ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線 作:ねえ、おなまえは?
片付けをしていたらあっという間に夕方になったので、お礼に夕飯を作るよ、と申し出ると弟さまにそんなことを私たちにしていただく訳には……と言われたけれど、まぁまぁ、とキッチンを借りる。
彼女たちの好きな物と苦手な物から、今まで食べてきた美味しい物の中で該当するレシピを記憶から引っ張り出して、あ、兄さんきっとやきもちをやくだろうから兄さんにもつくってあげよ〜っと、と作り出す。
慣れた手つきでどんどん作り上げていく。
お手伝いを、と助けてくれたので、お礼に味見を一口ずつ、はい、あ〜ん、としてあげる。
尊い、と何処かで聞こえた気がした。
彼女たちは、一口食べると、ぱあぁあっと花が咲いた様に驚いた顔から笑顔になる。
これ、おいしいです、と言ってもらえて、口にあってよかったぁ、と笑う。
やっぱりみんな笑っていた方が素敵だと思うよ、と伝えると、困った様に微笑んでいた。
彼女たちだけで食べてもらって、ボクは兄さんの分を持って、さっき案内してもらった兄さんの部屋に行く。
扉をノックして、中から返事があったので入っていく。
「兄さん、旅先で兄さん好みの料理を見つけて、2人で食べられたらいいなぁって思ってレシピを教えてもらったの。だから、久しぶりに一緒にご飯食べてもいいかなぁ?あのね、ボクが作ったんだよ〜!」
兄さんは驚いた表情と呆れた表情とちょっぴりうれしそうな表情が混ざった様な顔をして、お前がそこまで言うなら一緒に食べてあげよう。僕は弟が僕の為に一生懸命に作った料理を断るほど薄情な人間じゃないからね。と言いながら料理を受け取って、一緒にテーブルについて食べ始めた。
兄さんのことだから、きっと権能を解くのは久しぶりだろうなぁ、と思った。
それがボクの料理の為なのだと考えると、美味しくできた料理がなお美味しく感じた。
レグルスは本当に久しぶりに食事を摂った。
権能のおかげで、普段はそんなことをしなくて済むから、本当の本当に久しぶりだった。
それが、弟が健気に自分と一緒に食べたいからと、わざわざ僕の為に作ったということも合わさって、更に美味しく感じた。
何日もかかって、ようやく持ち物の整理が終わる頃には、屋敷にいる兄さんのお嫁さんたち全員と話をする様になっていた。
名前にはじまって、好きな物、苦手な物、好きな色や好きな音楽など他愛のない会話を通じて色んなことを"識る"ことができた。
後ろで大雑把に纏められた髪の毛を見て、弟さまがよろしければ、私たちが纏めましょうか?と言ってくれて、髪をといて、前に垂らす三つ編みにしてくれた。
お姉さまにしてもらっていたことを思い出して、ありがとうと懐かしく思いながら伝えた。
みんなに魔法を見せてあげる機会もあった。
色とりどりの花を一面に咲かせたり、夕陽を受けた優しいピンク色の雲を出して色んな形にしてみたり、美しい声で囀る小鳥たちを集める魔法だったり。
くだらない魔法でも彼女たちはうれしそうに、少女の様な顔をして喜んでくれた。
みんなが喜んでくれるとボクもうれしいなぁ。
そんなこんなで、あっという間に1週間が経って、ボクはまた旅に戻ることにした。
兄さん、みなさん、お世話になりました。
また遊びにくるねぇ、じゃあ、行ってきます、ばいばいと告げて出発した。
何ヶ月か毎に、時には何年か経ってから、気紛れに今度遊びに行くよ、と手紙を送って兄さんやみんなに会いに屋敷へ訪れた。
その度に疑問に思うことがあった。
行く毎にお嫁さんたちが入れ替わっているのだ。
全員じゃない、見知った子もたくさん居るが、数ヶ月前には居た子たちが何人も居ない、変わりに新しいお嫁さんが増えている。
何かあるんだろうなと、思ったけれど、兄さんに一度だけ聴いた時に彼女たちは"不意のことで不幸にも"亡くなってしまったと言われて、珍しくそれ以上"識る"気にはならなくてそっか、と言って彼女たちが好きだと言っていたそれぞれの花を花束にして部屋へ飾った。
新しく世話係になってくれた彼女たちにも、髪を三つ編みにしてもらって、ボクもできる様になりたいな、とやり方を教えてもらい自分でも三つ編みを作ることができる様になった。
これで、君たちに手間をかけさせないね、と言うと何となく彼女たちから不服、不満という感情が向けられたした気がした。んん、どうしてだろう…?
甘い焼き菓子を作ってあげて、みんなで食べたり(兄さんはこういう時に絶対にボクに最初の一口を、はい、あ〜ん、と食べさせて貰いたがっていた。かわいい兄さんだ)機嫌がいいと昔みたいに頭をくしゃくしゃと荒っぽい手つきで撫でてくれることもあった。(これは必ずお嫁さんたちの前でやっていた。うれしいけれど、ボクよりお嫁さんたちを撫でてあげればいいのにな、と思った)
そんなこんなで、順調に知識欲を満たしていくことができたし、時々兄さんたちに会えるから寂しくない生活が続いていた。
今度こそずっとずっと続くと思っていた。