ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線 作:ねえ、おなまえは?
初めて弟さまが来られる前日、突然、旦那さまに私たち全員が呼び出された。
みな、何事かと思ったが、動揺を隠して無表情でいる様に努める。
旦那さまは、君たちに伝えなければならないことがある、と話し始めた。
曰く、僕の大切な双子の弟が屋敷に来ると。
何日間か滞在するかもしれないということも。
「弟は知識欲の塊だ、なんでも知りたがるだろう。弟は僕と同じで心優しい。だけれど、優しさの方向性なんて人それぞれだ。僕の愛の形を知ったらどうするかなんて僕が1番分かっている。だけど、僕には僕の愛を全うする権利があるから、この幸せな生活を壊さない様に、僕は弟の前では君たちのことを番号で呼ばない。
弟が望むなら、仕方がない、君たちが僕にとって不利益にならない範囲で質問に答えたり、表情変化をすることを許可しよう。
ただし、余計なことを言って、僕の弟を悲しませたり、僕を失望させることがあれば、分かるね。指先の動き1つ、言葉の抑揚1つ、言動には細心の注意を払う様に。あと、僕の弟は、かわいい。かわいいなんてありたいていな言葉では表せないが、従順で賢くてかわいいんだ。だから、変な気を起こさない様に」
はぁ?このクズは何を言っているんだとみんな思った。
お前と双子ってことはお前がもう1人増えるっていうことだろうが。
1人でもうんざりするクズが2人になるなんて地獄以外のなにものでもない。
かわいいから、変な気を起こさない様に?
は?お前と同じ顔なら起きる気は殺意くらいだろう、と。
その予想は斜め上の方向に、ぶっちぎりに良過ぎる方向に裏切られた。
何このかわいい生き物。あのクズと、確かに双子なのだと分かる瓜二つの顔。
でも似ても似つかない柔和な雰囲気。
表情の変化があまりない方だったが、うれしいときには周りに花がぱぁっと咲きほこる幻覚が見え、へにゃりとかわいらしく笑う。尻尾があればぶんぶんと振っているのだろうなと、意外と分かりやすい方だった。尊い。
世話係になった者は髪の毛をといたり、結んであげたりしているという。
羨ましい。世話係以外にも、確かにあのクズの言う様に知りたがりで、仕事の邪魔にならない範囲でよく話しかけてきてくれた。
久しぶりに名前を呼ばれて、人間に戻れた気がした。
あのクズは自分が1番です、と見せつける様に弟さまに料理を食べさせてもらったり、わざわざ私たちの前でクズより高い位置にある頭を乱暴に撫でていた。
死ねばいいのに。
私たちに撫でさせろ。
弟さまがいる間は誰も殺されなかった。
それもまた、私たちを安心させる材料になり、こうして弟さま親衛隊が結成されていった。
クズとの生活も、時々来てくださる弟さまに癒されるため、と思えばほんの少しだけでも辛い気持ちが楽になった。
それから暫くした頃、クズがまた新しい花嫁を連れてきた。
銀髪の、清楚な感じの子だった。
彼女もまた、無理やり連れてこられたのだろう。
その時には、その後に起こることなど、誰も予想できなかった。
いよいよはじまります。