暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、暗雲立ちこめる空

アストリッドがあくびしながら、部屋を出てくる。

 

同じプロジェクトの参加員だから、クーデリアだって此奴が何をしているかは知っている。勿論、パメラについてもだ。

 

パメラは少し前から、プロジェクトの会議に出るようにもなった。

 

彼奴の正体についても、ロロナに言う事は禁止だとされているけれど。そろそろクーデリアも、堪忍袋の緒が切れそうだった。

 

「何だ、くーちゃん。 遊んで欲しいのか」

 

「ロロナに、いつまで量産型ホムンクルスのことを黙っておくの?」

 

「彼奴は天才だが馬鹿だ。 だから、黙っておけば気がつかない。 くーちゃんも余計な事は言わないようにな」

 

「……その事だけじゃないわ。 あんた、この世界で何が起きたか、知っているんでしょ」

 

にやりと、アストリッドは笑う。

 

部屋からぞろぞろと、生産されたばかりらしいホムンクルス達が出てくる。

 

以前はいろいろな個性が見て取れたのだけれど。

 

どうしてだろう。金髪の子が、非常に多くなっていた。

 

少し前に実戦投入されたらしいパラケルススという完成型をベースにしているから、だろうか。

 

「沼地の悪魔が、このままだとあんたより先に教えるわよ」

 

「それなら別にかまわんさ。 ロロナはまだ知識が決定的に不足している。 聞いたところで理解も出来ん。 それに……」

 

「何よ」

 

「苦しむ弟子の姿を見るのも悪くない。 嗜虐心をそそられる」

 

思わず、反射的に体が動いていた。

 

拳を顔面に叩き込んだのだけれど。瞬時にアストリッドは後ろに回り、クーデリアの頭を掴むと、床にたたきつける。

 

悲鳴を上げる暇も無い。

 

更に言うと、凄まじい力だ。今まで交戦したどのモンスターよりも、遙かに。

 

それでいて、床にたたきつけながら、あまり大きな音を立てていない。一体、どういう技術なのか。

 

「おやおや、くーちゃんは格闘戦がお好みかな?」

 

「この、外道……っ!」

 

「生憎人道などには興味が無いのでな」

 

けらけらと笑いながら、アストリッドはアトリエを出て行った。

 

立ち上がろうとして、失敗する。

 

完全に、腰が抜けてしまっていた。あまりにも圧倒的な力の差。それを本能で感じたのだろう。

 

肉体が、戦闘を拒否してしまったのだ。

 

呼吸を、必死に整える。

 

ホムが、冷たい目で、クーデリアをじっと見ていた。

 

「理解できません。 貴方がグランドマスターに戦いを挑んでも、勝率は限りなくゼロに近い。 不意を打っても勝てないでしょうに」

 

「あんたには分からないわよ」

 

「ますます理解できません」

 

泊まると言った以上、いきなりいなくなったら、ロロナも心配するだろう。

 

寝室に入ると、幸せそうに寝息を立てているロロナが見えた。

 

世界は、悪意に満ちている。

 

ロロナが真実を知ったとき。

 

その時には。支えるのは、自分しかいない。クーデリアは、二度。大きくため息をついたのだった。

 

 

 

ロロナは朝から調合をはじめたので、クーデリアは戻る事にした。朝食だけ一緒に食べると、一旦実家に。

 

訓練着に変えると、アルフレッドに稽古を付けてもらう。

 

まだまだ、一本も取らせてはもらえないけれど。

 

実は、最近。一番若いエージェントからは、ついに一本を取った。まだまだ偶然に近い結果だけれど。

 

確実に、努力が報われてきていることを、感じて嬉しい。

 

アルフレッドの長柄はまるで蛇のように自在に動き、クーデリアがどれだけ訓練用の銃で四方八方から攻めても、弾丸一つ身に到達させない。

 

踏み込んだアルフレッドが、力が乗った突きを繰り出してくる。

 

横っ飛びして、どうにかかわす。

 

かわすことだけなら、出来るようになってきていた。ただし、その後の怒濤の攻めを、まだまだいなしきれない。

 

ごつんと、強烈な音。

 

気がつくと、地面に大の字に寝ていた。

 

何度か突きをかわした後。アルフレッドが、柔軟に棒を動かして、クーデリアの頭を打ったのだ。

 

悔しいが、まだまだとうてい及ばない。

 

自力で立ち上がると、休憩にしようとアルフレッドが言う。並んで座ると、冷やしたミルクを出された。

 

「だいぶ、力がついてきましたな」

 

「一本も取れないじゃない」

 

「いいえ、今までのお嬢は、どうやって倒されたかさえ理解できていない事もあった」

 

確かにその通りだ。

 

今は、どうしてアルフレッドに勝てないか、分かるようになってきている。それだけで、進歩しているという事だ。

 

小休止を入れてから、他のエージェントも交えて、訓練をする。

 

身体能力は上がっているし、技自体も。アルフレッドに言われたとおり、一瞬に集中して力を爆発させる事も、少しずつ出来るようになってきた。切り札も、幾つか増やしている。

 

それでも、まだまだ勝てない。

 

実戦では、ロロナの盾になることが出来ているから良い。

 

そろそろ、アタッカーとしても、もっと多くの技を手に入れておきたかった。

 

調子が良いからか。

 

若手のエージェントを相手に、一本を取る。

 

これで、通算二回目だ。

 

既に万を超えているだろう訓練で、ようやく二回目なのだから、情けない話だけれど。それでも、勝ちに変わりはなかった。

 

呼吸を整えると、次と告げる。

 

だが、次は出来なかった。

 

ステルクが来た。どうやら、プロジェクトの会議らしかった。此処まで呼びに来ると言う事は、何かあったと見て良いだろう。

 

訓練着を着替えると、すぐに王宮に。

 

嫌な予感がする。

 

そして、それはすぐに現実のものとなった。

 

人員が揃うと、挨拶もそこそこに。メリオダスが、急いだ様子で言う。

 

「アーランド北部国境地帯に、異常な空間が発見されました。 以降、この場所を夜の領域と呼称します」

 

「国境地帯に、ですか?」

 

「ほぼ間違いなく、ロード級の悪魔か、オルトガラクセン最深部から現れたモンスターが関与しているとみて良いでしょう」

 

名前の通り、其処では常に夜のように空が暗く、今までに無いほど強力なモンスターが生息しているという。更に場所によっては上下の概念までもがおかしいらしく、空に岩が浮かんでいたり、巨大な歯車が確認もされているという。

 

通報してきたのは地元の住民だが。村からは距離がある上、今のところ夜の領域からモンスターが出てくる気配もない。

 

この地域は、元から極めて過酷な環境として知られ、誰も足を踏み入れたがらなかった場所だ。

 

典型的な零ポイントの一つ。

 

何代か前の錬金術師が緑化を提案したが、アーランド王都から遠いこともあって、結局実現に到らなかった。

 

これらの知識は、最近知った。

 

ロロナと一緒に、荒れ地の緑化計画について調査しているときに、資料を読んだのだ。自分では無駄だと思っている記憶力が、こんな所で役に立った。

 

「直ちに調査部隊の派遣を」

 

「うむ。 あの辺りは、広大な緩衝地帯として機能していた。 不意に強力なモンスターが住まう魔境と化した場合、機能しなくなる可能性が高い。 頭が痛い問題だ」

 

王が頷く。

 

すぐに調査部隊が編成されることとなった。ステルクも同行が決まる。

 

まずいとクーデリアは思った。

 

これでは、最悪の場合、ヴァルチャーの大軍と、ステルク無しで戦う事になる。ロロナはヴァルチャーを引っ越しさせたいなどと言っていたけれど。そんな事が出来るとは、クーデリアには思えない。

 

今まで無理を実現させてきたロロナだが。

 

今回ばかりは、無茶だ。

 

最悪の場合、ロロナだけでも逃がさなければならない。むしろ、王をはじめとして、一流どころの使い手が皆席を外す、今が好機ではないのか。

 

だが、咳払いの音。

 

エスティが、意見を加えた。

 

「私は残ります」

 

「ふむ、どういうことかな」

 

「オルトガラクセンのモンスターによる何かしらの作戦行動だとすると、主力が根こそぎ消えると、アーランドを襲撃してくる可能性があります」

 

「勿論それに備えて、少数精鋭で出向くつもりだが」

 

それでも、エスティは残るという。

 

何か、知っているのか。メリオダスが王に耳打ちする。王は一瞬だけ眉をひそめたが、意外にも部下の提案を受け入れた。

 

「ならば、エスティの代わりにパラケルススと、ホムンクルス10体を伴う。 それで異存はないか」

 

反対意見は出ない。

 

後は、アーランドの栄光を皆で誓って、会議は解散となった。

 

クーデリアは早歩きで、王宮地下を出る。先に出ていたステルクに追いつくためだ。

 

ステルクは追いついてきたクーデリアを見て、不思議そうに言う。

 

「君が私に声を掛けてくるとは珍しいな」

 

「出来るだけ早く戻ってきて」

 

「何かあるのか」

 

「ヴァルチャーの群れを追い払う際に、あんたの力は必要よ。 ロロナはヴァルチャーを引っ越しさせるなんて言っているけれど。 上手く行くとは思えない」

 

少し考え込んでいたが。

 

ステルクは、分かったと言ってくれた。

 

勿論、奇跡を起こしてきたロロナを信用はしている。しかし、保険を掛けておくのは、それとは別の問題だ。

 

小川の問題は、後一回、栄養剤を納品すれば片付く。片付くと信じたい。

 

問題は、ヴァルチャーの方。どうすれば、ロロナに過剰な無茶をさせずに、問題を解決できるのか。

 

錬金術に、無知な自分が悔しい。

 

アトリエに行くと、ロロナが無邪気な笑顔を浮かべて、調合をしている。まずは、栄養剤から片付けてしまうと言う事なのだろう。

 

何も考えずに動けるロロナが。

 

今は、ただ羨ましかった。

 

 

 

(続)








原作の数倍過酷な人生を送っているクーデリアさん。この子は強制的に大人になるのを急がされた結果、精神に大きな傷を抱えてしまっています。

それでもなんとかやっていけているのは、誰よりも大事なロロナの為ですね。

比翼の友であるロロナの事を、クーデリアさんは血のつながった家族よりも余程大事に思っています。

まあ家族がアレだから、というのも理由としては大きいですね。







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