暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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アトリエシリーズでは高確率で色々な立場の親友キャラが登場しますが、それはそれとして親友との喧嘩イベントがあります。

ただ必ずしもあるわけではありません。初期のシリーズではありませんでしたし、近年でもライザはクラウディアとずっと懇ろでしたね。

原作ロロナのアトリエではくーちゃんとロロナの喧嘩イベントがあります。

本作でもそれを踏襲した内容です。ずっと血なまぐさいけれど。






折れる比翼
序、思い詰めた友


水晶の作成は相変わらず苦戦の連続だったが。生成されるものは、少しずつマシになってきていた。

 

というのも、ロロナが思いついた試みが、上手く行き始めていたからである。

 

円筒状の耐熱容器に、主に砂を主成分とした、水晶の元となる原石を入れる。此処に、最初は中和剤だけを入れていたのだが。

 

圧力を浸透させるために、工夫を凝らしたのだ。

 

足りなかったのは、熱では無く圧力だった。

 

ロロナはそう結論していた。

 

というのも、水晶が見つかるのは、洞窟か、もしくはかっては洞窟だった場所だというのである。

 

つまり膨大な土に押し潰され、地熱でゆっくり変化していった成れの果てが水晶では無いのか。そう考えたのだ。

 

後は、圧力を擬似的に発生させる技術を、幾つか錬金術師達の研究から引っ張り出すだけで良かった。

 

調合した薬剤の質も、少しずつ上がって来ている。

 

このために、シュテル高地まで質が高い素材を取りに行ったのだから当然だ。ステルクはいい顔をしなかったので、入り口だけですぐ引き返してきたが。後は黒き大樹の森や、ネーベル湖畔にも様子を見に行きたい。

 

炉から、容器を引っ張り出す。

 

どうやら検証の結果、これだという温度は特定できた。後は、どれだけ圧力を掛けるか、なのだが。

 

まだ、不格好な、炭の塊みたいなのが出てくる。

 

だが、冷やしてみると。

 

側にいるリオネラが、力強く頷いた。

 

「確実に、強い魔力を吸うようになってるよ」

 

「よし、あと一息だね」

 

非常に献身的にリオネラが手伝ってくれて、ロロナとしては嬉しい。心の闇をはき出した後は、リオネラは随分明るくもなった。

 

外でも、リオネラの事を、聞かれる事がある。

 

アトリエに出入りしているあの可愛い子は誰だ、と。今までも出入りしていたと応えると、だいたい聞いてくるのは顔見知りのおじさま達だと決まっているのだけれど。みんな、一様に驚くのだった。

 

それだけ印象が変わったという事だ。

 

勿論、リオネラはこれから一生掛けて、血塗られた運命と闘っていかなければならない。アーランドに保護された以上、その能力が減退するまで戦わなければならないから、それだけ労働災害に遭う確率だって高くなる。引退した後だって、余生をゆっくり過ごすとはいかないだろう。

 

若手の魔術師達に、己の技を伝えていかなければならない。

 

それがアーランド戦士の義務。

 

リオネラが生きて行くには、そうなるほか無いのだから。否応に、生き方も決まってきてしまう。

 

咳払いしたクーデリア。

 

彼女は、どうしたのだろう。

 

リオネラが明るくなるのと反比例したように、少し前から笑顔が硬くなっている。何か思い詰めている様子が、痛々しい。

 

「データをメモするから、言って」

 

「あ、はい。 魔力吸収率は、だいたい9.7です。 蓄積率は、11……くらい」

 

「そう。 どちらも最初の十倍前後ね」

 

これは、最初に魔力を吸うようになった結晶に比べての数値を、メモしているのだ。ロロナもメモを見る。

 

圧力を上げていくと、順当に魔力吸収率、蓄積率が上がっている。

 

圧力を高めるための薬剤の質を、更に上げていけば。或いは、見かけは大変に不格好でも、やがて実用性が高い水晶もどきが出来る可能性が高い。

 

ただし、この薬剤が問題だ。

 

幾つかの薬剤を利用して、圧力をダイレクトに水晶のもとに伝えるようにしているのだけれど。どうしても、圧力を高めるためには、純度が高い天然の素材が必要になってくる。出来れば、ネーベル湖畔の湖底を調べたいのだけれど。行くとしたら、今は黒き大樹の森が限界か。

 

しかも、彼処も充分すぎるくらい危険な場所だと聞いている。

 

クーデリアは少し前から様子がおかしい。リオネラは逆に元気いっぱいだけれど、不安要素は決して小さくなかった。

 

「天然の水晶に比べると、魔力はどれくらい吸ってる?」

 

「吸収率は五分の一くらい。 蓄積率は、石の大きさにもよるけど……この結晶だったら、やっぱり五分の一くらい、かな」

 

「つまり、まだ話にもならないんだね」

 

既に、一ヶ月近くが経っている。

 

参考のためにもらった資料は、とても役に立っているけれど。このままだと、上手く行かないのは確実だ。

 

気分転換してくると言って、クーデリアがアトリエを出た。

 

外でこなーの世話をしていたホムが、入れ替わりに戻ってくる。おそらくクーデリアは、雷鳴の所に行って、鍛えてもらうはずだ。雷鳴の所での修行を逃げ場所にしているというよりも、迷いを払いたいのだろう。

 

それにしても、一体何を思い詰めているのか。

 

ロロナに話してくれないのが、歯がゆい。

 

今までは、どんなことだって、話してくれたのに。

 

一旦リオネラも帰ると言うことで、今日の研究を此処までで切り上げる。まだまだ改善の余地はある。

 

今ある材料を確認して、更に強力な圧力伝導剤を作る準備。

 

圧力を伝導する仕組みは、一つは中和剤からの熱伝導。これを圧力へと切り替えている。もう一つは、蒸気そのものの密度。蒸発したときに、釜の中の圧力を、ぐんと上げるような仕組みになっているのだ。

 

ただの液体でも、これだけの機能を秘めている。

 

研究をしていた錬金術師は、開発まで10年を掛けている。それだけ、画期的な発明だったのだけれど。

 

残念ながら、民間には一切浸透していない。

 

無念、なのだろうか。

 

少し前に、師匠に言われたことを思い出す。アストリッド師匠の先代、ロロナから見れば先々代に当たる錬金術師が、どのような研究をしていたか。そしてロロナも、所々で言われるのだ。

 

先々代に比べて、お前は働き者だと。

 

顔を叩いて、集中。

 

何故、この世の中は、こうも上手く行かないのだろう。単純な力の理論が支配している、このアーランドでさえそうだ。

 

よその国は、もっと人間関係が、ずっと複雑だと聞いている。それでは、もはや魑魅魍魎蠢く魔窟では無いのだろうか。

 

ソファに横になって、しばらく休む。

 

師匠が部屋から出てきた。ロロナが作っているものを見て、何だこれはと聞かれたので、応えると。

 

圧力伝導剤を見て、アドバイスをしてくれた。

 

「素材の質をもう少し上げた方が良いだろうな」

 

「はい。 できればネーベル湖畔の湖底をさらいたいんですけど、無理そうだから、少ししたら黒き大樹の森に行こうと思っています」

 

「よりによって彼処か。 彼処はかなりの危険地帯だ。 最低でもステルクには同行してもらえ」

 

師匠がこんなことを言うのは珍しい。

 

ただ、ロロナも危険な場所だというのは聞いているし、備えを怠るつもりは無い。ただ、方法さえ確立できれば、誰でも水晶を生産できるようにならなければ、意味が無い事もわかっている。

 

品質が低い圧力伝導剤を、高品質にする技も、何かしらの方法で実現しなければならないだろう。

 

ホムが作ってきた中間薬剤を混ぜ合わせて、完成させる。

 

今までに比べて、ぐっと品質が上がった筈だ。

 

経験上、この手の薬剤は、非常に微細な品質の変化で、完成品に大きな影響をもたらす。これにあわせて中和剤をしっかり作り込めば、或いは。極限まで品質を切り上げて、レアリティが低い素材でも、水晶を作り出せるかも知れない。

 

とりあえず圧力伝導剤は出来たので、今日は休むことにする。

 

既に外は真っ暗だ。

 

明日クーデリアが来てから作業をするとして。上手く行くかは、正直不安なところだ。クーデリアの不調は、ロロナの心にも影をおとしている。

 

誰よりも大事な友達が苦しんでいるのだ。

 

力になりたいのである。

 

ベットに入っても、しばらく悶々としていた。

 

オルトガ遺跡で起きた事件の事も、何だか嫌な予感ばかり想起させる。本当に一体、何がどうしてしまったのだろう。

 

 

 

翌朝。

 

懸念は、ついに現実のものとなった。

 

クーデリアが、何を思ったか、持ってきたものを見て。唐突に、それを思いだしてしまったのである。

 

それは、籠手。

 

「近接戦闘での防御手段として使えって、雷鳴にもらったのよ」

 

クーデリアはそう言っていた。

 

事実、そうなのだろう。

 

だが、色合い。形状。いずれもが、記憶を呼び覚ますには、充分な代物だった。そして、これを持ち歩いて、平然としているという事は。

 

「くーちゃん。 知っていた、んだね。 ずっと昔から」

 

「何のことよ」

 

「わたしとくーちゃんが! 一度、オルトガラクセンで、死んだって事っ!」

 

口をつぐむクーデリア。

 

視線をそらす。

 

ロロナは、絶望が、心の中で、広がっていくのを感じていた。

 

どうして話してくれなかったのだろう。ロロナを信頼していなかったから、なのか。そんなはずは無い。だってあの時、クーデリアは。クーデリアを死なせたのは。

 

そうだ。

 

怖がって嫌がるクーデリアを、無理に引っ張っていったのは。腕白盛りのロロナだったのだ。

 

一度思い出してしまえば、後は芋づる式だった。

 

「どうして……」

 

「えっ……」

 

「どうして、思い出したのよ! あの時、あんたを殺したのはあたしも同然だって、忘れてて欲しかったのに! 忘れてるなら大丈夫だろうって、わざわざこれを選んだのに!」

 

クーデリアが、アトリエを飛び出す。

 

ロロナは、追うことが出来なかった。








過去に何があったのか。

ここから怒濤の展開になります。



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