ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線 作:ねえ、おなまえは?
それから、もっと気になっていた話、兄さんの権能の話を詳しく教えてもらった。
「僕は選ばれたんだ。魔女教大罪司教"強欲"担当にね。僕の授かった"強欲"の権能は、2つある。1つ目は獅子の心臓。これは、自分の心臓を止めている間、僕や、僕の触れている物の時間を停止させる、何者にも影響を受けない、完璧な存在になれる力だ。ただ、心臓を止めるから、効果は最大で5秒ってところかな。
それを補うのが2つ目の権能、小さな王。こっちは、僕が大切に思っている人に僕の擬似心臓を寄生させて、獅子の心臓で止まるはずの僕の心臓を他者に預けることで、不自由なく、自由に時間停止を行うことができる。
お互いを補い合って、大切な人に心臓を託す。僕は完全で、完璧で、満たされた存在になれる。素晴らしい力だろう?」
すごい、さすが兄さんだねぇ。と思ったままの感想を伝えると当たり前だ、と誇らしげにしていた。
なるほど、これが"強欲"の権能か。
兄さんが能力について詳しく説明してくれて助かった、イメージが強くあればあるほど、権能の力の輪郭が捉えられる。
話を聴いて"強欲の権能"への知識が深まり、知識欲が満たされていく、強い喜びを感じる。
でも、まだ足りない。まだ満たされない。
もっともっと識りたい!!!!!
理解したい解析したい分析したい試したい体験したい実践したい!!!
ありとあらゆることができる可能性を秘めている権能に、ますます知識欲が溢れ出るのを感じる。
さぁ、知ることができた。"識ること"ができたのだ。
では次はボクの番。
話を聞きながら、というか、兄さんと再会して簡易的に権能の話をしてもらったあの時から解析していた強欲の権能をヨグちゃんの力も借りて構築していく。
こうかなぁ、あぁかなぁ、色々考えて組み変えていく。
あぁ、満たされていく。
楽しいな、愉しいなぁ!
もっと、もっと、もっと、もっと!!!
あ。
核心を掴んだ感覚があった。
絡みつくヨグちゃんの触手。
掴んで、離さない。もう、ボクのものだ。
これが、強欲の権能を授けられる感覚か。
いや、強欲の権能を、強引に、文字通り強欲に分けてもら……んん、違うね、ごめん、そう、強奪した感覚か。
「兄さん教えてくれて、ありがとう。本当にありがとう。素晴らしい力だね。
ボクの知識欲は、貪欲で、欲張りで、全ての知識を貪り尽くしたいと願う思いが溢れ出して、止められなくて、識ることが嬉しくて、楽しくて愉しくて、どうしてもソレを手に入れたくなっちゃった。兄さんは特別だから選ばれたけど、ボクは兄さんから強引に分けてもらっちゃった。兄さんのおかげで手にすることができた。どうやらボクの知識欲が、強欲たりえると、判断されたらしい。ボクも、今、兄さんとお揃いの権能を授かった、っていうのは烏滸がましいかなぁ、貰い受けた、だね。兄さんとボクはたくさんお揃いがある、こんなにうれしいことってないよ!」
弟は笑顔だった。楽しくて楽しくてしょうがないという、笑顔だった。
とても楽しそうに、無邪気に、わーい!兄さんとお揃いだ、と繰り返し笑っていた。
今度はボクの権能の説明をしていく。
ボクの権能は不完全だ。仕方がない、ほとんど無理やり奪い取ったのだから。
ボクの獅子の心臓は、効果時間が短い。
もって2秒が限界だった。
さらに、小さな王は、兄さんには、効果範囲が決まっている代わりに人数の制限はないみたいだったけれど、ボクは逆で、効果範囲は無限だけど、兄さんとお姉さまのどちらかにしか寄生することはできなかった。
それから、多分ヨグちゃんの影響で得た、3つ目の権能、これは、ボクが指定した範囲にいる人たちのこれまでの記憶を分けてもらうものだ。
追体験をすると言ってもいい。
特定した範囲内の人物の無差別に記憶を覗き"識る"ことができる。
名前をつけるなら、そうだな、無作為に、それでも美しく流星たちが降るように"識る"のだから"獅子の流星群"とかかな。
ただし、"識る"だけなので、動きをトレースしたりすることはできない。
それから、識ったところで相手の記憶や周囲の人間から対象の記憶を消すことはない。だって、記憶が消えちゃったら、また1から覚えていかなくちゃいけないんだよ?それって、時間を無駄にするってことだよね、そんな時間があるなら、必死に生きて色んなコトをもっともっと知って欲しい。
次に会うことがあれば、ボクは更にたくさんのことを知ることができるからね。イメージできれば魔法に落とし込めるのでどんな記憶でもうれしい。
特に苦難に直面した時や人生の失敗の記憶が見たいな。だって人間は失敗から学ぶものでしょう?得られるものが多いっていいことだよ。
単純にたくさんのことを知りたい"識りたい"貪りたいという気持ちから得た権能。どうやら"識る"対象が多いほど、無防備になる時間が長くなる特性がある、と説明を終えた。
2人は特に、ボクの小さな王に選ばれたのが自分たちだけだという事実に、満足そうに、うれしそうにしていた。えへへ、ボクもうれしい。
ボクは神さまの、ヨグちゃんの依代になったから、多分この辺りの年齢から老いることはない。
不死ではないので注意が必要だけれど、危なくなったら、兄さんやお姉さまに頼らせてもらって、権能を発動すればいいから気が楽だった。
ヨグちゃんの話は2人にやんわりとした。
ヨグちゃんのおかげでできることも含めて。
認識阻害が起きて、ヨグちゃんの本当の名前とかは聴こえなかったみたいだけれど、知識が欲しくて、空間や時間を操る魔法が使える神さまだよ、困っていたから、助けてあげたんだ。
ボクの心臓にはヨグちゃんがもう居るから、兄さんの擬似心臓が寄生できないという事実を知ると、兄さんは、むぅっとむくれて不機嫌になったけれど、ヨグちゃんも大切だけど、ボクは兄さんの方が大事なんだ、大好きだよ〜とハグしながら言うと機嫌を直してくれた。
それを見て、お姉さまはあらあら、これじゃあどっちがお兄さんか分からないわね、と笑っていた。
獅子座流星群って素敵ですよね。