ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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色んな意味で哀れで可哀想で惨めなレグルスが好きです。しっかりボコボコにされてほしい。


20話 僕は悪くない痛い死にたくない助けて

 

派手に吹っ飛ばされる。

痛みと衝撃に耐えながら、考える。

 

なんで、なんでなんでなんで……!

 

こんな奴らが、どうやって"強欲"の権能を!

僕の権利を!

 

 

 

なめぷ、とかナツキ・スバルが何を言っているのか意味が分からなかったが、馬鹿にされていることは理解できた。

クソ、と思う間もなくエミリアの蹴りが腹に直撃する。

 

「最初の花嫁さんたちの分、ちゃんと当たってあげて」

 

 

「ふざ……けるな!!!」言い終わる直前にエミリアが顔面を殴打し始める。

 

うりゃうりゃ!というかわいい声とは比較にならない、花嫁たちの思いをのせた重い打撃が一発、また一発と繰り返される。

 

顔がアザだらけになり、パンパンに腫れ、元の顔が見る影もなくなっていく。

 

殴打を続けながら言う。

 

「貴方、愛されていなかったわよ。貴方のお嫁さんたち、ひどく怒っていたわ」

 

「貴方の弟さんが聞いたらきっと悲しむでしょうね」

 

 

は……?おと、うと…

弟……?

ッッはあああぁああぁあぁ!!?!?

 

「浮気女ごときが僕の!大切な!!弟のことを!!!理解した風な口を聞くな!薄っぺらい思考で喋るな!!想像するな!!!知るな!!!!!弟が穢れされる!このクソ浮気女がぁ!!何も分かっていないくせに人様の弟のことを分かった風に口を―――」

 

ペラペラとよく喋る口だ。

 

また一発、顔に拳を打ち込む。

「言ったわよね、私すごーく怒ってるって。弟さんは貴方と違ってお嫁さんたちからとても信頼されて、大切に思われていたわ。貴方とは似ても似つかわない様な、優しくて思いやりがある人だったのでしょうね」

 

 

53発。

 

綺麗に、残った花嫁分の殴打を打ち込み終えたエミリアが侮蔑の表情を見せる。

 

状況は誰が見ても逆転している。

 

惨めったらしく

「あ、あのさぁ……!卑怯だと思わないのかなぁ!?」

「2人がかりで1人をいたぶるような真似して心が痛まないわけ?それって人として大事な部分がどうかしちゃってるんじゃないの?そんな自分達に疑問とかないのかなぁ。あって当然だよねぇ!?」とレグルスは叫ぶ。

 

 

騎士が戦うのが道理だ、と主張し、話に乗ってきたスバルを心の中で笑う。嗤う。

 

スバルは信頼した声で、言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから――またになっちまうが、最後は任せる」

 

 

レグルスは何を言っているんだ、こいつは?と理解が追いつかなかった。

スバルの言葉は彼に向けられたものではない。

 

『彼』に向けたものだ。

 

「ああ、わかったよ。――挑まれた一騎打ち、騎士として受けよう」

 

 

 

空の彼方から地上に舞い戻る。

獄炎の渦の中から剣聖、ラインハルトが余裕の表情で現れる。

空から、帰ってきたのだ。

「バカな、空のかなたまで……ど……どうやって……」

驚愕の表情を浮かべるレグルス。

 

ありえない、ありえない。

 

「確かに、あれには困らされたよ。ただ、君は1つだけ間違えたね」

「僕を月に向かって投げるべきじゃなかった」

 

理解が、追いつかない。

 

ラインハルトが名乗りをあげているが、そんなもの頭に入らなかった。

こんなこと、あるはずが、あっていい訳がない!!

待て、待て、待って!こんなのおかしいだろ!と叫ぶがその願いは聞き届けられない。

 

ラインハルトの強烈な一撃によって上空へと打ち上げられる瞬間、とっさに獅子の心臓を使う。

安心する間なんてない。

 

 

吹っ飛ばされた衝撃で視界が回る。

痛い、痛い、痛い、身体中が痛みによって悲鳴をあげている。

 

息がうまくできない。

 

ありえない、ありえない、ありえない。

 

何で僕がこんな目に遭わなきゃならないんだよ!

 

僕は魔女教大罪司教"強欲"担当、レグルス ・コルニアスだ!!!この世で最も満たされていて最も個として完成された心身ともに揺らぐ余地のない存在!僕は悪く無い!何も悪く無い!お前らが悪いんだ!!!お前らが僕を哀れんでかわいそうがって……笑い声が聞こえる。僕を見ているだろう!僕を見て笑ったんだろう!!僕の何がおかしい!?僕の何を見て笑った!?ヘラヘラと笑うな!

 

僕の最初の妻はそんなことをしなかった。

僕の妻は綺麗な顔をして、僕に、僕と弟に優しく微笑んでくれた!

愚かな妻の家族を殺して、馬鹿な僕の家族を、村人を、町を、国を落とした時も、妻に言い寄る馬鹿どもを弟と一緒に殺して、それで、3人でくだらない話をしたり、美味しいものを食べたり、どんな些細なことでも喜んでうれしそうに笑ってくれた。

 

他の妻は笑わなくていい。

 

 笑う必要がない。

 笑う価値がない。

 

だがなんで!

 

彼女以外の他の奴らは、どうして最期の瞬間にだけ"嗤う"んだ!

 

妻の最期のあの満たされた美しい、慈しみを含んだ、柔らかな、儚い願いを、祈りを込めた"笑顔"とは似ても似つかない顔で!!

 

僕が、僕だけが独り残されて、僕が独りきりになるのをうれしそうに、いい気味だなんて、何かから解放されたかの様に、嗤うんだ!

 

ふざけるな!!!

僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない、僕は悪くない……

 

 

 

空へと落ちていく背中にズシリと重みを感じる。

 

「本来の決闘であれば、戦う意志をなくした時点で僕も剣を引くところだけどね」

ラインハルトだ。

ラインハルトが、レグルスの背に立ったまま、悠然と語る。

 

「バ、ケモノめ……」

 

「そうだね。僕は化け物を狩る化け物。―――君も運命を受け入れるときだ」

 

レグルスの背のど真ん中に、ラインハルトの振り下ろす手刀が、ぶつかる、その直前。

 

 

 

死ぬ、死が、死が来る。

死にたくない、嫌だ、死が怖い、死が恐ろしい、死ぬ、死を、これから来る死を避けようがない。

こわい、こわい、こわい、こわい、こわい!!

限界まで死の恐怖に迫られたレグルスは、力の限り、ありったけの祈りを込めて、心の底から搾り出す様な声で、みっともなく空に向かって叫んだ。

 

 

 

「お願いだ!!ぼくを、僕を、助けろ!!!!」

 

 

 

彼は何を言っている?と思った瞬間、彼が着けていた黄色のイヤリングから眩い光が迸る。

 

ラインハルトはそのあまりにも強い突然の閃光に目が眩んだが、何が起きているか把握する為、瞬時に判断して叩きつけるはずだった手を止め、レグルスを踏み台にし、後ろへ飛び退いて冷静に構え直した。

 

 

 

 




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