暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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まさに決死の瞬間……

盾としての役割を果たしてくれたのは、ステルクさんでした。

アーランドシリーズ通して頼れる用心棒の面目躍如です。






3、突破戦

目を開けると、空に巨大な炎の花が咲いていた。

 

ステルクがとっさに、雷撃を帯状に放って、ここぞとばかりに放たれたブレスを、ことごとく迎撃したのだ。

 

だが、ステルクが。流石に肩で息をついている。

 

あれだけの大爆発だ。

 

相当な魔力を消耗したのだろう。ステルクは雷を自在に使う戦士で、すぐれた騎士だけれど。

 

それでも、力は無限ではないのだ。

 

最悪なことに、四方を橋で囲まれた小島。なおかつ、イグアノスの群れに、全ての退路を抑えられてしまっている。

 

幸いな事があるとすれば、敵が一旦距離を取ったという事か。

 

今のステルクの技を見て、迂闊に仕掛けると危険だと判断したのだろう。

 

夕闇の中、がつがつと何かを貪る音。

 

先ほどまでの戦いで、ロロナの発破や、ステルクの技で死んだ同胞を、イグアノスが貪り喰っているのだ。

 

死ねば同胞でも、餌に早変わり。

 

別にイグアノスに限った話では無い。この世界の、悲しい法則だ。アーランド戦士でさえ、悲惨な包囲戦の中、同胞の肉を喰らった例があったと、ロロナも何処かで聞いたことがあった。

 

「ステルクさん、これ!」

 

「うむ……」

 

ステルクに、すぐに耐久糧食を。

 

クーデリアとリオネラにも渡す。

 

ネクタルを含む耐久糧食を食べる事で、ほんの少しでも体力を回復してもらう。クーデリアは今までの撤退戦で、かなり火の粉を浴びて、彼方此方火傷もしていた。リオネラは魔力の消耗が悲惨だ。

 

ステルクはほぼ無傷だけれど、魔力の消耗が酷い。

 

後、橋二つ分。

 

撤退には、どうにかして突破しなければならない。イグアノスの群れは、此方を完全に包囲していて、しかも今はもう夜になりつつある。

 

状況は、最悪を極めていた。

 

「ロロナ、戦力を確認して」

 

「うん!」

 

クーデリアが、自分で包帯を巻く横で。

 

ロロナは荷車を漁って、発破の残りを調べる。

 

今回、ある特殊な発破を持ってきているのだけれど。それが四つ。後の発破は、突破のために使うとしても。

 

明らかに数が足りていない。

 

助けが来ることは、期待しない方が良いだろう。

 

それにしても一体何で、イグアノス達はこうも大規模な包囲を仕掛けてきたのか。

 

ステルクが、周囲のイグアノスの亡骸を、湖に放り込む。

 

すぐに島魚やら他の魚やらが寄ってきて、死体に群がり、ばしゃばしゃと音を立て始めた。

 

包囲しているイグアノスは動かない。

 

いや、違う。

 

此方が動くのを、待っている。

 

向こうも本腰を入れているという事だ。今までの戦いで、此方の力は理解した。だから、焦って動くのを待っていると見て良い。

 

その上、闇夜に無数に動く、光るイグアノスの目を見ている限り。

 

彼らは、夜の闇の中でも、周囲が見えている。

 

元々、降るような星空だ。周囲は明るくて、地面までくっきり見えるほどなのだ。鳥でもない限り、周囲を確認するのは難しくないと見て良い。

 

此方は、いつブレスの全方位飽和攻撃があるか恐怖しながらまたなければならないのに。

 

相手は、此方が無謀な突撃を開始するのを、じっくり待てば良い。

 

分かっているのだ。

 

これは神経戦だと。

 

リオネラがしくしくと泣いているのが分かった。

 

アラーニャとホロホロは、何も言わない。クーデリアは残りの弾丸を数えながら、リオネラを見ずに言う。

 

「ロロナ、戦力は?」

 

「発破が、十七本。 橋は一本だけなら、突破できると思うけれど……」

 

「地図を見せて」

 

クーデリアと、星明かりの下で地図を見る。

 

どうやっても、橋一本では、対岸にたどり着けない。橋の上にいる敵を駆逐することはどうにか出来るけれど。

 

いきなり唸り声が聞こえてきたので、身を竦ませる。

 

どうやら、包囲をしているイグアノス達が、遠吠えをしているようだ。

 

意図は分かりきっている。

 

此方を休ませないつもりだ。神経を削って、暴発させるつもりなのである。

 

閉じ込められた小島の状態を確認。

 

イグアノスがブレスを使って作ったらしいへこみの位置は覚えた。逃げるときには、回避は出来る。

 

イグアノス達を、手をかざして見ると。

 

なんと、交代で休みはじめている。彼らの組織戦闘力は非常に高い。下手をすると、生半可な国の軍隊よりも、統率が採れているのではあるまいか。

 

「この様子だと、対岸近くには、最も優れた敵の一団がいてもおかしくはないな」

 

ステルクが、冷静に絶望を告げた。

 

確かにあの巨大ドナーンが、この包囲に関与していないのはおかしい。最後の最後で、文字通り手ぐすね引いて待っているとみて良いだろう。

 

つまり、此方が消耗しきるのを待っている。

 

なおかつ、此方の戦力も、相手は見切っていると判断して良い。

 

ステルクは少しだけ力も回復したようだけれど。このままでは、どうあがいても絶望だ。敵はただ待っていれば良いだけなのに。此方はもはや、打つ手が無い。消耗しきったところを、飽和攻撃を受けたら、その時点で詰む。

 

リオネラは涙も涸れ果てた様子で、ぼんやりと対岸を見ていたけれど。

 

ふと気付く。

 

妙にリオネラは、落ち着いていた。

 

「りおちゃん、大丈夫?」

 

「平気。 閉じ込められていたときに比べれば、こんなのなんともない」

 

「閉じ込められて、いたの?」

 

「そうよ」

 

くつくつと、リオネラは笑った。

 

この雰囲気。

 

以前、カタコンベで見た時と同じだ。

 

「私ね、辺境に近い国の出身だったのだけれど。 幼い頃から、魔女って言われていたの」

 

「!」

 

何となく、想像はついていた。

 

彼女にとって、周囲は害をいつ為すか分からない存在。だから、あれほどまでに、怖れているのだと。

 

アーランドでは、強い使い手や、能力の持ち主は、尊重される傾向にある。

 

しかし他の国では。

 

あまりにも異質な能力者は、遠ざけられる傾向があると聞いている。ましてや、平和極まりないような場所では、なおさらだろう。

 

ましてや、ロロナも知っている。

 

異国では、魔女という言葉が、どういう意味を持つかくらい。

 

「どんな能力が使えたの?」

 

「いつも見ているでしょう? もっとも、あの子は恐がりだから、人を傷つけるためには、絶対使わないけれど」

 

「りおちゃん……ううん、りおちゃんじゃないね?」

 

「私はリオネラよ。 でも、確かに貴方がいつも接しているリオネラではないけれど」

 

蠱惑的に笑うリオネラ。

 

確かにその笑みは魔的で。いつものリオネラの、臆病で、子供のような笑みとは、別だった。

 

話を、進めていく。

 

ひょっとすると、これは。

 

希望が見えてきたかも知れない。

 

能力を使えるかと聞くが、リオネラは頷いた。考えて見れば、今回の戦いで、荷車二台を守りきるほどに、自動防御は強力だった。それならば、攻撃に廻せば、どういうことになるか。

 

ステルクとクーデリアにも、話してみる。

 

ステルクは、敵を警戒したまま、言う。

 

「なるほど、確かに手としてはありだな。 君の作る道具についても、そろそろ信頼性という点で、充分なレベルに達していると、私は見ている。 それに、他に方法は無いとみて良いだろう」

 

「その子の言うとおり、能力が発動すれば行けるでしょうね。 貴方が持ち込んだその発破、性質を考えれば、確かにどうにかなりそうだわ」

 

「あら、信用してくれないの?」

 

くつくつと、リオネラが笑った。

 

その笑い方は、やはり邪悪だと感じてしまう。

 

ロロナは思うのだ。

 

このリオネラは、鬱屈した感情そのもの。多分リオネラが、周囲からどんな風に接されていたかの、鏡。

 

悲しいと思う。

 

きっと両親でさえ、リオネラを守ろうとはしなかったのだろう。

 

「それで、いつ決行する」

 

「すぐにでも。 行けますか」

 

「問題は、橋を渡っているときの迎撃と、恐らくは最後に控えているだろう大物の撃破だが。 より問題として大きいのは、前者だな」

 

上手く行けば。

 

後者は、そのまま無視することも出来る。

 

そして無視するのには、むしろこの闇は適している。

 

狙うのは、雲がお月様を隠したとき。

 

準備を、進めておく。

 

その間、ステルクとクーデリアには、わざと大声で話をしてもらった。これは、イグアノス達に、此方が慌てて揉めているように見せるためだ。

 

相手は、此処まで完璧な包囲を実行してきた。

 

それならば、油断も生じるはず。

 

思い通りに行っているように見せれば。更に、その油断を、加速させてやることだって可能だ。

 

「何よ、馬鹿じゃ無いの! そんな精神論で、どうあの物量を突破するっていうのよ!」

 

「何事も為せばなる。 為せねばならないのは当然だ」

 

「無理に決まっているでしょ! 此処は増援を待つべきよ!」

 

「増援など来るはずも無い」

 

迫真の大げんか。

 

元々クーデリアとステルクは、あまり仲が良くない。クーデリアは時々ステルクに戦い方を聞いているようだけれど。ロロナを虐げている側の人間だと言って、時々文句をぶつぶつ呟いている。

 

しかし、この息の合いっぷりは。

 

意外と二人とも、半ば本気で喧嘩をしているのかも知れない。

 

準備を整えていく。

 

今回持ち込んだ発破は、突破の際に全部使ってしまうけれど、それでいい。それと、切り札として持ってきた道具も、使ってしまうか。

 

準備が、出来た。

 

二人に手を振って、出来たと告げる。

 

リオネラも、動いてもらう。

 

まあ、リオネラは、保険だ。本当に出来るかどうかは分からないけれど。できれば、それでかなり有利になる、くらいにロロナは考えていた。

 

方角は、間違いない。

 

3、2、1。

 

0。

 

突破作戦、開始。

 

 

 

湖が、いきなり凍った。

 

荷車が通るのに、充分な路が出来る。同時に、突撃開始。凍った湖上の路を、全力で走り抜ける。

 

イグアノス達は、呆然として、対応できていない。

 

これぞ、今回持ち込んだ、氷結爆弾。レヘルンの力だ。

 

レヘルンは、樹氷石の中央部に増幅の魔術を込めたゼッテルを仕込み、火薬でそれを爆砕してばらまくというものだ。

 

これによって、広域を一気に凍らせることが出来る。

 

何度か実験はしたけれど、効果はこの通り。一個目のレヘルンで、一気に予定していた目的地点まで凍結させた。走りながら、二つ目を取り出して、着火。みためは雪だるまのように可愛らしいけれど。

 

これをもし生物相手に使ったら、一瞬で凍り漬けにできるだろう。

 

とても怖い武器だ。

 

そして今回は、包囲網を突破するのに用いる。路が無いのなら、湖上に作れば良い。それを素で実施したことになる。

 

イグアノス達は、流石にこんな隠し球がある事を、予想は出来ていなかっただろう。事実、彼らは驚いて、唖然としている。

 

だが、それでも。

 

彼らも木偶では無い。

 

イグアノス達が反応。

 

追撃をかけてこようと、さっきまでロロナ達がいた島になだれ込んでくる。

 

だが、その橋の前に。

 

巨大なアラーニャとホロホロが、立ちふさがる。

 

そのサイズは、ドラゴン並みだ。

 

リオネラが、荷車の上で座ったまま、くつくつと邪悪な笑みを浮かべている。目に浮かんでいるのは、嗜虐だ。

 

巨大なぬいぐるみ達が腕を振るう度に、イグアノスが吹っ飛ぶ。慌ててブレスを叩き込むイグアノス達だけれど。何しろサイズがサイズだ。簡単に倒せるような相手ではない。ふっとばされて湖に叩き込まれたイグアノスは、陸に上がる暇も無く、水面までせり上がってきた島魚の餌食になった。

 

これで確信できた。リオネラの能力の正体が。

 

だが、今はそれどころではない。

 

二つ目のレヘルンを投擲。

 

岸まで、もう少しの所まで、凍る。

 

時々ブレスの火球が飛んでくるが、全てクーデリアが走りながら迎撃し、叩き落とす。後ろの方で、爆発。

 

氷の橋が、砕けた。

 

だが、通り過ぎた場所だ。気になどしてはいられない。砕けた氷が、追ってくる。だが、走り抜けてしまえば。

 

何度も、荷車が跳ねる。

 

三つ目のレヘルンを取り出した。

 

すぐ後ろで、大きな爆発。岸から、強烈なブレスの火球が飛んできたのだ。恐らくは、ずっと伏せていた、あの巨大ドナーンだろう。

 

「あれは落とせないわ!」

 

「ステルクさん!」

 

「応っ!」

 

ステルクが足を止めて、剣に稲妻の力をため込む。

 

その間にロロナは、三つ目のレヘルンを投擲。ついに、岸まで氷の路が出来る。其処を、一気に走り抜ける。

 

イグアノスの群れが、させじと火球を乱射してくる。一部が回り込もうとしてくるけれど、ステルクの放つ稲妻が、片端から焼き尽くす。

 

至近に、着弾。

 

手に鋭い痛み。

 

声を殺して、歯を食いしばる。走る。

 

荷車が右に左に激しく揺れた。自動防御が無いから、火球を防ぎきれなくなっている。また着弾。着弾。着弾。

 

焼け焦げる臭い。

 

肉が焦がされている。傷が出来る。クーデリアは。まだ銃弾を乱射して、迎撃を続けてくれている。

 

努力を無駄にしないためにも。

 

ロロナは、ひたすらに走った。

 

荷車の車輪が、がたんと大きな音を立てる。

 

ついに、岸に上がったのだ。

 

イグアノスの包囲網を、完全に抜けた。

 

だが、湖から上がった瞬間、氷の路が粉々に吹っ飛ぶ。

 

巨大ドナーンのブレスだ。

 

だが、ステルクが途中で相殺してくれていた。水浸しになりながらも、ステルクが着地。もしもステルクが対処してくれなければ、粉々になっていただろう。

 

闇の中、無数の火球が、此方に飛んでくるのが分かる。

 

頭に来たらしいイグアノスが、追撃からの飽和攻撃を開始したのだ。今度は包囲戦から、追撃戦に変わったけれど。

 

さっきまでに比べれば、全然楽だ。

 

追いすがってくるイグアノスとは、まだだいぶ距離がある。

 

時々発破を投げて、距離が近い個体を爆砕しながら、走る。無数の火球も、慌てているからか、あまり追いついてこない。

 

既にリオネラには、アラーニャとホロホロの巨大化を解除してもらい、自動防御に戻してもらってある。

 

形勢は、完全に逆転した。

 

夜道を走る。

 

ブレスが飛んでこなくなったのは。イグアノス達が、縄張りを此方が出たと判断したからだろう。

 

既に街道。

 

これ以上追撃をすると、アーランド戦士達が近くの屯所から出張ってくる。そうなれば、面倒だと知っているのだ。

 

キャンプスペースに辿り着く。

 

見張りの戦士がいた。ぼろぼろになっているロロナ達を見て、驚いたようだった。流石に突破が上手く行ったとは言え、あれだけの戦いの後だ。ステルクと、荷車に乗っていたリオネラ以外は無事だけれど。ロロナとクーデリアは、手酷く火傷していた。ロロナに到っては、湖の上を走り抜けるとき、一度破片で指をざっくりやられた。左手の中指は、骨が見えるほど酷い傷が出来ている。

 

「何だあんた達。 まさか、こんな時間まで、ネーベル湖畔にいたのか」

 

「はい。 イグアノスの群れに包囲されてました」

 

「よく生き残ったなあ。 彼奴らここのところ知恵をどんどんつけててな。 よその国から来た密猟者どもがこの間も、まとめて十人くらい餌食になったんだよ。 まあ連中は自業自得だがな。 お前さん達は良かった良かった」

 

笑い話のように言われて、ロロナも流石に引きつった。

 

なるほど。

 

それで、人の肉の味を覚えたのか。

 

話によると、噂に聞いた屈強な密猟団は、少し前に主力が捕まり、残りは引き上げていったらしい。欲を張った一部が残っていたところを、モンスター達に一網打尽にされてしまったそうだ。

 

ステルクが、不機嫌そうな顔を、更に強ばらせる。

 

「近々討伐の必要があるな。 今日だけで七十ほど間引いたが、まだ足りん」

 

「何だか、悲しいですね」

 

自然のルールを知らない密猟者が無為なことをしたせいで、危うく大変なことになる所だった。

 

それにあれだけの数でも、本格的な討伐隊が出たらひとたまりも無い。

 

座り込むと、手当をはじめる。傷薬を塗って、耐久糧食を食べて。しばらく、横になる。横になると、興奮が収まってきたからか。体中の傷が痛んできた。リオネラは、いつの間にか、元に戻っていた。

 

クーデリアが嘆息する。

 

「弾丸を殆ど使い切ったわ。 まだ探したり無いものがあるんでしょう?」

 

「うん。 でも、もうあまり長くは戦えそうに無いね」

 

「深入りはしないのであれば、私がどうにかする」

 

ステルクが、剣の状態を確認しながら、フォローはしてくれる。

 

実際、まだ一番大事な緑結晶が手に入っていない。これが無いと、湧水の杯を作る事が出来ないのだ。

 

一端引くべきか。

 

銃弾は、アーランドで無いと生産が難しい。と言うよりも、材料を中々入手できないらしい。

 

村などで買うと、相当に高くつくだろう。

 

その上、槍や剣と比べて実用性も低い銃なので、わざわざ扱っている可能性も高くは無い。

 

明日は、速攻で当たりを付けて、採取をしなければならない。

 

リオネラは、疲れ果てたらしく、もう眠っている。

 

ロロナも、もう眠りたいくらいだったけれど。最低限の打ち合わせは、しておいた方が良い。

 

そう思って、幾つかの確認を、済ませておいた。

 

横になると、ようやくリラックスできる。

 

明日もまた、あの恐怖の湖に戻らなければならないかと思うと、憂鬱だったけれど。しかし、湧水の杯が作れれば。渇き谷にいるお年寄り達の生活を、だいぶ向上させることが出来る。

 

苦労する、意味はある。

 

クーデリアが、横に腰を下ろす。

 

「指は大丈夫?」

 

「こんなの、へっちゃらだよ。 くーちゃんこそ、何カ所もブレスの直撃もらってたでしょ?」

 

「あたしは鍛えてるから平気よ。 それに、この程度の痛みは、慣れっこだわ」

 

傷も、痛みも。

 

お互い、すっかり慣れてしまった。

 

それに、この程度の痛みなど、何でも無い。良く思い出せないのだけれど。この比では無い怪我を、いつだかした気がするのだ。

 

ロロナもアーランド人だ。

 

こんな怪我なんか、唾でも付けておけばなおる。ましてやちゃんと手当てしたのだから、一月もすれば跡も残っていない。

 

とりあえず、クーデリアと並んで、眠ることにした。

 

星だけは。

 

相変わらず、降るように美しかった。

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