ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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聖域やら墓所じゃなくても茶会に参加可能なのかについては、エキドナさまパワーという事で、ひとつよろしくお願いします。


短編 エキドナさまだ〜!!!!!

 

ざあざあと風に吹き付けられて激しく降る雨が窓を叩くの中、ボクたちは雨宿りをしていた。

 

いつ止むのか分からないので、各々休んで過ごしている。

 

ボクは雨を止ませる、というか自分たちの通り道だけ晴れにする魔法を作ろうかなぁとか、髪も服も濡れたから、早く乾かして、いや、早いだけじゃだめだなぁ、暖かくて、落ち着いた気持ちになれる魔法を作ろうかなぁ、なんて考えながら魔導書を取り出そうとして、ぱちり、と瞬きをした瞬間、気持ちのいい風が吹く草原に立っていた。

 

 

あれぇ、おかしいなぁ。

 

う〜ん?頬に手を当てながら首を傾げる。

 

 

空間転移だ、高度魔法。レグルスたちは居ない。

ヨグちゃんの暴走でもない。

 

 

不思議だなぁ、何だろう、でも何となくだけれど、敵意は感じられない。

 

とりあえず、どうしようもないから、ふわぁ、とあくびをしながらぐっと伸びをして、歩き回ってみようかなぁと思って、一歩踏み出した時だった。

 

 

 

「ふむ、君は随分とのんびりやさんなんだね、こんなに落ち着いている人は初めてだ、興味深い。油断、というよりも危機感の欠如とすら言えるそれはその絶大なマナのおかげなのかな?それともただ単にそういう性格なのかな。ともあれ君は招かれた。ようこそ、魔女の茶会へ」

 

 

背後から声がかかる。

 

歩き出しの足を止めて、ゆるりと振り返ると黒色のワンピースに身を包んだ、白い人が居た。

 

髪の毛もまつ毛も純白だ!その素敵な黒の洋服にピッタリだ、知的な瞳も綺麗だし、わぁ、蝶々の髪飾りもキラキラして宝石なんかよりよっぽど品があって、うん、それがより一層彼女の魅力を引き立てているんだねぇ、というか、魔女の茶会って言っていたよね、魔女って事は、1番に思いつくのは前大罪司教のどなたかなのかな、そうだとしたらこの空間転移にも納得がいく。生前の権能なのかな、単純に高度な魔法の使い手なのかな、もし本当にそうならすごい!すごいなぁ!亡くなっている方に会えるなんて、いや亡くなっている方って決めつけるのはよくないか、とにかく興味が尽きない、ありとあらゆる事が気になる!

識りたい、識りたいねぇ!!!!!

 

 

一瞬で情報を頭に書き込んで、にこりと笑ってこんにちは、初めまして!と挨拶をする。

 

ぺこりと礼をすると長い三つ編みに緑色に光る蝶々がひらひらと飛んできてちょこん、と、止まって、何だろ、これ!マナから生み出される何かなのかなぁ、すごいなぁ!と目をキラキラさせて、お姉さんの方へ目を向ける。

 

 

 

青々とした草に、清々しい空、先程まで何も無かった場所に現れたポツンとパラソル付きの一組のテーブル。

もうあらゆる事が僕を、僕とヨグちゃんをワクワクさせてくれるなぁ!

 

 

まぁ、立っていないで座りなよ、と向かいの空の席を指されて、ありがとうございますとお言葉に甘えさせてもらう。

 

お互い聴きたい事があると思うけれど、ひとまず、お茶にしよう。

ほら、飲むといい。と、いつの間にか目の前には紅茶に似た液体が入ったティーカップが出現していて、もうあらゆることが面白い。

 

いつ出したんだろう、どうやって出したんだろう、ヨグちゃんの虚数空間みたいなものなのかなぁ、と思いながら、頂戴いたします、とカップを持ち上げる。

 

すぅ、と匂いを嗅ぐが、特段お茶の香りはしない。

死んだって何秒か前には戻れるから、毒だろうと何だろうと今はこの状況下で出されたこの飲み物を、その味をボクは記録しておきたい!わくわく!

 

こくり、と一口飲む。

 

 

 

ふ〜ん?ふむふむ。

 

美味しいとも美味しくないとも言える中間の、言ってみればぼんやりした味だ、何だか、温かくて、ん〜、お茶というよりは何かの体液みたいだなぁと思う。

 

 

目の前の彼女はテーブルに肘を置き、手を組んでこちらへ余裕の表情を向けながら話し出す。

 

 

「魔女の出すお茶に躊躇無く口をつけるなんて、なかなか好奇心旺盛な様だね、君は。ボクはエキドナ。強欲の魔女と言った方が分かりやすいかな?さっきは随分な口説き文句を沢山ありがとう、甘い言葉に聴いていて溶けてしまうかと思ったよ。君は見た目以上に中身が子供の様でもあるし、全く逆の思慮深い人間にも見える。面白い」

 

 

え!!!!!

エキドナさま!?エキドナさまって、あのエキドナさま!?本物の?

わぁ、すごい!お会いできると思っていなかったです、うわぁ、光栄だなぁ!!!

 

というか思わず口に出ていたのか、かなり小さな声だっただろうし、そこそこの距離もあるから呟きを拾う魔法とかを行使したのかなぁ!

 

さっきまで考えていた事を一旦置いて、目を丸くして話に食いつく。

エキドナさまはちょっと得意げな様子でボクの反応を楽しんでいるみたいだ。

 

 

「こちらが先に自己紹介するべきでしたね、失礼しました。ボクは現在の魔女教大罪司教"強欲"担当、レグルスコルニアスの双子の弟です!あ、最近名前をつけてもらって、えへへ、まだ慣れていなくて…レグルズ、レグルズコルニアスです!流星群の意味があるとか!お好きに呼んでください。今はボクの事などどうでもいいんです、とにかく、貴女にお会い出来て光栄です!」

 

 

握手していただいても?と言うと、いいとも、と、ほっそりとした白い手を差し出してくれて、名を明かした後に魔女と気安く握手なんてしたら駄目だよ、誓約とか、契約とかさせられてしまう事があるからね、ボクはわるーい魔法使いなんだから、と怪しく笑うエキドナさまに、でもエキドナさまはそんな事はしないって分かっていますから、安心して握手できますね、と微笑みながら差し出された手を躊躇なく両手で包んでぶんぶんと振る。

 

レグルズ、君ねぇ…と何か言いたげな表情を浮かべたが、何だか君と居ると毒気を抜かれて調子が狂うね、と呆れた様に笑われる。

 

そうか、名前は星からとったのか。

流星群ね。ボクは生前、星を落とす魔法を習得していたんだよ、面白い繋がりだ、と目を細めるエキドナさまに、え〜!!星を落とすなんて考えた事も無かったや、すっごーい!周囲を夜にして流星群を出すあの魔法から派生させればいいかなぁ、後で試さなくちゃ、と、失礼しますと言って虚数空間から魔導書を出して忘れない様にガリガリと書き込む。

 

 

 

 

パタリと魔導書を閉じて仕舞うのと同時に、少し慌てた様な声がかけられる。

 

 

え、ちょっと、ちょっと待って、レグルズ、君、今、何処から魔導書を出したんだい?と驚いた表情を浮かべるエキドナさまに、元気よく答える。

 

これはヨグちゃんの時空間魔法のうちの1つ、虚数空間です!

色々出し入れできて便利ですし、中の物は時間が停止しているので、あぁ、そうだ、お茶会ですから、ボクが焼いたお茶菓子でも如何ですか?

お口に合うといいのですが、とこの景色にそぐわない黒で塗り潰された揺らめく空間に再びとぷり、と手を入れて、ゴソゴソと暫く探した後、有りました!とバスケットに入れられた焼き菓子が出てきた。

 

 

待って、理解が追いつかない。何が起きている?

 

 

 

ヨグちゃんの、って、まずヨグちゃんって誰だ、どう考えても人では無いだろうが…それにあの高度な魔法、虚数空間という事は、この子、どれだけの事を自分がしているのか分かっているのか?

 

この空間に作用できるのはこちら側だけだと思っていたのに、それがあっさり覆されて驚きと興味と関心が高まるのを抑えられない。

 

 

エキドナさまもよろしければどうぞ!と甘い香りの焼き菓子をもっ、もっ、も食べながら笑顔でこちらを見る目の前の存在に、その中に、高次元の存在がいる様に感じられて思わず背筋がゾッとする。

 

だが、目の前の存在はただただ無邪気に、無害に、無意識に友好的に振る舞っていて、その姿に落ち着きを取り戻す。

 

 

甘い焼き菓子を1つ手に取って、口へ運ぶ。

 

久しぶりの甘味に舌が歓喜する感覚を覚える。死者が食事を摂れる、というのもおかしな話だ…いやお菓子と掛けている訳じゃあないよ。

 

 

とにかく彼が規格外だという事は分かる。

 

あぁ、美味しいな、食事なんて本当に久方ぶりだ。

 

もぐもぐと焼き菓子を食べ、優雅にお茶を飲む彼に、そうだ、そのお茶、君にはどう感じられた?何を思った?何のお茶だと思う?と答えをワクワクしながら待つ。

 

彼は、え〜っと、と少し考えてから、もし違っていたらとても失礼かと思うので…と遠慮がちに、叱られるかもしれないと思っている子供の様に指を弄りながらこちらを伺うので、君の感想を聴きたいんだ、何、まずいだとか、どんな答えが返ってきたってそれは君が感じ取ったもので、ボクは君の感想、それを望んでいる。

さぁ、答えてくれたまえ、と促すと、では、と前置きをしてから、ボクには美味しいとも、まずいともいえない何とも不思議な味で、お茶特有の香りも無く、しかし温かいので…何というか、お茶というよりも何かの体液、の様な感じを受けました。と返ってきたので驚いた。彼には驚かされてばかりだ。

 

 

その通り、それはお茶とは名ばかりの、ボクの体液なんだ。不快な気分にさせたかな?と笑みを深めるので、とんでもないです!エキドナさまの体液の味、というか体液を口にするなんてそう無い機会ですから、素晴らしい体験でした、識る事が出来て嬉しいなぁ!持ち帰る事は可能でしょうか?とまたあの虚数空間から小瓶を取り出して嬉々として目を輝かせてこちらを見つめてくる。君は予想の遥か斜め上を行くね、流石、強欲足り得る訳だ、と呆れた様に苦笑しながら指を一振りして蓋のされている小瓶に体液を満たしてあげると宝物をもらった子供の様にはしゃぎながら喜んで、お礼を言ってきた。

 

そうだ、レグルズ、君は何か強く知りたい事があったんじゃないかな?そうするとここに繋がる事があるんだ、と言うと、そうなんですよ、今、この空間の外は土砂降りでして、みんな雨に打たれて服がびしょびしょなんです。

 

今思うと、特定の場所だけ雨を遮る、僕たちの空間に降る予定だった雨をヨグちゃんの力で転移させて、道を作ればいいか、なんて考えていたんですけれど…とにかく寒くて、スバルやレグルスも心配ですが、エミリアが、女の子が身体を冷やすと大変でしょう?だから暖かく服が乾いて、落ち着く魔法があればなぁ、って思っていたんです!とにこにこしながら答えが返ってきて…ボクは固まった。

 

 

 

 

そんな事で、そんなくだらない事でここに来れたのかい!?

 

いやぁ、世の中不思議な事だらけですよねぇ。

 

いやいや、およそ凡ゆる知識や魔法を持っているボクに聞く事が、そんな子供が考える様な魔法だって!?

もっとあるだろう、ほら、さっき言った星を落とす魔法とか!

 

う〜、でも星を落とす魔法は何とかなりそうですし…ボクが今、識りたいのは洋服を暖かく乾かして気分が落ち着く魔法でして、と苦笑いする。

 

 

 

 

 

は〜、君ねぇ、と額に手をやって、暫く考えてからエキドナさまは分かった、教えてあげよう、君なら理論を教えなくても体験すれば理解出来るだろう、と草原に立つ。

 

雨は、と空間を弄ろうとしてくださった手を大丈夫ですよ、と声をかけて、ヨグちゃ〜ん、と呼びかけると頭の上にさっきの土砂降りを保存しておいた時空がボクにだけ雨を降らせる。

 

ありがと〜!と声をかけて空間を閉じて止ませてもらって、じゃあお願いします!と振り向いてエキドナさまに魔法をかけてもらう。

 

瞬間、暖かく落ち着く感覚に身が包まれた後、服も髪もすっかり乾いていた。

 

 

 

 

 

解析完了〜!

 

流石、エキドナさま!こんな感じですね!と再び雨を降らせてずぶ濡れになった後、指をくるくると回すと乾いていて、エキドナさまは君が弟子に居れば、いや、弟子で無くとも友人に居ればもっと魔法を高め合ういい関係になれただろうにね、と少し残念そうに言っていた。

 

ご教示ありがとうございました!では対価をお支払いしなければいけませんね、とお伝えすると、うって変わってニヤリと怪しい笑みと、手をわきわきと動かしながらふっふっふ…と待っていましたとばかりにボクに尋ねてきた。

 

 

君がさっきから言っている、この空間に作用できる異様で異常な、尋常では無い、常人にはきっと理解すら出来ない存在、ヨグちゃん、だっけ?

そのヨグちゃんの事をあらいざらい教えてもらおうか、ボクはこの好奇心を抑えられない!さあ!さあさあさあ!!1から100まで全部教えてくれ、と詰め寄って来たので、おち、落ち着いてください、落ち着いてくださいよぉ、とあせあせしているとヨグちゃんの不可視の触手がボクの胴体にするりと巻きついて来て、背後へぐんと引き寄せられる、と同時に振り向くと牧歌的な景色に縦に黒い裂け目が入っていてそこへと飲み込まれていく。

 

ちょっと〜!!!!????まだ聴いていないんだけど〜!!!!!と言う声に、ヨグちゃんは時空と知識を司る外なる神さまなんです〜!!!!!多分これやきもちです〜!エキドナさまと仲良くしすぎたから、とずりずり引き摺られながら喋り続ける。

 

走ってボクに追いつこうとして、直ぐに息切れしてへたっているエキドナさまに、焼き菓子、置いておくので、楽しんでくださ〜いっ!と言うと、また絶対来てよ〜!と目を瞑って手をぎゅっと握りしめて叫ぶ姿が見えて、また来ま〜す!と手を振ると、脱力した様子のエキドナさまがゆるゆると手を振り返してくれて、あははっと笑った所で現実世界に戻って来た。

 

須臾の間だったらしい、誰もボクを気にしていないし、今まで通り過ごしている。

 

 

ねぇ、今いい魔法を教えてもらったんだ〜!ほら!と魔法をかけるとおぉ、すげぇ!一瞬で乾いた、とスバルからお褒めの言葉をもらって、ってか、今教えてもらったって、誰にだ?と首を傾げて聞いてくるので内緒〜、とくすくす笑うと何だよ〜と小突かれて、流石は僕の弟、とレグルスに頭を荒っぽく撫でられて、エミリアからは助かったわ、暖かいって何だか安心するわね、と微笑まれて、じゃあ、行こうか、と声をかける。

 

いや、外まだ土砂降りだぞ、と言われたけれど、ヨグちゃんの力で僕たちに降りかかる雨を転移させて進めばいいやって思いついたんだよ〜と言って、すげぇな、何でもありだ、と言ってもらいながら、じゃ、行こう!と歩き出す。

 

 

そんなある日のお話。

 




焼き菓子は魔女たちで美味しくいただきました。
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