、此処に住み着いていたモンスター達には、決定的な打撃を与えた。危険性が高かったベヒモスは全て討ち取ったし、巣も全て焼き払った。人間に対して、交戦を挑もうとは、もうモンスター達も考えないだろう。

 

無力化するまで数を減らしたら、其処で追撃を止める。

 

モンスターを全滅させるような真似はしない。

 

人間にとって適切な脅威でいてもらうのだ。戦士達の訓練相手にも良いし、安全すぎる環境に慣れると、人は弱体化する。

 

夕刻近くまで残党狩りを行った後、調査チームが入る所までをステルクは見届けた。

 

近くにあるキャンプに移動すると、天幕に入って休む。

 

後から来たチームに、調査の護衛を頼んである。何かあったら、すぐ出る必要がある。だから、糧食を口に入れたらすぐに寝る。いつでも動けるようにするためだ。

 

しばらく寝込んでいると、外で気配。

 

すぐに剣を持って天幕を出ると、丁度若い戦士が来たところだった。

 

「ステルク殿!」

 

「如何したか」

 

「ベヒモスの巣らしき場所で、発見されたものがあります。 調査チームが、すぐにステルク殿を呼ぶようにと」

 

「うむ」

 

目は既に覚めている。

 

数名の戦士達と合流すると、カンテラを持って、調査チームの所へ。

 

驚いたのは、ホムンクルス達が、交代でまだ護衛任務に当たっていたことだ。アストリッドは側についていて、何も言わず子供達を働かせている。彼女らの戦闘力はステルクも見たが、あまり褒められる行動ではないように思える。

 

陽が落ちてから、随分経っている。

 

「何が見つかった」

 

「此方にございます」

 

戦士の一人が、カンテラをかざしている。

 

ステルクは側まで行って、それを見て。思わず呻いていた。

 

何故、このようなものが、此処にあるのか。

 

それは。ステルクも何度か見たもの。

 

オルトガラクセンの最深部にある、機械の一種だ。文明の産物。荒野の一角に、このようなものが埋まっていたとは。

 

アストリッドが、顎をしゃくる。

 

「既に機能停止している。 だが、此処にはおかない方が良いだろうな」

 

「オルトガラクセンに運び込むか」

 

「それが良いだろう」

 

オルトガラクセンには、どういう仕組みか。機械類を自動修復する機能があるようなのだ。

 

工場などで機械が駄目になった場合は、オルトガラクセンに戻して、しばらく放置する。そうすると、いつの間にか勝手に修復されているのである。

 

この機械が、どういったものかは分からないが。

 

しかし、いずれにしても、外に置いてはおけない。この近辺が荒野になった原因かも知れないからだ。

 

「すぐに牛を手配。 車にこの機械を乗せて、オルトガラクセンに輸送する」

 

「調査はしなくてもよろしいのですか」

 

「後で確認すれば良い」

 

オルトガラクセンの内、既に何層かは、完全に此方で把握できている。其処に置いて、様子を見れば良い。

 

危険な装置なのだったら、封印して外に出さないようにする。

 

もしも有用なものであれば。後で発掘して、工場にでも持ち込めば良い。いずれにしても、野ざらしにしておくことは、選択肢には含められない。

 

すぐに牛が来る。

 

運ぶ手配をさせながら、ステルクは調査チームに聞いた。

 

「他に機械類は」

 

「まだあるかも知れませんが、地面を掘り返してみないと、何とも」

 

「一週間作る。 徹底的に調べて、機械があったら報告せよ」

 

ロロナにこの荒れ地を緑化させる課題が、これから一週間後に始まるのだ。

 

それまでに、痕跡を全て消させなければならない。勿論この広い土地を全部緑に出来るわけがない。

 

ノウハウはあるから、それに沿ってある程度は行動させる。

 

後物を言うのは、ロロナが持ち込む植物用の栄養剤がどれだけの品質を秘めているか、だが。

 

彼女が、第四期の課題で納品した耐久糧食は、想像以上の質だった。誰もが、ロロナに期待しはじめている。

 

勿論、それを悟らせはしないが。

 

調査チームに後を任せると、ステルクはまたキャンプに戻った。

 

しばらくは、此処に常駐することになりそうだった。








本作のジオ王は武力を惜しむことはなく、全力で最前線に出る武闘派です。

それはそれとして、陰謀の類も一切躊躇無く使う人でもあります。

そういう意味ではとてもタチが悪いし。

だからこそ国を廻せているとも言えますね。




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