暗黒錬金術師伝説3 暗黒!ロロナのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ロロナにとってもかなりのピンチです。

難しい課題を抱えている状態での特大トラブル。

それも過去のトラウマを直接抉られたのです。

それにクーデリアが大事な事は今も変わっていません。

どうにかしなければなりません。






2、遅すぎた後悔

何をするにも、手がつかない。

 

此処まで気力が減退するのだと、ロロナははじめて思い知らされた。今までも、疲れ切って気を失うように眠ったことはあったけれど。このように、根こそぎ普段からやる気がなくなってしまうと言うのは、初めてだった。

 

クーデリアは。

 

どうして、隠していたのだろう。

 

ロロナがクーデリアを死なせてしまったも、同然だと言う事を。

 

オルトガ遺跡で起きたことを、今でははっきり思い出せる。悪夢のようなモンスターの宴で、なぶり殺しにされた事も。

 

そして、違和感もある。

 

昔と今で、自分が露骨に違うような気がしているのだ。

 

ため息をつくと、ホムが指摘してきた。

 

「マスター。 今日だけで、八十七回目のため息です」

 

「ホムちゃん、数えてたの?」

 

「記憶する能力は、フルに使うようにと、グランドマスターに言われています。 いざというときに、武器になるそうです」

 

「そう……」

 

師匠は、本当に碌な事をホムに教えない。

 

研究も、全く進展する様子が無かった。データを取りながら、少しずつ試行錯誤する。それだけの話なのに。どうしても、何をやっても上手く行かないのである。

 

クーデリアの事を嫌いになったのか。

 

そんなはずが無い。

 

今でも、大好きだ。誰よりも大事な友達だと思っている。しかし、クーデリアは。側を離れてしまった。

 

それだけなのに。こんなに力が抜けるとは、思っていなかった。

 

気分転換しようと思って、パイを焼く。

 

大好物の筈なのに。

 

食べても、味が全くしない。

 

寝ても、疲れが取れる様子も無い。

 

クーデリアはどうしているのだろうか。

 

謝るべきなのだろうか。

 

しかし、受け入れてくれるだろうか。

 

悩んでいると、また手元が狂った。ため息をついて、掃除をする。一体何回、同じミスを繰り返すのか。

 

師匠が嬉しそうに、ロロナを見ていた。

 

怒る気力も無い。

 

「何だ、くーちゃんと喧嘩でもしたのか」

 

「相変わらず直球ですね……。 どうしてわかったんですか」

 

「お前が其処までへこむのは、それ以外には可能性を思い当たらんからな。 あの不器用なクーデリアと、今まで良く喧嘩もなくやってこれたものだと感心していたが。 実際喧嘩になると、こじれるものだな」

 

容赦なくけらけらと笑う師匠。ロロナが傷ついていることなんて、お構いなしだ。相手を思いやるなんて機能は、この人には備わっていない。

 

師匠については、言いたいこともある。

 

思い出してきたから、わかるのだ。

 

ロロナは、病気を治してもらったのでは無い。

 

多分師匠に体を弄られて、別の命を得て此処にいるのだ。それは生きているというのとは、微妙に違うのかも知れない。

 

おそらくだが、多分あっている。

 

ロロナの体には、いやクーデリアの体にも。

 

研究途上だった、ホムンクルスの技術が使われている。或いはロロナを散々弄り倒していたのは、ホムンクルスの研究のためだったのかも知れない。

 

「喧嘩の理由はだいたい見当がつくが。 お前、記憶が戻ったな?」

 

「……師匠」

 

「おお、そんな目で見られると興奮してしまうでは無いか。 で、その様子だと、図星だな」

 

座るように言われたので、ソファに腰掛ける。

 

師匠は椅子を持ってくると、向かい合って座った。

 

今はどのみち、作業どころでは無い。

 

「はっきり指摘しておくが、あの件は事故だ。 子供は本能的に、親がするなと言う事を、する生き物だ。 お前もそうだった、というだけの事。 おそらくクーデリアは、お前をその事で恨んだりはしていないだろう」

 

「……っ、どうしてそう思うんですか!? わたしもくーちゃんも、あの暗闇で、モンスターの群れに、食いちぎられて、なぶり者にされて、怖くても誰も助けに来てくれなくて、それで!」

 

「死んだ、か? なら何故、お前の記憶はある」

 

「それは……」

 

わからない。

 

死んだのなら、記憶など残っているとは思えない。

 

「話を聞く限り、お前もクーデリアも、お互い様の理由で死んだ様子だ。 ひょっとすると、クーデリアの方が、お前を死なせたのは自分だと、思っているかも知れんぞ」

 

師匠はにやにやにこにこしながら、教えてくれる。

 

ロロナは思考が混乱して、禄に反論も出来なかった。

 

「お前達がモンスターどもに食い散らかされている途中に、捜索隊のメンバーが到着したのさ。 で、その場にいたモンスター共を皆殺しにした。 その中には私もいてな、お前の両親とフォイエルバッハの陰険親父に泣きつかれたよ。 娘達を助けて欲しいとな」

 

肉体的には死んでいたが。

 

脳の損傷は、まだどうにかなるレベルだったと、アストリッドは言う。

 

無事だった部分を、さっそくかき集めると。アトリエに戻り、培養槽を作って、放り込んだのだと、師匠は嬉しそうに語った。

 

その時の師匠の笑顔は、まるでお菓子を見つけた子供のようだったに違いないと、ロロナは思った。きっと間違っていないはずだ。

 

「ただな。 クーデリアはともかく、お前は此処に運び込んだ時点での損傷が酷くてな」

 

「酷いって……」

 

「まあ、一言で説明すると、頭しか残っていなかった。 その頭も、半分くらい潰されていた」

 

ぞっとする言葉だが。

 

今のロロナは、どうしてだろう。クーデリアがもっと無事だったことを、素直に喜んでいた。

 

ともかく、何をどうしたのかはよく分からない。

 

師匠はロロナの体を作り直して、死にかけていたところを、よみがえらせた。クーデリアも同様。

 

しかし、何となくわかる。

 

師匠はまだ、何かを隠しているのではないのか。

 

「聞きたいことがあるなら、聞け。 可愛い弟子の疑問には、出来る範囲で、何でも答えるぞ」

 

「それ、何でもじゃないです。 その……師匠がとても凄い錬金術師だって事は知っています。 でも、それでも。 そんな状態になった人間をよみがえらせるなんて、出来るんですか?」

 

「事実お前が此処にいる」

 

「……」

 

「まあ、疑問はもっともだ。 結論から言えば、その時は運が良かったのだ。 たまたま私は、最愛の人をよみがえらせる実験に着手していてな。 丁度良いモルモットが欲しいと思っていた所だったのだ」

 

流石だ。

 

ぐうの音も出ない。

 

自分の弟子をモルモットと言い切るこの人は。恐らくは、もう人間社会の規範など、ゴミとも考えていないだろう。

 

それで、モルモットにされたロロナは、色々体を弄られたのだ。

 

何となくわかってきた。クーデリアの体が、妙に小さい理由。それに、ロロナの精神に、不自然な幼さが残っている理由もだ。

 

何か、体にされたのだろう。

 

師匠のことだ。ただそのまま、ロロナとクーデリアを、五体満足によみがえらせるとは思えないのである。

 

「まあ、謝るなら、仲直りするなら早めにしておけ。 今回の課題も期日が近づいているのだろう? そんな状態では、出来る事も出来なくなるぞ」

 

確かにそれは事実だ。

 

それにロロナとしても、クーデリアとは仲直りしたいのだ。相手がどう思っているかは知りたいし。何より、こんな悲劇を共有した仲だ。

 

側に、ずっといて欲しい。

 

いつの間にか、師匠は自室に戻っていた。

 

「ホムちゃん、調合を続けていてくれる?」

 

「かまいませんが、マスターはどうなさるのです」

 

「わたし、調べ物が出来たから」

 

出来れば、早くに。

 

クーデリアと、仲直りしたかった。

 

 

 

武器屋に足を運ぶ。

 

設計図を見せると、親父さんは小首をかしげた。

 

「お前さんは普段実用的なものを作って欲しいと言ってくるのにな。 これは、何だ」

 

「えっと、友情の証……的な」

 

「同じようなことを、少し前にいってきた奴がいたなあ」

 

小首をかしげながらも、親父さんは作業に取りかかってくれる。

 

これだったら、二日もあれば出来る。そう、太鼓判を押してくれた。

 

これで、親父さんに頼む分は良い。

 

後はリオネラとタントリスを誘って、外に出る。材料が幾つか必要なのだ。そして奇しくも、今回の課題に関連する内容でもあった。

 

リオネラは、何も言わず、採取地に一緒に来てくれる。タントリスが一緒でも、嫌ではないようだ。

 

今回は国有鉱山だが、さほど危険は感じない。

 

ドナーンも、此方を見ると自然に距離を置く。途中かなり大きなドナーンを見かけたのだけれど。

 

ロロナがどいてと告げると、無言で逃げていった。

 

「ロロナちゃん、凄い迫力だね」

 

「そう?」

 

「ハニーの全身から、高密度の魔力を感じるからねえ。 獣ほど、相手の強さには敏感なんだよ」

 

タントリスが、いつものような甘ったるい声で言う。

 

そうなんですかと流して、奥へ。タントリスとの接し方は、最近わかってきた。以前はいちいちウブに反応して相手をおもしろがらせていたから、調子に乗らせている部分があったのだ。

 

少し冷徹に接するくらいが、この人には丁度良いのである。別に好きな人でも無いから、触られたってそんなに驚きもしない。

 

そして面白い事に、本人もそれで喜んでいるようだった。

 

以前リオネラと揉めたらしいのに、タントリスはリオネラにも同じようなやり方で接している。

 

ただ、リオネラはこの間の一件で、驚くほど強くなった。

 

ロロナよりもぐっと上手にあしらっているほどである。大した物だと、ロロナは見ていて感心してしまう。

 

幾つかの素材を集めながら、探す。

 

廃坑道の奥には、まだ小さいながらも、水晶の欠片が落ちていることがある。これは、水晶そのものを、掘り返した際に、砕けてしまった分だろう。

 

それも拾っておく。

 

後は、別の採取地だ。

 

一度鉱山を出てから、北へ。ネーベル湖畔で、幾らかの採集をしておく。此処はかなり危険なので、深入りはしない。以前より力がついてきているとはいえ、出来ればステルクと来たい場所なのだ。

 

湖岸で素材を集めて、吟味。

 

だいたいこれらで問題ないだろう。後は、別の機会を見て、黒き大樹の森に出向いておきたい。

 

向こう岸で、イグアノスの群れが此方を見ている。

 

何度かの駆除作業で大幅に数を減らしたそうだけれど。まだまだ手強い相手である事に間違いは無い。

 

戦いは、避けた方が良いだろう。

 

「もう、採集は大丈夫かい?」

 

「はい。 引き上げましょう」

 

「何だ、残念だ。 もう少しデートを楽しみたかったのだけれど」

 

タントリスはそう言うが、此処からは強行軍だ。帰路は急ぐことになるし、以前よりぐっとペースを上げもする。

 

使用している荷車にはエンチャントを施して、移動する際の補助をしているので、以前よりもずっと軽くなっているけれど。

 

街道を小走りで南下していくと、流石に疲れる。

 

丸一日歩いて、アーランドに辿り着いたときは、流石にへとへとだった。こうも急いだのは、焦燥を抑えたかったからである。

 

クーデリアとの仲直りは、まだ上手く行っていない。

 

タントリスと別れた後、心配げにリオネラが言う。

 

「クーデリアちゃんと、喧嘩したの?」

 

「やっぱり、わかる?」

 

「うん。 こんなに元気が無いロロナちゃん、はじめて見るから」

 

そういえば、アラーニャとホロホロは、殆ど口を利かない。どうしてなのだろう。

 

或いは、少しずつ口数を減らして、人格統合の日に備えているのかも知れなかった。

 

「今、仲直りのために、ちょっと準備をしているんだ」

 

「そう、羨ましいな。 私にはロロナちゃんの他には、殆ど友達もいないから。 アラーニャやホロホロは私自身だから。 喧嘩する事そのものが、出来ないよ」

 

「りおちゃんは、これからだよ。 きっとたくさん友達も出来るよ」

 

ロロナも、交友関係はそれなりにあるけれど。考えて見れば、喧嘩するほど仲良くしていた友達は、それほど多くない。

 

アトリエで、荷物の積み卸しを手伝ってもらう。

 

幾つかの素材は、そのまま籠に入れて、調合にすぐ使えるように。特に砂は洗った後、乾かす。

 

これが、今回の調合で、鍵になる。

 

「水晶の調合は、まだ上手く行かないよね」

 

「うん。 だから、試してみたいことがあるんだ」

 

まず、今まで使っていた、圧力を伝導する薬剤を、十倍に濃くする。

 

代わりに、熱伝導用の薬剤を、薄くする。

 

本来だったら、溶けない砂が、これによって一気に圧縮されるはずだ。炉の中にも、幾つか改良を加える。

 

とはいっても、この炉は、歴代の錬金術師が使ってきたものだ。様々な用途に応じて、変更が出来るようになっている。

 

「十倍……」

 

「うん。 十倍」

 

かなり過激だとは、自分でも思う。

 

だが、思い切ったことが必要なのだ。今回は。

 

更に、砂の中に、何種類かの薬剤を投入。

 

これらも、圧力伝導を補助する目的を持っている。今まで足りなかったのは、圧力だ。そう、ロロナは結論していた。

 

早速、炉に入れてみる。

 

一回目で上手く行くとは思っていない。

 

ただ、うまくいかせたい。

 

クーデリアと仲直りするためには、これが必要なのだ。

 

 

 

夕刻。

 

ロロナがぼんやり立ち尽くしていると。クーデリアが来た。

 

屋敷まで行って、アルフレッドに頼んだのだ。

 

クーデリアは、ロロナがいる事には気付いていた。だが、来てはくれた。問題は、此処からだ。

 

「くーちゃん」

 

「何よ……」

 

「場所、変えよう。 アトリエが良い? それともくーちゃんの部屋にする?」

 

「……」

 

無言でクーデリアが顎をしゃくる。

 

彼女が指定してきたのは。

 

幼い頃、二人で隠れ家にしていた場所だ。

 

街の南にあるため池の側で、壁際にある小さな林。いや、当時は林だと思っていたのだけれど。

 

今来てみると、何というか。

 

とても小さな木々が雑多に生えているだけの場所だ。思うに、公園として作ったのを、放棄してしまったのだろう。

 

アーランドでは、こういう若干いい加減な都市計画が散見される。

 

重要なインフラはしっかり整備しているのだけれど。それ以外の、重要度が落ちるインフラについては、扱いが雑になりがちなのだ。

 

ましてや戦士であることが重視される国だ。休息というものについては、どうしても軽視される。

 

隅っこの方に、腰掛ける。

 

幼い頃は、此処がとても広く感じたのに。

 

今では、狭苦しく思えた。

 

背が伸びたから、だろうか。

 

戦士として、殺し合いを経験したから、かも知れない。

 

いずれにしても、かって二人で使っていた小さな空間は。もう、二人にとっては、狭くなりすぎていた。

 

「どうして、話してくれなかったの?」

 

「あんたが、あたしを恨んでるって思ったから」

 

「恨むわけ無いよ。 わたしが、くーちゃんを殺したのも同じだったのに。 覚えてたんだったら、わたしのこと、怒っても罵っても良かったのに」

 

やっと、記憶が共有できた。

 

あれは悲劇だったのだ。

 

幼い頃の、考え無しの子供が起こしてしまった悲劇。それは誰の責任でも無い、無邪気が産んだ地獄。

 

見せる。

 

不格好だけど、出来たのだ。水晶が。

 

殆ど透明度は無い。だけれど、魔力は本物並みに吸い込む。それに、蓄積速度も、本物と大差ない。

 

「最初のは、くーちゃんにあげる」

 

腕輪にしてある。

 

クーデリアの場合、手に近い所に、魔力の供給源があった方が良いはず。しかし指輪だと、おそらく銃の引き金にとって邪魔になる。

 

今後、クーデリアが戦闘で、より力を発揮するためには。

 

外付けの魔力供給装置が必須だ。

 

だから、こういう形状にしたのだ。

 

「アーランド石晶って名付けたの。 納品までには、量産と、もう少し綺麗に見せる工夫をするつもり。 でも、わたしだけじゃ無理そう。 くーちゃんに、手伝って欲しいな」

 

「……あたしからも、これ」

 

見せられたのは。

 

以前、ロロナが失敗して、偶然作った緑色の塊。不格好で、でもキラキラしていて。そういえば、クーデリアが珍しく欲しいと言ったので、あげたのだ。

 

ただ、それは。

 

二つに割れてしまっていた。

 

いや、恐らくは、割ったのだ。

 

それぞれがペンダントに加工されている。

 

「なんで、こんな事になったんだろう」

 

ペンダントを受け取ったロロナは。

 

あの悲劇のことを、思い出す。

 

幼い頃の、考え無しの行動が産んだ地獄。

 

欲求と行動が直結している年頃は、誰にだってある。今になって思えば、後悔する事ばかりだ。

 

「あんたの側にいて、あたしってば、ずっと怖かったんだと思う。 あんたがもしも思い出したら、恨まれて、絶対許さないって言われて。 それで、何もかもが無くなると、思ったから」

 

「わたしが、馬鹿だったから起きたことだよ。 くーちゃんは、何も悪くない……」

 

結局、ただのすれ違いだったのか。

 

ペンダントは、とても似合った。

 

「ごめんね……」

 

「あたしこそ、ごめんなさい」

 

それから、二人で声を殺して泣いた。

 

最悪の悲劇。

 

自分が、恐らくは人間でさえない体になっている事。

 

思えば、全ての説明がつく。

 

過去の錬金術師達の偉業を、どうしてこうも簡単にまとめる事が出来てきたのか。これは、考えて見ればおかしな事だったのだ。

 

錬金術師達は、皆我が強いとは言え、過去の遺産に目を通していなかった筈が無い。

 

ロロナがこれだけの事をこなせてきたのは。

 

恐らくは、偉業をまとめて、形にするという点で、常識離れした才能を持っていたから、なのだろう。

 

そして、クーデリアも、それを補佐するという点で、才能を強化されていたのだ。それに、クーデリアのいつまで経っても発育しない体も、説明がつく。

 

結局ロロナもクーデリアも、人間では無かったのだ。

 

アーランド人さえ上回る、進化した存在なのか。或いは、師匠に調整された、ホムンクルスと混ざった存在なのか。

 

それさえ、わからない。

 

わかっているのは。

 

悲劇を共有する存在が側にいて。

 

そして、これからも変わらない、親友だと言う事だ。

 

 

 

アトリエに戻ると、しばらく無言のまま、実験結果を精査する。

 

圧力を上げるだけでは、透明度の高い水晶は出来ないだろう。クーデリアは、開口一番にそう言った。

 

「水晶の研究結果を、もう少し見た方が良いわね」

 

「うん、調べて見よう」

 

ホムが小首をかしげている。

 

ロロナとクーデリアが、前のように戻ったから、だろうか。

 

遠慮の無い言葉を、ホムンクルスである彼女は言う。

 

「仲直りをしたのですか?」

 

「そうだよ」

 

「気恥ずかしいけど、やっぱりあんたが側にいると落ち着くわ。 それに、あんたの世話をしてると、楽しいのも事実よ」

 

「もう、くーちゃんてば」

 

炉の様子を確認。

 

第一号であるアーランド石晶は、あまり綺麗では無かったけれど。クーデリアが大事にしてくれているし、何より実用的な魔力供給手段として役立つなら、プレゼントとしてこれ以上のものはないだろう。

 

ロロナの方でも、これからアーランド石晶を使った、外付けの魔力供給装置を作って、身につけておきたい。

 

大威力の魔力砲をぶっ放す際、自分だけで魔術を構築すると、どうしても時間のロスが生じる部分があるのだ。

 

だから最低でも四つ。

 

魔力砲を放つ際に展開する魔法陣を構築するための補助として、何かしらの道具を身につけておきたい。

 

クーデリアが、顔を上げる。

 

何かみつけたらしい。

 

「おそらく、色を付けるには、環境が影響しているはずよ。 アーランド国有鉱山の水晶が採れた地点の周囲で、何か他のものはなかった?」

 

「うーん、もう一度調べに行こうか」

 

「時間のロスがもったいないわよ。 いっそのこと、グラビ石でも混ぜてみる?」

 

「あ、それ面白そうだね!」

 

今までの沈鬱は。

 

完全に、吹き払われていた。

 

クーデリアとは、最大の秘密を共有したことになる。それに、師匠も言っていた。ホムンクルスだって、生殖能力があると。つまりそれは、作り方が違うだけで、人間とあまり代わりが無いと言う事だ。

 

ロロナだって、クーデリアだって、同じ筈。

 

今は、側で一緒に仕事が出来るだけで嬉しい。

 

ロロナもクーデリアも、強い人間では無いかも知れないけれど。

 

秘密を共有した親友だ。

 

なら、きっと一緒に、乗り越えていけるはず。そう、ロロナは思った。







ロロナもクーデリアも、一度死んで、そして。

しかしながら、結局のところ生きている。どのような形であっても。

秘密を共有した二人の心には、大きな絆が出来ました。

それが如何にジオ王の狙い通りだったとしても、です。



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