ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線 作:ねえ、おなまえは?
高く、高くそびえる氷の柱に、その意味を理解したレグルスは妻たちを思って怒りを抱いた。
こいつらはなんて、なんて非人道的な行為ができるのだろう!
スバルの元へエミリアも合流し、攻撃をレグルスにくらわせる。しかし……
「本当に笑っちゃえるくらい不遜で、どうしようもなく低俗で、呆れるくらい無能で、信じられないくらい厚顔で、救いようがないぐらい下等。で、色々やってくれたみたいだけどさあ。残ったのが盛大な犠牲だけ?それってどんな笑い話なわけ?どう挽回するのかなあ?」
レグルスは無傷で目の前に立っている。
そんなはずがない、権能の効果はお前がベラベラと喋って、とスバルは狼狽しながら反論する。
「負け犬の遠吠えが気持ちいいね。ははは、なんとでも言いなよ。君たちがそうやって好きなだけ、負け惜しみを口にするのは敗北者の権利だ。それを優越感を味わいながら聞くのは勝利者である僕の権利……ああ、悪くない! 悪くないなぁ!」
エミリアは、落ち着いていた。
静かに怒りを燃やしながら淡々と話す。
「53人。53人よ。それが、あなたが無理やり押さえつけていた女の人の数。私は、命の数を数え間違えたりしないわ」
で、それで?
だから?なんだっていうんだ?
数を数えられて偉いねって?
エミリアを煽る様に、レグルスが上から目線で話し続ける。
怒りに震える手をぎゅっと握りしめなおして、エミリアは続ける。
「私、すごーく怒っているから。もう許してなんてあげない」
「あなたって、本当に恥知らずね」
「私は花嫁に相応しくないって騒いでいたのに」
キッとレグルスを侮蔑の表情で見つめる。
「スバル、レグルスの心臓はここ。いま、私の胸の中にあるわ」
「うるさいな。グダグダと偉そうに自分たちの権利ばかり主張して。それよりも、僕の妻たちを殺してくれた責任はどう取るんだよ?僕の理想の花嫁たち……あれだけ集めるのに何年かかったと思ってるんだ?花嫁たちがみんな殺されて、僕をクソみたいな寡夫にする気か?新しい妻が見つかるまでの、繋ぎになる義務が君にはあるだろうが!」
当たり前のことだ。
当然のことだ。
誰が聴いたって、僕が正しい主張をしていることは明白だ。
だって、僕にはその権利がある。
レグルスは、笑った、嗤った。
馬鹿らしい、頭が悪いな、自分が何を言っているのか分かっていないんだろう、この浮気女は。
お前、何を笑っていやがる!と噛みつくスバルに教えてあげる。
「あのさぁ、意味わかってる?そんなことを言って、自分たちで自分たちの首を、ぎりぎりっと絞めてるんだってことを理解していないか、それすらする気もないのかなぁ!?」
「あっ、試してみれば?他に僕の心臓が宿る場所があるかどうか。簡単だよ。今、目の前にいるその女を殺せばいいんだ。できる?できるわけないよねえ?」
狂気的に、馬鹿にしながら、嘲るように、見下しながらスバルたちに言う。
そんな事できるわけがない、自称精霊騎士とかいう馬鹿な間男が大切にしている浮気女を手にかけるなんて絶対ありえない。
レグルスはおおいに驕り高ぶっていた。
しかし、2人は違った。これまでの積み上げてきた信頼の格が、レグルスの想像を超える。
エミリアはスバルを信じ、スバルに身を任せる。
スバルは覚悟を決めた。
「来いよ、見えざる手!!!」
インビジブル・プロヴィデンスが、エミリアに入っていく。
「なんだ。――そこにいたんだね、ジュース」
あった!!!捕まえ、寄生したレグルスの擬似心臓を引き剥がし、握りつぶす。
これでぶっ飛ばせるな。
エミリアとスバルが、安心していると、1人置いてきぼりをくらって蚊帳の外にされたレグルスが馬鹿みたいな茶番やそのくだらない三文芝居の説明をしろよとイライラし、憤る。
お前、気づいていないのか?
スバルが、静かに言う。
「足元、濡れているぞ」
え?――ありえない。
ありえないことだった。
足元が水に、浸っていた。
それに気づいた時にはもう遅かった。