ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線 作:ねえ、おなまえは?
スバルとエミリアは何が起きているのか全くわからなかった。
空へとレグルスが打ち上げられた後、確実にラインハルトがとどめの一撃を喰らわせようとしていたはずだ。
状況は混乱の一途を辿っている。
ラインハルトたちは遥か彼方の頭上に居る為、何がなんだか分からないが、流星の様な眩しい光が現れた後、突然第三者が増えたのだ。
しかも、どうやらレグルスの味方らしい。
高度が下がるにつれ、姿がはっきりしてきて、ますます困惑する。
レグルスが2人に増えた。
片方の、というか今まで散々ボコボコにされていたレグルスは、もう1人のレグルスにお姫様抱っこされている。
俺たちは、いったい、何を見せられているんだ……?
新しく現れたレグルス……?が口を開く。
「こんばんは!初めまして。ボクは2人目の魔女教大罪司教"強欲"担当、レグルス・コルニアスの双子の弟です、よろしくね」
微笑みながら、甘く優しい人当たりのいい声で話し続ける。
「こんな人が急に来て、不安でしょう。だから情報開示をしますね。ボクも、兄と同じ権能が使えます。ただしちょっとした理由で、権能が制限されていて、自分の心臓を止めておけるのは2秒が限界です。だから殆ど意味をなしません。それから、ボクの擬似心臓は今はもう兄さんだけにしか寄生できません。あとは戦闘には向かない権能しかありません、だから安心してねぇ」
笑顔を浮かべ、自分の手の内を明かしていくレグルスの双子の弟の存在にスバルはますます訳がわからねぇ、と頭を抱える。
「いや、まてまてまて、レグルスの双子の弟……?色々聞きたいことは山ほどあるが、その、なんだ、最後に言っていた戦闘に向かない権能ってやつは何なんだ?」
「あぁ、この権能は、えっと、ボクが指定した範囲にいる人たちのこれまでの記憶を分けてもらうんです。追体験といってもいいですね。記憶をもらうって、とっても素敵で、すばらしい体験なんですよ。それまで、どう生きてきたのか、どんな困難に直面して、どう乗り越えてきたのか。どんなうれしいこと、悲しいこと、怒りが湧いたこと、嫌悪したことがあるのか。その人が一生懸命に研鑽して、積み重ねて、研ぎ澄まされたもの。それを"識る"ことができるんですよ」
「記憶を……って、暴食の権能と一緒じゃねぇか!全然安全じゃない、戦闘特化の権能だろ!」スバルが威嚇する。
「困ったなぁ。違いますよ、混乱しないで、どうか落ち着いてください、ね?ボクの説明が下手でしたね、ごめんなさい。まず、ボクが"識った"ところで、相手の記憶はなくなりません。周囲の記憶も、です。それに、"識る"だけなので、例えば武術の達人の動きを識ったところで、それと同じことができる、と言う訳ではないんです、知識を満たしたい、それだけの為の権能なんですよ」
困り眉をさらにさげて、のんきに困ったなぁ、と言っている。
「それが、嘘か本当かわからない以上、というかお前もレグルスと同じことができるんだから、信頼できねぇよ」
「確かに、貴方の言うとおりですね。でも、あそこで凍っているの、場所から察するに兄さんの花嫁さんたちですよね?それに、兄さんはひどい怪我を負っていました」
"負っていました……?"
過去形の言葉に違和感を感じて慌ててレグルスを見ると、ボコボコだった顔が元の状態にまで戻っていた。
クソ、治癒魔法かけていたのかよ!と思う。
弟は続ける。
「つまり、権能の突破方法が貴方たちにはあるってことでしょう?ボクは平和主義者なんです。争いごとは苦手。だから、ボクたち2人とも仲良く投降しまーす!」