暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ロロナのアトリエでもスターシステム的に出演している武器屋の親父さん。幽霊のあの人と違って恐らくは他人のそら似ではありますが。

アーランドシリーズの親父さんは直球過ぎる名前ですが、まあそれでも最終的にコンプレックスを受け入れられて良かったなあと思います。





3、迫る現実

親父さんは、ロロナが鉱石を見せると、満足げに頷いた。

 

いずれも、問題の無い品質だという。

 

そして、分厚い本を手渡してくれる。インゴットへの加工法、というものだ。鉱石をこれによってインゴット化する事で、より安く武器や防具へと加工できるというのである。

 

「本来、錬金術でも反射炉って言う大がかりな装置がインゴット化には必要だったんだがな」

 

親父さんが、色々と技術を説明してくれる。

 

今回は、ロロナとしても、大砲を作る際に金属が必要になってくる。だから、話を聞いていく価値があった。

 

「何だかは知らんが、今はお前さんの所にあるような小さな炉でも、技術さえあればどうにか出来るそうだ。 以前、三代前の錬金術師にそう聞いたことがあるよ。 まだ俺が、鍛冶屋をする前、戦士だった頃だ」

 

「有り難うございます。 参考になります」

 

「おう。 インゴット化が手間だと思ったら、直接持ってきな。 多少は割高になるが、俺がどうにかしてやる」

 

そう親父さんは親切に言ってくれた。割高になるのは、仕方が無い事だ。親父さんの手間を考えると、当然である。

 

ロロナも、色々と作業をしてみるようになって分かった。作業をするために消費する時間というのは、そのままお金に換えることが出来る。

 

そして、お金はあらゆる意味で馬鹿に出来ない。

 

アーランドの価値観では、お金はあまり良い存在では無いとされている。確かに頷ける部分はある。

 

でも、馬鹿にすることも出来ない。

 

それは、師匠が殆ど手伝ってくれず、ロロナとクーデリアで課題をこなしていく内に、分かってきた。課題をこなして国から補助金が出る度に、思い知らされもした。

 

実際、前回の課題では、蓄えていたお金は殆ど底をついてしまったのだ。

 

もしも無駄使いをしていたら。

 

今頃、ロロナは課題を突破できず、路頭に迷ってしまっていただろう。宵越しのお金は持たないというような言葉もあるけれど。

 

少なくとも、ロロナはお金を大事にしていきたいと、思っていた。

 

アトリエに戻ると、ようやく歩けるようになったクーデリアと一緒に、資料を見直して行く。

 

今日はリオネラも来てくれていたので、意見が聞けそうだ。

 

「やっぱり、大砲に使う金属は、頑強な方が良さそうだね」

 

「火薬の衝撃に耐えることを考えると、当然でしょうね。 ただ問題があるとすると」

 

クーデリアが指したのは。

 

粘り腰、と言う部分だ。

 

幾つかの資料によると、大砲には強い弾力性が必要になるのだとか。硬いだけだと駄目で、衝撃を受けきって流すくらいの事が出来ないと、何度もの射撃には耐えられないのだとか。

 

幾つかの資料を見ていくけれど。

 

最適な金属については、よく分からない。

 

たとえば、鉄が良いと書いている資料もあるけれど。ただの鉄は、あまり頑丈ではない。実際、その資料を書いた錬金術師が作った大砲は、あまり良い評価を得ることが出来なかったそうだ。

 

しかし、それ以上の金属となってくると、コストパフォーマンスに色々と問題が生じてくる。

 

たとえば、この間のシュテル高地で拾ってきた金属類を使えば。

 

シルヴァタイトやゴルトアイゼンを用いる事で、更に頑強な大砲を用いる事が出来るけれど。

 

おそらく、一機ごとの作成コストが、尋常では無くなるはずだ。

 

リオネラが、おそるおそる言う。

 

「どうして、大砲を、作る必要が、あるの?」

 

「ううん、そうだね。 課題を見る限り、国境地帯に配備するって書いてあるよ。 多分分かり易い軍事力として、必要なんだと思う」

 

「戦争を防ぐために、大きな軍事力を見せるの?」

 

「そう言うことになるね」

 

別に違和感は無い。

 

アーランドがそもそも、そうやってこの世界で立脚してきた存在だ。アーランド戦士の凄まじい強さと恐ろしさを見せつけることで、辺境諸国におめおめ手出しを出来ないように、周囲を威圧してきた。

 

事実、ステルクが気配だけでモンスター達を圧倒して、戦闘を避けている様子も目にしているロロナは。

 

それが間違いであるとは、特に思わない。

 

「それなら、見かけだけ大きな大砲を作るのは?」

 

「ううん、きっとそれはもう、やっているんだと思うよ。 今回は、実用性で以前の大砲を遙かに上回るもの、という要件だから……」

 

あまり口にはしたくないけれど。

 

或いは、周辺国と、かなりきな臭くなっているのかも知れない。そうだとすると、ロロナはともかく、最悪の場合クーデリアは出征する可能性がある。アーランド戦士であるならば、当然だ。

 

それは、嫌だ。勿論私情だと言う事は理解しているけれど。

 

大砲の改良は、必須。

 

これは、ロロナだけの問題ではないのだ。

 

「大砲の大型化は、確かに手の一つではありそうだね」

 

図面を探してみるが、確かに大型化することで、頑強さを増すようにしたものは存在している。

 

大砲にライフリングという溝掘りを行う事で、更に射撃精度を上げる工夫もあるようだ。かなり作るのは大変だと思うのだけれど。それは、親父さんに出来るかどうか、聞いてみる必要がありそうだ。

 

他にも、幾つか必要そうな技術を見て行く。

 

「まとめると、大砲を頑強にする。 大きくする。 後は」

 

「生きているっていうのは、どう……?」

 

面白い事を、リオネラが言う。

 

確かに、大砲に魔術で擬似的な意思を与えれば、管理は容易になるし、操作もしかり。壊れたときには、自己申告もできるようにすれば、なおさら安全になる。

 

全てをいきなり盛り込むのはハードルが高いけれど。

 

幸い今回は、資料がたくさんある。

 

王宮にも、資料を見に行きたい。

 

この間ステルクに聞いたのだけれど、ロロナは課題をしっかりこなして実績を上げたことで、王宮から信頼されはじめているという。

 

或いは、今までは見ることが出来なかったような資料を、閲覧できるかも知れない。

 

一通り意見をまとめた後、皆に帰ってもらって、自分でメモを整理する。

 

ロロナも、いい加減クーデリアに手伝ってもらわなくても、調合をしっかりこなして、課題も出来るようになりたいのだ。

 

クーデリアは体を鍛えたいだろうし、ロロナだってもっとしっかりすれば。クーデリアの怪我を、減らすことだって出来る。

 

もっと早く大火力の術式を展開する。

 

魔力を練り上げて、術式の破壊力そのものをあげる。

 

発破を使って、牽制をする。

 

戦術を練り上げて、敵の足を止め、一方的に叩く。

 

どれか一つでもしっかりこなせれば、クーデリアの負担は、ぐっと減るのだ。

 

資料が一通りまとまったので、早めに寝床に入ることにする。ホムがまだ調合を続けていたので、適当なところで切り上げるように指示。

 

ざっと、生成物を見て。

 

明日は、栄養剤を一セット作って、それをホムに納品させて。それから、出かけようと決める。

 

一通り明日のスケジュールも決めると、後は眠るだけ。

 

どうしてだろう。

 

最近は、無駄に過ごす日が、殆ど無くなってきた。

 

 

 

翌日は、王宮の図書館で資料集めをする。その際に、幾つかの前線施設についての資料も、見つけることができた。

 

今日はクーデリアはいない。なにやら忙しいそうなので、リオネラに来てもらっている。ちなみに、ぬいぐるみ達は、黙ったままリオネラの後ろで浮いている。王宮の中では、ひとことも喋らない。

 

一緒に資料を探していると、色々と付帯知識が増えてくる。

 

たとえば、アーランドの国防だ。

 

アーランドの西部や南部は、辺境諸国と接しているからか、あまり防備が強化されていない。

 

他の辺境諸国の中でも、アーランドは一目置かれており、なおかつ恐れられてもいる。最強と噂されるアーランド戦士を相手にしたいと思う辺境諸国は、現時点では存在しないのだ。

 

これに対して東部や北部は違う。

 

今の時点ではまだないが、大陸中央の列強と、思い切り接する可能性が高いからだ。その上、繁殖力が低いアーランド人は、領土を広げるのが極めて苦手。今の国境線を維持するのでも、手数が足りないくらいなのである。

 

特に北部は、幾つか非常にきな臭い国境線があり、これらには多くの砦が作られている。勿論それらには、屈強なアーランド戦士が配備されているのだが。

 

ロロナが求められているのは、これら砦に、強力な大砲を配備することだ。

 

幾つかの砦のデータを見るが、配備されている大砲は、非常に粗末な扱いを受けている。確かに、アーランド戦士達にとって、「使い物にならない」大砲など、無用の長物だろう。そんなものを置くくらいなら、一人でも優秀な戦士を回して欲しいと言うのが、彼らの本音の筈だ。

 

つまり、ロロナには。

 

既存のものよりも、簡単なメンテナンスで稼働させることが出来る大砲の設計も求められている、という事だ。

 

一応配備数はそれなりにあるけれど。

 

相当な苦情が上がって来ているようだ。さびているとか、撃ったら爆発したとか。弾がしけっているとか。重いとか。

 

リオネラが言っていた、生きている大砲というのは、アリかも知れない。

 

ある程度は自己メンテが出来る大砲であれば、これらの問題も、クリアは容易だ。

 

それにしても、こうも嫌われる大砲というのも、何だか気の毒な存在である。ロロナは何となく、一緒に来てくれたリオネラに、話を振ってみる。

 

「ねえ、りおちゃん。 古くなった大砲に、命を吹き込める?」

 

「ライフエンチャントの事?」

 

「うん。 魔術師の中には出来る人がいるって聞いたけど。 理屈を、知りたいなって思うんだ」

 

ロロナはどちらかというと、大量にある魔力を生かして行う、力業の魔術が得意だ。逆に言うと、繊細な調整が必要になる魔術は、あまり得意では無い。

 

これに対して、リオネラはおそらくだけれど。

 

魔力量の割には、緻密な作業に向いているはず。理由はリオネラの前では言えないけれど。ロロナが確信しているある事が、原因としてあげられる。

 

「りおちゃんのお師匠様に、得意な人、いない?」

 

「今から、行ってみる?」

 

「うん! そうしよう」

 

本の貸し出し手続きを、丁度いたエスティにしてもらう。

 

幾つかの本は借りられなかったので、メモを取って、それから王宮を出た。そういえば、この王宮には、今六十機ほどの大砲が備えられているのだとか。ただ、どれもこれもが旧式で、使うのは難しいものばかり。

 

祝砲として使う事はあるようなのだけれど。

 

ロロナの考えが正しければ、これらを一気に戦力化できる。そして、手段さえ確立できれば。

 

前線に配備されている役立たずの大砲達を、生まれ変わらせることだって出来るだろう。

 

問題は、エンチャントの技術と、それを錬金術でどう達成するか、だ。

 

まず、話を聞いてみないといけない。

 

リオネラに伴われて行ったのは、工場区の奥。

 

魔術師の中でも、年季が入った人は、どうしてかは分からないのだけれど、街の辺縁で暮らすことが多い。

 

ロロナの母は現役でも最強レベルの魔術師だけれど。まだ若い。だが、年を取ったら、或いは街の外れで静かに暮らしたいと言い出すかも知れない。

 

しばらく歩いて行くと、かなり城壁の近くに来た。

 

良くしたもので、近所は魔術師だらけのようだ。強烈な魔力が、彼方此方に感じられる。モンスターが此処に来たら、跳び上がって逃げていくだろう。

 

アーランド戦士は強い。

 

その戦士の中には、戦闘向けの魔術師も含まれているのだ。

 

リオネラが足を止めたのは、その一角。

 

かなり品格のある館だ。アーランドでは、爵位をお金で買う事が出来る。ひょっとすると、貴族と呼ばれている人かも知れない。

 

「ルナリア師匠」

 

リオネラが、扉に向けて呼びかけている。

 

基本的に小声のリオネラだけれど。魔力が籠もっているからか、中にきちんと響いているようだ。

 

ドアが勝手に開く。

 

これも、エンチャントによるものだろうか。だとすれば、凄い。

 

リオネラと一緒に、中に。中に入ると、今までじっとしていたアラーニャとホロホロが、急に動き出す。

 

「ふー、窮屈だったぜ」

 

「あれ? 今まで、どうして喋らなかったの?」

 

「リオネラが静かにしなさいって言うから」

 

「まあ、俺たちが騒いでたら、目立つのは事実だからな」

 

そこそこに広い庭を歩いて、屋敷に到達。植物がかなり生えているけれど、それらに水をやっているのは、たくさんの節足が生えたじょうろだ。勝手に動き回って、水をあげている光景は、中々に凄い。

 

思わず感心してみていると、リオネラがぺこりと頭を下げた。

 

上品な女性の魔術師がいた。普段着だけれど、それでも見ていて背筋を伸ばしてしまう。纏っている魔力の量が桁外れだ。或いは、アーランドでも重鎮と呼ばれるレベルの魔術師だろうか。

 

少なくとも、今のロロナとは、勝負さえ成立しない。

 

魔力量はそこそこにあるロロナだけれど。その練り込み具合が、まるで違っているのだ。

 

「貴方が、ロロナちゃんね。 ロアナさんや、其処のリオネラから聞いているわ」

 

「あ、はじめまして! ロロナです!」

 

母とも知り合いとなると、やはり国の重鎮と思った方が良いだろう。

 

屋敷の中に、案内してもらう。

 

見ていると、とても不思議な道具が彼方此方にあった。どれもこれもが命を持っているようで、生き物のように動いている。

 

錬金術で、これを再現できないだろうか。

 

見回しているロロナが、壁にぶつかって、悶絶していると。くすくすと、ルナリアは笑う。

 

「あらあら、噂通り、面白い子ね」

 

「ご、ごめんなひゃい……」

 

居間で、お茶を出してもらう。

 

残念ながら、お茶自体は高級品だったけれど、淹れ方が下手なのか、あまり美味しく感じられなかった。

 

上品でとても綺麗な人だけれど。何でも出来るというわけではないようだ。何処か安心してしまったのだけれど。流石にそうだとは言えなかった。

 

ルナリアに、リオネラが用件を説明。頷くと、まずリオネラを、奥の方に連れて行った。修行をするのだとか。

 

ロロナも見せてもらおうかと思ったのだけれど。

 

修行は、ルナリアの作った道具があれば、一人で出来るのだという。魔術の秘儀もあるから、見せられないと言われた。

 

そういえば、ロロナの母も、何でもかんでも教えてくれるわけでは無い。魔術師にとっては、編み出した技術は文字通りの生命線なのだろう。ロロナはまだ、見せて貰えるところまで、信頼されていない、という事だ。

 

それに、ロロナだって、同じ事を言われたら困るはずだ。

 

錬金術の知識を全部見せろと言われても、出来ないとしか言えない。

 

「エンチャントについて、知りたいそうね」

 

「そうなんです。 今、大砲の研究をしているんですけれど。 大砲って、扱いが難しい割に弱いって言われていると思うんですね。 それで、まず簡単に扱えるように、大砲が自分である程度メンテナンスを出来て、扱う際にも補助してくれるようになれば、だいぶ違うのでは無いかなって」

 

実際には、それだけでは駄目だ。

 

破壊力を上げて、射程距離を伸ばして。やっと、今回の課題は達成できる。しかし、生きているというのは、今思うと大前提。

 

なにしろ、アーランド戦士達は、戦う事以外には意欲が薄い。

 

労働者階級の人を最前線に入れるわけにも行かない。戦う事以外には熱心では無い人達でも扱えるようにするには、精密機器を、簡単に使えるようにする工夫が必要なのだ。

 

説明を終えると、ルナリアは考え込む。

 

ロロナは固唾を飲んで、返事を待つ。他のエンチャント使いを探すにしても、時間のロスは出来るだけ避けたいのだ。

 

「貴方は噂に聞いているほど、考え無しではないのね」

 

「え……?」

 

「今度の錬金術師は、優秀だけれど頭が悪い。 そういう噂が、私の所に流れてきています。 話してみて感じたのは、貴方はとてもちぐはぐだということ。 今回の件も、大砲を強化することの戦略的意義と危険性をきちんと理解しているのに、容姿や基礎的な考え方は、子供のよう」

 

酷い事を言われているのか、それとも。

 

ロロナに、淡々とルナリアは言う。

 

「貴方には、エンチャントの技術を教えてはおきます。 それをどう利用するかは、貴方次第。 結果何が行われるのかも、貴方の自己責任。 構わないわね?」

 

しばらく悩んだけれど。

 

ロロナは、頷いた。

 

元々ロロナは、大魔術師の娘だ。アーランド有数の魔術師の娘なのだ。むしろ錬金術師よりも、魔術師と親和性が強いのも、其処に原因がある。

 

だから、というわけではないけれど。

 

錬金術に魔術を組み込むこと自体は、苦手では無い。

 

ルナリアが、資料を出してくる。

 

それから数時間。ロロナは、その資料に、徹底的に目を通しながら。分からない事を、順番に聞いていった。

 

 

 

リオネラと一緒にアトリエに戻ると、クーデリアが丁度来た。

 

修練が終わったのだろうか。

 

訓練着から着替えているけれど、分かる。かなり叩き潰されて、汗も掻いた形跡がある。最近、元々鋭かった感覚が、更に磨かれてきている。目も良くなってきたし、鼻も。クーデリアから、汗と血と泥の臭いがするのは、勘違いではない筈だ。

 

エンチャントの基礎技術については、教えてもらった。

 

それを告げると、クーデリアは不機嫌そうに頷いた。喋っているのを聞くと、別に機嫌そのものは悪くないようなので。単に虫の居所が良くないだけだろう。

 

アトリエに入ると、一旦食事にする。

 

ロロナもかなり頭を使ったので、甘いものが食べたい。それはリオネラやクーデリアも、同じ筈だ。

 

だが、クーデリアは断る。意外だった。

 

「あれ? くーちゃん、どうしたの?」

 

「食べてきたから。 もうあのおばあさん、あたしの事子供扱いばかりして、甘いお菓子いつも作るんだから」

 

おばあさんというと、おそらくこの間から修行を付けてもらっているという引退騎士、雷鳴さんの奥さんのことだろう。

 

若い頃はかなり厳しい人で、奥さんもろともアーランドの魔獣とかいう呼ばれ方で、周辺国から怖れられたそうなのだけれど。クーデリアは丁度孫くらいの年だからか、べたべたにかわいがっているようだ。

 

それをロロナの前で愚痴るクーデリアだけれども。

 

ロロナは知っている。

 

クーデリアは、まんざらでも無いのだと。

 

理由は何となく分かる。

 

クーデリアはあまり、家族に愛情を注がれたことが無い。だから、純粋に愛情を注いでくる相手は苦手だし、その反面、内心悪く思っていないのだ。その証拠に、クーデリアは此処では文句を言うけれど。

 

一度影から覗いていたら、雷鳴夫婦の所では、かなり機嫌が良さそうにしている。

 

勿論、技を教えてくれる相手の前だから、不機嫌な様子など作る事は無いのだろうけれど。それでも、クーデリアが本当に怒っていたり、悲しんでいたりすれば、すぐにロロナには分かる。大親友だと、自分でも思っているからだ。

 

集めて来た資料にざっと目を通しているクーデリアの前に、お茶だけは出す。

 

ルナリアはとても優れた魔術師だけれど。

 

お茶に関しては、ロロナが上の自信があった。勿論、散々練習したから、美味しく淹れられるようになっただけだけれど。

 

或いは、雇っている使用人が、あまりお茶を淹れる練習をしていないだけかも知れない。

 

「なるほど、大砲そのものに命を与えることで、メンテナンスを容易にすると」

 

「うん。 アーランド戦士達が、みんな大砲を嫌がるのは、やっぱり威力とメンテナンスの手間が釣り合っていないことだと思うから」

 

「良いアイデアじゃ無い。 後は大砲の威力と射程を上げれば、問題なしと」

 

クーデリアが手放しで褒めてくれたので、嬉しい。

 

エンチャントの具体的な技術について、まとめたことを次に見せる。リオネラはあまり興味が無さそうだった。

 

何しろ、彼女は。

 

いや、今の態度でだいたい見当はついたけれど。それは、口には出さない。喋るのは、もっとリオネラが、ロロナに心を許してくれてからだ。

 

「要するに、世界の彼方此方にいる悪霊さんを捕まえて、その物体に宿らせるんだって」

 

「悪霊、ねえ」

 

「わたしも半信半疑だったけれど、パメラさんみたいな人だっているんだし、きっと悪霊は存在するんじゃないのかな。 それにエンチャントを専門にしている魔術師はたくさんいるし、技術としてはありなんだよ」

 

「まあ、それはいいわ。 で、錬金術で再現できるの?」

 

此処を躓いてしまうと、そもそもの戦略が瓦解してしまう。

 

ロロナは頷くと、図を示す。

 

悪霊をまず捕獲する。

 

これに関しては、ゼッテルに専門の魔法陣を張ることで出来る。

 

その後、悪霊に、自分が生きていると錯覚させる。これも、同様の方法で可能だ。魔法陣については、既に書き方を教わっている。

 

最後に、物体に悪霊を閉じ込める。

 

やり方は色々あるようだけれど、これについては既に目処がついている。錬金術で、充分に応用可能だ。

 

ロロナはやはり魔術の方により強い素養があるようで、見てすぐに理解できた。ルナリアは、それを見て、大きく嘆息したのだ。私は概念を理解するまで、半年近く掛かったのにと。

 

罪悪感を覚えてしまったけれど。

 

ただ、これはおそらく、ロロナに下積みがあったからだろう。実戦で散々魔術は使って来ているし、母に基礎は教わっている。それに対して、ルナリアはおそらくだけれど、独学で今の実力を作り上げてきた人だ。才能に関しては、ロロナよりもきっとあるとみて良いだろう。

 

逆に言うと。

 

ロロナが今まで触れてきた錬金術についても、同じ事が言えるはずだ。

 

どんな天才でも、新規に技術を造り出すのは、それだけ難しい。

 

「なるほどね。 まずいきなり大砲で試すんじゃ無くて、片手間に色々実験した方が良さそうね」

 

「うん。 ほうきとかごみばことかでやってみようと思うんだけれど。 りおちゃんは、何か良い案ない?」

 

「ううんと、お菓子を勝手に作ってくれる道具があったら、嬉しいな……」

 

控えめに言うリオネラは、確かに可愛い。

 

そして気の毒なことに。

 

リオネラ自身は、それに気付いていない。

 

一通り意見を出してもらった後、戦略を策定。後は、それに沿って、順番にやっていけばいい。

 

問題は、いつもいつもトラブルが起きること。

 

ただし、今回もというべきだけれど。それを想定して、最初からスケジュールを組んでおく。

 

これで大丈夫だとは言い切れないけれど、転ばぬ先の杖だ。

 

大砲の強化は、いつもと同じく、極めて困難な作業になりそうだけれど。今回も、支えてくれる人はたくさんいる。

 

きっとどうにかなる。

 

そう、ロロナは思った。

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