駄目バンドマン製造機は脱姉したい。   作:ひつまぶし太郎

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怪文書のノリで思いついたら性癖を吐き出していく自己満足小説です。


中学生になった日。

 

 

昔、お姉の友達は言った。

 

『いい?ハルカは素質がある』

『ソシツ?』

『そう。愛を授かる者になる素質が』

『すごい…僕にそんなサイノウが…?』

『でも同時に、愛に飢えた人間に施しを与える素質もある…』

『二つのせいしつをあわせ持つとか今からヒソカに改名しなきゃ…』

『でもどっちかって言うとMっぽいからね、ぷぷ。苦労しそう』

 

今思い返すとヒモのことをなに愛を授かる者とか綺麗に言い換えてんだとか、Mっぽいからとか幼稚園児になに教えてんだとか色々言いたいことはあるが、概ねそのとおりだったので諦めたほうがいいのだろう。

 

ついでに。

 

『だから、私にだけ貢ぐように…間違えた。愛を授かりながら、その愛を私にだけ注ぐいい子になれるように…今から頑張ろうね?』

 

そう続けたお姉の友達は、その無駄に整った顔で僕に迫り。

 

…僕は割と普通に性的な蹂躙を受けた。

自分の耳を女の舌が嫐り、ファーストキスは溺れるようなディープ。

何度も染み込ませるように囁かれる言葉は、女性に敗北することを至高とする洗脳に近い。

拘束され、くすぐられることすら快感に感じるようになったあたりで、ぼくは解放された。

 

当時彼女は8歳。

小学生なわりに耳年増だったその女。

果たしてそれはおねショタだったのかロリショタだったのか。

名を、山田リョウ。

クズベーシストにして変人。

実家は太いし草食ってりゃいいのに他人に寄生することに余念がないヒモの達人。

別にその後何かしてこなかったくらいにはただの思いつきだったくせに、めちゃくちゃ僕の人生が歪んだ元凶。

 

おかげで開花させなくていい才能を開花させた僕は、変なバンドマンの年上の女が好き。

なんならそいつがクズだとなおいいし、全て毟り取られたいとかいう終わった性癖になってしまった。

 

クラスメートにチョコをもらっても喜べない。

クラスのマドンナに告白されても嬉しくない。

はっきり言おう。

小学生でそこまで歪んでしまっているのは今後の人生とても困る。

僕は自分の人生の打ち所を完全に間違えた。

 

故に、僕は決意する。

中学生に上がるのと同時に僕はクズバンドマン沼を脱出しよう、と。

 

 

 

 

「ハルくうううううううん、来てくれてよかったよおおおおおおおおろろろろろ…」

「うわぁ…」

 

新宿歌舞伎町。

飲み屋街の裏通りで、僕は決意も早々にバンドマンに敗北していた。

 

肩に腕を回され、酔っぱらいの熱い吐息が耳にかかる。

キャミソールというほぼ下着じゃんみたいな布越しに、小さいながら確かな膨らみが押し付けられていた。

偶然と思うだろうか。

…この人は、わかってやっている。

そして、僕は分かったうえでされている酔っぱらいによる雑な誘惑に勝てない。

 

「えへへ、わたしなんかのおっぱいに勝てないハルくんかぁいいねぇ…」

 

しかも、吐瀉物が僕の肩を汚し、温もりが服を侵食していく。

あ、やば。

くっさぁ♡なんて言ってる場合ではない。

 

「あーもー…きくりさん…しょうがないなぁ」

「ごめんねぇ」

「いいんですよぉ!」

 

言ってる場合じゃないんだけど、だめバンドマンに尊厳を汚されてることに喜びを覚えるようになってしまっている僕に、それを迷惑がるというのは不可能だった。

 

廣井きくり。

人気インディーズバンド「SICK HACK」のベーシスト。

その圧倒的才能と破天荒なパフォーマンスからファンは多い。

同時に、お金はあればあるだけすぐ使うせいで万年金欠。

家は幽霊屋敷(文字通り幽霊が住み着いている心霊物件)、風呂なし、たかりの常習犯、幸せスパイラルというアルコールを過剰摂取することで現実から逃避をし続けるどうしょうもないバンドマン。

前後不覚のまま飲み屋をはしごして、お金がなくなれば知り合いに電話をかけて回り、迎えに来てもらおうとする限界成人。

つまり僕は彼女に頼りにされる特別な人間なのではなく、彼女にとって数ある友人関係の一人に過ぎない。

 

まさに理想のクズベーシスト。

幸せスパイラルをやめさせるなんてとんでもない。

むしろそのままでいてほしい。

肝臓が悪くなったら僕のをどうぞ。

お金なんて僕が稼げばいいのだ。

 

「そういや今日中学生になったんですよ」

「そんなおめでたい日にごめんねぇ…お礼にチッスしてあげようチッス」

「んんんんんんん!?」

 

そして、流れるように頬に手を添えられゲロチュー。

電話越しに泣かれて歌舞伎町まで来てみればこの仕打ち。

 

最高だなぁ…じゃ、ないんだよ。

脱姉するという決意はどこいった?

そもそも脱姉ってなんだよ、なんて幻聴が聞こえてくるがさもありなん。

 

これは、ダメでクズな年上のバンドマンお姉さんが好きなドMの僕が、誘惑に勝てずに結局沼る物語だ。

 

「ハルくんはいい子だねぇ…私のお嫁さんにしてあげよう!」

「やったぁ」

 

きくりさんというダメ人間をひたすら養い甘やかし、きくりさんのために働き、きくりさんに自分の人生を全て捧げる。

 

素晴らしいじゃあないか。

なんて考える僕は、わりかしこの先の人生真っ暗だったが、まぁ。

 

いいんじゃないかな(エルシャダイ)

 

 




伊地知陽歌(はるか)
駄目バンドマン製造機。
山田のせいでひたすら年上のダメ女を甘やかし搾取されるのが性癖になった哀れな中学生。
お先真っ暗。
お嫁さん候補はきくりさんと山田と星歌(実姉)


創作意欲回復のための休憩作品です。
気が向いたら感想とかもらえるとすごく嬉しいです。
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