暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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魔王。本作にも登場します。

アトリエシリーズでは主にエンドコンテンツボスとして上位悪魔が登場する事があり、まんま魔王という存在もソフィーのアトリエのエンドコンテンツに登場します。

原作でも新ロロナのエンドコンテンツダンジョンになんか強い悪魔がいるのですが。

本作の魔王は、それをモデルにした存在です。

あくまでモデルだけ。






1、暗き闇の主

それは、ロード級と呼ばれる悪魔の中でも、最上位の存在だ。

 

アーランドの人間達が、夜の領域と呼ぶその最深部に。見えない玉座を造り、腰掛けている巨大な人型。

 

ただしその人型は骨をかたどったマスクを身につけ、腕は4本。纏っているタキシードには、汚れの一つも無い。

 

人型の名前は、ロードオブロード。

 

悪魔の王の中の王。

 

その存在そのものが、名前となっているのだ。

 

「ふむ、ではスピアは、もはや自分を制御するつもりもないとみて良いようだな」

 

「仰せの通りでございます」

 

ロードの前にひれ伏しているのは。スピアに派遣していた、軍事顧問の一人。

 

そして、彼らの錬金術によって、一族を失ったロード級の悪魔でもある。アルモンという名前を持つが。それは、今は意味が無い。

 

悪魔の長は、一族そのものを意味する名を持つ。

 

だから、一族が滅びた今。名前は、もはや何の意味をも持たぬ、無用の長物に過ぎないのだ。

 

スピアが裏切ったというわけでは無い。

 

抱えている錬金術師集団の暴走が原因だろう。

 

かって、旅の人と呼ばれる存在が、この世界を復旧させるために尽力した。その存在は、悪魔達も認めていた。

 

どんな凶暴な一族の長でさえ、旅の人は客として遇した。そして敬意を払って、その偉大な業績を称えた。

 

いや、ロード達悪魔の存在が故に。

 

旅の人は、偉大な者として。いや、ある意味神に等しい存在として、崇拝の対象となったともいえる。

 

その知恵は、彼方此方で錬金術という形で芽吹いた。

 

アーランドもその一つ。

 

そして、スピアの母体となった国の一つ。スルファル王国も、である。

 

だが、アーランドとスルファルでは、錬金術の発展の歴史が、真逆と言って良いほどに違った。

 

スルファルは、かっての栄光を取り戻す。それを戦略として、掲げていた。

 

だからこそ、荒れ果てた大地をよみがえらせることよりも。人間をどう最盛期に戻すかばかり考えた。

 

人間世界の戦略としては、それで正しかったのかも知れない。

 

だがロードは知っている。

 

人間がどうして一度滅びたのか。その原因を知っている以上、スピアにはこれ以上肩入れすることが出来ない。

 

「アルモン。 どれだけの配下が、スピアの手に落ちた」

 

「三十名ほどです。 その内六名が、今ではロード級の実力を持つ存在に改造されてしまっています。 私も逃げ出すのが精一杯で、一族の老幼を救えず……。 死罪も、覚悟しております」

 

「もう良い。 我々も、このような存在に成り下がって、狡猾さを失っていたのかも知れぬ。 皆の責任だ。 そなたには追って沙汰をする。 くれぐれも、早まった真似はするでないぞ」

 

アルモンには、一定の謹慎をさせたあと、苦境にある悪魔の一族達を任せたい所だ。

 

ロード級と呼ばれるまでに力を増す悪魔は、殆ど存在しない。殆どが、途中で命をおとすからだ。確かにアルモンの失敗は致命的だったが、それでも彼はロード級まで成長した有用な仲間だ。安易に死なせるわけにはいかないのである。

 

ともかく、スピアで何が起きているのか、確かめる必要がある。

 

夜の領域には、現在三名のロード級がいるから、守りは問題が無い。いざというときには、海王を動かすことも出来る。

 

アーランドでも攻略が出来なかった、悪魔の牙城だ。

 

ましてや付け焼き刃のスピアに、落とす事など、絶対に不可能である。

 

「私がスピアに出向く」

 

「ご武運を」

 

「うむ……」

 

傅く悪魔達に返すと、ロードは己の領域を出る。

 

これなら、アーランドと手でも結んだ方が、まだマシだったかも知れない。

 

 

 

人間の姿を取ることは、実はさほど難しくない。とはいっても、ロード級の悪魔数名にだけ許される秘儀ではある。

 

ロードは、あらゆる姿を試してきたが。現在では、相手の警戒を買わないように、若々しい女性の姿を選ぶようにしている。元々、性別などあってないようなものだ。この生き方を選んだ者は、どうしても異形化と狂気からは逃れられない。だから発達させた技術を使って、子供を創造する。

 

生殖という手段には、もう随分前から頼っていない。

 

しばらくかけて、北上。

 

報告は受けていたが、スピアの領内では、富国強兵策が急ピッチに進んでいる。現在もっともこの大陸における上り調子の勢力。毎年のように小国をおとし、大国との戦も負け知らず。

 

おそらく、人口も、既に大陸一だろう。

 

そういえば。

 

かの偉大なる存在、旅の人も。妙齢の女性の姿で、この世界に希望となる錬金術の種をまいていった。

 

それも、警戒を買わないようにするためだったのかも知れない。

 

領内に入って、彼方此方を見て廻る。

 

流石に列強だけあって、相応に発展している。おそらく支配下に置いた国々から、古き時代の遺産とも言える技術をかき集めたのだろう。他の国と違うのは、城壁を取っ払っている事だ。

 

これは経済規模の発展を優先しているからだろう。

 

軍に自信があるから、街まで近寄らせないという前提で、城壁を取っ払い。発展を優先しているという見方もある。

 

街の中には、石炭で動く鉄道が走っている。

 

これはアーランドも同じだが、スピアの場合は別の街まで鉄道で行くことが可能だ。ただし、領内に森は殆ど見られない。

 

耕地はあるが、いずれも森では無い。

 

見ると、強力な肥料を使って、耕地を維持しているようだ。ただ、流石に山には緑を残している。

 

保水力を奪うことが、川にとって致命的だと、知っているのだろう。

 

だが、それにしても、だ。

 

荒野を放置して、せっかくよみがえった土から搾取するとは。怒りは沸いてこない。ただ、愚かさに呆れてしまう。しかもこのやり方では、いずれ栄養は枯渇する。無理に栄養を与えても、土は維持できないのだ。

 

ざっと畑を見て廻ったが、休作をしている場所も無い。というか、知識そのものが無いのだろう。

 

恐らくは、スピアは大陸を食い尽くす前に、制圧する戦略を採っている。

 

これでは、確かにアーランドの方が、まだマシだったかも知れない。アーランドに伸張されると厄介だと感じていたのだが。これでは、スピアの方が、危険度が高い。読み間違えていた事は、認めなければならないだろう。

 

軍の様子も見る。

 

街とは離れた場所に、幾つかの軍基地がある。大陸随一の規模を誇る常備兵を支えるために、一種の街と言っても良い規模だ。

 

統率は採れているし、装備も優れている。銃火器の中には、滅亡前のものを再現した、強力なものもあるようだ。

 

ただし、それでも現在は、人間の方が強い。

 

人間の兵士達は流石に戦い慣れしているが、アーランド人とは比べものにならない。強化人間とも言えるホムンクルスもいるが、士官などに一部が配備されているだけだ。単純な軍事力は大きいが、兵士の質はアーランドとは比較にならない。

 

この国の中枢も見ていこう。

 

数日掛けて、スピア連邦中心都市に到着。

 

この国では、首都という呼び名は使わない。中心都市と呼ぶ。

 

中心都市の周囲には、流石に緑があるが。これは美観を優先しているものであって、決して自然の重要性を理解しているものではない。実際、緑の土地を増やそうという様子はないようだ。低木の森にでもすれば、ある程度の自然の恵みは手に入るものを。そういった行為さえ、していない。

 

中心都市の人口は、十万と、この時代この世界としては、最大規模。ただし、市民と呼ばれている人間は五千ほど。

 

残りは、全てスピアが制圧した国から連れてきた戦利品だ。

 

つまり奴隷同然の扱いを受けている民である。

 

ただ、他の国々も、これは同様。

 

列強と呼ばれる国は、だいたい何処も奴隷を活用している。

 

結局の所、人間は増えすぎる存在らしい。

 

滅亡前も、資源に対して多すぎる人間の数が、大きな問題となっていた。ただ、奴隷化された人間は、基本的に増えない。スピアは今後も、社会を維持するために、周辺を侵略していく事になるだろう。

 

街を歩きながら、ロードは金貨を出して、市場で食物を買う。

 

手にとって分かったが、これは旧時代の工場で生産したものだ。旧時代に存在したプラントの幾つかは、この時代にも生きている。アーランドにある奴よりも、ずっと大きくて、多様性に富むものだ。

 

ただし、プラントは、動かすのにエネルギーがいる。

 

アーランドは確か地熱を動力に用いているはず。報告だと、此方は燃料が必要の筈なのだが。

 

石炭では、足りないだろう。

 

何を使っているのか。

 

いずれにしても、協力者として派遣していたアルモンの一族が全滅させられたのは痛い。ある程度の情報はあるが、それでも足で稼いでいかないとならないだろう。

 

それに最大の懸念は、スピアが抱える錬金術師達の集団と、それに議会だ。

 

食べ物を口に入れてみる。

 

流石に滅亡前の工場で作っただけの事はあって、うまい。恐らくは人工の肉と野菜なのだろうが、全くそれを感じさせない。

 

この工場で、満足しておけばいいものを。

 

ロードは忌々しさを、思わず吐き捨てていた。

 

 

 

数日間、街をさまよう。

 

気配を消して探っていくと、厳重な警備をしている議会にも、隙があることが分かってきた。

 

忍び込むことは難しくない。

 

ただ、問題は、錬金術師だ。

 

アルモンの話によると、現在スピアには、優秀な錬金術師が最低でも五人。彼らがアトリエを作っており、その発言力は国家規模だという話もある。

 

いちいち別の街にアトリエを作っているというのも考えにくいし、この中心都市にいるとみて良いだろう。

 

ただし、使い魔も放って情報を収集していたのに。

 

どうしても、錬金術師達の居場所は掴めない。

 

まずは議会から探るか。ロードは舌打ちすると、一旦錬金術師達の捜索を切り上げて、議会に直接乗り込んだ。勿論正面から殴り込んだのでは無い。気配を消して、魔術による警戒網の間を縫って、内部へ潜り込んだのだ。

 

議会は、意外に粗末な建物だった。

 

巨大さという点でも、旧時代の建物に及ばない。石造りの三階建てで、議会は一階で行われるようだ。

 

二階三階はいずれもが政務を処理する部屋になっていて、議員の宿舎も外にある。

 

他の列強は、支配者の権威を示すために、大きな建物を作ることが多いのに。これは、とても不思議な構造だ。

 

丁度、議会が行われている所に潜入。

 

議長が、なにやら熱っぽく訴えているところだった。

 

「我が国は、充分に力を蓄えた! そろそろ、他の列強との対決姿勢を見せていくべきであろう」

 

「なるほど、対抗できる国を潰すと言う事であるか」

 

「その通りだ。 列強同士で手を組まれると厄介だ。 かといって、連邦にこれ以上国を加えるのも、皆様方には気分がよくあるまい」

 

笑い声が漏れる。

 

なるほど、利権の分配をする人数をこれ以上増やしたくは無い、という事か。

 

下劣なように思えるが、利権は人間社会を動かしてきた理屈だ。彼らは別に、特別汚い存在では無い。

 

見ていると、幾つか面白い事が分かってきた。

 

議員達はいずれもが、スーツを着込んでいる。そしてずきんで頭を隠している。

 

声は、相応に年老いて見えるのだが。

 

体が反面、異様に若々しいのだ。

 

これは、ひょっとすると。

 

議員が一人、咳き込んだ。

 

「失礼。 調整の時間のようです」

 

「気をつけられよ。 特に意見が無いのなら、議会は進めておく」

 

「うむ……」

 

咳き込んだ議員が、警備員達に連れられて、外に。

 

見ていて何となく、からくりが分かってきた。此奴らは、体をホムンクルスに置き換えている。

 

そのため、体の調整が必要なのだ。

 

天才の手で、大規模なホムンクルスの生産を実現したアーランドと違って、この国ではまだ技術が確立しきっていない。

 

ホムンクルスは高級品で、未熟な部分もある。

 

だから、一部の人間だけが。

 

その技術の恩恵を受けている、と言うわけだ。

 

議員が、議会を出て、街の外れに行く。

 

丸っこい建物で、周囲は非常に厳重な防備で守られていた。ロードでさえ、これは近づけない。

 

悔しいが、中に入るのは不可能だ。

 

議会に戻ると、幾つかの議論がまとまるところだった。これから来年に掛けて、スピアは緊張状態が続いていた列強の隣国、ホランド帝国に攻めこむ。兵力差は一対二でスピアが勝っているが、問題はそこでは無い。

 

スピアには、ロード級の悪魔と対抗できる実力を持つ、アルモンの配下達の成れの果てがいる。

 

戦闘用のホムンクルスも、量産はされていないが、既に実戦投入されているのを確認済みだ。

 

ホランドが破れると、スピアは海に面した領土を得ることになる。ホランドの海軍も接収すると、かなり面倒な事になるとみて良い。

 

戦いが早期に終われば、軍事力も飛躍的に増すことになるだろう。そして、これ以上スピアが強大化すると、もはや大陸に、対抗できる国は無くなる。

 

勿論、ホランドも他国に援軍を頼み、対抗しようとするだろう。一年や二年でホランドが陥落するとは思えないが、事態は決して面白い方向へ動いてはいなかった。

 

ともあれ、此処まで情報を探ることが出来れば、充分だ。

 

ロードはスピアを離れると、一度夜の領域に戻る。

 

ロード級の悪魔達を集めて、今後の対策を協議する必要があるだろう。海王を動かす必要も、生じるかも知れない。

 

最悪の場合は、アーランドと手を組む必要さえあるか。

 

忌々しい話だが、もはや手段は選んでいられない。

 

夜の領域に到着して、元の姿に戻ると。ようやく、ロードは一息つくことが出来た。部下達の情報を吟味して、自分が得たものとあわせ、これからの対応を決めていかなければならない。

 

いずれにしても。

 

今後は、一つの戦略でも誤れば。世界はもう一度の滅亡に向けて、一気に傾きかねなかった。







スピア連邦を裏から動かしている錬金術師集団……ですが。

この集団、正確には五人だけ(この時点では)です。

この集団がとてつもなく危険な集団で、実の所既にスピア連邦という国は……

いずれにしても、悪魔ですらその圧倒的な猛威には、単独では立ち向かえないのです。









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