暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ロロナが直面するのはアストリッドさんの闇です。

ロロナは怠け者でいい加減で凶悪な闇を秘めているながらも、間違いなく天才であるアストリッドさんを尊敬もしています。

だからこそその抱える闇の深さには、嘆くしかないのです。

本作でもロロナは間違いなく善人です。

故に、より悲しいのです。






血塗られた心
序、地下資源確保


現在、宝石は嗜好品としての価値しか無い時代を終えている。ごく一部の人間だけが所有し、ただのステータスシンボルとなっていた時代は、過去となった。

 

強い魔力を込める事が出来る。

 

場合によっては、強力な魔術を、媒介として発動する事が出来る。

 

これらの効能は、言うまでも無く魔術師にとって非常に有用だ。各国は、高品質な宝石を求めて、躍起になっていると言っても良い。

 

勿論、宝石を蓄えているのはアーランドだけでは無い。

 

世界には、こういった魔力を込められる宝石を、高値で取引する傾向が生まれつつあった。

 

年末年始のお祭りを終え。

 

課題を受け取りに行ったロロナは。王宮の受付で、それを説明された。

 

言われるまでも無く、知っている。

 

ロロナの母は、幾つか高価な宝石を持っていた。これらは切り札として、戦場で使うものであるのだと、説明された。

 

普段は魔力を込めておき、いざというときには外付けの魔力供給源として用いる。人間の魔力量には限界がある。だから、外付けで魔力を確保しておくのは、実はとても重要なことなのだと。

 

アーランドは、鉱石はとても良く採れる。

 

これらの鉱石は、いずれもが日常生活で役立っている。武器も、アーランド人にとっては、日常用品なのだ。

 

ただし宝石の産出量は、お世辞にも良いとは言えない。諸外国から輸入する場合、宝石は非常に高価なものとなってしまうのだ。

 

「それで、わたしは、何をすれば」

 

「宝石を造り出してちょうだい」

 

「へ……」

 

受付で、エスティは。笑顔のまま、もう一度繰り返した。

 

同じ事を言われなくても、わかっている。

 

またしても、無理難題を押しつけられたという事は。

 

「造れって、そんな……」

 

頭の血の巡りが悪いロロナだって、わかっている。

 

つまり、国益になるような宝石の作成技術を、確立しろというのだ。

 

現在、アーランドでは、宝石が不足している。

 

幾つかの鉱脈はあるのだけれど。いずれもが、貧弱なのだ。アクアマリンやルビー、オパールに到っては、完全に外に供給を頼むほか無い。金剛石とも言われるダイヤモンドに関しては、よそから仕入れるほか無い。

 

傭兵として各地で稼いでいる戦士達は、奴隷だけでは無く、宝石も買い取ってくる。それら宝石は、アーランドでは上級魔術師に配備されて、戦場や、或いは魔法の道具を作る際に活用される。

 

だが、決定的に、量が足りないのだ。

 

この間、ロロナはジオが金剛石の指輪を付けているのを見たが。あれは、例外中の例外。

 

アーランドにおいて宝石は、実用品なのだ。

 

しかも、魔力が蓄積できない宝石は、ただの光る石扱い。つまり、魔力を蓄えられる宝石が、必要だと言うことなのである。

 

さらに、である。

 

大砲の改良と納品についても、求められている。

 

栄養剤や湧水の杯についても、だ。特に湧水の杯は優先度が高く、あるだけ持ってきて欲しいとまで書かれていた。

 

もう何年かすると、現在の稼働中物件以外に、別の場所でも緑化計画が持ち上がるかも知れない。

 

その時には、栄養剤が大量に要求されるのだろうけれど。今はそれよりも、水が不足している村の救済が先だ。ロロナもそれはわかっているから、暇さえあればホムに材料を調合してもらっている。

 

これは、今回の課題はやばい。

 

今までもまずかったが、非常に危険な臭いがする。

 

今度こそ、危ないかも知れないと、ロロナは思った。

 

「ところで、ロロナちゃん」

 

「はい……?」

 

「年末の武術大会は、惜しかったわね」

 

「え……あ、はい……」

 

思い出したくも無い事に触れられた。

 

今年は、武術大会が年末の祭で行われたのだ。ロロナも今回は参加したのだけれど、三回戦止まりだった。

 

何しろこの武術大会、アーランド中の猛者がこれでもかと言わんばかりに出場する。勿論ロロナも今ではそれなりに力はついてきているけれど、近接系の戦士が相手だと、分が悪い。

 

三回戦に出てきたのは、時々王宮で見かける騎士だった。あまり有名な騎士ではないようだったけれど、こてんぱんに伸されてしまった。

 

クーデリアは五回戦まで上がったらしい。

 

何でも、現役の騎士を二人も沈めての五回戦出場と言う事で、喚声が上がっていたとか。ただ、過去には十歳で決勝まで残った人もいるらしいので、別に驚くような事では無いのだとか。

 

結局優勝はステルク。

 

アナウンサーをしていたエスティが、白々しく商品を渡して、大会は終わった。エスティが出ていたら、多分優勝はステルクかエスティだろうと言われていたので、周囲が冷めたのも納得できる。

 

師匠はというと、人が多いところは嫌だとか言って、大会には参加しなかった。

 

「近接戦闘が主体のスタイルでは無いのに、三回戦まで残れれば立派よ。 この国の戦士達の強さは、よく知っているでしょう?」

 

「でも、恥ずかしかったです」

 

「ま、そう言わずにまた出て。 武装とかを吟味すれば、きっともっと上位ランクまで行けるわよ」

 

肩を叩かれて、苦笑いしながら、ロロナは王宮を出た。

 

そういえば。

 

王宮で働いている小さな女の子が、また増えている。前から考えていたのだけれど、あの子達は、ひょっとして。

 

考えながら、アトリエに。

 

師匠が大あくびをしながら、玄関に出てきた。今まで眠っていたのか。

 

何だろう。

 

心なしか、何かが腐ったような臭いがした。

 

「帰ったか。 課題は?」

 

「宝石を作れって言われました。 それも、国益になるような、作成方法も確立しろって」

 

「ほう?」

 

師匠は楽しそうに目を細めた。

 

ああ。やっぱりこうなるか。

 

師匠は知っているのだ。これからロロナが、死ぬほど苦労することを。泣きながら、錬金術に取り組まなければならないことを。

 

だから、早速楽しんでいる。

 

この人はとても邪悪で、ロロナが苦しむのを本当に喜ぶ。だからこそ、こんな笑顔を浮かべることが出来る。

 

そんな事はわかっているけれど。

 

「なあ、ロロナ。 一つ聞きたい」

 

「何でしょうか」

 

「お前にとって、錬金術とは何だ」

 

「力です」

 

即答できた。どうしてかはわからないけれど。この答えは、すんなり心の奥底から、出てきた。

 

そして、即答できたからこそ、わかってもいる。

 

「水を造り出す力で、渇きに苦しむ人達を救えます。 栄養を造り出す力で、大地をよみがえらせることが出来ます。 食べ物を保存する力で、戦場に出る戦士達が、飢えなくなります。 とても遠くを攻撃できる力で、此方を攻撃することを、躊躇わせることが出来ます」

 

「うむ……その通りだ。 ならばロロナ。 今一つ聞きたい」

 

どうしてだろう。

 

師匠の目の奥に、普段からは感じ取れないほどの、強い闇がある。

 

どうしたのだろう。

 

何か、師匠は。今、ロロナに、求めているのだろうか。決まった答えを。

 

「お前に、人にはわかりにくいものしか作れない才能だけが備わっていたとする。 お前自身は優しいのに、人にわかりやすいものが作れなかった。 だから、差別された。 それをお前は、許せるか」

 

「師匠……?」

 

「どうだ。 お前が差別されたとき、許せるか。 無能者と罵られ、死病の床に倒れても放置され。 ただ一人しか、側につく者はおらず。 それでもお前は、恨まずにいられるか」

 

何となく、わかる。

 

これは師匠にとって、誰か特定の人の話題だ。そしてその誰かは、きっと今、師匠が言ったとおりの扱いを受けたのだ。

 

「わたしは……」

 

「どうだ」

 

「許せるか許せないかはわからないですけれど。 どうにかしようと、努力してみます」

 

それでどうにもならなかったら。

 

諦めて、別の路を探します。

 

そう言うと、師匠は大きくため息をついた。ロロナが言った言葉は、師匠が望んでいた言葉では、無かったのかも知れない。

 

「そろそろ、お前には教えておいてやろう」

 

「はい。 何を、ですか」

 

「お前もよく見るようになった、幼子の戦士達。 あれは私が作り上げた、高性能戦闘用ホムンクルスだ」

 

ああ、やはりそうだったのか。

 

何処かホムに似ていると思った。

 

そしてホムに似ているなら。そんなものを作れるのは、きっと師匠しかいない。師匠がいつも部屋に閉じこもっていたのは、きっと面倒くさがりだと言うだけでは無くて。きっと、ホムンクルスを、たくさん作っていた、という事なのだろう。

 

「そしてその技術は、私だけでは作れなかった。 不遇だった、私の師匠。 お前も良く聞いているだろう、二代前の錬金術師が、作り上げたものなのだ」

 

息を呑む。

 

確かに、それは。

 

全ての線が一致する。ひょっとして、師匠は。だから、この世界の、あらゆる人々を、憎んでいるのか。

 

それに、ロロナは見抜いていた。

 

ホムンクルス達には、何処か共通する点がある。何となく、顔が似ているのだ。あれは、きっと。

 

涙が零れそうになる。

 

師匠はきっと、まだ闇の中を、さまよい続けている。

 

「話はそれだけだ。 私は寝る」

 

ロロナを拒絶するように、師匠は部屋に閉じこもってしまった。

 

手を伸ばそうにも、届かない。

 

ロロナも、わからなくて、困っていることはたくさんある。最近思い出しかけている、オルトガ遺跡の出来事などは、特にそうだ。

 

だが、師匠が抱えている闇は、もっと深いのでは無いのか。

 

どうすればいい。何が出来る。

 

ロロナは涙を拭った。やはり、まだまだ、自分は未熟。出来る事は、こんなにも少ないのだ。

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