ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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15話 沢山集めて食べて"識って"

 

いっぱいい〜っぱい、村や、町や、国を巡った。

本に、魔導書に、人々の記憶。沢山の新鮮な知識に心が躍った。

ヨグちゃんも喜んでくれている。

 

ボクもうれしい。

楽しいねぇ、愉しいねぇ。

 

 

兄さんに手紙を転送するのも忘れずにした。

"お祭りで、町中にたくさんの黄色のお花を飾りつけている町に来ているよ!とってもいい香りに包まれているし、そのお花を使ったお菓子も美味しかったから作り方を教えてもらったの。今度作ってあげるから、一緒に食べようね。うまく感覚を掴んでね、服がお花のいい香りになる魔法も作り出したんだ。じゃあ、ボクはお祭りを楽しんで、また新しい知識を収集してくるね。兄さん、お元気で!"こんな調子のくだらない手紙だ。

 

 

 

そうそう、行く先々の名物料理も外せない。

ボクはこの為に権能を解除しているといってもいい、は言い過ぎだけれど…言い過ぎでもないか。

 

兄さんにくっついている擬似心臓はそのまま。

トクン、トクンと動き続ける。

 

権能だけを解除して色んな美味しいものをたくさん、それはそれはたくさん食べた。

かわいいお兄さんだね、美味しそうに食べてくれるから、とサービスしてもらうことも多かった。もぐもぐ、ごっくん。んん〜!美味しい!

 

うれしいね、満足満足。

 

味を"識る"とかレシピを"識る"とかも欲を満たせるからねぇ。

 

 

楽しそうに、何にも考えていない様に、奏でられる音楽に合わせてわあわあと踊りを躍っている人たちの間を抜けて、花びらが風に巻き上げられる中、ちょこんとくくった髪の毛をぴょこぴょこと揺らしながら町の外へ出る。

 

 

またおいでよ〜!と声をかけられて、は〜い!ばいばいと手を振ってこたえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅に出てから随分時間が経った。手紙でやりとりしているけれど、ふと兄さんが恋しくなって会いに行くことにした。 

 

 

3人で暮らしていたあの場所へ空間を裂いて飛ぶ。

 

 

ノックして、待つ。

 

返事はない。

 

そのままギィっと扉を開くと埃っぽい空気が満たされていて、くちゅん、とくしゃみがでる。埃を消し去る魔法で空間を清浄して、テーブルの上を見る。

 

 

僕は妻たちを連れて、出ていく。

 

 

簡潔な文章だ。

お喋りな兄さんにしては珍しいなぁ。

 

ん、ん?ちょっと待って、妻"たち"?気になる。

次に移り住む場所も書いてくれていた。

地図を記憶から引っ張り出してきて、あぁ、あそこかぁと考える。

 

行ったことのない場所だ。

 

たまには空を駆けるのではなく、ゆっくり道中を楽しみながらのんびり行こう。

 

 

"兄さん、久しぶりに兄さんが恋しくなったので、会いに行くね。歩いて行くから、着くのは暫くしてからだよ。会えるの、とっても楽しみだなぁ。じゃあ、またね、お元気で!"

 

手紙を送る。

 

 

 

 

さぁて。ぐっと伸びをして、静かな森の空気を胸いっぱいに吸い込んでから、魔法でお花を出してお姉さまのお墓に挨拶をしに行った。

 

 

まぁ、実際、お姉さまは光に包まれて儚く消えてしまったからお姉さまがそこに居るわけではないのだけれど、何か残したくて、兄さんと2人で墓碑を建てたんだ。

 

 

 

 

それからるんるんと歩き始める。兄さんに会えるの楽しみだなぁ!

 

道中、村に立ち寄ったりして、色々"識る"ことも欠かさない。

 

 

 

 

それで、3日くらいかな、歩き続けて都市へと着いた。

賑やかだ、いい所だね。

 

のんびり見て回って、食事を楽しんで、本屋さんに寄って、それからお屋敷へと向かった。

とても大きなお屋敷だった。わぁ、すごい!

 

扉が開くと、兄さんが出迎えてくれた。

 

 

ボクは久しぶりに会えたからうれしくて、兄さん〜!と抱きつきに行く。

 

ボクに抱きつかれながら兄さんが話す。

 

「あのさぁ!久しぶりの再会だからってお前が喜んでいるのは分かるよ、だって僕に会えたのだからね!でもさぁ、よく考えて行動しなよ、家族であっても、人と会ったらまず挨拶するのが礼儀ってものでしょ?元気だった?とか、久しぶりだね、とかさぁ。あのクソみたいな村を出た後からの、お前の子供っぽい所はいつまで経っても変わらないね。そろそろきちんとした常識を学んだほうがいい。もういい大人なんだからさぁ。まぁ?僕は優しいからね、久しぶりに僕に会えて嬉しくて突発的な行動をとってしまったということを、考慮してあげよう。次からはしっかり考えてから、行動する様に。分かった?」

 

はぁい、とニコニコしながら答えるボクをみて、手を額に当ててやれやれ、と首を振る。

 

 

 

さて、兄さんとの感動の再会は一旦置いておいて、ボクは"識りたい"ことがあった。

 

兄さんの後ろに整然と並んだ彼女たちのことだ。

 

 

 

 

みんなかわいくて、綺麗な顔をしている。

ただ、揃って無表情だ。前髪が短く切り揃えられて、それがまた抜け落ちたかの様な表情を一段と強調している。

同じ服を着て、こちらを見つめるでもなく、じっと真っ直ぐ前を見つめて、まるで精巧な人形の様だった。

 

 

「兄さん、この子たちは?とってもかわいくて、綺麗な顔をしているねぇ。それに見合ったら純粋そうな心を持っているみたい。お屋敷勤めをしている様な人たちじゃないよね、ボクが見てきて"識っている"色んなお屋敷の従者さんたちとは雰囲気が違うなぁ」

 

 

兄さんは、自信たっぷりに腕を後ろに組んで、胸を張って彼女たちは、僕のかわいい妻たちだよ。

お前の見立ては正しい。彼女たちは身も心も純潔なんだ、と教えてくれた。

 

 

えっと、一夫多妻制なの?

 

ボクの前世では一夫多妻制なんて特定の国でしか見られない珍しいものだったから、びっくりした。

 

 

 

心の中でヨグちゃんに聴く。どう?ヨグちゃん。

あ、ヨグちゃんたちの世界では一夫多妻とか不貞とか全然ありなんだ。

そういうものなのかなぁ。と納得する。

 

 

 

そうか、彼女たちが兄さんの大切な人たちなのかと考える。

 

「そうなんだ、兄さん、教えてくれてありがとう。兄さんとお話ししたり、本とか魔導書とか、作った色んな魔道具の整理なんかをしたくて、お屋敷に少し滞在させてもらいたいな、なんて思っているんだけれど、夫婦の邪魔になっちゃうかなぁ、そうだったら、別に宿をとるよ」

と言うと、そうする必要はない、と言いながら、くるりとお嫁さんたちの方へ向き直り、あらかじめ伝えておいたけれど、もう一度言っておくよ。僕の双子の弟だ。大切な弟だから、粗相のない様に。何人か世話係をつけよう、とボクについて軽く説明してくれた。

 

 

 

 

大切な弟、かぁ。うれしいなぁ。

 

 

 

世話係になってくれたお嫁さんたちが部屋へと案内してくれた。

 

ありがとうございます、滞在中、迷惑をかけるかもしれないけれど、よろしくお願いしますと言ってペコリとお辞儀をする。

 

随分長くなった結んでいる髪の毛が、背から肩口へ滑り落ちる。

 

 

 

無表情の彼女たちから動揺を感じる。

 

何だろう?何に感情が動かされているんだろう。

"識りたい"なぁ……と思いながら顔を上げる。

 

あ、そうだ。

 

「よければ貴女たちの名前を教えてくれませんか?あと、好きな物とか、苦手な物とか。お世話になるから、何かお礼がしたいんです」

 

 

瞳孔が揺れ、動揺が強くなる。

 

ふぅん?

 

自分たちのこと知られたくないのかな、それとも、教えてはいけない、とかなのかなぁ。

 

 

一拍置いた後、

「弟さまが、お望みでしたら、話させていただきます」

と1人ずつ、やっぱり無表情のまま淡々と教えてくれた。

 

 

 

 

あ、教えてはくれるんだ。

 

じゃあさっきの考えは間違いだなぁ、話す機会がない、とか制限されているとかなのかな、でもそんなことする理由が思い当たらない。

 

夫婦ならなおのこと、相手のことを"識る"機会がないなんてありえないしねぇ。

 

 

色々考えながらも、そうなんだ、あ、ボクもそれ好きなんだよ、美味しいよねぇと相槌をうち、情報を頭に叩き込んで記憶していく。

 

「教えてくれてありがとう、みんなのことが知れてよかったよ。兄さんの家族ってことで、緊張しているのかもしれないけれど、表情を崩していいんだよ。ボクは、君たちの色んな顔が見てみたいなぁ」

ふにゃりと笑いながらこてん、と首を倒して、手を胸の前で組んでお願いする。

 

 

あ、また感情が揺らいでいる。

どうするか考えているんだなぁ。

やっぱり何かの理由で自分たちを律しているのかなぁ。

 

 

 

"識ろう"と思えばできた。

 

でも、何故か彼女たちのことは権能ではなく人対人で話をして"識って"いこうと思った。

 

彼女たちはそれぞれ顔を見合わせた後、暫くしてから

「弟さまが仰るなら、その通りに」と微笑んでくれた。

 

うんうん、みんなはやっぱり笑顔が似合うねと伝える。

 

 

 

 

 

 

さて、色々やることがあるぞ、と腕まくりをする。

 

「あのね、ボクは色んなものを"識りたくて"あちこち巡っては本とか、魔導書とか色々収集することが好きなんだ。でもね、はずかしいんだけれど整理するのが苦手でね、読んだ物とそうでない物とか、ごちゃ混ぜになってしまっているんだよねぇ。それを片付けるのをどうか手伝って欲しいんだ」

 

 

お嫁さんたちは、軽装のボクをみて、何処にそんな物をたくさん持っているというのだろうという疑問の表情を浮かべている。

 

つぅ、っと空間をなぞる。

虚数空間が口を開いて、そこからどさどさと本を大量に取り出しては床へ、取り出しては床へと置いて、積み上げていって、あっという間に部屋は本の山に埋まった。

 

 

「ものすごい量の本ですね、何日かかるのでしょう……」と彼女たちは苦笑しながらみんなで片付けを始めた。

 

 

 

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