暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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アトリエシリーズでは、初代のコメートからして、宝石が結構重要なアイテムです。

近年のシリーズでも強力な装飾品の素材だったり、優秀な媒体だったりしますね。

本作でもそれは同じです。







1、宝石の研究

アトリエを訪れたクーデリアが、久しぶりに機嫌がよさそうにしていた。なんと、兄姉達を全員ぶちのめして、相続権を奪い取ることに成功したのだという。

 

しかも、クーデリアは、満面の笑顔で言う。

 

「フォイエルバッハなんて公爵家は、あたしの代でぶっ潰してやるわ」

 

「貴族やめちゃうの?」

 

「当然よ」

 

アーランドでの貴族なんて、形骸化したものに過ぎないという。

 

社会的地位が欲しい見栄っ張りが、お金をわざわざ出して買う物なのだ。そんなものに誇りもないし、価値だって。

 

クーデリアが当主になった後、最初にするのは、公爵の地位の撤廃だと言う。

 

その後は、健全な事業にシフトして、金を堅実に稼ぐのだとか。ロロナもその事業に手を貸して欲しいと言われたので、頷く。

 

「わたしの錬金術が役に立つなら」

 

「頼もしいわ。 幾つか量産して欲しい道具もあるのよね。 特に湧水の杯。 あれ、輸出すれば、もの凄い利益をたたき出せるわよ」

 

クーデリアは、少し明るくなったか。

 

正直な話、彼女の兄姉達には、良い印象を抱いたことが一度だって無い。ロロナが遊びに行った時なんて、それこそ酷い扱いをされたものだ。クーデリアはあの時、後で珍しく涙を見せた。

 

ごめんね。あたしのこと、嫌いにならないで。

 

そう言って泣いていたクーデリアのことを思うと、胸が痛む。だが、あれは一体、いつのことだっただろう。

 

とにかく、一年は絶対に安泰だ。

 

その間にクーデリアは、この国のトップクラスの戦士になるまで、腕を磨くと言う。ロロナも負けてはいられない。

 

そんな地位になっても、人間は転落するとなれば一瞬。

 

クーデリアを守れるように。確固たる地位を、錬金術を通じて、築いておかなければならないだろう。

 

久々ににこにこが絶えないクーデリアに、今回の課題を見せる。

 

宝石か。

 

呟くと、クーデリアはサンプルを持ってくると言って、一度アトリエを出て行った。なるほど、正式に跡取りとなったのなら、フォイエルバッハの所蔵品を、ある程度動かすことが出来るのか。

 

すぐに戻ってきたクーデリアが、何種類かの宝石を見せてくれる。

 

ただ、どれもが商品だから、あげるわけにはいかないという。それは当然の話だ。くれると言っても、ロロナの方が困る。

 

宝石について、説明を一つずつ受けていく。

 

「これはルビー。 火焔系の魔力と相性が良いわ。 此方はサファイア。 これやアクアマリンは、水の魔力を強く蓄えるわね。 こっちはオパールで、土の魔力と相性が良いと言われているわ」

 

「うん、なるほど」

 

「アーランドでは、どれも殆ど採れないの。 しかも魔術にはいくらあっても足りないくらいだから、よそで買う場合は、だいたい足下を見られることが多いわね」

 

宝石の魔力は、確か消耗しても再充填できるはず。

 

だが、それを聞いても、クーデリアは首を横に振る。

 

絶対量が、根本的に足りないのだという。

 

そもそもアーランドは、戦士階級の半分以上が、魔術を何かしらの形で使う。戦士と言っても、専門職ほどでは無いにしても、簡単な魔術は使えるのが普通なのだ。クーデリアにしてからがそうなのである。

 

一流どころになると、更に魔術を使う比率は高くなる。

 

ステルクなどはロロナの前でも、ばんばん稲妻の魔術を使っている。あの破壊力は、正直ロロナでもまだ叶わないと思わされる。一撃はロロナの大威力砲撃の方が重いけれど、ステルクの雷は連射が出来る上に間を置かない。その上、詠唱を殆どしないで展開できるのだから、殆どサギだ。

 

いろいろな宝石の実物を見せてもらった後、いつものように、二人で資料を調べていく。

 

そうすると、色々と厳しいことが確認できる。

 

まずアーランドでは、価値のある宝石は採れない。

 

アーランドにおいて、魔力を込められない宝石などと言うものは、ただの光る石に過ぎないからだ。二束三文の値段しかつかない。しかも、その二束三文でも、殆ど産出しない。以上の知識は既存のものだ。これを覆すような情報は、今のところ、何処の資料でも見られない。

 

幾つか貧弱な鉱脈はあると言うけれど。

 

掘ってしまえば、すぐ尽きる。

 

要するに今回ロロナが求められているのは、地下資源の開発だ。今ある何かしらの地下資源を利用して、宝石と呼べるものを作る。それが、ロロナが求められていることなのである。

 

いろいろな資料を見ていくけれど。

 

既存の宝石については、ほぼ絶望という結論しか出てこない。

 

というよりも、宝石の研磨技術は確立されていて、錬金術が入る余地そのものがない。

 

「それこそ、泥か何かから宝石作る技術でも無いと、駄目だね」

 

ぼやくと、ロロナは一旦ソファに横になった。

 

クーデリアは呆れたように、ロロナに何か言いかけたけれど。黙ったのは、ホムが戻ってきたからだ。

 

ホムは、子猫を抱えていた。

 

「マスター。 こなーが毛玉を吐きました。 病気でしょうか」

 

「大丈夫、子猫は毛玉を吐くものだから」

 

「? 何、そのホムンクルス、子猫飼ってるの?」

 

「少し前の雨の日に拾ってきたの。 師匠に、アトリエの中では絶対に飼うなって言われてて、外で面倒見てるんだよ」

 

可愛い人なつっこい猫だけれど。

 

ロロナは見た。

 

師匠が、もの凄い猫嫌いだという事実を。

 

それに、師匠が言うとおり、アトリエで動物を飼うことは出来ない。毛は入るし、悪戯されて硝子機具をひっくり返されたりしたら大変だ。機具の中に毒性の強い薬品でも入っていたら、とんでも無い事になる。

 

結局散々揉めた後に、ロロナが外で飼うことを提案。それで決着した。

 

ホムがあれほど捨てることに対して強硬に反対したのも、ロロナは驚いたのだけれど。それ以上に、有無を言わない師匠の行動が、ロロナには相変わらず悲しかった。

 

現時点で食費は困っていないから、ミルク代などを気にする必要は無い。ホムは猫をつれてすぐに外に出た。大事そうに抱きかかえているのを見て、クーデリアが鼻を鳴らす。

 

「冷血だと思っていたのだけれどね」

 

「くーちゃん、それは酷いよ」

 

「そう。 それより、どうするの。 泥から宝石を造り出す宛てなんて、あるの?」

 

「ううん、それは何とも」

 

ロロナとしても、苦笑いするしか無い。

 

とにかく、今回も苦労するのは、この時点で見えきっている。だが、今までも、散々苦労はしてきた。

 

ロロナだって、それで色々と、学んだのだ。

 

まず、こういうときは気分転換。パメラのお店に出てみると、色々不思議な道具が売り出されていた。

 

特にネクタルが、かなり増えている。

 

硝子瓶になみなみ入れられたネクタルには、原液は飲まないようにする事と、注意書きが書かれていた。

 

ロロナが目を引かれたのは、珍しい薬草の数々だ。中々採取できない薬草が、無造作に並べられている。

 

これは嬉しい。

 

採取地でも、見つかるとは限らない品ばかりだからだ。

 

パメラはこのお店の中では肉体があるので、普通にカウンターに立っている。ロロナが幾つか品物を生産すると、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「時々買って行ってくれて、助かるわあ」

 

「パメラさんは、お金を貯めて、欲しいものがあるんですか?」

 

「今の時点ではないけれどぉ。 せっかくこの世に舞い戻ったのだし、それなら楽しみたいじゃない」

 

わかるような、わからないような言葉。

 

他のお客様の対応に行ってしまったので、ロロナは店を出る。買い取った品をコンテナに入れると、すぐに王宮に。

 

そちらの図書館でも、色々とみておきたいのだ。

 

予定通りの資料調査が終わるまで、丁度丸一日。とはいっても、殆ど下調べだけだ。明日からは、その下調べした内容を発展検証して、具体的な方法や、有効そうな手段を探していくことになる。

 

いつものことだが、ここからが難事だ。

 

クーデリアは泊まって行ってくれるという。

 

大変助かる。

 

それに、何しろクーデリアは嬉しそうなのだ。あのろくでもない家のくびきから解放されて、きっと心が緩んでいるのだろう。勿論、油断するのは良くない事だ。だから、クーデリアが喜んで楽しんでいる間は、ロロナが背中を守る。

 

夜中になってしまったので、一度作業を切り上げる。

 

クーデリアは雷鳴夫妻の所に顔を出すと言う事なので、気をつけるように言って送り出した後。ホムに差し入れとして、クッキーを送らせる。丁度、クーデリアに追いつく時間で。ホムは外で採集できる、充分な身体能力を持っている。ベテラン戦士並みにまで成長したクーデリアと一緒なら、生半可な相手に遅れは取らないだろう。

 

勿論、これはロロナなりの、安全管理だ。

 

ホムを送り出した後、もう少し調査を進めておく。今の時点では、有望なものはない。歴代の錬金術師は、あまり宝石について研究しなかったらしく、資料そのものも、決して多くは無かった。

 

かろうじて見つかったのは、コメートと呼ばれる宝石の研究だが。

 

これは残念ながら、既に作成技術が民間にまで降りていて、今更手を入れても仕方が無い。その上原石が必要で、これ自体がかなりの稀少品だ。

 

実は先ほど、パメラの店でコメートが売られているのも目撃している。

 

つまり、わざわざロロナが作成して納品しても、だからなんだと言われるような代物なのである。高値はつくだろうけれど。

 

しかし、画期的な宝石など、どうやって作れば良いのか、見当もつかない。

 

それこそ泥から宝石でも作る技術か何かを、見つけ出す必要がある。だがそんなものがあれば、おそらく歴代錬金術師の誰かが、実用化に移しているはずだ。そんな気配は、見つからないのである。

 

ロロナは、腕組みして唸る。

 

完全なオリジナルの研究を、求められているとみるべきなのだろうか。

 

しかしながら、ロロナの頭はさほど良くない。

 

錬金術の研究は、本来何年、何十年と掛けて行うものだ。たった三ヶ月で、無から有を創造するのは、それこそ奇跡の技と言うほか無い。

 

元に今までの課題も、全て過去の錬金術師達の成果を、自分なりにまとめた事で、突破してきたのだ。

 

しばらくすると、クーデリアとホムが帰ってきた。

 

雷鳴夫婦の所で、戦闘技術を見てもらってきたという。今日はかなり本格的に鍛えてもらったという事で、クーデリアは汗を掻いていた。ホムまで鍛えてもらったという。クーデリアに話を聞いてみると、微妙な顔をされた。

 

「あいつ、今のあたしより強いわよ」

 

「えっ!? 本当!」

 

「嘘なんて言ってどうするの。 雷鳴が驚いていたもの」

 

そうだとすると、ホムの実力は、本当に相当高いと言うことになる。

 

或いは、手が空いているときには、採集を任せるべきかも知れない。そろそろ、そちらの方でも、手が足りないことがたまにあるからだ。

 

クーデリアは、今回怒られたと言われた。

 

「驕っているって、雷鳴にね」

 

「そっかあ」

 

「確かに、クーデターが成功して、舞い上がっていたかも知れないわ。 良い機会だから、気を引き締め直そうと思うの。 あんたもあたしが驕ってると思ったら、遠慮無く言いなさい」

 

「うん。 大丈夫だよ」

 

雷鳴は、やっぱり信頼出来る人らしい。

 

ロロナが読んでいたとおり、クーデリアは少し舞い上がっていた。今、危険な状態だと、雷鳴もすぐに理解してくれたのだろう。しっかり、怒ってあげてくれた。ならば、ロロナは、もう言う事も無い。

 

その晩は、二人で色々と調べて。それが終わった後、同じベッドで休んだ。

 

研究は、決して進展していない。

 

しかし、どうしてだろう。

 

ロロナは、安心できるのを、確かに実感していた。

 

 

 

翌日から、資料を精査していく。

 

クーデリアには、見落としが無いか、調べてもらう。ロロナは、宝石の作成技術を、順番に見て行った。

 

はっきりしていくのは。どの宝石も、原石を磨いて作っている、という事だ。

 

宝石の王とも言える、金剛石からしてそうなのである。

 

コメートは違う。

 

一種の金属のように、溶かして成形する。これだけは他と違っているけれど。ただし、原石が必要なことに、代わりは無い。

 

他には、どのような宝石があるか。

 

変わり種としては、貝が造り出すパール。ただこれは、魔力をあまりため込まない上に、宝石としての寿命がある。

 

鉱石寿命と呼ばれるもので、百年程度。

 

あまり、アーランドでは価値を認められない宝石だ。

 

樹液が固まった琥珀と呼ばれるものもある。

 

これもあまり魔力をため込まないので、アーランドでは安く買いたたかれる。

 

他には、どんな宝石があるだろう。

 

図鑑に載っていたもので、興味深いものがある。魔結晶と言う。これは悪魔が造り出すもので、良く仕組みはわからない。

 

体内にあるものだという事なのだけれど。或いは、悪魔にとっての内臓なのかも知れない。具体的な正体は、現在でもよく分かっていない。体内の老廃物が固まったものというような説まである様子だ。

 

しかも、あるかどうかは確実でも無い。

 

ただこの魔結晶、相当に魔力を蓄えるとかで、一部の魔術師が切り札として持っているという。鉱石寿命も非常に長く、この資料によると、三百年以上前の魔結晶が、現役で動いているのだとか。

 

生物が造り出す宝石は、つまり一長一短と言う事だ。

 

其処まで考えて、気付く。

 

悪魔を殺さなければ魔結晶は手に入らない。それなのに、さらっと流そうとしていた。ロロナは頭を振る。

 

そんな事ではいけない。

 

ロロナが接してきた悪魔は、必ずしも邪悪な存在では無かった。そんな素材を得るための、狩りの獲物のように考えるなんて。どうかしている。

 

気分を入れ替えると、資料の精査に戻る。

 

ふと、硝子について、書いてある資料が目に入った。

 

硝子は宝石では無いが、地下資源としては比較的多めに存在している。加工はさほど難しくなく、今のロロナでも出来るだろう。

 

他に、どんな地下資源があるだろう。

 

クーデリアと交代しながら、資料を精査していく。時々、クーデリアが、色々と提案してくるけれど。

 

どうも、どれも乗り気にはなれなかった。

 

「休憩を入れましょう」

 

「うん。 ホムちゃんも、何か食べる?」

 

「お構いなく」

 

手を動かしながら、ホムはそう返してくる。

 

作っておいた甘いパイを口にする。クリームもたっぷり入れた、とても甘いフルーツパイだ。

 

こういう頭脳労働用に、準備しておいた。

 

口に入れると、頭の巡りがぐんと良くなる気がする。

 

少し時間をおいてから、再び資料の精査に戻る。

 

目に入ったのは、水晶。

 

これはそこそこに地下資源がある。魔力の媒体としても優秀だ。ただし、一つ決定的な問題がある。

 

加工が難しいのだ。

 

硬いのでは無くて、水晶は多くの場合、結晶になって存在している。そしてその結晶が、安定しているのである。

 

つまり、壊すと、だいたいの場合魔力の媒体としての価値が落ちるのだ。

 

だから、水晶を利用した魔法の道具は、凄く巨大になる。その分破壊力は大きくなるけれど。

 

どちらにしても、ロロナに、既存の水晶加工技術、採掘技術に介在する余地は無い。これはむしろ魔術師の仕事だし、彼らは昔から、あの手この手で工夫を凝らしてきたのだ。今更調べて見て、何か画期的な発見があるとは思えない。

 

ただ、水晶の欠点を解消できるとなると、どうだろう。

 

少し、方向性が見えてきた。

 

水晶を作る事は、出来ないだろうか。

 

「ねえくーちゃん、水晶を作れたら、どう思う?」

 

「それは凄いことだと思うけれど、出来るの?」

 

「うーん、やってみないと何とも……」

 

資料を漁ってみる。

 

こればかりは、どうなのだろう。もしもその辺りの材料から水晶を作る事が出来れば、かなり凄いことだとは、ロロナも思うけれど。成功していたら、錬金術師は歴史に名を残しているはずだ。

 

何日も掛けて、少しずつ調べていく。

 

クーデリアも、リオネラも手伝ってくれる。時々、ステルクにも意見を聞いた。流石にステルクは、魔術にも詳しかった。

 

魔術師にも、である。

 

何人か紹介された魔術師の所に出向いて、水晶について聞く。どんな情報でもよい。全てをメモして、頭に入れてから、礼をしてその場を離れる。

 

ロロナの母の所にも出向いた。

 

家に珍しくいた母は、水晶のことを聞くと、目を細める。

 

「今度は、魔術師の領域を、侵そうというの?」

 

「違うよおかーさん。 水晶を、作り出せないかと思って、今調べてるの」

 

「水晶を、作り出す……」

 

やはり、あまり気分は良くないようだ。

 

母は職人意識が強く、魔術師としての力量も高い。だからこそに、錬金術が、魔術師の分野にしゃしゃり出てくることを好ましく感じないのだろう。

 

だが、ロロナは説明していく。

 

「水晶は結構産出量がある宝石だけれど、加工の欠点があるでしょ? だから、それをどうにかしたいと思ってるの。 それなら、まず水晶を作って見るのが一番かなって」

 

「錬金術は、そのような事まで出来るのね」

 

「うん……怖い力だと、思う」

 

「それがわかっているのなら良いわ」

 

いろいろな事を教わって、家を後に。

 

このままだと、いずれ母も商売敵になるかも知れない。それはとても怖い未来予想図だ。出来れば避けたい。

 

アトリエに戻って、集めた情報と資料を整理。

 

クーデリアも、戻ってきた。水晶について書かれた本などを、まとめて持ってきてくれたのだ。

 

いずれも、図書館などで借りた資料である。

 

勿論王宮の図書館でも本をこれから借りて来るつもりだけれど。街にある図書館にも、参考になる本が、あるかも知れない。

 

しばらくは、本を読みながらの、地味な作業が続く。

 

何冊目の本を読んでいるときだろうか。

 

不意に、クーデリアが言う。

 

「もう三年目に入ったけれど。 もしも課題が駄目だったら、どうするの?」

 

「その場合は仕方が無いから、師匠と一緒に街を出るよ」

 

アトリエを引き払うとして、国外追放となったら。その場合は、生きていける自信は、今ならある。

 

辺境のどこの国でもいい。

 

適当にアトリエを作って、其処で一から始めていく。

 

たとえば湧水の杯。耐久糧食。今なら、地元の人達を喜ばせる道具を、幾つも作れる。散々苦労したから、レシピは頭の中に入っている。

 

それに、この街を出たって、永久にクーデリアに会えなくなる訳でも無い。必ず、いずれ何かしらの形では戻ってくる。

 

それだけの国家貢献はした自信もある。師匠は、もう帰ってこられないかも知れないけれど。

 

いや、それはどうか。

 

ホムンクルスの話を聞いた後だと、それもわからなくなってきた。

 

ただ、表に出ていないだけ。師匠は、裏でずっと、この国のために尽くしてきたのでは無いのか。

 

「そう。 たくましくなったわね、あんたも」

 

「くーちゃんだって、あの嫌なお兄さんやお姉さん達、みんなやっつけたんでしょ?」

 

「ええ。 次はあの糞親父も、権力の座から叩き落として、公爵家そのものを潰してやるわ」

 

「過激だね。 でも、くーちゃんの夢がそれなら、止めないよ」

 

少し、面白い記述を見つけた。

 

ひょっとすると、上手く行くかも知れない。クーデリアに見せて、資料の精査を、更に進めていく。

 

意外に、糸口の発見が早い。

 

これはひょっとすると、今回は、思ったよりも上手く行くかも知れない。

 

調査の方向性が決まると、一気に進展速度が上がる。クーデリアは、資料を精査して、ロロナの前に持ってくる。

 

そしてロロナは、役立ちそうな情報をまとめて、レシピを構成していく。

 

少しずつこの作業も。以前より早くなってきていた。

 

「材料の目星は立ちそう?」

 

「そうだね。 とりあえず、一応手元にあるものだけでも、試作品は作れそうだよ。 ただ、幾つか品質が高いのが欲しいけれど」

 

「具体的にはどこに取りに行くの?」

 

「ええとね。 シュテル高地と、それに黒き大樹の森、かな」

 

あんな危険地帯にと、クーデリアが呟く。

 

以前シュテル高地は、クーデリア抜きで行ったことがあるが、確かに彼処は恐ろしいほどに危険な場所だ。ステルクがいなければ、今でも生還できる気がしない。

 

ただ、危険地帯だけに、有用な鉱石もゴロゴロしている。

 

ロロナが見つけに行きたいのも、それだ。

 

鉱脈があるのではない。

 

強い魔力を蓄えた、純度の高い材料が欲しいのだ。

 

それに、黒き大樹の森には、植物に関して非常に使えそうな材料があるのだ。これに関しては、資料を精査していてたまたま見つけた。ただし、此方も採取は命がけになるだろう。

 

ただ、先に行くとしたら、黒き大樹の森だ。

 

というのも、今シュテル高地では、スニー・シュツルムが暴れ回っている。出来れば此方は後回しにして、状況の変化を見ておきたいのである。

 

それと、もう一カ所。

 

行っておきたいところがある。

 

水に潜るための道具を、少し前に見つけて、レシピを起こした。

 

これを使って、ネーベル湖畔の底を調べたいのだ。今、必要なものがある可能性が高い。

 

ただ、水上でさえ危険なネーベル湖畔だ。直接潜るのがどれだけ危ないかは、ロロナもよく分かっていた。

 

精査を続けて、十日。

 

とりあえず、どうにか調査は一段落した。

 

肩を叩きながら、一度気晴らしにと外に出る。クーデリアも調査が終わったところで、帰宅してもらった。

 

此処からだ。

 

今回も、先人の知恵を生かして、まとめていく作業になりそうだ。







貴重品を手に入れるには色々な準備が必要です。

ロロナは今回も苦労しながら、難題に挑んでいくことになります。












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