駄目バンドマン製造機は脱姉したい。   作:ひつまぶし太郎

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山田リョウ回。
逆ntr注意。
原作の山田さんはこんな子ではありません。


最悪な二人。

 

 

「こんなとこで何してんの?」

「なにって…家出少年ごっこ?」

 

からころと、チュッパチャップスを鳴らしながら、私が知る男子の中で一番モテる少年はそう嘯いた。

 

…相変わらず、ため息が出るほど絵になる容姿だ。

 

時刻は深夜12時。

それなりに広い敷地なのも相まって、昼間はジョギングやテニスなどのスポーツで爽やかな汗を流す人達に溢れる公園も、今は誰もいない。

 

子どもも老人もいないその世界で、まるで彼のためだけに存在するかのようなベンチ。

スポットライトのような電灯が、彼の美しさをより際立たせていた。

 

「…学校でなにかあった?」

「あったと言えばあったかなぁ。別にどうってことないんだけど」

 

聞けば、学年一の美少女を振ったらちょっとだけトラブルになったらしい。

そもそも中学生に上がったばかりなのにもう告白されてるのか、なんてことはもう突っ込まない。

相変わらず相手への興味があろうがなかろうが、人を惹きつける少年である。

そして、いわゆるそういうことに慣れている少年でもある。

 

ただ、今回のトラブルはその少年の予想を外れてしまったらしい。

まぁ、どれだけ背伸びして見せて、どれだけ大人と遊んでいようが結局は彼も中学生。

想像力も経験もまだまだ発展途上なのだ。

…とくに普段大人と接しているせいで、周りの中学生の子どもたちの淡くて複雑な思春期心を理解できない彼には、なおの事想像が難しい。

 

「まさかさぁ、その女の子が責められるとは思わないじゃんね。僕は恋愛禁止のアイドルかっての」

「ふっ、言い得て妙」

 

けっ、と。

心底うんざりした様子で顔をしかめるその表情が面白くて、思わず笑った。

 

不思議なのだろう。

なぜ人の気持ちを無慈悲に袖にした自分ではなく、傷つけられたはずの相手が責められたのか。

自分の価値をそこまで高く見ていないのは彼だけだと言うのに、そこの認識だけはできないでいるようだった。

 

だが、知れば誰もが望むだろう。

彼の寵愛を受けたいと。

彼を独りで抱きしめたいと。

だから、自分たちより容姿が優れるその女の子がコケた瞬間に、二度と自分の敵にならぬように棒を振り下ろすのだ。

まぁ結果としては、その行為に走った者たちは普通にハルカ直々に嫌いだからそのつら二度とみせんなカス宣言されて無惨にも散っていったわけだが。

 

「妙すぎるでしょ。僕はどっかの誰かさんのせいで芽生えた性癖に従って歪んで最低な恋愛をするんですぅー」

「別に私のせいじゃない。ハルカはそのうち勝手にそうなってた」

「…まぁ遅かれ早かれみたいなとこはあったのは認めるけど」

 

そうだ。

素質はもともとあった。

他人から寵愛を受けて腐らせる才能も、寵愛を施して相手を腐らせる才能も。

それを引き出したのは、別にきっと私の罪じゃない。

 

というかきくりさんとかを前にしたら、私のクズさなんて霞むから比較とかしないでほしい。

私はヒモ気質なだけのしがないベーシスト。

せいぜいがたまに会って、『へぇー?そんな歪んじゃったんだ可哀想に。でも幸せなら、むしろ幸せにしてくれた私に感謝しないとね?』とかなんとか言って、適当に遊園地やらおしゃれなカフェやらを奢らせてるだけだ。

ほんとそれだけ。

いや他にもちょっとしてるけど、どのみち化け物たちとやりあえるほど、終わってはない。

 

最近は虹夏もすっかり瞳が濁ってきているし、私は刺されたくないのだ。

ハルカと恋愛するとかノーサンキュー。

 

「でも初めての相手ってやっぱり特別じゃん?」

「あーあ。告白してきた女の子が聞いたら泣いちゃうよ。私なんかに現をぬかすなんて」

「思ってもないくせに」

「別に嘘じゃない」

 

ほんとに、嘘ではない。

ただちょっと、玉砕する女の子が出る度にハルカが私に会いに来るのが楽しいだけで。

本当に可哀想だとは思っている。

 

…ハルカは基本他人に無関心だが、それでも人の想いを断って何も思わない冷血漢ではない。

だから、人を拒絶したあとはちゃんと心が傷つく。

その心の傷を持て余しては、私のところに来るのだ。

 

「…それに。そうやって私にいじめ(なぐさめ)られに来ちゃうバカな男の子の世話なんて、本当はやりたくなんてないし?」

 

私という最悪な女に無様に敗北して、小馬鹿にされながら踏みにじられて、それに安心する。

だって、私に踏みつけられて身体を芯から震わせて悦ぶ自分の最低具合を再認識できるから。

自分に人を傷つけるだけの価値はないと思い込めるから。

 

───彼は、ある意味で私なしでは生きていけない人でなしだった。

 

甘やかしてくれる誰かも必要だろう。

彼の理想通りのクズなヒモも必要だ。

 

でも、何よりも。

この最低で最悪な安心(快楽)を彼は忘れられない。

 

これから先何度も彼は、私に敗北して自分の価値を確かめる。

何度も、何度でも。

何百回だって繰り返す。

この安心(快楽)だけは、私にしか与えられない。

 

彼の脳内での私は、きっと現実の私の実像を通り越して最悪なのだろう。

別にそれでよかった。

だって別に、等身大の自分を見てほしいなんて関係ではないのだから。

 

「でも、ほかに誰もできないからしてあげる。優しいでしょ?感謝してくれていい。…ほら、まずはどうするんだっけ?」

「……わんっ」

 

夜の公園。

主役の彼は、悪の女王の誘惑に必ず負ける。

敗北を望み、誘惑される前から既に魅了されていた必敗の主人公。

 

スポットライトに背を向けて、私は犬の鳴き真似をして媚びる彼の顔の前に足を差し出す。

 

彼の口が何度も繰り返してきた行為を思い出すように、自然と動く。

口だけで靴紐を解くやり方も、顎の力だけでスニーカーを脱がす方法も、靴下を引っ張る力加減も、私が念入りに教え込んだ。

 

顕になった私の裸足に、美しい少年が唇を落とす。

 

「───どうか、僕に。最低の烙印をください」

「いいよ」

 

地面に押し倒し、踏みつけ。

唾液を飲ませて、味あわせて。

舌で蹂躙し征服し、自分の与える暴力で他人の物が屈服する悦びは、筆舌に尽くしがたい。

きっと薬でも、この快楽を超えられない。

 

「…んっ」

 

私と彼は、何度だって初めてのキスをする。

 

最低で最悪な、恋を終わらせたその味を、私たちはいつまでも噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラーメンうまー。やっぱ夜の散歩と言えばラーメン。至高にして最高の不文律。神様に感謝……カップ麺だけど」

「中学生のおごりで食べるラーメンは格別」

「ほんと最悪で最高」

 

先程までの仄暗さは何だったのかってくらい気楽な声で、僕らはカップラーメンを味わっていた。

お湯は家から魔法瓶に入れて持ってきて、カップ麺も公園に行く前に寄ったコンビニで事前に買っていた。

 

…なんか、ああ言う事したあとって無性にラーメン食べたくなるのなんでなんだろう。

もしかしたら、このラーメンを食べることすらも、いつもの行為として頭が認識している可能性はあった。

 

「ていうか口の中めちゃんこスープがしみるんですけど〜?誰かさんがハッスルして噛みまくるから口の中ずたずたなんですけどぉ?」

「ぷぷ。いい気味」

「…まぁ、気持ちよかったからいいけど」

 

相変わらず趣味悪いよな、とは思う。

わざわざどんな風に告白されたかとか、スターリーで告白された時普通に見える位置にいて聞いてたくせに僕の口から語らせたり。

ついでにその子はどんな子かとか聞いてきたり、その子を散々褒めたあと、スターリーで告白されてた時わざと視界に入る位置に私がいたらずっと私の足ばっか見てたよね、さいてーなんて罵倒して。

 

寝取り趣味、というやつなのだろう。

別に僕と恋人になりたいとかそういうのではなくて、単に他人が欲しがるトロフィーを傷つけて奪い取って愉しむ趣味というか。

その粘ついた優越感と、人を踏み躙ることで満たされる加虐心。

本人は私なんて別にクズじゃないと言い張っているが、普通にキクリさんを超えてる気がする。

 

それはそれとして、傷つけられて安心する僕もどうかしてるが。

 

好き者同士。

恋愛的な気持ちは全くないのに、お互いで欲を満たすのだけは相性が良すぎるの最低な2人。

 

意外とこの人と結婚するのかなぁ、いや結婚したら普通に人生終わるんだけど。

俄然楽しくなってきたじゃあないか。

なんて適当に思考を回しながら、僕は最後の一口を傷だらけの口の中に吸い込むのだった。

 

 




結婚しても元から虹夏の部屋に敷地を持ってるリョウならそのまま家に住み続けられる。
これなら家から出ていかせたくない虹夏も安心。
完璧なプランだぁ(店長が脳破壊される音)。

ちなみに山田目線だと他人の欲しがる素晴らしいものという補正があるので造形美の方に目がいっていて、星歌や虹夏目線だと身内の庇護対象認識な為に愛らしさの方に目がいっているという違いがあるので、容姿の描写がちょっとずれてたりします。
普通にぱーぺきすぎるくらいの美少女フェイスです。
そこに何を見るかはその人次第みたいな。
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